念能力者の英雄譚   作:煽りイカ

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第56話

「オイ、何があった?」ベシベシ

「うう…………実は……」

 

 一応回復薬口に入れてやろ。

 

「あれ? 美味しい」

「だろ、ウチの回復薬は美味しい。少し値段が張るがな」

「私らの直営店に卸したいですよ……」

 

 まーこっちもお得意様増えたら嬉しい。

 世界同士繋がる方法があるなら考える。

 

「それで……」

 

 

 

 ■

 

 

 

「さて、兄弟子として揉んでやりますか」

 

 草の葉の形をした剣を袖から出す。

 更には種のようなものを撒き、それが犬の形をした植物に育つ。

 

 コイツの能力、緑化運動(グリーンランド)

 植物をオーラを込めて改造する能力。

 前の世界は結構変わった植物が多いのでバリエーションは多い。

 

 実はこの能力で一財産築いており、大富豪ランキングに入ってる事もある。

 本人はそれを知らない事もある程に興味は無い。

 

「バウバウ!」

「うお!? 何コレ? 新しい植物?」

「ええ、海洋植物なんですが改造して陸上でも使えるようにしました」

「凄い!」

 

 確か海って結構謎が多いよな。

 そこに未知があるから面白い仕事もありそう。

 

「ほらほらどうしました?」

「うっ!」

 

 ヒミコ、大丈夫ですかな?

 フェムトは弟子の中でも強い方ですぞ。

 

「あ、そういえば」

「?」

「師匠はパーティーの女の子と凄い仲良いですね」

「……」

 

 おい…………止めて差し上げろ。

 コイツにスイッチが入るぞ。

 

「聞いた話だと〜王族を身請けしたそうですよ? 玉の輿ですねwww」

「…………」

「多分側室や妾とかに囲まれそうですよ。人当たり良いですから」

「…………」

「貴女は良いんですか? 想像してみてください…………ウチの師匠が大勢の女に囲まれてる所を」

「…………」

「それで自分に提案があります。私らに師匠の身柄をください。女から守りきって見せましょう」

「…………」

「大丈夫です。和平条約を結べる様に私らの連合に話を通します。世界同士のワープホールは繋げられますし、通い妻と言うのも中々粋かもしれないですよ?」

 

 確か……沈黙すると、

 

「…………そっちに他の女いない?」

「いませんよ?」

「フェムトさん、嘘つく時にこめかみがピクピクなるってしってた?」

「は」ピタッ

「う・そ」

 

 フェムトはこめかみを押さえる。

 何引っかかったんだお前。動揺すんな。

 

「あにさんは……」

「…………ん? オーラ変ですよ」

「……私が守る! 女共から!」

 

 黒い魚から赤黒い魚へ変化し、そのまま宙に浮く。

 

「ん? なんだこの能力? うぐ!」ドカ!! 

 

 フェムトは後ろからヒミコに攻撃される。

 

「うぐっ」

「かはっ!?」

「よし、倒したでござる!」

 

 ローナやシルフィ、ラルクとテリスを撃破。

 

「お前らも潰してやる……」

「ローナ、クルゼェ!」

「来いでござる!」

 

 ローナやシルフィ、ヒミコと対戦。

 畳一畳分程の距離に詰められる。

 

「ローナァ! ウシロダ!」

「は!? ぎゃあ!!」

「ローナ殿!?」

 

 ローナに攻撃は当たるが、間一髪で体を捻り力を逸らす。

 後ろを向いていた念獣に感謝だ。

 

「なんか雰囲気変わってますよ!?」

「オーラがさっきとは別人でござる!」

 

 実はヒミコは怒ったり嫉妬したり感情が昂ぶると特質系にチェンジすると言う特異体質なのだ。

 

 泳ぐ能力以外に別の能力を作ったと話を聞く。

 それがこの能力か? 

 

「ふん!」

「うっ!?」

 

 次は真上からの攻撃。

 攻撃にモーションが見えない? 何の能力だ? 

 

 ローナが攻撃され、昏倒され地面に倒れる。

 

「ヤバいでござる!」

「お前も倒れろ……」シュン

「おっと!」

「は? 避けた?」

 

 あ、シルフィが避けた。

 

「何の能力?」シュン

「ふん! でござる!」

 

 シルフィがカウンターを決める。

 

 シルフィ能力、建御雷(クイックボルト)

 単純な能力であり、反射神経強化能力だ。

 

 今さっき避けたのは空気の流れで察知しただけだ。

 多少余裕なのかカウンターを決めたようだ。

 

「へーやるじゃん」

「あたりまえでござるよ」

「じゃこれは?」シュン

「おっと!」

 

 念魚が下から出てくるが避ける。

 

「流石に泳ぐ音でわかるでござうご!?」

「と思うじゃん?」

「なんで? 避けたのに!?」

 

 いつの間にか念魚に食べられているシルフィ。

 なんだこの能力は? 

 

「オラッ!!」

「ぎゃあ!?」

 

 銛を脳天にぶっ叩く。

 食いついてるため避けられないのでそのまま気絶する。

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

 さて、コイツをどうするかだ。

 

「あにさん…………」

「何?」

「汚らしい女から守ってやる……」

 

 う、ん? 会話がヤンデレなんだが。

 

「あと……お兄ちゃんとか呼ばれてたよね?」

「まあな」

「潰してやる……」

「なんで……」

「妹は1人だけでいい」

 

 春菜、お前なんかやったの? 

 同族嫌悪とかそんな感じか。

 

「あにさん……私とあの子どっちがいいの?」

「妹に優劣なんてつけられん」

 

 どっちも大切さ。

 元康程って訳じゃないが皆大事。

 

「あにさん、絶対連れて帰るよ」

「やってみろ」

 

 シュン

 

 ん、あれ? 視界に違和感が? 

 ヒミコは…………!? 

 

「ぬお!」

「避けたか……」

 

 今さっき見せたアクアトライデント!? 

 スキルを口に出してなかったぞ! 

 

「どうなってる……」

「そろそろ気づくんじゃないの?」

 

 なんだか懐かしい感じがするんだか。

 

 シュン

 

 また消えた? 

 次は……はっ! 

 

「うおっ!?」

 

 次は三日月の攻撃を放ち、俺は飛んで避ける。

 ぬっ! 傷がついた。

 

 シュン

 

 消えた! とこだ……ん? 

 なんだこの違和感は? 

 

 ドドドドド

 

 上から雷?! 

 

「どうしたのあにさん? 防戦一方だよ?」

 

 何舐めた顔してる? 

 コイツ……成長しやがったな。

 

 しっかしどんな能力だ? 

 時間を止める能力か? それとも動作を見えなくする能力? 

 

「お兄ちゃん!」

「春菜?」

 

 ん? 波の亀裂にカチ込んでる春菜が小船で来た。

 どうかした? 

 

「分かったよこの能力!」

「どういう事だ?」

「この能力はキング・クリムゾンと同じ!」

 

 ん? あ、そういえば視界に違和感があった。

 

「証拠にいつの間にかポーションを飲んでたし、目の前で転んだ人の動作も見えなかったし」

 

 シュン

 

「黙れ」

 

 グサ!! 

 

「なっ、春菜!!」

「かふっ!?」

「肺を突いた。喋るな」

 

 おい、そのまでにしとけよ。

 

「う、お兄……ちゃん。大丈夫……だから……」

「喋るなっつたろ」

「あっう!」

 

 グサ!! 

 

 腹部を突き刺す。

 

 止めろ。止めてくれ。

 

 グサ

 

 グサ

 

 グサ

 

 春菜に何回も腹部に刺していく。

 

 

 

 チカラガホシイカ? 

 

 いらない。

 

 ダガドウスル? カゾクガマタイナクナルゾ? 

 

 …………。

 

 カシテヤルヨ。チカラヲサ。トクベツダゼ。

 

 …………。

 

 

 カースシリーズ

 憤怒の斧

 能力未解放……装備ボーナス、スキル「ボルトアクション」「エレファンテダウン」

 専用効果 雷纏 敏捷向上

 

 

「かはっ!?」

「ヤメロ」

「え? どうしたのあにさん!?」

「お兄ちゃんどうしたの?」

 

 ア? オマエヲボロクソニスルンダヨ。

 

「ヒミコ、カクゴシロ」

「何急に!」

「ちょっと? 落ち着いて?」

 

 ナニヲオチツケトイウンダ? ヒサシビリニアタマニキタ。

 

「待って待って!? この子分身だよ!」

「そうだよ。ってかよくわかったね!」

 

 ハッ? 

 

「ブンシン?」

「私の能力知ってるでしょ。危ないから分身作って伝言しに来たのに」

「分身作った所を能力発動中に偶然見てたから……」

「おーい! 本体はこっちー!」

 

 ア、ホントウダ。

 キレツノトコロカラテヲフッテル。

 

「それにあにさんの仲間殺したら嫌われるでしょ? 流石に交渉もしにくくなるし……」

 

 シュウウウ

 

「あ、元に戻った」

「よかったー」

 

 短気は損気ってのは本当だ。

 落ち着いて考えよ。

 

「あ、もう分身消すよ」

 

 ドロン!! 

 

 消えたか。

 NARUTOの影分身が懐かしい。

 

「さて、続き行くか」

「返り討ちにして婿にしてやる」

「はい?」

 

 婿? 何を言ってる。

 

 この能力が本当にキング・クリムゾンならば試してみたいことがある。

 

 シュン

 

 視界が灰色になる。

 なるほど、これがキング・クリムゾンの能力か。

 

「あれれ!? なんであにさん動けるの!?」

「その能力は触れている人間にも効くようだな」

 

 発動中は多分触れる事が出来なくなりすり抜ける。

 それなのにナランチャがどう殺されたのか? 

 

 この能力は他人に触れても発動させる事が出来るんじゃないのかって考え。

 だからフェンスと融合してたんじゃないのか。

 

「あ、本当だ服を触られグホッ!?」

 

 視界の灰色は解除される。

 戦闘不能(リタイア)! 

 

「ハジメ、終わったか?」ボソリ

「まあな」

「スロウスティック改!」ボソリ

「ぎゃあ!?」

 

 あれ!? 右にゴドルがいると思ったら左から攻撃が? 

 どういう事? 多重影分身!? 

 

 あ、右のゴドルが白い煙と音を出した。

 

「すまんな、こっちも仕事なんだ…………許せ」

 

 この従者の特徴、万華鏡写輪眼、一文字傷の額当て、暁の服。

 

 これなーんだ? 

 

「うちはイタチ……」

「パラライズスティック改!」ボソリ

「グホッ!?」

 

 よくよく考えたらコイツら敵だったな。

 うっかりしてた。

 

「ううっ…………」

 

 あ、全裸のベリトも起きてきた。

 何をアウェイで全裸で気を失ってるんだよ。

 

 クソっ、多少は動けるがいつもより体が動かしにくい。

 麻痺と遅延かよ。

 

「ブラインドスティック改!」ボソリ

 

 お前本当に容赦無いな。

 いつもの事だが。

 

 なんだろ、少し薄暗くなって見にくい。

 

 てか耐性全般をボーナスで出しておいて良かった。

 

「七章・固縛!」

「げっ!」

 

 師匠がいつの間にか拘束から抜け出してる。

 スキルの固い紙の様な物を取り付けられたが重い? 

 

「急ぐぞ! ハジメは私達が貰う!」

「おい、二人とも急げ!」

「うっ……」ヨロォ

「くっ」ヨロォ

 

 ラルクとテリスはボロボロじゃないか。

 

「あ!? 巫山戯んな俺らの獲物だ!」ギュー

「あにさんは私のモノだ!」ギー

「ハジメ様を返してください!!」グゥー

 

 おいおいおい、なに引っ張ってんだよ。

 三つ巴で何引っ張ってるんだお前ら。

 

「さっさと離せよこの野郎!」

「お前が離せ!」

「痛い痛い! 止めて!」

 

 流石に痛い! 脱臼したらどうなる!? 

 俺の事好きなのはいいがいたわれよ! 

 

 おい、痛い!! やめて!!! 

 巫山戯んなお前ら! 

 

「…………引っ張るの辞めないか」

「ああ」ボソリ

「流石に痛めつけて拉致とか嫌ですし」

「そこまでしたくないしなぁ」

 

 パッ

 

 あ、ゴドル達は手を離した。

 

「…………可哀想になってきたんですけど」

「…………あまり痛くさせるのはダメでござる」

 

 パッ

 

 ローナ達も手を離した。

 

 待って!? それだと俺拉致されるよ? 

 あ、テリスがワープホールみたいなのを準備してる。

 

「よーし! 拉致だ!」

「え? いいのか師匠……」

「問題なーし! あにさんもよくやってるし」

 

 あ、そういえばやってる。

 人の事言えない。

 

 ヒミコ…………やっぱり根に持ってるのか? 

 

「待て、お前ら」

「尚文?」

 

 尚文、吹き飛ばされたけど戻ってきたのか。

 

「ハジメを離せ。お前ら負けだ」

「なんで?」

「体を引っ張られて痛がってる。コイツを想うんだったら離す筈だ」

「あにさんがこんなので腕がちぎれる訳ないだろ?」

「やわな鍛え方なんてしてないよ? ヤバかったら治すし」

「それに拉致すればそっちの世界の戦力低下と味方の兵隊増産が出来るしね」

「お前ら…………」

 

 鬼かお前ら? 

 

「ハジメを離しやがれ!」

「尚文、手伝うぜ」

「ああ」ボソリ

「酷すぎでしょ」

「同感です」

「フェムト、ゴドル、ミレナリオ、ベリト…………」

 

 あ、あら? 知り合いだったの? 

 いつの間に……。

 

「シャンブルス!」

「あ!?」

 

 テスタか! よくやった! 

 よし、状態異常の薬を飲んでと。

 

 ゴクゴク

 

「あにさぁぁぁぁん! 私諦めない!」

「おう、また来い」

「私も諦めないぞぉぉぉぉぉぉ!」

「ああ、わかった。またな」

 

 ヒミコ一行は消えていった。

 

「疲れた」

「…………後で色々聞くからな」

「…………わかった」

 

 こっちも情報が入りすぎて頭が疲れた。

 

「さ、こっちも帰るか!」

「逃がすかよ! どんだけやってくれたんだお前ら!」

「パンサースモーク改!」

「煙幕弾改!」

 

 ん? ベリトはボウガンの武器か?

 

「ハッハー↑あばよ!」

「待てぇぇぇぇい!」

 

 結局逃げられた。

 

 

 

 ■

 

 

 

「よし、お前らご苦労」

『お疲れ様です!』

 

 ふぅ、色々後処理が終わり俺らは解散。

 さ、お風呂入りますか。

 

 貸切露天風呂付客室だし。

 金が有るっていいね。

 

「ハジメ様。お背中流しましょうか?」

「頼む」

 

 助かるね。

 たまに届かない時もあるし。

 

 ゴシゴシ

 

「そういえば…………」

「?」

「違う世界から勧誘されましたけど、ハジメ様から考えてどうだったんですか?」

「んー。少しだけ行きたかったかな。顔見知りだし放って置いたら何するか分からんのもいるし」

「やっぱりそうですか……」

「だけどこの世界で助けたり狩ったりしないといけない奴らがいるからそれまで離れられないさ」

「…………ありがとうございます」

 

 全部終わったら帰るつもりだったけど、皆この世界に来てるかもしれない。

 後々どうするか考えておこう。

 

「好きな道を選んで良いですからね。私らも多少強いので御安心を」

「ありがとう」

 

 なんか離れられなくなってきたじゃないか。

 頼もしいぞ。

 

「ところでローナ」

「なんです?」

「歳いくつだっけ?」

「14s…………あ、一昨日で15歳になりました」

 

 

 




★緑化運動《グリーンランド》
・植物を操作したり、オーラを消費すれば植物の合成や改造をする能力。特質系。
・前の世界では食料不足を解消したり、綺麗な花や虫取り用の植物を作ったりして莫大な富を築いた。

バイオプラントと大体同じ。


★建御雷《クイックボルト》
・反射神経を強化する能力。強化系。
・使用時、オーラを3倍程消費する。


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