念能力者の英雄譚   作:煽りイカ

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第72話

 さてと、情報を整理しよう。

 

「まず球の勇者。変な事は起こってないらしい…………王様は人格者だ」

「そうか。勇者とか召喚して陰謀で殺されるとかよくあるしそこは安心」

「そして十手。この勇者はあまり知らないらしい。勇者について何か揉めてるのは分かるとか言ってるが…………」

「なんか問題起こしたのか?」

「さあな…………いつもこの国は問題起こす」

 

 情報を聞いたところそこまで進展する情報は無い。

 ただ十手はあやふや。

 

 傘下の国以外の事は知らないのは不思議じゃないが。

 

「とりあえず進もう」

「賛成です」

 

 多少の情報はわかった。

 今は【アルコイリス】に。

 

「この世界にも問題起こす国とかあるんだな」

「ん? そー言えは他の異世界でも勇者やってたって言ってたって聞いたが」

「まあな。少し色々あってな」

 

 これまでの話。

 勇者から召喚されここまで来るまでの物語を。

 

「そっちも波の最中で尖兵共が攻めてくるのか」

「そっちも?」

「ああ。いつも返り討ちだがな…………」

 

 ん? ヒミコがマルシダスを見たと言っていた。

 

「そー言えばミレナリオが波でこっちの世界きたけど」

「は? マジで? あまり攻めるのは問題だから可能な限りやめようって話になってたんだが…………」

「アイツめ…………ってかゴドルとかベリトとか波で攻めてきたぞ?」

「初耳なんだが…………まさか俺ハブられてた?」

「あら? 自分は初耳だ」

 

 おいおい。

 まさかドクダンだったのか? 

 

 問題あり過ぎだろこの世界!!

 

「ってか侵入した時点で敵対行為でしょ」

「まあ今不可侵してるから攻められ無いし」

「不可侵?」

「ああ、ウチの領地にミレナリオとフェムトが来て不可侵協定結んだんだ」

「待て、それも初耳」

「自分も初耳」

 

 え、アギレラ達も知らなかったの? 

 

「ちょっと【ライガーフェン】と【アルコイリス】に色々言わなきゃならんな」

「普通耳に入らない?」

「入らなかった。多分ヤツらは後で言うだろ」

「だがまあ戦わないんだし。ポジティブに行こっか」

「だな」

 

 まあ本当の敵は…………クソ女神だからな。

 勇者同士の戦いでは無い。

 

 最悪…………波を止められなかったらこの世界とかに移民させるか。

 絆達の世界と融合したらゲームオーバーなんだし、こっちに来た方がいいかも。

 

 でも移民難民ってのは凄い難しい問題なんだよなぁ…………受け入れ国の犯罪率とか上がるって聞くけどさ。

 YouTubeで移民難民の動画あったけど…………元いた住民が殴られてたし、元々住んでたのに肩身の狭い思いをするとか。

 

 いや、ネガティブ止めよ。

 

「この肉うめぇな」

「ああ、いい肉持ってやがった」

 

 あ、戦利品を盗賊から貰ったのだ。

 肉とか貴重な石とか。

 

「石とか何か作れんの?」

「やっぱりストーンアクセサリーかな? 色々組み合わせると効果が違うんだ」

「へぇー」

「物凄く貴重な石だと死者蘇生が出来るらしいぞー」

「………………ん?」

 

 …………マジで? 

 

「どうした?」

「死者蘇生?」

「まあ条件は付くぞ? 15分以内で寿命では無い事だ」

 

 え…………この世界ってザオリクみたいな道具ってのもあるんだ。

 もしかしたらヤバい技術とかあるかも。

 

「なあ、もしかして異世界言語理解とかある? 読むやつとか」

「ありますよ?」

「え」

「貴重な霊薬だし異世界旅行する人間は少ないからな…………あんまり使わんが」

 

 ぴえん。

 この世界ヤバくね? 

 

「そっちの世界の事も教えろよ」

「分かってるよ。んじゃSPが回復する魂癒水ってのは?」

「「は?」」

「ん」

「SPって自動回復なんだが」

「二三個持ってるからやろっか?」

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 雪丸side

 

 あークッソ! 

 せっかく謎の声のやつから装備貰ったのに奪われた。

 

 女王様曰く、他の人間の方が危険が多いからだとよ! 

 ダンジョンで危険な目にあったのにさ。

 

 だが金貨15枚は無事だ。

 元々借りてた鎧に隠してたんだ。

 

(今更だけどこの国はおかしい。さっさと逃げてゼルトブルかメルロマルクに行こう)

 

 なんで勝手に召喚しておいてこの待遇なんだ? 

 あとクラスのやつの素行もおかしい…………僕の事が邪魔なのか? 

 

(ん、串焼き一本が銅貨5枚か)

 

 リュート村で泊まるのに銀貨1枚で大人は生きるのに20枚程。

 多分100円=銅貨1枚か? 

 

 普通の焼き鳥だったら百円二百円くらいだと思うけど。

 5枚だし500円? 物価高くね。

 

(あ、そー言えば。女王とその周り…………豪華だったな。ってか他の召喚されたのは金貨を貰ってるらしいし)

 

 あからさまにヤバい理由のクラス転移だ。

 

 修練にはサボりまくりでダンジョンで痛い目に会うのに…………僕は報われないか。

 

 さて、下見をしたし帰るか。

 

「そこの御仁。良かったら占って見ないかね?」

「?」

 

 占い師か? 

 水晶玉があるし雰囲気出てる。

 

「へー占い師か〜」

「この国は荒んでるのでな……迷えるのが多いのよ」

 

 荒んでんのね? 

 分かるわ。

 

「僕がやること。何か当ててみてよ」

「ふむ…………脱走かの?」

「…………脱走? なんの話ー?」

「分かっておるぞ。異界の人間よ」

「!」

 

 バレてたか。

 

「信用出来そうだね。だけど漏らしたら?」

「分かっておるわい! 守秘義務じゃ」

 

 分かってるならよし。

 

「んで?」

「暇じゃし占おうかの? 銀貨1枚での」

「いーよ。ホイッ」

 

 この前冒険者ギルドのクエストで貯蓄は少しあるのだ。

 当てたんだし上手い占い師だと思う。

 

 んで……水晶玉に手で力を入れ始めた。

 

 一分後。

 

「んんっーヤバいの」

「…………と、言うと?」

「この国にいると不幸が起きるぞ」

「ですよねー」

 

 まあそれは誰でも予想出来んだろ。

 

「脱走するなら波の際に逃げるとええ」

「なるほど……良い案だ」

 

 確かにごたついてるしワンチャンある。

 

「その代わり…………この国の貧民街には入るなと結果が出とる」

「貧民街?」

 

 スラムだよな? 

 確かにヤバい雰囲気とかありそうだけども。

 

「入ったら絶望しか無いと思った方がええよ?」

「?」

 

 何があるんだよスラムに…………追い剥ぎとかか? 

 それが絶望? 

 

「でも上手く逃げても絶望しても、最後はそれがチャラになる程の幸せが舞い込んでくるともある」

「??」

 

 なんだろ? 

 

「ともかく、スラムには入るな。分かったか?」

「わ、分かった。気をつける」

 

 

 

 ★

 

 

 

 シスターらしき女性から頭を下げられる。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 んでだ。

 僕は孤児院の方でクエストを受けた。

 

 クリアしそのまま持って行き薬草を渡す。

 

「おにーちゃんありがとー」

「はい、おはなー」

「ありがとー」

 

 へへっ、良いってことよ。

 報酬はギルドから貰ってるが…………ちょっと少ないしリスクあるから冒険者は受けないらしいクエストだった。

 

 なのでギルドポイントが増量されてたので受けたのだ。

 

「少なかったけどポイント多いな」

 

 一応他の国でもクエストとかやろうかなと思っている。

 クソの波の尖兵達とは付き合わないが。

 

 さて、報酬は奪われんように隠してっと。

 

 ワアアアアアアッ

 

 ん? なんだなんか集まってる。

 ちょっと覗いてみよ。

 

 ステージの上に…………奴隷? 

 

 あ、これ奴隷販売所かな? 

 ボロボロの服を着てる。

 

「はい! 最後はこの汚らしい雌犬だぁぁぁ!!」

 

 なんか…………ゴミを頭にかけられたようだ。

 こっからでも臭う。

 

「それじゃ初めよっ!! 金貨1枚から!」

「いらねーよこんなクセェ女!」

「さっさと首を跳ねろぉ!!」

「首跳ねるのを楽しみにしてたのによぉ!」

「殺ーせ! 殺せ!」

 

 まじ、これ異世界だよなぁ。

 見せしめのかよ…………趣味悪い。

 

 確か処刑って見せしめとかショーであるって聞いた事があるような。

 

 隣に大きい斧を持った処刑人が佇んでる。

 

「ん、あっ! 女神に選ばれた人間だ!」

 

 会場の人間がこっちを向く。

 

 …………ん? 知ってんの? 

 よくもまあ覚えてんな。

 

 ちなみに女神の事は話しても破裂は大丈夫らしい。

 女神に選ばれたって話だしその方が尊ばれるだろう。

 

「…………」ウルウル

 

 こっち見るなよ。

 これ助けた方が良いのか? 

 

「いいですねー!! 無いですねー! 処刑でいいですねー!!」

「…………」ウルウルウルウル

 

 助けよ。

 そんな眼差し受けたらな。

 

「よし、金貨1枚だな。買った!」

『!』

 

 ザワザワ

 

 やっぱり斬首を見に来た人が多いんだな。

 買ったから予想外だからとか。

 

「おい、空気読めよ!!」

「そーだ! そーだ!」

「それが楽しみだったんだ!!」

 

 まあ処刑がガス抜きになってんのは知ってるけど。

 

 僕は…………目や口で助けを求めても誰も助けて貰えなかった。

 クラスで殴られてもみんな傍観だ。

 

 この女の子の気持ちが分かるのだ。

 

「く、わかりましたよ!」

 

 僕は奥に行き、奴隷紋に血を垂らす。

 

「はい、金貨1枚を。奴隷紋の手数料の銀貨1枚!」

「どうぞ」

「ふん!」

 

 やっぱり機嫌悪そうだなぁ。

 処刑の邪魔しちゃったし。

 

「…………」

 

 この娘をどうするか……だな。

 

 やっぱり逃げる方針は変わらないし、一緒に冒険者にしてレベルを上げて逃げるとしよ。

 無理だったら置いてく。

 

 一見暴君かもしれない。

 尚文と変わらないがここは異世界。

 

 裏切られるリスクはあるが…………その分リターンはあるはず。

 奴隷紋はある。

 

「さ、行こう」

「…………」

 

 まずは風呂入らせるか。

 

 


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