黒い炊飯器と無個性の少年 作:名無しの炊飯器
邂逅
「なにこれ?」
ぼく、みどりやいずく。
かっちゃんとかほかのひとたちには『デク』ってよばれてるんだ。
『出久』っていうぼくのなまえが『デク』ってよめるんだって。
さいしょはいやだったけど、もうなれた。
かっちゃんはあたまがいいし、『こせい』もつよいからぼくのあこがれなんだ。
──ぼく?ぼくは『むこせー』なんだ。なんにもできない、ざこなんだって。
そんなむこせいなぼくがなにをしているかというと……
ちょっとちかくのもりにいってみたんだ。きになって。
そしたらおうちにある『すいはんき』?がくろくなったみたいなものをみつけたんだ。
でもこわれてるみたい。たたいても、たたいてもぜんぜんうごいてくれないんだ。
『────』
私……
私は……?
そうだ、私はレプリカ。多目的型トリオン兵のレプリカだ。
修や仲間たちを助けるために、私はアフトクラトルの遠征艇に強制帰還命令を出したのだ。
その後のことはよく覚えていない。確かミラに遠征艇の外へ棄てられたような気がするが……その前後が朧げだ。
記憶を消されてしまったのだろうか?いや、ユーマ、オサム、玉狛支部……なるほど、大概のことは思い出せるようだ。
私が遠征艇に乗ってからこの場に来るまでの記憶だけが定かではないのか……。
────まずは情報確認が先決だろう。
まず体……あるな。切断されたはずの体がある。
次にトリオン……正常。MAX値よりは少々低めか。
最後に場所……森、か。
その時何か走ってくる音が聞こえた。初めて見た私が言うのもなんだがこんな辺鄙なところにわざわざ人が来るものがいるとは考えにくい。
私を追ってきたのだろうか。ならとりあえず迎撃の準備を……
「なにこれ?」
────ただの少年?
緑髪でユーマとは違うベクトルのくせっ毛の少年が来た。私が動かないと思ったのか、遠慮もせずにベシベシと叩く。
私自身痛覚は存在しないが……そうもずっと叩かれるとこちらにも思うところがある。
だがこの少年には私の姿を────いや、今更だろう。既にこの体を見られているのだし、少しくらい喋ったとしても驚くことはないはずだ。恐らくは。
『少年、叩くのをやめてくれないか?』
「うわぁぁぁあ!?ハッ!?」
驚かしてしまったようだ。私のようなものは近界の者達には珍しくないと思ったのだが、どうもそのようなことは無いらしい。
いや、彼が子供だからか?いや、今の情報一つで片付けられることではないだろう。
『すまない、驚かしてしまったようだ。私の名前はレプリカ。ユー……いや、自律型トリオン兵だ』
「れぷりか?とりおん?」
そうか、全く分からないのか。でもその目の輝きはよく見た事があるものだ。
何かに興味を抱いた者特有の目をしている。
『そうだ、私の名前はレプリカだ。君に聞きたいことがあるのだが構わないか?』
「う、うん!!ぼくもれぷりかにききたいことがたくさんあるんだ!」
『そうか、ならば情報交換といこうか』
これは無個性の少年が自立型万能相棒との出会いを機に、ヒーローへの道を駆け上がっていく物語である。