急に慌ただしくなる三課オフィス。既に昼休憩を切り上げて局員の多くが集まってきている。
ナレーション「取材中に急遽響く緊急出動の警報! 隊長のゼスト・グランガイツによって瞬時に人が集められた!」
険しい顔のゼスト。
「今緊急出動の要請が入った。陸士部隊の一つからだ」
「状況は?」
「屋内立てこもりだそうだ。何人か人質がとられていると」
ナレーション「事件が起こったのはクラナガンのとあるデパートの一つ。そこで違法魔導師による立て篭もりが起こっているのだという」
腕を組んで唸る局員たち。
「立て篭もりだけなら俺たちを呼ぶ必要がわかりません」
「……なんでも、ガジェ──こほん、未確認の機械兵を見たそうだ。それで部隊長から連絡が」
「成る程、急行した方が良さそうですね」
「じゃあ今回はセルジオくん達と、私たちが出ます。AMF下になった時、私の召喚やフォードが役に立つはずです」
ナレーション「未だ事件の概要は掴めていないが、対応が遅れれば大きな被害が出てしまう。直ぐさま部隊長のゼスト一尉の指示で対応部隊が派遣された!」
セルジオが車庫でバイクにエンジンをかけて走り出す。
ナレーション「アラートから30分後、アウディ二尉や高町空曹長、他計四名が現場に到着した」
対応部隊との情報のすり合わせを始めるなのはたち。
テロップ「こういうことはよくあるんでしょうか?」
「そうですね。多い時は週に三、四回ほどは」
テロップ「大変ですね」
「でもそれが私たちのお仕事ですし、市民の皆さんのために頑張れるのは嬉しいです」
ぐっとなのはがガッツポーズを見せると、ちょうど「高町ー」と声がかかり、「はーい」と返事をして駆けて行く。
現地の陸士部隊の一人と何かを話し込むセルジオの顔のアップ。
ナレーション「現場に到着した彼らに与えられた情報は違法魔導師は推定魔導師ランクC以上であり、最悪質量兵器を保持しているとのことだった」
テロップ「質量兵器」。さらに、簡単な質量兵器のイメージ図がいくつか現れる。
ナレーション「質量兵器、それは魔力によるエネルギーを必要とせず敵を殺傷させることのできる武器の通称だ。ここ最近では『火薬』を用いた銃や『爆弾』などを指すことが多い」
映像が切り替わりデパートの全体像へ。
ナレーション「周辺住民はこの事件について────」
デパートを心配そうに見守る市民へのインタビュー。
「さっきまで母と買い物をしてたんですけど、急に銃声がして急いで逃げ出してきたんです」
「酷い話ですよ、ほんと。それに、ちらっと見えたんですけど、年が一桁の女の子まで……」
「早く管理局に解決して欲しいですね」
難しい顔でビルを見つめる陸士部隊の部隊長とセルジオ、メガーヌ。
ナレーション「犯人が人質と共に立て篭もったのはデパート三階のフードコート部分。平時ならば昼は家族連れや恋人達で賑わうそこも、今は人質を閉じ込める檻となっている。対応が話し合われるそんな中──」
窓から魔導師の男が体を出した。
「此方の要求を告げる!」
ナレーション「男が姿を見せた!」
《 中CM 》
CM終了後同じ映像が流れる。
難しい顔でビルを見つめる陸士部隊の部隊長とセルジオ、メガーヌ。
ナレーション「犯人が人質と共に立て篭もったのはデパート三階のフードコート部分。平時ならば昼は家族連れや恋人達で賑わうそこも、今は人質を閉じ込める檻となっている。対応が話し合われるそんな中──」
窓から魔導師の男が体を出した。
「此方の要求を告げる!」
ナレーション「男が姿を見せた!」
「んー、どうしたものでしょうかね」
「普通に考えりゃ少数精鋭での隠密潜入でしょうが……」
「残念ながら、それはちょっとやりたくない手ですね」
部隊長の提案にセルジオが眉をひそめた。
「建物の中のAMFが少し濃い。即座に魔法が使えなくなるほどじゃないでしょうが……ガジェットに見つかれば犯人にはバレる可能性が高い」
「なら当初の予定通り……」
「はい、其方の狙撃手にお任せしたいと思います。犯人が気絶し次第人質救助にこちらが動きます」
「了解です。ウチのエースを待機させときます。まだ犯人に出された時間まで少しありますから……狙撃は次に出てくるであろう十分後にしましょうか」
「では私たちもそれに備えて準備をしておきます」
「はい、よろしくお願いします」
「此方こそ」
最後に互いに敬礼を交わすとそれぞれの持ち場へと戻る。部隊長の背中を見送って、セルジオはふんと呆れたように鼻を鳴らした。
「盗み聞きとは感心しないな、ヴァイス」
「あら、バレてたか」
「俺の十八番の広範囲解析を忘れたか。この距離なら隠蔽魔法使われてもわかる」
「流石だねえ、セルジオ先輩は」
物陰からロングライフル型のデバイスを手にしたヴァイスが出てきてにししと笑った。
「お前ここで何油売ってるんだ、さっさと持ち場に行けよ」
「ところがどっこい、ここが俺の持ち場でね」
「なに? ここにはエースが来ると……まさか」
「へへ、そのまさかですぜ」
信じられないと言った様子で目を見開くセルジオと、少し得意げに鼻をこするヴァイス。
「お前エースを気絶させて成り代わる気か……!」
「そう、実は俺がここの……ってちげえ! 俺がエース! ここのエーススナイパー!」
「嘘をつくな。お前のような人間がエースと呼ばれるはずがないだろう」
「なんでアンタといいみんなやたら俺には辛辣なんすかねぇっ! 俺の実力知ってるでしょう?!」
「そりゃ、実力は知っているが……」
ヴァイス・グランセニックという男はセルジオの後輩だ。一時期チームを組んでいたし、その力量も把握している。
ヴァイスは空も飛べないし、魔力量だって多いわけでは無いが、驚くべきはその命中精度。セルジオの知る限り、ヴァイスに背中を預けて彼がフレンドリーファイアをしたことも、それどころか誤射したことだって無い。
一撃必中。それがヴァイスの狙撃であり、確かにその実力はエースにふさわしいものであると言えた。
まあ、けれどそれがイコールで信頼につながるわけでは無い。
「……本当に?」
「本当ですって! ほんとになんで信じないんすかねぇ!」
「だって、女子風呂覗きの主犯格がエースなのはちょっと……」
「それ冤罪だって何度言えばいいんすかね!」
ただ一つ間違いないことがあるとすれば、セルジオにとって、軽口を叩きあえるくらいにはヴァイスは気の置けない仲だと言うことだ。
三課本部。現場のセルジオから軽い事件の概要と作戦が部隊長であるゼストへと伝えられた。
ナレーション「三課の対応班は、現地武装隊と協力しながら事件解決に当たる。どうやら武装隊の狙撃により犯人を気絶させた後、人質救出に向かうという事になったようだ」
端末からの通信を受けて小さく頷くゼスト。
「わかった。くれぐれも慎重にな」
『了解』
「すみません、グランガイツ隊長」
「どうした」
セルジオからの通信を切ろうとしたゼストに三課に残っていたサブディレクターの一人が声をかけた。
「こう、他に何か声をかけたりはしないんですか?」
「声、とは?」
「なんといいますか、『航空魔導隊三課出動!』みたいな、気合いを入れる感じのやつ」
「いや普段はしないが」
「ということはやる時もある、と」
「……極たまにだ。まさか、ここでやれというのか」
「あ、そうしてもらえたりしますか?」
むう、とゼストが唸る。確かに市民の中には「出動!」的な掛け声はこういった武装隊のイメージとして強くある。
だが、三課は厳密には他の武装隊とは少し違う。一つの事件に全ての人員が動くことの少ない故に、そういった掛け声はしないのだ。
だから、迷う。普段しないことを映像として残していいのか、と堅物のゼストは少し眉を寄せた。
『まあいいんじゃないですか。たまには私もそういうのしてみたかったですし、ね』
『……それで満足していただけるならやっちゃいましょう』
「メガーヌ、セルジオ」
『あ、私たちも声合わせて了解!とか言っときましょうか? なんかドラマみたいでカッコいいですよ』
「……わかった。『航空魔導隊三課、出動』でいいんだな」
「わ、ありがとうございます。じゃあ、カメラ回すんで」
カメラの準備がされる中ゼストが小声で「航空魔導隊三課出動航空魔導隊三課出動航空魔導隊三課出動」ぶつぶつ呟く。
「じゃあお願いします。三、二……」
どうぞ、と手で示されたゼストが表情を引き締める。
「航空魔導隊三課、出動!」
『 『 了解! 』 』
「はい、オーケーです。ありがとうございます」
映像が切り替わりビルを真剣な表情で見上げるなのはの横顔に。その横には槍を手にしたセルジオ、デバイスの調子を確かめるクイント。メガーヌは少し離れた所で部隊長と話をしている。
ナレーション「いよいよ作戦開始まであと一分。現地の武装隊員たちの表情は硬いが三課の面々にはそこまでの強い緊張感は感じられない。彼らは過度な緊張が体の動きを硬くすることを理解しているのだろう。現に今回の突入班の一人であるナカジマ空曹長は──」
デバイスを装着して軽くシャドーをするクイント。
「緊張して状況が好転するなら幾らでも緊張しますけど、現実はそうじゃありません。なら、私たちは市民を助けられるような精神状態を保つべきだと思います。あくまでも緊張は適度に、です」
クイントの姿から再びビルの映像へと切り替わる。
ナレーション「いよいよ男との約束の時間です。果たして彼らをどのような真実が待ち受けているのか……!」
槍を握ってセルジオが小さく息をついた。
「(緊張してる?)」
「(少し、な。まあカメラがいようとすることは変わらない。俺たちは……)」
「(みんなで、市民を守る、でしょ?)」
「(……そうだ。一人だって被害を出してたまるか)」
セルジオはマルチタスクに待機させてある解析魔法を発動させてみるが、やはり薄いAMFでもあるのかイマイチ調子が良くない。
(……なんでこんなとこにAMFのガジェットがいる)
言い方は良くないが、今回の事件はただの立てこもりである。ミッドでは割とありふれた犯罪の一つで、その検挙率は十割に近い。捕まるとわかっているのにAMFガジェットという戦力が送られるのは、正直言っておかしい。
(何か狙いがあるんだろうが……今の俺にガジェットの捜査権はないから考えても無駄か)
ゼファーの平の部分で頭を軽く叩いて思考をフラットに戻すと狙撃ポイントで待機しているヴァイスへと念話を飛ばす。
「(はいよ、何か用ですかい?)」
「(行けそうか? 今回はお前が要だ)」
「(へへ、この程度の距離なら目を瞑ってても当たりますって)」
「(そうか、心配はなさそうだな)」
「(そんな事よりセルジオ先輩もそーんなちっちゃな子にコナかけてないで、ちゃーんと集中してくださいよ?)」
「(勝手に言ってろ)」
ふん、とセルジオが鼻を鳴らす。
「(セルジオ君、そろそろ)」
「(了解です。メガーヌさんは俺たちがマーカーをつけたら……)」
「(人質の転送、でしょ? わかってるわ)」
メガーヌとセルジオが目を合わせて軽く頷くと、あたりがにわかに騒がしくなり始める。男が姿を見せたのだ。
「時間になった! お前たちの答えを聞かせてもらおう!」
男は片手で質量兵器である拳銃を握り、そしてもう片方の腕で小さな少女を拘束して窓から姿を見せた。
「(こちらアウディ。民間人の少女を確認。おそらく人質の一人だと思われます)」
「(了解。三十秒後、グランセニックに狙撃させます)」
「(アウディ了解。突入態勢に移ります)」
軽く頷くとマルチタスクを分割、今稼働している二つの他に、さらに二つの思考を生み出すと加速魔法を待機させる。
短距離転移は今回は使わない。アレは確かに便利ではあるのだが、マルチタスクを全力で使えない今のセルジオの手には余る代物だ。
セルジオが表情を引き締めると、となりのなのは、クイントもデバイスを構える。
(後、十秒)
一秒、また一秒と数えていた秒数が減っていき、そして、ついにゼロになり、あたりに銃声が
「──ヴァイス?」
その状況にセルジオが困惑したように声をこぼして、狙撃ポイントにいるはずのヴァイスの方へ視線を向ける。流石に肉眼では見えないが、解析魔法を使ってヴァイスを認識すれば、何やらぶつぶつと呟いていた。
その言葉を唇の動きを読んでゼファーのシステムの解析にかける。
(ら、グナ……?)
セルジオがその意味不明な言葉に眉をひそめた直後、フラッシュバックする記憶があった。
──あ、ウチのラグナもめちゃくちゃ可愛くなったんですよ! ほら、写真! ね!
──ここの、目のとこなんてそっくりじゃないっすか?
──ラグナは俺の可愛い妹っすよ!
カチリ、と何かがハマる音がした。
「まさか、ヴァイス! やめろ! 撃たなくていい!」
思わずセルジオが大声を上げたが、時は既に遅い。自身の部隊の隊長に急かされたのか、ヴァイスが困惑のまま引き金を引いた。
銃声が、響いた。
ヴァイスのデバイスから射出された弾丸が空を駆ける。
普段のヴァイスならば一撃必中。外すことはあり得ない。けれど、今の彼は普通の精神状態でない。
故に本来なら、窓から姿を見せる男の頭部を狙うはずの弾丸は、僅かにそれて、隣の年端もいかぬ少女へと、運悪く人質になっていたヴァイスの妹のラグナへと向かった。
あ、とヴァイスの口から声がこぼれた。
狙撃手としての感が、この弾丸がラグナに当たるのだと訴えかけてきたのだ。
けれどもうどうにもできない。ヴァイスは既に引き金を引いた。覆水は盆に帰らないように、一度放った弾丸を逸らすすべはない。
ヴァイスの嘆きなど知らぬとばかりに弾丸は、ただ、残酷に最愛の妹への軌跡を描く。
「高町! ワイドシールドッ!」
だが、その現実に割り込む声が一つ。
ヴァイスのデバイスによる銃声が響いた直後、セルジオはなのはに短い声を飛ばした。それ以上時間をかければ間に合わない、と判断したのだ。
名前と、使う魔法だけ、という短い指示。普通ならそれだけで何をしてほしいかなど理解出るはずもない。だが、なのはは、迷うことなくビルの前面に広範囲のシールドを展開した。
弾丸がなのはの桜色の障壁に防がれる。ヴァイスが撃った、撃ってしまった弾丸が空中で弾けた。
直後、その音に気づいた男が銃声によって、自分が狙われていたことを理解してしまう。
「狙撃、だと? そうかクソ、俺をハメやがったな!」
ラグナを人質にとっていた男が、ヴァイスの狙撃に気づいて逆上したように拳銃をラグナへと向けた。
「お前たちは俺の要求を無視した! ならどうなるかはわかってるよなぁっ?!」
男が拳銃を握る手に力を入れて、安全装置を外して引き金に指をかけた。近距離での質量兵器、という暴力にラグナの顔に恐怖の色が現れる。
瞬時にセルジオがラグナを救うための方策を叩き出す。
ブリッツアクション──間に合わない。
なのはのアクセルシューター──指示に時間がかかりすぎる。
メガーヌの召喚──座標がわからないので無理。
クイントのウイングロード──そもそもどうしようもない。
ぎり、とセルジオが歯を噛み締めた。
(やるしか、ない──!)
セルジオが手の中のゼファーを強く握り、脳内のマルチタスクを一つ解放し、ゼファーの演算機能を併用した高速の魔法構築を行う。
(マルチタスク解放ーーー座標演算開始)
セルジオの目が一瞬紅く染まり、それと同時に今までマルチタスク二つによって蓋されていたモノが漏れ出し始める。
「ショートシフトォッ!」
セルジオの存在が三次元平面上から消失、
そして、引き金が引かれる直前、セルジオの体が、
「な────」
「え…………」
男が目を見開き、ラグナが驚きの声を漏らして、ぱん、という軽い音ともに拳銃から質量を持った鉛の弾が飛び出す。
圧倒的な破壊力を持ったそれをセルジオが体で受け止め、容易くバリアジャケットが貫かれて胸に赤を滲ませた。
なのはの眼前からセルジオが消失した。その事に多くの人間は驚いたように目を剥いたが、相棒であるなのはの行動は早かった。
「レイジングハート、エリアサーチ」
レイジングハートを素早く射撃特化のアクセルモードに変形させるとカートリッジを一発分ロード。手慣れた様子でアクセルシューターの魔法式を組み上げると光弾を五つ展開する。
「アクセルシューター、シュート!」
《 Accel Shooter 》
空薬莢が弾き飛ばされるのと同時にレイジングハートによるエリアサーチが終了。セルジオと、その後ろの人質、そして立てこもり犯の大まかな位置をつかんだ。AMF下でなければ完璧な座標を掴めたのだろうが、今は贅沢も言っていられない。
なのはのサポートの魔力弾が空を飛んで壁ごと犯人を弾き飛ばした。遠くからくぐもった呻き声が聞こえたため、おそらく犯人に命中したと思われる。
「クイントさんメガーヌさん! 私はセルジオくんと要救助者の救出に行きます! もし犯人が逃亡した時はお願いします!」
「──ええ、任せて。絶対逃がさないわ」
「助かります!」
頷いたクイントの横でなのはがバリアジャケットの靴部分にアクセルフィンを展開し空を飛んだ。
(ほんとにセルジオくんは……)
先ほど射撃魔法を叩き込んだ場所を目指しながらなのはが小さく嘆息。相変わらず人の事となると自分の事が頭から抜け落ちてしまうのだ、セルジオは。
そうしてなのはがデパートの一室へ向かおうとする途中、視界の端で小さな光が目に映った。
《 Master! 》
レイジングハートの鋭い声に弾かれるようになのはが身を翻すと、白いバリアジャケットの裾をかすめて青白い光線が走った。見ればビルの窓の一室から見慣れた単眼が覗いている。
「ガジェットドローン……!」
なのはの呟きに答えるようにガジェットが機械的な呻き声を上げると、再び単眼にエネルギーを充填する。
そうはさせないとばかりになのはも射撃魔法で迎撃するも、放った弾丸はガジェットの目前と溶けるように消えてしまう。
「──AMF?! なんでこの距離で……まさかっ」
消滅した魔力弾になのはが思わず眉を寄せて、唐突に何かに思い至ったかのように地上へと目を向けた。するとそこには案の定ビルの陰に隠れている一体のガジェットの姿があった。
(二体でAMF濃度を上昇させてる。安易に近づいたら私でも魔法使えなくなってたかも)
危なかった、と独りごちたなのはに向けてガジェットが充填を終えたレーザーを掃射する。もちろんその程度把握していないなのはではない。迫り来る光線をアクセルフィンの操作によって素早く避けてみせる。
そして杖を変形させて今度は砲撃による迎撃を行おうとした瞬間、声が響いた。
「う、わぁっ」
それは三課に密着していたテレビ局のカメラマンとディレクターのものだった。どうやら、なのはの射撃によって事件が終わったと思って勝手に戦闘区域まで入ってしまったらしい。
その二人に、なのはが避けてそれたレーザーが迫っていた。
正直な話なのはの行動には、見事、と言う他無いだろう。AMF下のため強度の低下の恐れがある障壁ではなく回避を選択する頭の回転の速さも、そしてすぐさま迎撃に移ろうとする姿勢も誰もが持ち得るものでは無い。
故に彼女の行動には全く問題が無い。なのはの何が悪いと言うことはない。
ただ、
三課も、陸士部隊もテレビ局には作戦の詳細は話していない。そんな暇もなかったし、後日データ化したものを送る予定だったからだ。
だから、彼らは敵は違法魔導師の立てこもり犯以外にもガジェットがいることを知らなかったし、そのせいで事件が終わったと思い込んでしまった。
そう、これは運が悪かった、としか言いようがないだろう。
「アクセラ────」
反射的になのはが叫びそうになって、自分には今
「ウイングロードッ!」
クイントが叫び、そして空中を駆けた。けれど、彼女の突入の位置からディレクター達の距離は遠く、とても間に合わない。
「フォード行って!」
「ーーー!」
メガーヌが素早く召喚獣を召喚する。黒光りする甲殻を持ったフォードが地を走る。だがその距離は遠い。
運が悪かった。
位置が悪かった。
悪い人間など一人もおらず、ただ、運がどうしようもなく悪かったのだ。
そうして、レーザーが呆けたようにカメラを構える二人に肉薄していく。
なのはが、息を呑んだ。
なのはでは、クイントでは、メガーヌでは、間に合わない。
だが、そんな中『彼』だけは『運が悪い』なんていう理由で諦められるほど、物分りが良くなかった。
「イグニッションッ!」
誰かの叫び声と共になのはの頰を『紅い』烈風が撫でて、激しい閃光と共にディレクター達を思いっきり地面に引き倒した。
「何やってるんだ! 死にたいのかあんたら!」
『紅い』瞳のセルジオが二人の男性を腕で引き倒した状態で叫んだ。
そう彼だけは、『運が悪い』なんて理由で人を死なせたりしない。
それが彼の誓いで、彼の全てだから。
絶対に、絶対守ると誓った約束だから。