BLEACH 最強の剣豪   作:スマート

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またまたまた、続きました。
今回は閑話のような扱いで若干短めとなっています。


剣鬼は想う、訪れる死愛まで

『私はいつでも…いつまでも待っています。貴方と再び殺し逢えるその時まで……』

 

 

 

 

 瀞霊廷の一角 四番隊隊舎 

 

 平事では診療をこなし、有事の際は隊全体が巨大なな救護施設へと姿を変えるそこは、いつになく忙しく、悲鳴や怒号、苦痛の声が絶えず響いていた。

 

「うぁぁ、いてぇ…いてぇよぉ」

「右肘から下にかけての矢による傷、塞がりません!」

「高濃度の霊子による火傷、滅却師の霊圧が邪魔をして回復にいつも以上の手間がかかってる!」

「くそ…また負傷者だ……このままじゃ四番隊舎全部が直ぐに埋まってしまう…一体、どうなってるっていうんだ瀞霊廷はよぉ」

 

 滅却師襲来から数時間、この隊舎には現在百名以上の重傷者が集められていた。集められた者達の実力は様々だが皆等しく体を無惨に引き裂かれており、中には回復の兆しが見えないものがいるが、四番隊の死神たちは必死になってそれらの救護に当たっていたのだ。

 

救えるものは全て救う、それが彼らの矜持であり誇りであった。彼らは刃の代わりに器具やメスを持ち各々が分担された仕事を着実にこなしていく。だが、それでも時間が過ぎれば過ぎる程死傷者の数はみるみる増えていき、果ては席官クラスの死亡者も多く出始めていた。

 

それほどの大戦。隊長格の負傷者は現状まだ報告されていないとはいえ、それも時間の問題といえるだろう。四番隊隊舎の救護室内にいてもなお外で戦う隊長格と滅却師がぶつかり合う剣戟の音が聞こえてくるのだ。

攻めてきた存在は、昨年の旅禍とは比べ物にならない手勢ばかり。その勢力は四番隊の者たちが軽く見聞しただけでも隊長格と同格かそれ以上の者が十数人と言う悪夢のような状態だった。

 

挙句の果てに『卍解』が奪われたとの凶報がもたらされ、死神達は迂闊に卍解出来ないという自らの力を封じざるを得ない状態へと追い込まれてしまっていた。救護に勤しむ隊員の顔にも不安は現れ、それは隊全体へと伝播していく。

 

死神の医術は、現世のそれと使われる器具や手段は似通っている。それは人間も死神も身体の構造においては其処まで違いがない事が理由だが、一つだけ異なっている者があるのだ。それは傷の回復速度である。

 

鬼道と呼ばれる霊圧操作技術の応用によって、対象の霊圧に働きかけ傷を癒す、それが回道と分類される技術である。おかげで傷はすぐさま塞がり、人間とは比べ物にならない速度での復帰が可能だった。

 

だが勿論それには膨大な霊力を必要とし、重傷者ともなれば並みの四番隊士では一人を回復させるのに数時間かかってしまう。それが怪我人が百数人規模で立て続けにやってくる現状である。感情と肉体疲労の板挟みに合い、彼らの体力もそろそろ限界だった。

 

「落ち着きなさいっ、助けられない者を見て嘆いている暇なんか今は無い!!死んでいる者はもう生き返らない!!心苦しいですが生きている者を優先しなさい!!」

 

 薄紫色の髪を持つ長身の女性 四番隊副隊長 虎徹勇音が、その雰囲気をどうにかしようと額に浮かぶ玉の様な汗をぬぐいながら叫ぶ。普段叫び慣れていないせいか、救護室全体に呼びかける様に声を張り上げた彼女は咳き込むが、それでも手は休ませてはいけないと横たわる重傷者に回道を施していく。

 

「で、伝令!狛村隊長が先の滅却師を打ち取ったと!!」

 

「う、うおおおおお!」

「我らが隊長がやってくれたぞおおお!」

 

そんな最中、先ほどまで激闘を繰り広げていたであろう狛村左陣を周辺とした霊圧が急速に鎮火し始めたのだ。それも敵である滅却師の霊圧の消滅を伴って。

隊社に集まった死神達はこの報告に看護師、負傷者問わず沸きに沸いた。自分たちが負けた強敵の一人を狛村隊長が打ち取ってくれたのだと。卍解を奪われようとも、使えなくなろうとも、矢張り隊長とは一般のそれとは格が違いう存在だったのだと皆敬意を込めて感謝した。

 

一転して明るい雰囲気になったことに気が抜けたのか、急に眠気が襲って生きた勇音は霞む眼を擦り、ふら付く身体を唇を噛みしめ踏みとどまって……背後に現れた女性に抱き留められた。

 

「勇音、そろそろ休みなさい」

「た、隊長……でも」

「貴女が倒れてしまっては余計に怪我人が増えるだけです。今は大人しく休み、体力を回復させる事が先決です……よく、がんばりましたね」

 

戦いは激化の一途をたどる。今後は隊長格でさえ誰かが死ぬ事になるかもしれない。だがそれでも、進む未来が暗く見えなくなってしまうことは、彼らの士気の低下に繋がりかねない。そしてそれは戦いの勝敗にも関係するだろう。だからこそ彼らは喜び合い、叫び合うのだ。不安を笑い飛ばし、冗談を言い合い力を…英気を蓄える。

 

それが自分たちに出来る最善の事だと信じて。

 

 

 

 

 

「これは…この霊圧は……」

 

だが、一人だけ隊士達の輪に入らず目を細めている者が居た。

丸みを帯びた身体のラインに、長い長髪を正面で三つ編みで結んだ女性。百人以上の隊士を預かる四の文字が入れられた白い羽織り着込んだ彼女は、四番隊隊長卯ノ花烈その人だった。席官の隊士達では手が回らない重傷者の回復に勤めていた彼女は、彼女の腕の中で眠りこけてしまった副官を優し気にソファに横たえさせると、突如として感じた霊圧に顔を上げて周囲を確認した

 

彼女には、今ここにあり得てはいけない霊圧が突如として感じ取れたのだ。それは意識しなければ感じ取れないような微々たるもの。知らない者が感じたとしても、一般隊士が紛れ込んだとしか感じないような不自然なまでの違和感の無さ。

 

 それ故にそれが発生した場所が、先の狛村隊長と同じ場所という点が妙に引っかかったのだ。報告された断片的な戦闘状況もその違和感に拍車をかける。駒村左陣の実力に疑いを向けるわけではないが、彼は一般的な隊長格の域を出ていない任期のまだ浅い死神だ。加えて彼は卍解を奪われていたとされている。そんな彼が隊長格相当の滅却師を相手に卍解なしで戦えるのだろうか。

 

もしも、能力的な相性が奇跡的に良かったとしよう。それでも敵の使う自分の卍解に始解で打ち勝たなければならない。いくら滅却師が死神の卍解を使い慣れていないだろうとはいえ、単純な強化能力であればその練度はあまり関係ない。

いわば、5倍から10倍に強化された自分自身と戦うのだ。はたして自分にはそんな事が出来るのだろうかと考えて、それは可能ではあるが、此処までの短時間では難しいと結論を下す。

 

入念に準備をして、自分の弱点を突いた戦術を考えたうえで、初めて自分は己の卍解に勝利できるだろう。今の現状においては自分の首を絞める事だが、少なくとも初見で卍解を奪われて対処できる程、己の卍解は弱くは無かった。

 

ズキリと左胸が痛む感覚が蘇る。

 

「あの人なら……可能ですね」

「卯ノ花隊長……?」

 

考えれば考える程疑問が顔を出す。それがどうにも狛村左陣と同じ場所から感じたあの霊圧に関係している気がして彼女は、脳裏にこびり付いたとある存在を思い出す。気の迷い、思い違いならいい。目を反らそうとする自分を、彼女の本能が否定する。研磨を積んだ彼女には嫌と言うほどわかるのだ、この懐かしくも狂おしい気配。卯ノ花はこの霊圧の波長を数百年間、忘れたことはなかった。

 

彼女の変化に薄っすらと目を開いた副官である勇音の声にも反応せず、彼女は思わず自分の身体を掻き抱く。震える身体を無理矢理抑え込み、乱れそうになった霊圧を内に込め、彼女はゆっくりと動き出した。

 

勇音の事は頼みましたよと声をかけると、隊士たちの止める間もなく彼女は瞬歩によって姿を消した。

 

 

「ついに…ですか……」

 

自身の根幹を揺るがし、成るべくして瀞霊廷に反旗を翻した大罪人の事を。

彼女は知っていた。

始解すら、剣すら持たず卍解を屠るある死神の事を。

『天下無双』その言葉は他ならぬあの男の為にある物なのだと、万人に知らしめた最強の剣豪。高ぶる心を抑えられない。まるで恋い焦がれる相手に再び巡り合えたかの様に喜びで満ちる自分をもう……隠す気は無かった。

怪我人を治療し、そして笑顔を見せる事で患者を安心させる四番隊の規範となる彼女は、この瞬間だけはまるで地獄の鬼の様な形相で嗤っていた。




たまたまその場に居合わせていた一般隊士はこの時の様子をこう語っている。

「いやぁ、あの戦いは凄かったですね。まさに侍って感じでしたよ!僕もああいう戦いが出来ればいいんですけど……」

「まさか素手で、あの滅却師に向かっていくなんて、肝が冷えましたよ。なんてったってあの狛村隊長の卍解が立ちはだかってましたからね。僕なら行きません、ええ」

「え?殺されるかと思ったかって?」

「…………」

「やっぱり貴方たちは分かってない、宮本武蔵と言う男を」

※取りあえずテンプレおいておきます(笑)
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