念能力者の英雄譚   作:煽りイカ

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第69話

「あれ? 奇遇?」

「時計の勇者ハットだっけ?」

 

 今海鮮丼屋の店で昼食をとっていたら、さっき城に乗り込んできた奴がいた。

 

「ここの海鮮丼屋はオススメなんだよね。アルコイリスから魚を今日取れたのを輸入してるって」

「へー」

 

 いいよなぁ。

 新鮮だな。

 

 鮪や鮭の刺身、イクラが多量に乗っており、適度に甘い醤油が垂らされている。

 

 何故ここの店に入ったかと言うと、客が食べてるのを見て羨ましいと思ったからだ。

 

「ここ技能だけは良いし。面白い物とかもあるから他の勇者もよく来るんだよね」

「勇者との交流とかもあるのか?」

「あるある。たまにアルコイリスのゴドルさんとかライガーフェンに闘技場荒らしに来るし」

 

 やっぱりゴトル達の世界か。

 ミレナリオやベリト、フェムトがいる世界か。

 

 闘技場? 気になる単語だ。

 

「今アギレラさんとかアルコイリスに遠征してるけど遊ばれてるって」

「…………」

 

 アギレラ…………久しぶりに会うなぁ。

 

 味方として優秀…………更に念能力は遠距離最強の一角とか言われてるからなぁ。

 

「飯の時にする話じゃないな」

「そう……ん? アギレラさんと知り合い?」

 

 あ、コイツはアギレラの能力知ってんな。

 

 

 

 ■

 

 

 

 ? side

 

「それではダンジョン【鎧虫の洞穴】に入る!」

 

 そう皆に話すのは騎士団長のホラッタムさん。

 顎髭がクルってしてる筋骨隆々のオジサンだ。

 

 それで僕らクラスはベールラルの隣国にあるダンジョンに来た。

 来たよテンプレ…………普通だったら想像つくよコレ。

 

 まあ…………予測済みだ。

 一応ギルドで情報収集してきたからOK。

 

 どんなエネミーや罠があるのか隅々まで調べた。

 少し散財はしたが、命は一つしか無い。

 

「あ〜あ〜めんどくせぇ」

 

 今発言したのは不良グループのリーダー、北神君だ。

 色々聞いてみたけど何人かの派閥が出来てるらしい。

 

 勇者グループ 12

 不良グループ 15

 委員長グループ 10

 陰キャグループ 9

 

 の四つのグループに別れた。

 

 まず勇者グループから説明しよう。

 剣城君を筆頭に五人が中心に動くグループだ

 このグループが一番総合戦力が高く優秀な組だとか。

 しかし強すぎるせいかイキリ過ぎてトラブル続出し、何かと注意される事が多い。

 

 シュパン

 

 不良グループは男女混合のヤンキーチーム。

 派手で着崩した外見や言動が汚い人間が多く、このチームに雨宮君達が混ざる。

 筆頭の北神君の【重騎士】と【鉄魔術師】。

 鉄魔術とは鉄を具現や操作したり、防御力を上げる事が出来るとか。

 

 ドオオン

 

 委員長グループは女のみのグループ。

 大人しめの人間が集まっており、委員長を中心に行動するグループ。

 委員長こと相田香里さんの【兇賊】と言う職業だが、凄まじく強く、剣城君に勝った事もある。

 能力的にはカリスマ性と凶悪なナイフ術、あと逃げ足の速さってのもあるとか。

 

 ザシュ

 

 陰キャグループは文字通り陰キャ。

 真中慎介君率いるオタクチームで、あまりコミュニケーションを取れないのが特徴。

 筆頭の真中君の【ものまね師】と【学者】、能力は技術や魔法を模倣する事が出来、武器のセンスもあるし、属性も全部持ってる。

 学者は高速・並列思考や記憶力アップ。

 

 後に気づいた事だけど、加護は自分の個性や趣味特技に反映されるらしい。

 

 その証拠に北神君の実家は金属加工の会社で、たまに手伝ったりしてたとか。

 真中君は学力の成績は1番だし、【学者】が出たのだろうか。

 

 ん? 相田さんは【兇賊】って禍々しい加護なのに本人は大人しいんだよな…………そこまで凶暴に見えないんだけど。

 しかもその周りの人間も【盗賊】が多い…………なんでだろうか。

 

「お、おい……草野?」

「ん? なに崎田君」

「お前考えながら魔物倒せんの?」

 

 へ? 

 

「別にタイミング合わせて斬れば楽だよ」

「…………」

 

 別に難しくないよ? 

 お、他の奴らも戦ってるな。

 

 そういえば崎田君の加護は【土魔術師】。

 祖父母が農家で、野菜の事は詳しいとか。

 

「きゃ!!」

「危ない乃々華!!」

「おい、不注意だぞ橋平!」

「待て、そこまで怒るな雪菜。無事なんだから良いだろ?」

「そ、そこまで言うなら」カァァァ

 

 凰隆寺さんって剣城君の事好きなんだね。

 

「オラオラオラァ!!」

 

 北神君が金属物質を具現して放ち、猫のような魔物を倒している。

 

「…………」シュッシュパン! 

 

 相田さんがコウモリのようなのを切り裂く。

 

「…………」ドパァン

 

 真中君が特注した魔法武器で相手を斬る。

 剣にもなるし槍にもなれるとか、ボウガンのような形態にもなるとか。

 

「こんなの楽勝だぜ」

「本当にねwww」

 

 いやいや何言ってんの? 

 ここまだ1層だけど。

 

 全部で百層あるって。

 

 

 

 ★

 

 

 

 そして10層目。

 

「よし、今回の訓練はここまで!」

『ええ〜!』

 

 そりゃそうだろ……体力とかの問題もあるし、ここら辺で引くのが正しい。

 夜になったら魔物がもっと出てくるらしいし。

 

「あ、何これキレイ」

「ダイヤモンドかな〜」

 

 ん? 壁に宝石が突き出てる。

 

 …………あ! コレはマズイ!! 

 

「これ取れないかな〜」

「ストップ!! 触っちゃダメだ!!」

 

 大声出した。

 確か話に出ていたな……触っちゃダメな系。

 

「ん? どうかしたのか? クサノ」

「多分コレ罠です」

「はあ?」

 

 ギルドでこの事について何人か話していた。

 

「ねえ、確か【地図師】と【盗賊】に罠を見つける事ができる人いたよね? 調べてくれない?」

 

 確か罠感知出来るとか言ってたな。

 それにこんな浅い層で宝なんてある訳ない。

 

「は? 指図すんなよ。カスの分際で」

「え」

「なんで格下の言葉を聞かなければならないの?」

 

 は? いやいや何言ってんのコイツら。

 それで人が死んだら責任取れんのか? 

 

「確かここの層はトラップは無いはずだが……」

「ああ、それは──」

「これ採っちゃおうっ!」

「だから止めて!」ガシッ

 

 触ろうとした女子の手を掴み止める。

 

 話を聞けよ話を。

 運が悪いと全滅するぞ。

 

「最近この迷k」

「何してんだよお前えぇぇ!!!」

「ぅぐ!」

 

 うえ!? 殴られた! 

 

「ったくチキン野郎が……奈津子に触ってんじゃねえ!!」

「吉くん!!」

 

 いってえ……何考えてんだ。

 

「早く掘ろうぜ。土魔法で掘れるか?」

「触っちゃダメだ!」

 

 ピトリ

 

 さ、触っちゃった。

 

「ほら大丈夫じゃねぇかこのチキ」

 

 ピカアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!! 

 

「は? 何だこれ!!!」

 

 召喚陣のような物が僕らの地面に描かれる。

 やっぱり触らない方が良かった。

 

 一応この罠について喋っておこう。

 

「実は最近転移トラップってのが迷宮に現れたんだ。何処に転移するかはランダムらしいってギルドの人が言ってた」

 

 時すでに遅しだが。

 

 

 

 ★

 

 

 

「うぐっ」

 

 くっ、ここは…………何処だ? 

 

「ここは…………もしかして最下層!?」

「はい!?」

 

 嘘だろ……ホラッタムさんが驚愕している。

 ランダムとはいえ何故最下層? 

 

 ドオオン

 

 ん、なんの音……何これ。

 

「ドラゴン!!?」

 

 なんだよなんでドラゴンが出てくんのよ。

 ボスか……ボスなのか。

 

「GUUOOOOOOOO!!」

「全員、撤退!!」

「うおおおおぉ!」

 

 おいおい! 剣城君!? 

 なんで立ち向かってんの! 

 

「遷宮残!」

 

 ドオオン

 

「GUUOOOOOOOO!」

 

 効いてない…………マズイ、怒ってるようだ。

 

「逃げろ、ツルギ!!」

「くっ!」

 

 叶わないと思ったのか逃げるようだ。

 僕も逃げよう。

 

 ドン! 

 

「う!?」

 

 な、なんだ衝撃? 風魔法!? 

 転んでしまった! 

 

 クソ、小さな出口までもう少しなのに!! 

 

 ドドドッ

 

 はああああああああああ!? 

 出口が土で覆われた!!!??? 

 

 ふざけんなよ、まだいるんだよ僕が! 

 

「GUUOOOOOOOO!!」

 

 他に出口は…………無い!! 

 僕に土魔法は使えない! 

 

 コイツを倒すしか無いのか…………クソが!! 

 

「GUUOOOOOOOO!!」

「うお!!?」

 

 突っ込んできやがっ! 

 穴みっけ!! 

 

 ふう、しばらく大丈夫…………ん? 

 …………なるほど、そんなカラクリか。

 

「あ、そういう事か」

 

 だから鎧虫の洞穴か。

 上手いこと名付けんな。

 

 よし、早速トラップだ。

 ドラゴン? は僕を見失ってる。

 

 上手くしかけて…………よし。

 

「おい、こっちだ! クソムシ!」

「GUUOOOOOOOO!」

 

 よし、突っ込んでくる。

 コイツ行動パターンがわかりやす。

 

 タイミングよく…………スイッチオーン! 

 

 ドカアアアアアアン

 

 炎魔法をしかけて炸裂させた。

 お、ラッキーひっくり返った。

 

「行くぞクソムシ!」

 

 そうして僕はお腹の急所らしい所へ、

 

「ツヴァイト・フレアブレード!!」

 

 ぶっ刺す。

 頼む、終わってくれ!! 頼む! 

 

「GUUOOO!!」

 

 バタン

 

 首が倒れる。

 …………勝った。

 

「勝ったああああああああ!」

 

 このドラゴンのカラクリが分からなかったら危なかっただろう。

 

「まさかコイツが虫だとはな…………」

 

 その通り虫に近い生き物であった。

 見た目ドラゴンで硬そうな鱗で覆われていたが、穴の中に入ってたら…………お腹に口が見えたのだ。

 確か偽の頭を持つ虫がいたはずだ。

 

 実際、剣城君が攻撃しても別の方向を向いてたし。

 頭は動くけど別物なんだな。

 

 それで口が近くにあるんで、脳に近いかなと思いそこを炎のブレードで攻撃。

 賭けは勝った! 

 

 あ、なんか緊張が途切れ、疲れたのか眠くなってきた…………。

 モンスターはポップしない……よね……眠く。

 

 

 ★

 

 

『やあ、こんにちは! 君が迷宮踏破者だね!』

 

 ん? なんだここは? 

 真っ白な世界…………どこ!? 

 

『ああ、君の夢の中だよん。ちょっと話しかけてるんだ』

 

 誰!? 何の用!! 

 

『いや、悪意は無いよ? 敵じゃないからね』

 

 …………。

 

『とりあえず説明するよ。迷宮踏破おめでとう。君はとある力を持つ者に選ばれた』

 

 力を持つ者? 

 ありふれ系でよくあるテンプレか? 

 

『ああ、制限があったから12くらいしか貯められなかった……もっと欲しかったけどね。私のとある憧れの人間と同じ力さ』

 

 …………。

 

『その力を君に渡す。それで波を打倒してくれ』

 

 その力って何? 

 

『ん? まあ読んでからのお楽しみね? しばらくは数個くらいしか使えないけど』

 

 ああ、うん。

 

『でも君大変だね。周りがクソ転生者だし。幸い転生者にはこの迷宮はクリア出来ない仕組みにしてるんだけど』

 

 !? 転生者のこと知ってんのか! 

 

『そりゃそうだよ。数百年前からいるし』

 

 まあそりゃそうだよな。

 根底から崩した方がいいし、長い時間かけた方がいいかも。

 

『この力の事を詳しく知りたかったらアルドミティアに行ってみて。結構今は繁栄されてると思うから』

 

 アルドミティア? 初の国だな。

 

『とりあえず体を迷宮の1層に送っておくよ。多少の装備と金貨15枚くらい持たしておく……ご褒美だ』

 

 ありがとうございます。

 波を打倒するため善処します。

 

『よろしい。気をつけてね』

 

 

 

 ★

 

 

 

 さて、迷宮の外へ戻ってきたけど……今は朝。

 一晩過ぎたらしい。

 

 僕らが泊まってた宿に着いた。

 

「あれ? 皆いないの?」

 

 どーゆー系? いないの? 

 

 聞いてみたけどまだ戻って無いらしい。

 僕は早く帰ってきたみたいだった。

 

 グゥ

 

 お腹すいたな。

 多少腹ごしらえしたら迷宮に行こ。

 

 帰って来たら僕の事はどういうんだろか。

 

「何食べようかな…………」

 

 金はある。

 肉行くか、マンガ肉とか1度食べてみたい。

 

 

 

 ★

 

 

 

 3日後。

 

『………………』ザッザッザ

 

 あ、待ち構えていたらクラスの人間がやっと出てきた。

 みーんな目が暗い。

 

 3日経てば疲労困憊だろう。

 

「あ、あの何かあったんですか?」

 

 守兵がホラッタムさんに聞く。

 確かここに入った時にいたな。

 

「1人死んでしまった…………」

 

 マジか…………誰が? 

 

「草野君…………」

「アイツ……軽率にトラップなんかに触るから」

「罠って事も確認しないで」

「責任感じてドラゴンの足止めなんかしやがって…………」

「しかも土魔法で出口を塞いで……」

 

 は………………はい? 

 

 え、待って待って? 

 僕のせいにされてる。

 

 嘘だろこのクソ転生者達。

 あと誰だ? 風魔法放ったの。

 

「全員!!」

 

 何を言う気だホラッタムさん。

 

「クサノは愚かなやつだったが……勇敢なやつだった!! 私達は忘れない! 波を打倒する事が供養になる!!」

「草野! ぜってぇ波を打倒するからな!」

「草野君……私負けないから」

「仕方ない。弔い合戦してやるか」

「ヒヒヒ、しょうがねえな」

 

 えー。

 僕が死んだことにされてる。

 

 愚かなやつ? 誰の事? 

 そろそろネタばらししようか? 

 

「草野! お前の死を無駄にしない!」

「僕死んでないけど?」

『!!?』

 

 !!? じゃねえよ。

 

「あれ? どうしたの?」

「そんなに驚いて」

『…………』

 

 ご本人登場です。

 あれ? 嬉しくないの?

 

「な、なんでいるんだよお前…………死んだんじゃ」

「ほう、どうやって? ドラゴンは倒したけど?」

「は? どうやってもお前が倒せるはず無いだろ!」

「だったら? もう既にここにいるだろうし、転移のゲートがあったからすんなり戻ってきたし」

 

 ドラゴンを倒すしかなかった……誰のせいだ? 土魔法使ったのは。

 

「ああ、反論するけど。僕は軽率じゃないし日頃の行いは悪くない。土魔法の適正は無い……誰だろうねやったの」

『…………』

 

 顔が青い人間が数人。

 誰か知らんがやったことは殺人未遂であり、人を陥れる行為だ。

 

「疾風斬!」

「サイレンス!」

「金剛無常衝!」

「…………」ドゴォ

 

 ドオオオオオオオン! 

 

 は…………なんで…………殴ら……れる? 

 

「このクズめ! 勝手な行動をしてなんだ偉そうに!」

「てめぇのせいでどんだけ嫌な目にあったと思うんだ!」

 

 え……僕……なんで……危険を避けられるよう…………に頑張って……たのに。

 意識……が。

 

 その後、罰として装備が没収されて売られた。

 金貨は無事だったのだが。

 

 抗議しても無視され殴られるばかり。

 

 金貨を取れたし、もうそろそろこの国から逃げよう。

 無断でね。




このざまぁはまだ先です。
アルドミティア編が終わったらやります。

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