夢の中の妹は   作:夢野裏蜩

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テスト期間とか誰得

もう、おかしいだろ

テストなんていらないよなぁ!?


夢の中の疑問

トントントンとリズミカルに

 

包丁がまな板の上で踊る

 

「フンフンフフーンフンフーン♪」

 

そこに妹の鼻歌が交じる

 

「嬉しいなぁ〜♪

お兄ちゃんとお料理〜〜♪」

 

「手元見てないと切るぞ」

 

 

俺は今、妹と共に台所で料理をしている

 

 

「だって、嬉しいんだもん♪」

 

「はいはい、にんじん切ったら

次はジャガイモな」

 

「はーーい」

 

制作中なのはカレーだ。

 

まず、何故カレーを作るのかと言うと

 

帰ってから巻き起こった現象についてだ

 

 

昨日の晩、俺は友人からDVDを借りた

 

夢の中で妹と視聴したまでは良かったが

 

夢の中で見た10何巻分のDVDの内容と

 

今日帰ってから見たDVDの内容が

 

全く同じだったからだ

 

 

どうなってんだよ

 

 

と数十分間、困惑してある仮定に至った

 

夢の中の出来事と、現実の出来事が同期している

 

かもしれないという仮定だ

 

だとすれば、カレーを作り

 

1晩寝かせると美味しくなると言って

 

鍋の中にルーを残す

 

そして、俺が起きたら、鍋を確認

 

中にルーが入ってるから入ってないかで決める

 

確かめるのは怖いが、しょうがない

 

 

「お兄ちゃん、ジャガイモの次はー?」

 

 

「ん、あぁ、玉ねぎだ」

 

 

現実と夢は別だ

 

それは、覆されない摂理の筈だ

 

だが、もし、それが、ありもしない虚構なら

 

俺は……………

 

「痛っ!!!」

 

「ん?おい、どうし………

って、指切ってんじゃねぇか!」

 

「だってぇ、玉ねぎで視界が滲んで

歪んじゃってぇ」

 

「何してんだよ」

 

俺は妹の怪我をした手を引きながら

 

台所の目の前にある食事用のテーブルと椅子に

 

妹を座らせた

 

>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>♥

 

 

指を切ってしまった…

 

お兄ちゃんと料理が出来ると思ったら

 

ついつい、ぼーっと妄想してしまったせいだ

 

お兄ちゃんが慌ててる

 

 

フフ、可愛い♥

 

 

「ったく、大丈夫か?」

 

お兄ちゃんは、何時もより優しかった

 

手当の仕方がとても優しいし

 

何より、私だけを思ってくれてる

 

 

そう考えた時、胸の奥からお兄ちゃんに

 

対する愛情がわき、下腹部が熱を帯びた

 

 

お兄ちゃんが、お兄ちゃんが私だけを見て

 

私だけを思って、心配してくれてる

 

大好きなお兄ちゃんが、お兄ちゃんが

 

 

「…ォ……い、おい、大丈夫か?」

 

「ヒャゥ!?う、うん!!

大丈夫だよ!!」

 

呼ばれたことに気づくまで

 

全然、兄の声が聞こえてなかった

 

 

だ、ダメだよね、お兄ちゃんの声、言葉、

 

聞き逃したら

 

それにしても、お兄ちゃん。

 

すっごく優しい

 

フフフ、もっともっと怪我したら

 

もっともっと優しくしてくれるかな

 

>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>☆

 

「ったく、本当に大丈夫か?」

 

顔を赤くしてぼーっとしてる妹が心配だ

 

「ううん!大丈夫、大丈夫!!」

 

「なら良いけどな

んじゃ、お前はもう休んでろ

あとは俺が作る」

 

 

「へ??なんで?」

 

 

「なんでって、危ないからな。

火とか使うし」

 

 

「な、なんで!?私、大丈夫だよ!? 」

 

 

「なんでそんなに必死なんだよ

いいからそこに座ってろ」

 

 

「そん……………な」

 

なんでそんなに落ち込んでんだよ

 

とは、聞けなかった

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

 

「おら、出来たぞ」

 

「うん!ありがと、お兄ちゃん!」

 

 

俺が料理してる間は随分と大人しかった

 

 

「ほら、スプーン」

 

「えへへ、ありがと〜!」

 

 

まぁ、静かなのはいいことだよな

 

「あ、お兄ちゃん」

 

「んー??」

 

「私、怪我したよね」

 

「したな」

 

「じゃぁさ、お兄ちゃん。

私スプーン使えないから、アーンして?」

 

「今なんて??」

 

 

「アーン、して?」

 

 

「(゜言゜)アーン?」

 

 

「そのあーんじゃない!」

 

 

「なんでアーンしなきゃダメなんだよ」

 

「腕使えないから」

 

 

「お前が怪我したのは指………」

 

「お兄ちゃん、食べさせて??」

 

有無を言わせないらしい

 

「わぁったよ、オラ。アーン」

 

 

「アーン♥ハグッŧ‹"ŧ‹"ŧ‹"ŧ‹"」

 

 

物凄く嬉しそうに

 

美味しそうに食べてる妹を見ると

 

 

こちらも腹が減ってくる

 

 

「お兄ちゃん、アーン!」

 

「まだ続けるのかよ」

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>☆

 

あの後、何度もあーんをさせられ

 

俺は目が覚める

 

そして、目覚めると同時に

 

あの匂いがした

 

 

「そんなはずない」

 

 

鼻腔をくすぐるそれの存在を否定する

 

しかし、閉まっておいたまな板も

 

包丁も、なぜが台所に使われたように置いてあった

 

 

「こんなこと、ある筈が」

 

ゆっくりと鍋にちかよる

 

かつて、これ程鍋の蓋を開けるのに

 

緊張する人間は居ただろうか?

 

 

ゆっくりと、鍋を開けると

 

そこには、カレーが、静かに、座っていた

 

 

仮説が、当たって、しっくり来るのと同時に

 

どうしようもない恐怖を感じた

 

 

あの世界とこの世界は繋がっていた

 

つまり、向こうで怪我をしたら、俺も

 

怪我をしてひまうのか

 

いや、いや、信じられない

 

こんなはずは…………

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>♥

 

「フンフンフフーンフンフーン♪[」

 

 

腕から細く、赤いそれが線を引く

 

腕をつたい、ポタポタと床に落ちる

 

 

「どれくらい切れば良いか

まだ分からないなぁ」

 

カッターの刃が、私の腕をなぞる

 

「でも、これで、また、

お兄ちゃんが私だけを見てくれる♥」

 

 

 

 




シジミの味噌汁なんて忘れた

いやぁ、テスト期間でまるで書けませんでした

何これ、気がついたら凄い時が過ぎてるの

次回
「夢の中の歪」

次回作で会いましょう!

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