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酒場に突撃してきたエルフ娘はほぼ一人でひたすら喋り倒した後、可愛い可愛い言いながら何故か俺とハンマー娘を撫でくりまわし(警告出てなかったから中身男じゃないっぽいね)、「何か進展あったらよろしく!」と言い残して去っていった。あ、おさわり料金もらうの忘れた。
用件? 俺たちのせいで彼女の姉のギルドがやべーからなんとかしてくれってさ。姉は大丈夫だっつってるのに掲示板見て、学校から帰って即勝手にここまで突撃してきたらしい。
最初やたら深刻そうに迫ってくるわりにはあっさり帰っていったので拍子抜けしてるけど、それでいいんだろうか?
そして俺の隣でテーブルに突っ伏し、如何にもなリア充エルフ娘の襲撃に遭ったせいで精根尽き果てている我らが商人娘である。
それに加え、リアルでのエルフ娘とのあまりの環境格差に涙している模様。
でもしょうがないよね! このクソみたいなご時世に普通に進学してその上公務員一家とか、俺でも一瞬だけリア充皆死ねばいいのにと思ったよ! こっちは一日ペレット3つでゲーム三昧だってのにね!
でもよく頑張った! 感動した! ご褒美にハンマー娘と一緒に煤けている背中を擦ってあげてるお! よーしよしよしよし!
んでさー、なんてったっけあのギルド――ああそうそう、アインズ・ウール・ゴウンね。
ぶっちゃけどうなん? 俺らのせいでピンチって本当ですか? だったらたっちさんに申し訳ないんだが。
元から評判最悪だから今更? むしろ俺たちへの印象が悪くなっただろうから、そっちの方が心配? うーん、たっちさん見た限り、そんなに心配するこたーないと思うけど。
……って、ちょっと待てよ。
あのたっちさんのいるギルドなのに評判最悪ってどういうことぉ!?(今更)
え? むしろたっちさんは例外のカルマ値が高いプレイヤー? 嫌われ者の異形種プレイヤーの集団の上に、悪RPを徹底してるって? 何そのひねくれてるギルド。デスペナ重いこのクソゲーで積極的に狙われに行く姿勢とか……マゾの集団?
かくかくしかじか……ここだけの話で、俺達にしてみればユグドラシルでも最悪のギルド? なんとかしてうまく取り入ってしまうか……早めに潰しておきたいって?
いやいや、潰すってのはいくらなんでも無理じゃね? 俺ら100人束になってもたっちさんの《スラッシュ》一発で終わりそうな気がするんだけど。
え、何? さもないと――俺ら全員奴隷にされて、裸に剥かれて、首輪はめられて、尻尾付けられて、四つん這いで椅子にされて、何年も飼い殺しにされた挙げ句、最後はこの上無い苦痛を味わいながら生皮引っ剥がされて、舌抜かれて、毛の一本、血の一滴すら残さずアイテムに加工されて人生を終えるってさ。ハハッワロス。
…………!?!?!?!?
奴隷!? 首輪ぁ!? 尻尾ぉ!? ヨツンヴァイン!? はあー!? 何よその秘密SMクラブっぽい導入からの悪魔信仰カルト教団みたいな実態!?
商人娘嘘つかないの知ってるから素直に信じるけど、え、何!? 俺そんなとこのギルメンと繋がり作ろうと必死にフレンド登録迫ってたの!?
やべーじゃんもっと早く教えてちょーだいよ! 仮想現実の話だとしてもおっかなすぎて即Bダッシュでとんずらするレベルのヤバさじゃないの!
確かあの貧乳エルフの姉って、小学校の先生とかいってなかった? え、たっちさんリアルは警察官なんすか。この時代の公務員の裏嗜好ってどうなってんのよ。
誠、人の世のおぞましさよ……ガタガタ震えだしたハンマー娘とひしっと抱き合ってしまう。俺も震えているのでガタガタ椅子がなって実にけたたましい。
今ここにいる人間種の美少女(普通に可愛い)・美童女(死んだ目もキュート)・美幼女(自画自賛)には揃って娼館送りより尚悪い未来が待ち受けているのだから無理もないけど。
そんなやっべーとこの恨み買っちゃった俺ってどうなると思ふ? さーねー……って、呑気か。始まったばかりの俺らの冒険どころか仮初めの人生もこうして終わろうとしているというのに。
え? リアルではそんな力はないし、すぐにはどうこうならない安心しろ?
むしろどこに安心できる要素があるんですかねぇ……俺らなんて起きてる間はほぼこちら側の住人みたいな生活してるし。
これはいかん。ここはなんとしても原点にして頂点のお方みたく、カルト教団を完全にぶっ潰すか、恨みを帳消しにしておかないと俺らの命がマッハである。
今の俺らが最上位ギルドを殲滅するのは控えめに言って無理なので、俺に対する彼らのマイナス感情をバーンと挽回する方向で動くよ!
その為には、ネットでの俺氏の炎上をなんとか鎮火させんと話にならんのですが……でも、もう既に勢いつきはじめてるネット炎上をどうこうするって無理じゃね?
ゲーム開始二週間経たずこんなことになってたら、普通はキャラデリして全部無かったことにするレベル。俺らはそんなことしないけどね!
俺はまたふつくしいアバター作れる自信が無いし、商人娘からしてみれば良くも悪くもたっちさんと面識できたという事実が捨てがたいんだと。ぐでーっとしてる割には意外と太い肝っ玉である。
というわけで、俺は今の身体のまま、ネットの評判をキレイキレイにしなければならないのれす。
ちょっとここで、掲示板を覗いて俺の概要を抜き出してみる。
【事実】
・人間種の俺氏が、異形種であるたっち・みーさんのスンバラシィ行いを称賛した。(今はちょっと後悔)
【噂】
・異形種プレイヤー側から送られたスパイ
・人間種より異形種すこのすこ
・人間種にハニトラ
・人間種側で手に入れた情報を横流し
・異形種に洗脳を受けた
・感度3000倍(チート)
・経験人数二桁
無茶苦茶すぎwwwアホすwww後、俺世間でクソビッチにされてますたwwwwwこんなんどうしろとwwwww
って、冗談じゃねぇ! こちとら初体験どころか初ちゅーすら経験ねーっつーの!
たっちさんの鎧はprprしたけど、割とそこら辺ノーマルのつもりだから! 男とにゃんにゃんとか御免被るのです! 虫ぃ!? どノーマルだっつたろ! ナシだナシ!
ハーヤレヤレ ┐(´ー`)┌ マイッタネ
ネトゲで炎上とかいやーやっぱキツイっす。
……え? 何よ母上? だからアレほど炎上するようなことするなってゲーム始める前に言っただろって? そんなの――
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・掲示板に晒されると難易度ノーフューチャーになるから、マナー違反なプレイはすんなよ!
・絶対にすんなよ! 絶対だぞ!!
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……ああ、そういえば言ってたね。俺も理解度完璧とか言っちゃってた気がする。すっかり忘れてたけど。
でもさー母上。俺、ここまで一度もネトゲマナー別に破ってないよね?
プレイヤーの死体にお座りとかしてないし、さすたっち(もう絶対しない)しただけだし。上位プレイヤー↑なんて普通にやるやん。聖騎士アンチ煽る形になったのは完全不可抗力だし。
流石にゲーム開始して二週間たらずで炎上案件になるとは夢にも思わんっしょ。……ねぇ?
まあ、それは今更議論しても意味が無いことなのでおいておく。
えーと、色々選り分けると……今の問題は、①談合の疑い ②ユグドラシルの世界観設定無視 って悪評を晴らさなければならないってところね。
まず①ね。これは談合……というよりは、著しくゲーム性と公平性を損なうような行為を咎めているっぽい。
俺のやったことに何処が談合なんだって言ってやりたいが、そんなことに構ってくれるネットの住人達ではない。
商人娘が教えてくれた例だと、ワールド:ニダヴェリール北方領地にある、『アルペンベイス鉱山』を巡っての談合行為疑惑が有名なんだそうで。
かつてユグドラシルに存在した「帝国過激團」「鬼道六堝」「スウェット&ウェット」とかいうトップギルド集団が超長期間の抗争で所有権を争っていたんだが、ある日その抗争自体がフェイクで、実際には彼らだけで鉱山資源を独占していた談合行為疑惑が浮上した、と。ふんふん。
結局その騒動は、談合行為に関わったとされる(疑惑含む)ギルド群全ての急速な規模収縮を招き、果てにはそれらのほぼ全てが解散状態。
うへぇ……まあそんな事されたら普通のプレイヤーはたまったもんじゃないわなって話である。
資源の独占は現実世界でもありがちな国家間交渉の好カードだとは思うけど、やり方間違ったり時節ちゃんと見きれないとアザディスタンみたく他所から総スカンくっちゃうのよね。
ん……? アインズなんたらも鉱山独占してる? ますます度し難いな……
ま、ウチの商人娘に言わせれば、「大規模にやり過ぎ。もっと慎ましくやるべき。大体バレる方が馬鹿なのよ」ってことらしいです。逞しいことで。
バレなきゃどんなあくどいことしても犯罪にはならないってさ。そりゃそうだが。
実際、広大なユグドラシルのどっかではまだこんな話がゴロゴロしてるんだろうなー。
情報は独占してこそ価値があるって誰かが言ってたし、効率的な狩場とか、レアな素材の採取場とか。Wikiには絶対載らないお得な情報もあるし、そんなところも情報系サイトが当てにならないって理由の一つなのよね。嘘も多いし。
今回は……あれ、そんな事実も容疑に対する反証も無いからぶっちゃけ放置するしかなくね?
「それでも僕ぁやってない!」と反論するのも手だが、絶対効果ないっしょ。
「全部……俺がやりました……」てゲロっちゃったら元も子もないし。
うん、放置だ放置!
――んで②。
これは仮想現実に浸っている他のプレイヤーにリアルを思い出させるような言動を執拗に行ったり、あまりにもユグドラシルの世界観を軽視したプレイングをしたりすると非難されるってこと。
例えば、ある人間種のプレイヤーと異形種のプレイヤーがユグドラシル内で結婚したとするじゃん?
ゲーム内とは言え結婚である。大抵の人間にとってはおめでたな話か、うらやまけしからん話のどっちかになるだろう。ちな、俺は両方である。
だが、ここに余計な茶々を入れる連中がいる。「異形種と種族的な敵対関係にある人間種が結婚するのはおかしい!」って騒ぐわけだ。
個人的にはシステム的にできちゃった結婚の再現さえ出来るんだから、別にそんくらいいいんじゃねーのって思うんだが。
一応言っておくと、プレイヤーが扱うことが出来る種族間で敵対関係にある、または共存不可能であるという設定を想像させるシステムは多いっちゃ多いよ。
異形種ってだけで人間種のNPCから買い物できなくなっちゃうとか、色々と面倒くさい制約があるところとか。
ただ、別にこれがユグドラシルにおいて絶対である、とは言い難いんっすよ。
ギルドだって、異形種・亜人種・人間種混合で一緒に作ってワイワイやってるところはいくらでもあるし。
んでんで、俺が世界観を無視したというのは、思いつきで酒場占拠してカラオケしたことであったり、異形種であるたっちさんとマブダチになろうと画策(自殺行為)したことを非難しているわけで。
でもそれって、結局は俺の言動を見聞きした他のプレイヤーの裁量次第と言って良い。俺自体に世界観ぶち壊そうとかそんなつもり欠片ねーから。
アイドルもどき活動だって、ちょっと調子に乗って大衆の面前で歌って踊っただけである。観客のノリを除けば、ファンタジー世界でもありがちな光景なのではないだろうか、と俺は思うのだよ。
それに異形種と人間種が敵対とか言われてもねー……。
そもそも俺ってば、まだ一人だけしか異形種のプレイヤー(しかも超がつく優良っぽく見える)見たことがないもんだからあんまり脅威感じてなかったのよね。今はそんなことないけど。
……やっぱ無理じゃね?
商人娘も「まともに相手するだけ無駄。事の真偽を証明できる物証を私達が用意できない以上どうにもならない。表面上は落ち着いても裏ではやましいところがあるから否定するんじゃないのかって猜疑心を煽る形になりそう」ておっしゃっておられる。
というか、自分のお尻の貞操(尻尾のこと。獣人種にされちゃうとかではないらしいので)やら命やらがかかっていなかったら絶対諦めてる。
エルフの娘さんはこれらの実は根も葉もありそうな疑惑を晴らすのに協力してくれって駆け込んできたわけですが……やたらそいつらの実情に詳しい14歳の話を聞く限り、むしろ疑惑を煽りに煽って積極的に息の根を止めに行く方が良い気がしてきたし。
それはそれでバレたらカルト教団と「俺たちは殺し合う仲」っぽい関係になっちゃうので却下されてしまったけどさ。うぐぐ……
「アンタがたっち・みーのことをロリコンNTR騎士だとかボロクソに貶して、踏み絵みたいなことをすれば一応の釈明にはなるかもだけど……それはそれで異形種プレイヤーやアインズ・ウール・ゴウンの盛大な反感を買うのよね。ワールド・チャンピオンだけあって人気もあるし」
鬼かこいつ。俺に死ねと申すか。
さて、それらを踏まえて今後の俺らの対応をハンマー娘と考える。……こんなところ?
① 放置
まんま。全てを気にせず今まで通りプレイし、炎上案件は自然消滅するのを待つ。
安牌なんだがギルドの印象を回復するって意味では無意味に近いので無理ぽ。×。
② アインズなんたらにおまかせ☆
①と似てるけど、どうにかこうにか問題のギルドに連絡とって対応を依頼するってことね。
最上位ギルドにしては人数少ないらしいけど、こっち三人こっきりだし文殊の知恵より上等な対応は期待できるのでオナシャス! ってところ。
どうせいつかは上辺だけでも謝罪はせにゃならんし、ありっちゃあり。けど失礼。他人任せ。というわけで×。
③ 全方位焼き土下座
全ての容疑を認め、ダメ床の上で土下座するグラスランナーの映像を全ワールドに生中継でお届けする。
プライドなんて最初から無いし。乞食プレイするって決まってたくらいなので、手段の一つではある。
幼気なグラスランナーの姿への罪悪感からくる心理的ダメージだけでも与えられる可能性はある。
アインズなんたらへの謝意も盛大に示せる。
あんまり気乗りはしないけどね。見ていて気分のいいもんじゃないだろうし。……△。
④ 運営に泣きつく
これはあまり当てにならない。ネットの利用は自己責任が鉄則である。
そもそもこの運営クソだしね。×。
ちなみに商人娘的には③らしいよ! 軽い気持ちで私達を罵った阿呆の現実の胃に大穴開けてやれってさ!
そういえばうちの保護者鬼だったね。でも最後の手段にしてほしいな☆
……冗談? 同情心から怒りがアインズ・ウール・ゴウンに向かって結局はた迷惑? あ、そっかぁ……
ってことで、どうあがいても絶望。グラスランナー終了のお知らせ。やべえよ……やべえよ……
§ § §
「せめて、傍から見ているプレイヤー共が面白おかしく笑ってどうでもよくなる方向に感情を逸らせないかしら……」
もはや感情の起伏が無くなってしまった、たれマーチャント娘が呟く。手がつけられない炎上案件のことは忘れて、別の興味深い話題で覆い隠そうという逆転の発想であろう。
……あれ、よくよく考えれば意外と良さげじゃない? 件のギルド連中も笑ってくれればマイナス感情が反転する可能性もありそう。
唐突だが炎上案件に対応するにあたって前提とするべきことが一つある。
ぶっちゃけ、「ほとんどのプレイヤーにとっては俺がクソビッチだろうが、清純派アイドルだろうが心底どうでも良い」ってところね。
所詮知名度も全然ない初心者プレイヤーに関することだし、よっぽど入れ込む要素がないと関わろうとすらしないだろう。
結局は「よりおもしろい方か、もっと経験値とアイテム手に入る方」が正義ってなることが多い。謝罪? そんなのいらんから詫び石よこせーってね。
でもって、今回の話はどう転んでも普通のプレイヤーに報酬なんて入ってくる要素が無い。なら、そんな彼らが考えるのは――
「当然、話がおもしろおかしく盛り上がる方よね……」
まあ、そういうことになる。
イベント期間でもないこの時期、それなりに年季を重ねたプレイヤーにとっては良くも悪くもルーチン化したプレイに徹している者が多い。
暇なプレイに多少刺激があればってことでこうなるのだ。
それを踏まえてたった今出た案を推敲する。俺的には、それに
素直に情に訴えても効果がなさそうなので、札束で頬をぶん殴って味方につけるアレである。
だが、それも待ったがかかる。「私達程度のレベルしかない人間種プレイヤーに期待する事なんて誰も、なーんにも無い」と言われれば引っ込まざるを得ない。
ふむ……となれば、ここで重要なのは他のユグドラシルプレイヤーが持っておらず、されど俺らの中にはあるもの、ということになる。
俺らにしか無いもの。それは――
「……それは?」
やっぱアイドル系スキルっしょ! プロクラスとはとても自分では言えんが、ユグドラシルで出来る範囲では結構いい感じだと思うんだが!
なんかため息つかれた。ダメ? ……俺氏は絶賛炎上中だろうって? ああ、そっかぁ(二度目)。
プチライブの観衆も去った今、よっぽどインパクトのあるニュースじゃないと大衆を味方に付けるのは無理だよね。
「……でも方向性は悪くないと思うのよね。ユグドラシルでああいう見世物みたいな真似すんのは声優ギルドの連中除けばアンタだけだし」
え、声優ギルド!? なにそれ! 私、気になります!
モノホンの声優だけが所属できるギルド!? シンパ系ギルドも多数乱立!? うっひょー! いいですなー楽しんでますなー!
良いねぇ、当面の目標は打倒声優ギルドで決まりですわ! 目標は常にでっかくってね!
それはそうと……あとはやっぱ……か、身体? たっちさんには微塵も効果なかったけど、いざとなったら脱げば――!
「あのねえ……」
だけどまともな話、今の俺らにあるものってそれくらいしかねーべ?
ユグドラシルに関する知識なんて、他のプレイヤー様に比べたらうんこみたいなもんだし。やたら14歳はアインズなんたらの実情にまで詳しいけど。
豚くんたちに貰った装備だってランク高めのは返しちゃったし。そもそも他人の貰い物をどうこうできないし。たっちさんの剣も同様。
あとはリセマラでゲットしたアバターとアイテム、そもそもの発端のレアハンマーか? ……あ、ごめんよハンマー娘。これアカンやつだったね。
「はぁ……武器にしろ、アバターにしろ、種族にしろ、多少珍しいだけで他のプレイヤーにとって何の意味も無いって…………」
やっぱここは一つゲリラライブでも、もっとでかい街で開いてもっと認知度を――
「――それだ」
§ § §
――フラットフットは、とある酒場に自身の《分身》を隠密状態で侵入させる。目当てのグラスランナー嬢がよく出没するという情報があり、調べるならここからだという判断によるものである。
そしてそこでは、彼女と彼女の仲間と思しき商人娘と……あともう一人(?)が激しい言い争いをしている最中であった。
「いーやーだー!!! いーやーなーのー!!!」
「大人しく観念なさい! 最初から姫プレイ前提だって言ってたし、アンタ目立つのウルトラスーパー大好きでしょ!
「それとこれとは話が別なのー!!! ただ単にちやほやされるのとこれは訳が違うって!!!」
(オロオロオロオロ)
……RPの方針ででも揉めているのだろうか?
「あのギルドのメンバー……というより、あいつらなら多分……というかアホみたいに基準が厳しくなってる児ポ法に屈するしかないこの時代の男共なら、みんな絶対に食いつくんだから! それこそ些細な噂なんてほっぽり出すくらいに――」
「俺知ってんだからね!!! 非実在青少年でもえっちなのはいけないんだって!!! ユグドラシルでだってエロ目当てのプレイだと公式にさらされてBANされちゃうって!!!」
「だからギリギリのラインちゃんと見極めるって言ってるでしょ! そもそも仕様上そういうアクションは取れないってば!」
(オロオロオロオロ)
…………む?
「アンタ達用のお子様用エロ水着装備なり、胸チラパンチラしそうな衣装なりでも手に入れて、それ着てるところ掲示板にスクショ(高画質)うpすれば万事上手くいくんだから!」
「そこまで露骨にエッチなのは俺の趣味じゃないのー!!! 俺が目指すのは正統派なのー!!! パンピーが見ても普通なのに、見る人が見たらエロいとかせめてそういう方向性なのー!!! 大体ロリどころかガチペドに踏み込みかねないアバターのエロなんて需要あるわけないのー!!!」
「男共なんてチョロいんだから! それにさっきのエルフ娘の反応みたでしょ! アンタを可愛がることで自分のことを可愛いく見せたい性格ブスな女も釣れるかもしれないじゃない!」
「この娘っ子何気に最低なこと言ってる!」
(オロオロオロオロ)
…………。
「大体なんで俺ら二人揃ってそんなことさせられるんですかー!!! どう見ても相棒はそんなの向いてないっしょ!!!」
(コクコク)
「餌は多い方が良いに決まってるでしょ! タイプが違う美少女なんだから使わない手はないのよ! 目元に黒帯いれれば死んだ目はどうにでもなるわよ!」
「それはそれでえっちなお店の紹介写真みたいだから却下!!! ってかやるなら自分でやりなよ! 一応美少女アバター狙って当てたんでしょ!? なんで自分だけ助かろうとしてんのさー!!!」
「……」
「……」
「と、当事者アンタでしょうが! どうしても嫌なら勝手にクソコラ作ってそこらの掲示板に貼りまくるわよ!」
「それはもっと嫌だあああああ!!!」
(オロオロオロオロ)
…………ほう。
「ちょっとだけ! ちょっとだけよ! エロイのだけじゃないって! なんとか見栄えの良い奇跡の一枚さえ取れれば、あとは鼠算式に勝手に味方が増えてくれるわよ! 多少短足むっちりで鼻ほじっててもそれが良いって言ってくれる変わり者だっているんだから!」
「……でもやっぱりスケベなのも撮るんでしょ?」
「ええ、まあね」
「やっぱり嫌だああああああああああ!!!」
(オロオロオロオロ)
……ふむ。
――成程。概ね事情は理解した。
どうやら黒髪の商人娘は、この窮地を脱する奇抜なアイディアを実践しようとしているらしい、と。
自分は実にタイミングが良い場面に出くわしたようである。出来過ぎじゃないかというくらいだ。
いや、本当に運が良い。これも日頃の行いの賜物か……暗殺者は一人ほくそ笑む。だ、駄目だ……まだ笑うな……堪えるのだ……し、しかし……
「ちゃんと狙いは説明したでしょ! アンタのアーパーなところを隠しつつ、アバターの可愛さと無邪気なアイドルRPっぷりを見せつけてやればそれでいいって!」
「無邪気なのとエロいのはイコールじゃないって!!! 大体、そんなエロ装備どこにあるのさ!!! 俺らほぼ着たきり雀じゃん!!! 普通に装備脱ぐとかぼちゃぱんつだよ俺!!!」
「だからそれを今から探すって言ってるでしょ! こんなつまらないイベントでグダグダいつまでも手をこまねいてる訳にもいかなのよ! お金も無いけど時間もないの! レベリングが必要ならなおのこと時間取られるんだから!」
(オロオロ)
駄目だ。笑わずにはいられない。
つるりんぺたんが本当に我が物にできそうな展開に精神が昂ぶり、抑えが利かない。
こうまで自分に都合が良いと、逆に誰かの筋書き通りなのではと疑うほどである。
しかし一同、いい焦りっぷりである。特に商人娘の余裕の無さなど、見ていて片腹が痛いくらい。
しかも彼らには懐の余裕も無いらしい。これは良い情報だった。無論、幼い彼女たちを意のままにコントロールする材料は多いに越したことはないというひどい理由で。
意識を本体に移し、物陰で密かに《伝言》のスクロールを発動させる。ここから先は、我らがギルド長の裁可を得なければならないのだ。
「もしもしモモンガ殿……ああ、早速収穫があった……そう、あのグラスランナーの娘の件で……早すぎる? 気にするな。それよりギルド長名義でアインズ・ウール・ゴウンの《招待状》発行を頼む。3通だ……そう、彼女とその友人2人をナザリックに……ああ」
――《招待状》。
自分のギルドに他所のプレイヤーを招き入れる際に必要なアイテムであり、使用者には一時的にギルドのゲスト権限が付与される。
そして一度だけだがギルドへの転移魔法も発動させることができる。今の彼女達のレベルと装備では、アインズ・ウール・ゴウンの拠点が存在するワールド:ヘルヘイムのグレンデラ沼地に真っ当な手段で辿り着くことすらできないので、当然の配慮であった。
また、これがないとギルド拠点に設置された数々の防衛機構が問答無用で作動してしまうので、維持費的な面でも少女たちの経験値のためにも必要な処置なのだ。
「――上手く立ち回れば色々なことに片が付く」
頭の中で三人娘の「つるりんぺたん」が並ぶ様を妄想する。ギルドメンバーからの少々厄介な託され事も、この分なら期待大だろう。
自身の健全ではない考えは自覚しているが、やっぱりこの仮想現実においては倫理だの道徳だのといったもののリミッターは外れがちなのだ。
ここは素直に自分の欲望に従うとしよう――程なく出来上がった《招待状》を受け取りに行くため、暗殺者は《
■シャイニングガチペドオリ主
・身長はヒミツ
・実はちょっとある
・ドリームプレイお墨付きがでた
■描写少ないけどちゃんといるハンマー娘
・身長は他二人の真ん中かちょい上くらい
・実はそれなりにある
・恥ずかしいのは嫌
■鬼畜商人娘
・身長は1.5mあるかないかくらい
・実は結構ある
・もうまともなプレイは諦めた
■エルフ娘
・……え、出番これだけ?
あとがき
やっぱりネット民は強敵だったよ……
色々と解決方法考えてドツボにハマる。エルフ娘視点とかだとやっぱ考え方もまともになっちゃうのでやめ。まあ普通ならキャラデリ安定だと思います。
エルフ娘? ま、まあ最初の出番だし。
ぶっちゃけると、彼女が寸劇の邪魔でしょうがないので速攻退場してもらいました。商人娘ちゃんが嫉妬と苛立ちでヒステリー起こしたりしちゃったのでしょうがないね。
きっとその内一緒にカラオケしたりする仲になってるのでそれまでは我慢。
オリ主とハンマー娘の中でアインズ・ウール・ゴウンがとんでもないイメージになってます。商人娘としては油断せず警戒してほしいので意図的に恐怖心煽ってますねこれ。大体原作アルシェちゃんがやられたことなので嘘は言ってないんですが。
次回、悪のすくつギルドにて三人娘にはエロい目に遭ってもらいます。