ワクワクを思い出した 作:オゾンより上
「インデックス!!」
「とうま!どうしてここに……その怪我は!」
上条当麻はインデックスと合流し、一目で現在の状況を把握した。
インデックスがいる後方から鳴り響く音。夜の学園都市には不釣り合いな、電気による灯りでない、火によって照らし出された自分たち。上条当麻はこの色を知っている。この火の使い手は、自分が初めて戦った魔術師━━
「……ステイル=マグヌス!」
上条は相手の名を叫ぶ。すると目の前に火が燃え盛り、その中からゆらりと見覚えのある巨体が姿を現す。
肩まで伸ばした赤毛に、耳につけた趣味の悪いピアス。右目の下にはバーコードのようなタトゥー。
やはり相手はインデックスを追う魔術師、ステイル=マグヌスだった。
上条は平静を装いながら、彼に声をかける。
「へっ、なんだ。また懲りずにやられに来たってのか?」
上条当麻のこの言葉は虚勢だ。
彼が神裂火織から受けたダメージはひどく、頼みの綱である右手は、握り締めることさえ億劫だ。故にそれを気づかれてはいけない。状況は圧倒的に不利。だからこその強がりだった。
上条はステイルの言葉を待つ。その間にもない頭を使って考えている。今、自分とインデックスがどうすれば彼から逃げ出せるのか。ただ、それだけに焦点をあてて。
だが、そんな上条にステイルは言った。
「おい━━
「……は?」
一瞬、我を失い唖然とした上条であったがすぐに思い直す。
デュエル、つまり一対一の対戦を相手は望んでいるらしい。それにしては脈絡のない言葉だと思ったが、外国人だしそんなもんだろう。そう上条は結論づけた。
「はっ、笑わせんなよ。お前は俺に負けてるんだぜ。お前の得意なルーン魔術を、完全に攻略してな!」
上条は威勢よくそう言った。
しかし、ステイルはその言葉に全く動じない。それどころか上条への返答として、自分の懐からあるものを見せつけるように掲げ、言った。
「━━カードはラミネート加工した」
「インデックス……逃げろ!今のアイツはヤバい!なんか凄みがある!」
「とうま!……どうしてイノケンティウスと合体しないの?」
「インデックス!?」
☆☆☆
『E・HEROネオス』
【戦士族】ATK/2500 DEF/2000
ネオスペースからやってきた新たなるE・HERO。ネオスペーシアンとコンタクト融合する事で、未知なる力を発揮する!
◇
おばさんと俺が召喚した電波ヒーロー『ネオス』の戦闘は凄まじいものだった。
おばさんが刀を振るえば、コンクリートとか抉れるし。対抗してネオスが目からビーム撃ったら、信号機に当たって撃墜するし。
いやーお前らの被害総額、どこが出してくれるの?と問いかけたい現在、俺はネオスと共に出現した宇宙人と会話していた。
その宇宙人━━『N・アクア・ドルフィン』は、俺に開口一番こう言った。
『今、宇宙は破滅の光の波動で満ちている。そう、世界は危機に陥っているんだ。そこで我々は破滅の光に対抗するため、正義の闇の力を持つ君に、白羽の矢を立てたんだ。━━さあ、僕たちと一緒に戦ってくれ!』
……何言ってんだこのキモいイルカ!?(略してキモイルカ)
目の前のイルカの顔したムキムキマッチョマンの変態(宇宙人)の言動に目眩を覚える俺。こんなイルカいるかぁ?(激寒)なんていうジョークすら言葉にできる余裕はない。
え、なにこれ、どういうこと?というかこのキモイルカの声、俺が常日頃から聞く電波の声と一緒なんだけど。あ、そうか。俺は宇宙人と交信してたから、研究者の人でも意味わかんないビーム撃ててたのかぁ。じゃあしょうがないな(思考停止)
とりあえず、「どんと来い超常現象!」と言いながらの恋ダンスで気分を落ち着ける俺。
一体何がはじまるんです?なんて他人事のような感想を心で呟く。
その~アクアドルフィン先輩、そもそも世界に危機が迫ってるってのはどういうことなんです?
『そうだね。そこから説明したいんだけど……この場を治めてからでいいかな?何故あの女性と君が争うことになったんだい』
アクアドルフィン先輩は、おばさんとネオスの高速戦闘を眺めそう口にする。俺はその問いに対し『あ、僕もよく知らないんすけど。なんか友達が襲われてたんで助太刀に入ったんすよ。それでおばさんと戦うことになったんす』と正直に説明する。
『なるほど。それじゃあ彼女に、何故君の友達を襲ったのか聞かないとね。━━ネオス!まずは彼女に事情を聞こう!』
アクアドルフィン先輩はネオスにそう言った後、おばさんに向かって『ケケケケケ!』と不協和音を出す。それを受けたおばさんはその音波の不快さからか、思わず耳を塞ぎ、そこにすかさずネオスがめっちゃ強いチョップをおばさんに当て場を沈静化させた。キモイルカは自慢の筋肉を使わないのか……。
俺たちはダメージからか立ち上がれずに蹲っているおばさんに近づき、事情を聞くことにする。
要約すると、
質問1
俺氏『おばさん、何で上条氏と戦ってたんです?シスターちゃん関係?』
おばさん『あと少しでインデックス(シスターちゃんの名前らしい)のタイムリミットが来る。残り三日というところだろう』
→……?
質問2
俺氏『インデックスをどうする気だ?あの子も道連れにするつもりか?』
おばさん『いかにも人間らしい手前勝手な考えだな。インデックスは我が組織の一員だ。組織と生き、組織が死ぬときは共に滅びる』
→???
質問3
俺氏『あの子を解き放て!あの子は人間だぞ!』
おばさん『黙れ小僧!!お前にあの子の完全記憶能力を消せるか?十万三千冊の魔術書を記憶した彼女が、その知識量から頭がパンクしないよう、周期的に記憶を消さなければならないのがインデックスだ!自身の過去も知らず、永遠にそれを残すこともできぬ。哀れでかわいい、かわいすぎる我が友人だ!お前にサン(インデックス)を救えるか!?』
→マジギレ(怖い(>_<))
ということらしい。
……ぶっちゃけ、よくわかんぬぇ!!
そのあともノリで『分からぬ……。だが共に生きることはできる!』とアシタカったけど、おばさんは『小僧、もうお前に出来ることはない。夜明けと共にここを立ち去れ』とモロった。
そんな意☆味☆不☆明な会話だったが、キモイルカは『なるほど、言いたいことは分かったよ』と思案顔で頷きながらそう言う。え、分かったの?すげぇな、キモイルカは。
『つまり、君はそのインデックスという子の仲間だけど、完全記憶能力の問題からその子の思い出を魔術で消去しなくてはいけない。故に早急に保護したかった。しかし学園都市でその子の友達となった少年━━上条当麻君は彼女の味方として立ちふさがり、君たちの邪魔をしてきた。それで敵対することになったということだね』
君はインデックスを死なせない為に活動していたわけだ、とキモイルカは言葉を続けた。
ふむ。なるほど、つまり……シスターちゃんを死なせない為には、おばさんを応援すればいいんじゃな?(理解力皆無)
とにかく完全記憶能力が凄くて、シスターちゃんは事前に魔術書をめっちゃ記憶してるからどげんかせんといかんと。やっべ、じゃあおばさんのこと敵と決めつけて攻撃しちゃ駄目じゃん。上条氏とおばさん、どっちも正義だったいうことやね。正義の反対はまた別の正義……また学んでしまったぜ。
俺はシスターちゃんの取り巻く現状を完全に理解した。しかしキモイルカは頬を掻いた後、おばさんに向かって『どうしてそうなるのかな?』と困ったように笑って言った。
『完全記憶能力で人間の頭がパンクすることはないよ?脳は記録するものを分けているからね。魔術書と思い出は別モノさ。
そもそも完全記憶能力をもってる別の人(インデックスではない)が覚えすぎて死んだということは無いからね』
キモイルカのその言葉に、おばさんは「で、ですが、インデックスは記憶を消す時が近づくと、苦しむ様子が見て取れました!これはどう説明するのです!」と焦ったように言う。そ、そうなん?じゃあやっぱり頭がパンクしそうだから苦しんでるのでは?俺はおばさんに賛同しキモイルカに言う。キモイルカは『おそらく……』と前置きした後言った。
『君たちの組織がインデックスに何か細工したんじゃないかな?十万三千冊の魔導書を記憶する少女を何の枷もなく野放しにするとは思えない。それに、記憶を一定に消去していけば管理もしやすいしね』
キモイルカは声は平淡に、しかし拳を固く握り締めて自分の推理を語った。おばさんは「そんな、まさか」と意気消沈といった様子だが、俺は言葉に出来ないほどよ悔しさで胸がいっぱいだった。それはシスターちゃんが受けてきた苦しみを想像したから、そして、なにより。
う、宇宙人(キモイルカ)に人間を、人間心理を簡単に語られるのが、こんなに悔しいなんて……(咽び泣き)
くそう。こんなイルカに手足生えたマッチョの方が俺より賢いなんて。なんて理にかなった推理しやがる。……おい!おばさん!確かにお前が「私のしてきたことは無駄だった……?」とやるせない気持ちになるのは分かる。でも!お前は何とも思わないのか!?宇宙人の方が人間分かってんだぞ!それでいいのか!
俺は静かに涙を流す。そんな俺の様子を見たネオスが『君のような優しい心を持つ者が、私たちの使い手になってくれてよかった』と肩に手を置いて言ってくる。うん。もうそれでいいや。あとお前喋れたのか……
◇
「私は貴方の推理を踏まえ、仲間と話し合いインデックスの今後の処置を考えます。それでは」
おばさんは忍者のような身のこなしでこの場を去っていく。きっと上条氏と争うことはないだろう。むしろ協力するんじゃないか?だってシスターちゃんを守りたいっていう志は一緒で、敵対すべき相手も見えてきたんだし。まさか現状維持を選んで記憶消去に踏む切ろうとするバカはいないでしょ。一安心である。
よっしゃ、じゃあ部屋に帰るか。まあ狭いところだけどゆっくりしていけよ、と俺は宇宙人たちに声をかける。しかし、
『あと三日か……』
そうキモイルカは眉間に皺を寄せて呟き、考え込んでいるようだった。
あと三日……ああ、シスターちゃんの記憶消去の話ね。でももう大丈夫だろ?おばさん側もやるべきことは分かって来たんだし、もしかしたら明日には解決してるかもよ。
俺はキモイルカの一人言に前向きな答えを返す。だが彼は『いや、そうはならないと思う』と自分の考えを語った。
『おそらくギリギリまで処置は行わないだろう。もし早めに行動に移そうとして、インデックスに枷をつけた組織に気づかれ雲隠れされたら、チャンスは二度と巡ってこないだろうからね。……それに、何か嫌な予感がする』
キモイルカは淡々とそう言った。
……え、お前なんでそんな頭良いの?筋肉ムキムキの体育会系じゃなくてキレ者なの?
やはり天才か……。俺氏はキモイルカを見て確信する。
というか嫌な予感って?
『ああ!私の予感はよく当たるんだ。こうしちゃいられない。君には今すぐ私たちの力の使い方を覚えて貰わないと。さあ、私の手に掴まって!』
彼は掴まって、と言いつつガッシリと俺の右手を掴んできた。
は、おま、ちょっ、なになになんなんですか。説明してくれないんですか?突然俺の手を掴んでどうしようと。
キモイルカの突然の奇行に動揺する俺氏。だが、少ししてからあることに気づく。
あれ、なんか俺の体……浮いてね?(愕然)
『だから言っただろ!今から君は力の使い方を覚えるため、木星の衛星イオでテストデュエルをするんだ!その後は日本中に分かれた私以外のネオスペーシアン五人とコンタクトしなくてはならない。期限は三日間!さあ、いくよ!!』
いやそんなことは一言もいってな(ry
その日、俺は知った。
━━オゾンより上でも問題ない。
因みに二巻は飛ばします。
姫神「!?」