Force Detonater   作:世嗣

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個人的なストライカーのイメージです。


陸のストライカー

 その日、三課の空気は一変していた。

 

「クイント、少し打ち合わせしておきましょう」

 

「そうね。私のデスクでいい?」

 

「いえ、少しフォードの調子を確かめときたいの。第三会議室にしましょう」

 

 普段は和かな笑みを絶やさないクイントも今日ばかりは表情を鋭くして、メガーヌと真剣に話し合っている。

 

 その他三課の面々も互いのパートナーと熱心に話し合いながら、自身のデバイスの調子を確かめたり、何やらモニタを穴が空くほど見つめている。

 

 その雰囲気はセルジオとなのはの二人も例外ではない。

 いつもはデスクで事務仕事をするか外回りをすることの多いセルジオだが、銀色の籠手型デバイス『ゼファー』のプログラム面と睨み合い、術式を細かくいじっている。

 

 そんなセルジオの隣でなのはがそわそわとした様子で辺りを見回す。

 

「皆さん凄いやる気だなぁ」

 

「そういや高町は初めてか」

 

「うん。クイントさんからお話は聞いてたけど、こんな感じだとは思いもしなかったかな」

 

「この日だけはみんなピリつくんだよなぁ」

 

 しばらくしてゼファーの術式構成が決まったのかホログラムを消すと、籠手を陸の茶色の制服の下に装着する。

 

 そして、椅子に座ったまま背を伸ばして大きく伸びをして肩を回しながら息を吐いた。

 

 なのはと違いセルジオは初めてではないがどうやら少しばかり緊張しているらしかった。

 

 緊張感の走る三課の扉が開かれて、局員の一人が顔を出した。

 

「おーい、そろそろ時間だぞー。いい加減悪あがきはやめたまえ」

 

「るせーい、この最後の足掻きがあの人に触れるかどうかをわけるんじゃい」

 

「目標低いなぁ」

 

 呆れたようにドア口から言った局員は他のメンツにぶーぶーと文句を言われながら出て行った。

 

 三課の局員が、行くかー、とか、やってやるぜ、とか、それぞれの抱負とやる気の言葉を呟きながら足を動かし始める。

 

 それに続くようにセルジオ達も立ち上がって今日の目的地を目指して歩き始めた。

 

 三課の廊下をしばらく歩くと、クラナガン郊外の廃棄都市をそのまま切り取ってきたかのような、そんな部屋に辿り着く。

 

 以前、セルジオとなのはがコンビを組んだばかりの頃に使った訓練室の一つである。

 

 この訓練室。実際はもっとのっぺりとした無機質な部屋なのだが、管理局の技術部が結界魔法を応用して作り出したもので、擬似的にビルや家屋、自然環境まで再現できる優れものだ。

 

 そんな部屋の中で一人、無骨な槍を片手にした大丈夫が佇んでいる。

 

 ごくり、となのはが生唾を飲み込んだ。

 

「高町」

 

「なに、セルジオくん」

 

「今日はあんまり指示は出せないかも知れないが、頼むぞ」

 

「うん。わかってる。そういう、相手だもんね」

 

「ああ、なにせ俺たちが相手にするのは──」

 

 セルジオが頰に汗を流しながら、無理矢理に笑ってみせる。

 

「ゼスト・グランガイツなんだからな」

 

 男が、地上本部最強とも呼ばれることのある『ストライカー』級魔導師、『ゼスト・グランガイツ』が訓練室に三課の戦闘員が全員揃っていることを確認する。

 

「来たか」

 

「はい、ゼスト・グランガイツ隊長、三課戦闘員総員揃っています」

 

 ゼストが声をかけると、他のメンバーを代表しメガーヌが答える。すると、全員が一糸乱れぬ敬礼を返した。

 

 それを見てゼストは薄く笑みを浮かべると、槍を手の中で軽く回してその切っ先を自身の部下達へと向けた。

 

「全力で来るがいい。私は容赦も手加減も一切しない」

 

 今日は、三課の総員訓練日。現場に出ることがメインの航空魔導隊三課の数少ない、模擬戦が行われる日。

 

「お前達の力、見せてみろ」

 

 数少ない、ゼストと全力で刃を交えることのできる日であった。

 

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

 

「ぜ、ぁぁああっ!」

 

「踏み込みが甘い。剣はふり終えた後の隙が大きい。次の一手まで見ろ」

 

「あり、がとうございます……」

 

 巨大な両手剣を振り回した陸士の一撃を槍で滑らせるように弾くと、ガラ空きになった腹部へと助言とともに蹴りを叩き込んで吹き飛ばした。

 

 その隙を狙うようにして頭上から雨の如く浴びせられた速射弾を加速魔法を瞬時に発動する事でかわす。そして、魔力で強化した槍で空中を陣取っていた空士の一人を叩き落とす。

 

「いい連携だ。しかしワンパターンな速射弾ほど避けやすいものはない」

 

 爆発したかのような音ともに空士の体が叩きつけられて壁際まで転がって動かなくなる。

 

 空中で槍を握り直すゼストの前に青色の魔法式が書かれた帯のようなものが出現する。

 

「一手ご指導お願いしますッ!」

 

「クイントか」

 

 青色の帯、クイントの先天性技能である『ウイングロード』の上をローラー型のデバイスで疾走しながらクイントがゼストに肉薄していく。

 

 クイントは他の魔導師のように自在に空を駆ける能力を持たない。しかし、この空に地面を作る『ウイングロード』こそが、彼女を陸士でありながらも、『航空』魔導隊のフロントアタッカー足らしめるのだ。

 

「リボルバァァァァ! ナックルッ!」

 

 長い髪をはためかせながら振るわれたクイントのリボルバーナックルをゼストが槍で受けると、辺りに甲高い音が響く。

 

 鍔迫り合う槍とガントレット。しかし、それも一瞬のこと、次第にゼストの槍にクイントの拳が押し込まれていく。

 

「いい一撃だった」

 

「お褒め頂き恐悦至極! でも、これじゃあ終わりませんッ!」

 

「む?」

 

 がしょん、とクイントのリボルバーナックルがカートリッジの空薬莢を吐き出すと、ガントレット付属の回転機構(ナックルスピナー)が勢いよく駆動をはじめる。

 カートリッジシステムのブーストがかかったクイントの拳が勢いを取り戻し、そこに螺旋回転のエネルギーが加わる。

 

 ふ、とゼストは薄く笑みを見せる。

 

「大した手だ。俺でも力負けしそうだ」

 

「それは、どうもッ!」

 

「だが、まだまだだ」

 

 ズ、とゼストが突如ウイングロードを踏みしめると、そのままゼストの足が貫通してウイングロードを粉砕する。

 

 蹴った? 魔法を使った? 否、否。

 

 ただ、ゼストは()()()踏み込んだだけだ。

 

「嘘ぉ?! これ数百キロの物でも耐えられるのよ?!」

 

 驚きの声を上げるクイントが体勢を崩して落下していくのを、ゼストがとどめを刺そうと槍を振り下ろして、その間に黒い影が割り込んで来る。

 

 その影は槍をその身で受けても傷つくどころかひるむ様子も無い。

 

「お前は、メガーヌの召喚獣の……」

 

「ーーー」

 

 ゼストの攻撃を受けても傷つかない黒光りする甲殻。魔力刃にコーティングされた刃のような腕部。どこか甲虫を思わせるような羽。四つの複眼はゼストからひと時も逸らされない。

 

「俺の槍が効かない、か」

 

「ーーー」

 

「面白い」

 

 ゼストの槍と召喚獣の刃がぶつかり、弾かれ、そしてそのまま刃の応酬を始める。

 

 その間に空中の無防備なクイントをメガーヌが回収、自分の側まで召喚魔法を応用した転移を行った。

 

「よし、フォード、そのままお願い」

 

「ひー、今のは死ぬかと思ったわ……」

 

「いつまでも呆けてないでさっさと行く。フォードだっていつまでもは抑えておけないわよ」

 

「オーケーメガーヌ!」

 

 クイントが再びウイングロードを発動して、召喚獣──フォードと戦うゼストの背後に回り込んで行く。

 

「一撃必倒!」

 

 クイントのリボルバーナックルがカートリッジを三つ吐き出して爆発的な勢いを発生させる。

 

 狙うはゼスト。完璧に魔力を通し、一撃での昏倒を狙う。

 

「む──」

 

 ゼストが背後のクイントに気がつき迎撃に動こうとしたのをメガーヌの指示でフォードが邪魔し、さらにそこに後方からのメガーヌの紫の誘導弾が襲う。

 

「リボルバァァッ! ブレイクッ!」

 

 四方を誘導弾に囲まれ、背後にクイント、正面に槍の効かぬ召喚獣。最早これで決まったかと、思われた瞬間、ゼストの姿が搔き消えた。

 

「フルドライブ」

 

 起動句は短く、されどその効果は絶大。一人だけ時間から切り離されたかのような感覚の中、ゼストがフォードの懐に潜り込み、腕を掴んで、体術を使って投げ飛ばすように振り回す。

 

 フォードの固い甲殻はメガーヌの魔力弾をまとめて弾きながら、背後にいたクイントに叩きつけられる。

 

 上から叩きつけられたフォードのせいでクイントがバランスを崩して、サンドイッチのようにウイングロードとの間に挟まれてしまう。

 

「──破ァッ!」

 

 裂帛の気合と共に、槍を握らない方の腕を掌底でフォードの背中に叩きつけた。魔法に頼らない技術を用いて使われたその一撃は、フォードの固い甲殻を通り抜けて、内部に衝撃を流し込みながらそのままクイントにまで確かなダメージを与えて、ついでと言わんばかりにウイングロードを粉砕した。

 

「ーーー」

 

「け、ほ……」

 

 青白い光に包まれながら撃墜される二人には目もくれず、ゼストが加速魔法を使用、瞬時にメガーヌの前に躍り出た。

 

「良い召喚獣だった」

 

「そう言っていただけると、主人冥利に尽きます、ねっ!」

 

 メガーヌが反射的にチャージ時間の短い砲撃を放つが、ゼストはそれを槍で切り裂きながら、槍の刃の平の部分でメガーヌを殴り飛ばした。

 

 さて、次は、と辺りを見回したゼストの体が、拘束されたように動かなくなる。見れば、桜色のバインドが右足首と左手首に現れていた。

 

「これは……」

 

 少しだけ目を見開いたゼストは、すぐに背後に槍を振るい、そして案の定短距離転移(ショートシフト)で現れたセルジオの槍を受け止めた。

 

「相変わらず規格外……!」

 

「お前を鍛えたのは俺だ。忘れたか」

 

「まさかっ!」

 

 一瞬のうちでバインドをハッキングと腕力の二つの要因で砕いたゼストが、黒いコートを風に揺らしながら襲いかかる。

 

(マルチタスク分割ーーー模倣解析(アナライズ・シュミレート)

 

 セルジオが今までの戦闘経験、あらかじめゼファーに仕込んでおいたゼストの戦闘パターンを、マルチタスクで解析することで、未来予知じみた予測を可能にする。

 

 視認するのも難しい槍をセルジオは先読みでカバー、なんとか受け止める。

 

「随分と腕を上げた」

 

「そうしなければならない理由がありますから」

 

「そうか。──加速機動(ブリッツアクション)

 

加速機動(ブリッツアクション)ッ!」

 

 白光に包まれるセルジオと暁色に包まれるゼストが同時に加速、ビルの間を縫うように飛び回りながら槍をぶつけ合う。

 

「(セルジオくん三秒後、壁を抜いてディバインバスター行くよ!)」

 

「(了解!)」

 

「(あとその先に設置型バインドおいてるから。座標はゼファーに送るね)」

 

 白のコートのセルジオと、黒のコートのゼスト、という対照的な色合いの二人がぶつかり、そして離れて行く。

 

(3、2、1……、ここで敢えて受ける!)

 

 なのはとの念話での情報を元にゼストを指定ポイントに誘導すると、セルジオは敢えてゼストの攻撃を受けて、大きく吹き飛ばされる。

 

 訝しく思ったゼストだったが、視界の端でビルをぶち抜きながら迫って来る極太の砲撃に気づくと、セルジオの行動の意味を理解した。

 

(加速と飛行では俺を振り切れないから、自分を囮に、か。悪くない手だが、連携が甘い。落ちるのが少し早かったな)

 

 ゼストは瞬時に離脱しようとして、またもや体が動かないのに気づいて、なのはのバインドの厄介さを思い知る。

 

(これは、脱け出せん、か)

 

 先ほどのような脆さはなく、今ゼストを縛るのはセルジオが時間稼ぎをした間になのはが作った特別固いバインドらしかった。

 

「ブレイク、シュートッ!」

 

 なのはの声に反応し、ゼストに迫っていた砲撃が炸裂し、辺りのビルを根こそぎぶち壊すような激しい爆発と共に、辺りを桜色一色に染め上げる。

 

「やった?」

 

 サーチャー越しにその爆発を見ていたなのはが一瞬、喜びの声をあげる。なのは必殺のバインドからの砲撃のダメ押しである。あんまりやりたくなかったが、セルジオにどうしてもと頼み込まれたのだから、一定の成果が見込めてなければ困る。

 

「砲撃する際は、自分の場所が割れることも考えろ」

 

『Master!』

 

 突如聞こえたレイジングハートからの警告に、なのはが疑うこともなく空へと逃げる。

 

「よく逃げたな、いいデバイスだ」

 

「ぜ、ゼスト隊長?! なんで?」

 

『Probably it moved by short-range metastasis.

 Mr Sergio seems to have been used as well.』

 

「そ、そっか。ゼスト隊長はセルジオくんのお師匠さんなんだもんね……」

 

 槍と加速魔法を使うゼスト。それに師事する形で似たバトルスタイルを取るセルジオ。ならば同じように短距離転移も使えても不思議ではないのかもしれない。

 

 だが、どうやら完璧にかわしきれたというわけでもないようで、バリアジャケットの端々が黒く焦げている。

 

(セルジオくんほど上手くないのかな)

 

 そんなことを考えるなのは。

 

「話は終わったな。行くぞ、高町」

 

 ゼストの体が、加速する。

 

 その恐ろしいスピードをなのはは目で追うことはできなかったが、堅固なシールドを張り、その上で誘導弾(アクセルシューター)で動きを阻害することで、なんとか持ちこたえる。

 

(何とか、耐えられはするけど、これじゃあその内削りきられちゃう……!)

 

 なのはが薄く唇を噛む。すると、そのタイミングで割り込んでくる念話が一つ。

 

「(高町、聞こえるか)」

 

「(セルジオくん! まだ落ちてなかったんだね!)」

 

「(何とか、な)」

 

 なのはがマルチタスクを三つ展開、一つをセルジオとの会話に当てる。

 

「(今そっちにゼストさんいるだろ? どんな感じだ?)」

 

「(ちょっとダメージは受けてるけど、物凄く元気、かな。なのはだけじゃ厳しいかも)」

 

「(そうか。俺が一撃デカイの当てられれば、戦局はひっくり返ると思うんだがな……)」

 

「(何か切り札があるの?)」

 

「(一応な。たぶん公式では使ってないし、ゼストさんも知らないんじゃないかな)」

 

「(それって、なのはが一瞬隊長の足止めできたら使える?)」

 

「(え、まあ一瞬あれば使えるが。おい、何するつもりだ)」

 

「(一瞬、動きを止めるからセルジオくんは転移してきてね!)」

 

 最後は無理やり言いくるめて、なのはが念話を切る。

 

「レイジングハート、この前考えた、アレ、使えるかな?」

 

『I only follow what my master wished for』

 

「よーし、じゃあやってみよう!」

 

『Axel fin』

 

 なのはは薄く笑みを浮かべると、一旦シールドを解除し、ゼストから加速しながら距離を取った。

 

 だが、基本的に空中で飛行、堅固な防御とバインドを併用して、砲撃で倒す、という純魔導師タイプのなのはが、本職のゼストから逃げ切れるはずもなくすぐに追いつかれてしまう。

 

 ゼストが槍を振るうのに、なのはがタイミングを合わせて盾を発生させる。

 

「ブレイクインパルス」

 

 だが、ゼストはここで、魔法での衝撃を体術を使用して、バリアを通りぬけてなのはに当てる、という曲芸じみた技を披露。なのはの盾に槍が防がれたまま、なのはを撃墜してみせる。

 

「惜しかったぞ。しかし、お前たちは誤射を気にしすぎている。それが隙になったな」

 

「いえ、これで、いいんです」

 

「何……?」

 

「レイジング、ハート」

 

『All right my muster. Buinding shield』

 

 なのはの桜色の盾から、無数の鎖が生み出され槍ごとゼストを空中で固定した。これが、なのはがレイジングハートと編み出した、対近接戦闘型魔導師対策、『捕縛盾(バインディングシールド)』である。

 

 ゼストにかかれば十秒もあれば抜け出すのだろうが、今必要なのはその十秒だった。

 

 セルジオが、ゼストの背後に出現する。

 

「セルジオ……!」

 

「ゼスト隊長ッ!」

 

 セルジオがゼファーを引きしぼり、全力の突きを放とうとして、ゼストがまたもや想像を超えた動きをしてくる。

 

「噴ッ!」

 

 捕縛された槍だけを転移させて、手の中で持ち直すという荒業。それをやってみせたゼストが、カウンターの突きを放ってくる。

 

模倣解析(アナライズ・シュミレート)全力接続(フルコネクト)ッ)

 

 それに瞬時にゼファーの予測能力を発動させて、数秒先の未来を予測、セルジオが見事、槍の柄の部分を掴み取ってみせる。

 

「見事。しかし、これからどうする。この距離では槍は振るえんぞ」

 

「ええ、だから、こうします」

 

 なに、とゼストが眉をひそめる。

 

「ゼファー第二形態(セカンドモード)!」

 

 セルジオが叫ぶと、ゼファーが腕のガントレットから吐き出された機構と合体、変形して槍の柄をそのまま一つの巨大な砲門へと変えてしまう。

 

 陸の変人研究家通称『教授』につくられたゼファー、その第二形態、いわゆる砲撃特化の形態である。

 

 セルジオがガントレットが変形した持ち手を握り、砲門の先をゼストの胸へと向けた。

 

 驚きの色に染まるゼストに、不敵に笑みを返したセルジオが引き金に指をかける。

 

「ディバインカノンッ!」

 

 ズ、と瞬間的にチャージされた砲撃がゼストの胸部に炸裂して、眩い光を放った。

 

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

 

 

「あーーー、あれで負けるとかありえないだろ……」

 

「あれは流石に予想外だったねー」

 

 模擬戦が終了した三課のデスクではセルジオが頭を机に突っ伏していた。

 

「いやゼロ距離砲撃食らってからすぐに反撃するとか……、アレが『ストライカー』か……」

 

「バリア三枚を瞬時に張って、防げなかった分は体術で衝撃を逃がすって、隊長はすごいなぁ」

 

 本気で悔しがるセルジオに、隣で「もうわけわかんねえな」と理解することをやめたなのは。ゼストは魔法とか以前に、なのはの家族のような身体的な性能のおかしさがありそうな気がしていた。

 

「結局今回は、セルジオたちとメガーヌさん達が一番善戦したよなー」

 

「結局俺はいつも通りかすりもしなかったぞ、ホント」

 

「私とか地面に叩き落とされてから記憶が怪しいの。私の恋人ってだれだっけ……」

 

「んなもん、最初からいねえだろ」

 

「いても画面の向こうじゃね」

 

 がやがやと反省会混じりの軽口を叩く三課の扉が開いて、話題の中心の人物であるゼストが顔を出した。

 

「全員起きたようだな」

 

「ぜ、ゼスト隊長! お疲れ様です!」

 

「「お疲れ様です!」」

 

「そう固くなるな。ほら、これは差し入れだ。食べるといい」

 

「わーい、シュークリームだ! 隊長大好きー!」

 

「何人ぶんある? ここは敢えて半分の人間が食えることにしてみようぜ」

 

「じゃあ今日の模擬戦で生き残ってた順番な。ちなみに俺はちょうど半分なので食べれマーース」

 

「おい、俺食えねえぞ、それ」

 

 楽しげに三課で差し入れが配られていると、ちょいちょい、とゼストがセルジオに軽く手招きするのが見えた。

 

 セルジオは眉を寄せながら呼ばれた通り近くによると、ゼストはセルジオを連れて三課のオフィスから出て、背中をドアに預けた。

 

 セルジオが、なぜ二人きりになったのか理解できず、なんとなく頭をかいた。

 

「今日の模擬戦、ヒヤリとする場面がいくつもあった。腕を上げたな」

 

「いや、無傷で勝っちゃった人のセリフじゃないですよ、それ」

 

「それはそうかもな」

 

 ふ、と楽しげに笑うゼストに、セルジオが小さくため息。どうやら師匠をこえるのはまだ遠そうだった。

 

「話は変わるが、セルジオ。お前には確か首都航空隊に知り合いがいたな?」

 

「え、まあいるっちゃ居ますが、それが何か?」

 

「実はあそこから人を寄越して欲しいという申請が来ていてな。それで、お前と高町を送ろうと思うんだが、構わないか?」

 

「別に良いですけど、そんなのわざわざここまで呼び出していうほどのことじゃないでしょう? 何があるんです?」

 

 セルジオが真剣な瞳でそう尋ねると、背中を壁に預けたままのゼストが「察しが良くて助かる」と短く返答した。

 

「これはレジアスから聞いたことだが、首都航空隊の相手にしている、テロ組織と戦う中、お前の接敵した仮称『ガジェットドローン』らしき影があったらしい」

 

「──!」

 

「わかったな。おそらく、そのテロ組織は、俺たちの追っている件と繋がっているぞ」

 

 ゼストがセルジオを見下ろすように見つめる。

 

「セルジオ・アウディ三等空尉、行ってくれるな?」

 

 その問いかけに、セルジオは迷いなく頷いた。

 

 

 

 

 

 

 






首都航空隊という名前に聞き覚えのある人もいるかもですね。

感想評価お気に入り、その他諸々ありがとうです。
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