お金が無い彼女達は如何にして楽園へと至ったか?   作:山雀

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 日付は時系列の目安程度に。

 あまり意味はありませぬ故。




100日目 dungeon attack!

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「――いいわね!? もう形振り構ってらんないわ! 多少ショボかったりどっかのギルドが放棄してったやつでも良いから、ギルドホーム系ダンジョン探しておきなさい! 絶対よ! フリじゃないからね!」

 

 

 というわけで、我らがオカンこと商人娘(14?)が最近ギルドホームを欲しがるようになりましたよっと。

 

 ギルド結成用アイテム(最低クラス)をついこの間取得したとはいえ、「ゲーム始めた頃あれだけ拒否ってたのに心変わり早すぎねぇ?」てなことを毎日の日課である牛乳搾り中に考えてはいる俺氏である。

 でもそんなの関係ねぇさっさと見つけてこいってお尻を叩かれてるよ! そんなにホイホイ拠点化できるダンジョンが見つかるわけないだろ! いい加減にしろ!

 

 

 俺としては今使ってるこのレンタル拠点(人間種用)で十分なのです。

 駆け出しプレイヤーの懐にも優しい価格設定の維持費、地上2階地下1階の一戸建て(初級生産施設付き)+庭+小牧農場+αって今のニッポンだとありえないくらい勝ち組の住宅環境だし。

 

 ……けど、やっぱりナザリックとか見ちゃうと、どうしても格差を感じてしょうがないってのは嫌でも分かる。あそこの感覚に慣れちゃうと如何せんここって狭くてかなわんのよね。

 

 

 

 

 時が経つのは早いもので、俺らのプロフィール欄から若葉マーク(初心者の証)が外れてそれなりの月日が流れており、今となっては日向で俺らを見て悪い意味で指差しゴニョゴニョする輩はほとんど居なくなったと言って良い。

 

 あの素人感丸出しの作戦は……まあなんとか上手くいった。いってしまった。

 

 俺らの血と汗と涙の結晶である珠玉のデータ類は瞬く間にネットでの炎上を鎮火させ、それを拡散させたアインズ・ウール・ゴウンの野郎共は一躍時の人……どころか、現世に降臨せし現人神として掲示板の住人たちに日々崇められている。

 異形種の神って……カルト系ギルドの実態に変な方向で真実味が増してしまったではないか。日々俺らの悪評が立たない程度に小出しに、データを世に放出させるバランス感覚には頼らざるをえないのだけれど。

 

 

 そんなネットの海に漂っている俺らの画像なり音声データを収集する作業が、最近のユグドラシル掲示板界隈での暇潰しとしては密かなトレンド。

 例えば、ある日のプチライブで「ブヒュー、チミの使ってるブヒ、使ってるブヒ!(超失礼な意訳)」と豚くんが教えてくれた、俺が丹精込めて吹き込んだボイスパックとやら。知らんがな。

 

 ……で、調べてみたらホントに無料で配信されてたでござる。

 一番DL数が多かったのが、『ぐららん妹姫これくしょん×12』というボイスパック。『兄への12種類の声掛けを12種類の呼び方でお届け! グラスランナーの小さなお姫様ボイスで吹き込まれた144発のシスコン悶絶セット』って……なにこれぇ?

 

 サンプルボイスを聞くに、俺がアインズ・ウール・ゴウンのギルメンに頼まれて吹き込んだ、適当なお兄様呼びの台詞集をアレコレして抽出・編集して作り上げたようで、これを作った人は本当に暇だったんだなと分かる一品だった。ご苦労様な話である。

 

 

 ――だが真実はもっと奇禍あるべし。

 

 最大の協力者であるアインズ・ウール・ゴウンのメンバー+1には、『プレイヤー名+お兄ちゃんお姉ちゃん』で吹き込んだ完全オーダーメイドの映像・音声集を一緒に作成して進呈したという事実がある。「モモンガお兄ちゃま! お米様抱っこして!」ってな具合だ。収録メチャクチャ大変だったよ……。

 

 性癖を常にオープンにしているバードマンを始めとして、一部のプレイヤー名と吹き込んだ名前が違う猛者がいたが……俺としてはそれなりに大事にしてくれれば何も言うことはない。こんな時代、せめてプライベートなところでは人はもっと自由であっても許されると思うのです。はい。

 

 彼は「こんな妹が欲しかった……」と地面を叩きながら切実に呟いていたので、肩に手をやりしみじみと慰めてあげた。現実は厳しく、俺みたいな可愛い妹が実際に存在するはずもないじゃない。

 

 しかしここは仮想世界……現実ではありえないものが存在する超空間である。

 当然、理想の妹っぽいキャラだってここに居る。中身が俺というちょっとばかし残念な要素は言わなければ分からない。世の兄君たちにとって、もっとも重要なのは外側なのだから。

 

 ぶくぶく茶釜嬢にもプレイヤー名と違う名前で吹き込んだ『貴方の妹ちゃんセット』を贈呈した。「こんな妹が欲しかった……」って、ピンク色の粘液溜まりになって弟君とおんなじこと言ってたのでやっぱ姉弟だなって思った。

 

 そしてそんな彼女には、ペロロンチーノ氏と同じ回答を呈しておいた。

 ――貴方にも家族がいるでしょう? 毒親でも穀潰しでもない家族なんだから大切にしなさい。ホントにボッチだと部屋を借りたり入院したりする時めっちゃ大変なんだから! と。現実的なアドバイスを添えて。

 

 

 ちなみに俺氏のボイスパック二番人気は『俺のぐららん娘これくしょん×12』である。

 残酷な成長を遂げた娘からの愛に飢えた、世の可愛そうなお父さんや、独り身で結婚はしたくないが娘は欲しい、しかし到底叶わないという切ないおじさま達のリビドーを12種類の呼び方で満たす癒やしのボイスパックだ。この国の将来は大丈夫かな^^?

 

 

 

 そうそう、ナザリックで思い出したけど、商人娘から当面は身の安全は確保できたと複雑そうに言われたのでたまに遊びに行くギルドの面々から、悪魔のお誘いが来るようになった。「僕達と契約して異形種になってよ!」というやつである。

 

 

 

 ( ゚ω゚ )< お断りします。

 

 

 

 もちろん冗談なんだろうが。

 でも確かにこの前「ログイン出来なくなるかも」って話してたギルメン居たし、ならメンバーの補充がてらどう?って感じの話の流れみたい。

 異形種への転化イベントも手伝ってくれるとまで言ってきてる。果たして、グラスランナーではなくなってしまった自分のアバターに価値が残るのかは甚だ疑問だが。

 

 所謂、ヘッドハンティングって奴? 社会人限定ギルドって話だし、ウチらのPTだと該当するの商人娘のみなんだが。……商人娘が拠点欲しがってんのと何か関連があるんすかね?

 最上位ギルドへの勧誘なんてそうそうあるもんじゃないし、商人娘が乗り気なら俺としては哀しいけど笑顔で送り出す所存である。

 

 

 俺ら? ハンマー娘共々学歴すら白紙ですが何か?

 

 一応今のニッポンだと就業可能年齢ではあるはずなんだが、専らゲームさせられてるので強制ニート状態であるというおまけ付き。普通の人事なら履歴書の白さを見て、お祈りメールを即用意するものの意味が理解できるか頭の出来を心配されるレベル。

 

 

 なるべく考えないようにはしているが、たまに本気で将来のことが心配になってくる。「まだ未成年の義母を働かせて食べるペレットは上手いか?」って煽られたら二重の意味でクソ不味いとしか答えようがない。

 これが何十年も続くとか、流石に申し訳ないのでなんとか現実での金策もしたいところだ。俺のボイスMODって売れないかな……。駄目だよにゃあ……素人の歌や声で金(ゲーム内通貨は除く)を稼ごうという濡れ手に粟的な思考自体が間違っていると言わざるを得ない(戒め)。

 

 

 あ、ちなみにペロロンチーノ氏曰く、自分たちのイメージに近い異形種だと俺が蠱惑魔、ハンマー娘が粘土人形(クレイドール)、商人娘がホムンクルスなんだって。

 

 俺はやたら植物系やら虫系の生き物と相性が良いところとか、獲物を自分の容姿(見せかけ)で自分の世界に引きずり込むところだとかが合いそうだからって。可愛い?って尋ねたら、一拍置いて可愛いって断言してたからホントに異形種になるならありかも。

 ハンマー娘は暇だったり疲れてるときによくフニャフニャの液状になってるかららしい。ならスライムじゃねって言ったんだが、属性的に水より土だそうで。上位種に武器をモグモグするタイプも存在するからそっちでも良いかもって言ってた。

 商人娘は、なんか話聞いてると人間形態以外想像出来ないからだって。まあうちの母上はやたら人間でいることにこだわってるフシがあるよね。

 

 

 

 

 それで、えーと、何だったか……ああそうそう、本拠点の話ね。

 

 ワガママな我がママのお達し通り、この間適当にフィールドを走ったり獣道を駆けずり回ったりしてしっかり(偶然)見つけてきましたでござる。拠点化できそうなギルドホーム系ダンジョン。自分で言っておいてなんだが、見つかるわけないというのは一体何だったんだろうか……。

 森林地帯に囲まれた砦っぽい何かで、規模としては最低クラスにちっちゃいけど。ダンジョンはダンジョンである。

 

 そんなこんなで、今日は久々にダンジョンアタックの予定である。アイドル活動も悪くないけど、やっぱたまには基本に立ち返って冒険もしなくちゃね!

 

 日課も手早く片付ける。野菜やら牛乳やら卵やらをまとめて収穫箱に収め、騎乗用のお馬ちゃんたちをブラッシング、もこもこの白黒羊にじゃれついていた尻尾の先が白い茶色狼ちゃんを指笛で呼び戻してモフる。

 

 彼女はこの前PTの皆でキャンプごっこをしていた時、即興で弾き語りしていた適当ソングを聞いて寄ってきた茶色でモフモフな生き物である。

 体型的に馬に跨る光景が滑稽なものとなる自分にとって、餌付け(テイム)に成功した今ではこの上ない良きパートナーなのです。肉系料理を作って餌付けしてくれたオカンや、首輪などのアクセサリーを手作りしてくれたハンマー娘には感謝の言葉しかない。

 なお彼女は拠点での農畜産系アイテム獲得効率アップというどっかの萌神様のような謎スキル持ちである。外に出るときはほぼ俺氏専用の騎乗用NPCみたいなものなので、内と外での役割がはっきりしていていいと思います(小並感)。

 まだ子どもっぽいけど、それはそれで一緒に成長できる楽しみがあるというもの。これから一緒に頑張ろうずという願いを込めてモフる、更にモフる。モフモフモフモフふひー、いい汗かいた!

 

 

 

 

 さ、満足したところで本日のイカれたPTメンバーを紹介するぜ!

 

 

 まず一人目。

 ハンマー娘は当然パーティーIN。微妙に消耗している装備品を修繕したり、少しずつ強化してきた愛ハンマー磨きに精を出したりと余念がない。今日は人数も多いので心なしかいつもの死んだ目がウッキウキで嬉しそう。え? 分からん? 俺には分かる。

 

 二人目。

 休日なので今日は朝から商人娘もパーティーIN。この日の為にしこたま貯めてきたダンジョン攻略用アイテムをうんうん悩みながら整理している。うむうむ、楽しんでおられる。こういうのって道具の準備から楽しいよね! ……でもなーんか爆弾の数多くね? いつものことだけどさ。

 

 そして三人目。

 ぶっちゃけ攻略するには絶望的に火力が足りなさそうなので、「来てたる~」って訊いたらば「いくたる~」と返してきた、特に自分のギルドでの予定もなく暇してたエルフ娘AKMも助っ人としてパーティーIN。まあ実際、近接型であるにもかかわらず魔法もそこそこ使える彼女の存在はありがたい。レベルも一番高いし。

 

 ラスト・ワン! 俺! 以上! 嘘! あと狼ちゃんとお馬ちゃん(戦闘不参加)! 閉廷!

 

 

 これで合計PCレベルが250くらいかな……? 純粋な戦闘職レベル換算だとガクッと目減りするのには目を瞑るとしても少々心許ないが……人見知りする商人娘のことを考えるとこれ以上戦力は増やせない。というか、これが正真正銘の全戦力なのでこれでいくしかない。どうにも不安だ……

 

 

 

 

 はーい、ここで皆に倣って俺も装備品の確認をしまーす。ちょけらっちょー。

 

 武器……たっちさんに貰ったでかくてキモい蟲甲ダガー。

 正直、彼らの性癖を知ってしまった今となってはなるべくなら使いたくないところだ。きっと自分の一部を幼気な女の子が一生懸命握って振るって汗を吸わせている(意味深)とか、そういう特殊なシチュエーションでハァハァしているに違いないので。外面だけはあの人完璧なんですがねぇ……。なんて残念な聖騎士なんだ。

 鍛冶職を鍛えているハンマー娘がそのうち格好良い剣を作ってくれるとのことなので、それまではこいつで我慢である。悔しいことに外見とは裏腹に性能だけは良いのでしょうがない。

 

 あ、小盾はリストラの憂き目に遭いそう。大型モンスター相手だと、パリィするにしても受け方が悪いとそのまま吹っ飛んでスタンしちゃうことが結構あったので装備倉庫行き候補になりつつある。俺が上手く扱えないばっかりにスマンね……。

 現在の左手メイン装備は、俺氏の自称ファンであるらん豚ちゃん(♀)からの頂き物、らんらん印のマンゴーシュである。普段は蟲甲ダガー両手持ちしてるから、狩人用剥ぎ取りナイフみたく腰の辺りで鞘に納まってるけど。振るうだけなら蟲甲ダガーよりも速いので、火力より身のこなし優先の時はこっちだけ装備したりする。一応パリィも出来ないことはない。

 これまたハンマー娘が俺のミニマムな御手々に合わせた短剣を作ってくれる予定。どんなのって訊いたらソードブレイカーだと答えながらキラキラした星を死んだ目の中に浮かべていた。彼女は俺までウェポンブレイクフェチの仲間入りさせたいと……そういうことなのだろうか?

 

 後はほぼ適当だ。ハンマー娘お手製の軽鎧(試作品・あまり意味はない)を付け、その上にいつもの淡い青・緑を基調色にしたローブ、他にもアクセサリーやらコルセットやら諸々身につける。ブーツは飛んだり跳ねたりしやすそうな見た目なのをチョイス。

 

 忘れずに無限の背負い袋(インフィニティ・ハヴァサック)に各種ポーションやダンジョン攻略用のアイテムをセット。これによりアイテムショートカット機能が使えるようになり生存率がぐんと上がる。

 ……しかしこんなオンゲでは基本的な要素すら、わざわざ専用アイテムを装備させないと使わせない運営はやっぱ糞だと思う。普通なら最初から使えてチュートリアルでも優しく使い方教えてくれるよね? アバターの外装に反映されない装備アイテムって点だけは評価するけどさ。

 

 

 よし、そこそこ強くて可愛い紙防御前衛型グラスランナーの完成である。

 

 最後に軽く飛び跳ねながらアバターの動作確認。ふわっと軽くバク宙を決め、両手武器を軽く素振りする。グラスランナーらしく、体重を感じさせないように動くのが格好可愛いく魅せるポイント。普通この量の装備を身に着けながらできることではないが、そこはゲームならではってことなんだろう。

 うーん……同時に使うどころか、ダガーを片手ってのはまだきついですな。腕力の問題と慣れの問題、解決するには時間がかかりそう。日本一のグラスランナーへの道は遠い。

 

 

 またナザリックのザ・ニンジャ:弐式炎雷氏や、ザ・サムライ:武人建御雷氏にご指導仰ぎたいものだ。紙防御高速機動型ビルドの俺にとってあの御方々のプレイスタイルは実に参考になるので。

 

 ニンジャ的には隠密状態から素っ首をパニって大抵のモンスターのHPを一撃で刈り取るあの火力は羨ましいとしか言いようがない。

 とはいえ残念ながら彼ほどの隠密性能はこのアバターには無く、敵の注意を引いてくれるような仲間の数も少ないのでまるっきり真似するという訳にもいかないのだが……むふふ、そこはオリジナリティの見せ所というもの。夢がひろがりんぐ。

 

 武人建御雷氏はマイ・フレンドモモンガ氏や姉避けエロゲーマイスターことペロロンチーノ氏らと並び、遊びに行った時には個人的に結構よく話す仲である。戦闘スタイルでの指南もそうだが、ユグドラシルに対する考え方がすげー合うのよ。

 俺らがしょっちゅう全滅してたり馬鹿やってる話を、負け癖が付くのは良くないと言いながらも楽しそうに笑って聞いてくれる御人なのだ。「それも良いだろう」って。武器が気になるハンマー娘に得物見せてくれるし、いい人過ぎね? うちの商人娘とはソリが合わないっぽいけど。

 

 

 

 得物をチャキっと鞘に納める。丁度PTメンバーも準備完了といった様子。

 

 ハンマー娘はショートパンツにジャケット、キャスケット帽、要所要所のみ防御装甲装備という出で立ち。戦闘モードに切り替えた強化版両手鎚が頼もしい。

 あと彼女は最近髪型を短めに変えた(一瞬)。エルフ娘と被ってたからね。よく似合ってるぞーと言うとふすーと鼻息を鳴らす。おーおー嬉しそう(ホッコリ)。

 

 商人娘は不本意だけど久々に本気で逃げ隠れせずに戦いますって感じ。

 黒髪ツインテにベレー帽、商人らしく品のある内着に防御効果のあるショートローブ、ベルトには毒々しい色の液体が揺れる試験管やらポーチやら短杖やら。そして背中には爆弾やら爆弾やら爆弾を詰め込んだ大きなリュックを背負う。

 可愛いぞーと言うとため息をつかれた。素直じゃないね。

 

 エルフ娘は一人だけ別格である。装備ランクが総じて高すぎる。聖遺物級とか伝説級とか。これでも控えめにしてるらしいけど。

 全体的に軽装で関節部以外に装甲系は装備してないけど、その必要がないほど布系装備の性能が高いってことなんでしょうね。羨ましいことで。

 得物は魔法発動体を兼ねた細身の直剣が一本。金髪ポニテにマントを翻したその姿はまさしくエルフの騎士……って表現でいいのかしら?

 カッコ可愛いいぞーと適当な賛美を送る。力を貸してもらう側じゃけんね。少しでも気分良くなってもらうに越したことはない。ホントにカッコ可愛いので問題もない。疑心は一切ないのだ。

 

 

 さあ出発というところで、エルフ娘がスクショ撮ろう撮ろうと言いだした。俺としても異論は無いでござる。

 良い装備ほど見栄えが良いのはこの手のゲームでは定番。更に今の自分達はそれなり以上の美少女パーティー、ここで記録しなかったらいつするんだってくらい。そうでなかったら色々と勿体無い気さえする。

 

 ちょっと贅沢だがエルフ娘が記録用のアイテムを使ってくれたので、拠点の前で4人と1匹並んだ良い写真がとれる。画像はアイテム化してくれるというので、楽しみにするとしよう。思い出はいくら有っても良いものだしね。

 

 

 

 よいぞー、ハイチーズ。 エヘガオダブルピース!

 

 

 

 

 

 § § §

 

 

 

 え? 道中? まあめんどくさいのでまさかの描写ほぼ全省略である。大体こんな感じ。

 

 

・転移ポイントから狼と馬に乗って移動しました。

 ←楽しい!

 

・森と砦を4人で攻略しました。

 ←アニマルズ待機

 

・罠がてんこ盛りでしたが俺氏とオカンの活躍で無事に乗り切りました。

 ←よゆう

 

・敵の武器持ちはハンマー娘が美味しくいただきました。

 ←うん、美味しい!

 

・エルフ娘が自分のギルド過疎ってきたからと俺らに合流したいと言い出しました。

 ← (^ω^)おっ?

 

・商人娘が露骨に嫌がってドス利かせて脅しました。

 ← ( ^ω^)おっおっ?

 

・それでもへこたれないので渋々承諾しました。

 ← (^ω^ ≡ ^ω^)おっおっおっ?

 

・というわけでうちにエルフ娘がやって来るらしいです。

 ← 今日貧乳エルフが来るんですか!? やったー!

 

・え? ギルド加入禁止期間が明けるまでは駄目なんですか?

 ← まだ来ないんじゃないですか! やだー!

 

・それまでにギルドの名前でも考えよう。

 ← かしこま!

 

 

 以上。今夜はお赤飯味のペレットになりそうな予感。

 

 

 

 § § §

 

 

 

 

 いやぁ……拠点ボスは強敵でしたね。というか、エルフ娘以外が弱すぎっていう話なんだけどね!

 

 

 大型の生ける鎧(リビング・アーマー)とか……ちょー硬いので俺の両手持ちダガーでもHPバーが1ミリも減りゃしねえ。

 その上奴さん物理一辺倒で俺氏の魔法防御特化が無価値無意味と、とことん相性悪すぎな相手だった。俺氏涙目。

 

 

 開幕、商人娘がありったけのデバフアイテムと爆弾を投擲、爆破から前衛三人の吶喊、後はその場の流れにまかせて臨機応変って――適当過ぎぃ!

 

 俺は今回ひたすら挑発連発と回避タンクもどきに徹しました。

 攻撃は捨てた。修行はしたが、あの虫ダガーではハッキリ言ってこの戦いにはついてこれそうもないという無慈悲な戦略的即決である。

 いやはや光学幻影系スキルの《プレッシャー・デコイ》がいい感じにハマって助かった。近接スキル扱いなのでMPいらないし。

 この前覚えた単純な手品みたいなスキルだが、このスキルを覚えてから必中攻撃を回避する余地が出来たので、手も足も出ずに被弾して死んでしまう機会はグーンと減った。アクロバット系スキルと併せて質量を持った残像ごっこが捗る捗る。なおプレイヤー相手だと面倒臭がられて周囲一帯吹き飛ばされて終了する模様。

 

 商人娘は今回逃げずに頑張ってた。俺らが自前でポーション使うのを見計らって、それよりランク下のポーションを同時に使うことで自分へのヘイトを回避するという小悪党っぽい技を駆使して疑似ヒーラーっぽい動きしてたよ!

 

 ハンマー娘も流石に大きさ的に厳しい大剣の破壊は早々と諦め、足の小指の先を執拗に狙って叩き潰すという地味に痛そうな攻撃を連発。あれ中身入ってる敵だったら痛撃ボーナス入って一発KO出来てもおかしくないと思う。

 

 んでもって今回のMVPのエルフ娘。エンチャント系はやっぱり映えるわー。俺には無理だけど。

 まあレベル的に当然っちゃ当然って話よね。居なかったらまた全滅してた。それどころか、もうあいつ一人でいいんじゃないかなって。それなりに時間はかかりそうだけど。

 これで遊び入ってるビルドだってんだから恐れ入る。え? これが普通? 嘘でしょ……(白目)

 

 

 

 

【 本日のダメージレースの結果 】

 

 俺 : カス

 

 ハンマー娘 : こうかはいまひとつのようだ

 

 商人娘 : 開幕ぶっぱ。よくがんばりました。

 

 エルフ娘 : こうかはばつぐんだ!

 

 

 

 

 トドメは順当にエルフ娘でした。ピカピカ光る直剣で粗方ボスのHPバー削りきって試合終了。剣を残して消滅していく金属鎧。そしてログに表示される、【拠点獲得】の文字。

 

 商人娘は感激で泣いてる。ハンマー娘は鼻息鳴らして満足気。エルフ娘はいい汗かいたーって伸びしてる。

 

 初期ギルド武器は、リビングアーマーが振るっていた大剣がそのまま配置された。他に適当な物もないし、とりあえずこれでいいかなって。

 

 『さっさとギルド登録しろよオラあん!』ってシステムコールされたんで、まあ適当でいいやと『いつか美味しいご飯食べ隊』で登録。後で変更しよっと。

 

 

 

 

 

 

【ぐららんむすめ】

 やったねみんな! きょてんができたよ!

 

【しょうにんむすめ】

 ねんがんの ぎるどきょてんを てにいれたわよ!

 

【しんだめのむすめ】

 ……よゆう。べつにひとりでもかまわなかった。

 

【えるふむすめ】

 じつは、おいわいのけーきとか、かってあっちゃったりなんかして!

 

 

 

 

 ――この夜、むちゃくちゃ盛大にお祝いした。

 

 

 

 

 

 § § §

 

 

 

 

 

 数日後。

 

 

 さあ今日も朝から頑張るぞい!とログインした俺とハンマー娘の頭の上に浮かぶ折れた旗のアイコン――なにこれ? へー、『敗者の烙印』ってやつ? 自分のギルド武器壊されると出てくるマークね。ほーん……。

 

 

 ……というわけで、何処からともなくやってきたプレイヤー共に襲撃され、俺達はやっとの思いで手に入れた拠点を失ったらしい。倉庫に入れたアイテムと金貨を道連れにして。まあ……こうなることは分かっていたよね?

 夜討ち朝駆けすら置いてけぼりにする速攻劇。流石にこれはどうしようも無い。一応罠は商人娘が設置していたはずだが、所詮間に合わせ程度じゃあ大した意味もなかろうてからに。

 

 ハンマー娘はまた目が死んでおられる。商人娘は悲嘆に暮れてべそかいてる。エルフ娘(フリー)は苦笑い。話を聞いたモモンガ氏は「あちゃー」って感じ。

 

 え? 俺は悔しくないのかって?

 そりゃ悔しくないこともないけど、結果が残当過ぎて先に述べた通りまーそーなるよねってなんとなく思ってたし(震え声)。

 そもそも、俺らみたいな色んな意味で有名になっちゃっただけの少人数PTが、防衛力無いのに無理していいところ確保しようとしてもって話である。商人娘には悪いけど分不相応としか言いようがない。(幼女の男泣き)

 

 

 ……それにしては拠点取られるの早過ぎる気もするが。

 だって昨日の今日だべ? 俺とハンマー娘の豪運で見つけた未探査拠点だったから、どこぞの誰にも知られてないはずなんですけど。

 

 ――これは、裏切り者がこの中に居るということなのでは?

 拠点の防備が整っていないこの時期に、俺達の留守を狙って襲う輩を招き入れた不届き者が……!?

 

 

 冷や汗をかきながら視線を横に動かす。獅子身中の虫がこの三人の中に?

 俺の視界には、転職先が決まって辞表を出したところで肝心の転職先が倒産した時のような気まずそうな顔をしてるエルフ娘と、イライラをクズ武器に叩きつけて素材アイテムに変換しはじめたハンマー娘と、地面にのの字書き連ねていじける商人娘。 

 

 ……うん、ないな!(確信)

 きっとたまたまプレイしていた奴らがノーガード戦法を展開してる拠点をみつけちゃったからヒャッハーしちゃった結果なのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 ……やっぱり俺としては今こうして使ってるレンタル拠点(出戻り)で十分だな。(おきらく)

 

 駆け出しプレイヤーの懐にも優しい価格設定の維持費、地上2階地下1階の一戸建て(初級生産施設付き)+庭+小牧農場+αって今のニッポンだとありえないくらい勝ち組の住宅環境だし。ちょっと狭いけどこの人数じゃ無駄に広くても困るというもの。

 

 レンタル拠点は色々とショボい代わりに他のプレイヤーに襲撃されることもないので、保管してたアイテムやら整備した施設やら一夜で失うこともない。従って防衛設備にコストを割く必要もないのだった。

 

 

 

「もうずっとここでいいんじゃないかな……ねえ? そう思わない?」 

 

 

 

 俺の言葉に商人娘が泣き始めた。ごめんね、また新しい拠点ダンジョン探しにいこうず。

 でも、その前に適当に決めちゃったギルド名、ちゃんとしたやつ一緒に考えよ? ノリで決めたのいつまでもぶら下げてると恥ずかしいから、ね? いい子だから泣き止んでおくれやすー。

 

 更に大声で泣き始めた。どないせーっちゅーねん……。

 

 

 

 




【蠱惑魔系オリ主】
・金策は下手(今更)
・実はPTで一番瞬間火力がない


【武器もしゃハンマー娘】
・今のハンマー:ぐっど・いんぱくと
・大きい敵は身体の端を狙えってどっかのちびが言ってた。


【糠喜び娘】
・破産しました


【魔法剣士あけみ】
・つおい。Lv.80か90くらい
・オリ主とはズッ友の誓いをたてた
・実は着痩せするアバター



↓ あとがき ↓


 新しい拠点ダンジョンを手に入れたらまずはちゃんと防衛設備整えましょうというお話。このまま人手もお金も無いオリ主たちには到底無理なのでした。


 オリ主は今、魔法は効かないけど素早く動けるだけの雑魚とかそんな生き物。経験値くれないメタル系粘液生物っぽい何か。
 戦闘職レベル大してもってないし、たっちさんの武器それほど強くないし、危機感薄いし、まーこのままなら転移後間もなくマーレきゅんにフルスイングくらって頭パーンコースです。

 あれほどあったたっちさんラブはもう空の彼方ですね。幼女にprprされるほど慕われてるから許してとは一体何だったんでしょうか。本編非レギュラーキャラの扱いなんてこんなもんです。戦闘シーンさえ見せれば多少見直してくれるんでしょうが、そんな機会一度もこないのでオリ主の扱いは変わりません。


 商人娘は異形種恐怖症は物語スタート時より若干治まっています。が、まだ生理的に無理な種族は無理なレベルなので、今更そんな連中の仲間入りは御免よーというお考えのようです。私もうギルド拠点まで作っちゃってますから! 御免遊ばせオホホとか言ってお断りするつもりだったんでしょう。


 ハンマー娘は色々作ってます。万能な鍛冶生産職適正持ちなのでホントに自由にガラクタ作って遊んでる。そんでとりあえず作ってみたへたくそな軽鎧をオリ主が気に入っちゃったもんだから恥ずかくて「うーあー」とか布団の中で唸ってる。そんな状態。
 エルフ娘と髪型被ってたので自分から変えた。自分から変えろとは言わない臆病だけど良い子。


 速攻拠点奪われちゃったのは、相変わらず人間種至上主義のプレイヤーには嫌われていたり、熱心なストーカー気質なプレイヤーがオリ主の残り香を求めて殺到したせい。つまり元を正せばあれもこれもオリ主のせい。ちゃんと普段から防諜しとかないから居場所とかモロバレしてこうなる。(呆れ)


 レンタル拠点は初心者用のチュートリアル施設を多少マシにした程度のイメージ。割となんでも出来るけど、上級施設にはなれない。そんなお家。

 狼ちゃんは留守番NPCの鑑。野菜取ったり牛乳絞ったり羊毛むしったりもできる。きっと今に美少女NPCにワープ進化する萌え方向にド定番な運命を歩むことでしょう。



 次回は血迷ったエルフ娘のお話。




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