黒い炊飯器と無個性の少年   作:名無しの炊飯器

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個性診断

 「おかーさんただいま〜!!」

 

 

 現在時刻は午後4時34分28秒、29秒、30秒……。この世界の地球の自転や現在位置等を計測して導き出した結果だ。

 ボーダーのあった玄界ではイズクくらいの子どもは凡そこの時間に帰ることが推奨されている。

 

 ふむ、イズクは良い子だな。

 

 

 「おかえり、出久。あら、それはなにかしら?変なもの拾ってきちゃだめよ」

 

 「レプリカ!!」

 

 

 イズク、多分それだけでは分からないだろう。

 

 ……いや、私も言葉足らずだったか。この年齢の子どもに「自律型トリオン兵」と言っても伝わるわけがない。

 せいぜい見た目が炊飯器みたいとか私の名前くらいしか覚えることはできないだろう。

 

 

 「レプリカ……?」

 

 

 イズクの口から状況を説明してもらおうかと思っていたが、それではダメだな。断片的な説明でイズクの母親を困惑させるわけにもいかない。

また驚かれるかもしれないが、致し方ない。

 

 

『こんにちは、私はレプリカだ』

 

 「ひょえぇえぇえっっ!?」

 

 

 中々良い驚きっぷり……いや、失礼か。これ以上考えるのはやめておこう。

 

 

『驚かせてすまない。私はイズクの『個性』としてつい先程生まれた』

 

 「出久に『個性』が!?診断してもらった時には出久に『個性』なんて……」

 

 

 正体不明の黒い何かよりも、私自身がイズクの個性であることにした方が都合がいい。

 

 イズクによれば『個性』という名を冠しているだけあってその種類は多種多様。

 私のようなものが一つ混じっていたとして何ら問題はないだろう。

 

 

 「そーだよ!!これがぼくのこせい!」

 

 「出久、よかったね……!!」

 

 

 満面の笑みで喜ぶイズクと彼に抱き着いて滂沱の涙を流す母。

無個性というものはこの世界においてそれほどまでにひどい扱いを受けるのだろう。イズクの母の涙がそれを物語っている。

 

 ────私は彼を、彼の家族を救えたのだろうか。

 ユーマならなんと言うだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ねーレプリカー」

 

『どうしたイズク』

 

 

 今私はイズクの私室にいる。その部屋はとある有名人でいっぱいだ。

 髪の一部がVの字にピンッと立ち、体は筋骨隆々を体現したかの如きマッスル。どこかのコミックか何かから飛び出てきたような風貌だ。

 

 

 最初に部屋に入った時私は開口一番

『イズク、この絵はなんだ?』と聞いたら

 

 「えじゃないよ、しゃしんだよ」と言われた。

 

 

 こんな彫りが深い人……人?が現実に存在するのだろうか。

 そしてこの体……身体能力増強系のトリガーを使ったとしてもここまでにはならないだろう。

 

 さて、回想はここまでだ。イズクの話を聞くとしよう。

 

 

 「レプリカはどうやってここにきたの?ずっとあそこにいたわけじゃないでしょ?」

 

『話せば長くなるが────いや、これはいつか教えることにしよう』

 

 「いまじゃだめ?」

 

『ダメなわけではないが、君が聞くにはまだ早いと私は判断した。いつかは話そう、これは約束する』

 

 「……わかった。じゃあレプリカは何が出来るか教えて!」

 

『了解した』

 

 

 イズクと私の個性談義は朝まで続いた。

 

 結果、イズクの母に二人一緒に怒られてしまったよ。ユーマの生活に合わせていたためか、同じように不眠不休で行動出来ると考えてしまっていた自分を恥じる。

 

 今日の幼稚園はイズクが疲れて行くことが出来なくなってしまった。

 

 その代わりに午前中にしっかり休養をとって、午後からイズクの個性診断をしに出かけることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「これが……君の『個性』?」

 

 「うん、レプリカっていうんだ!!」

 

 やはり私のような形態の『個性』は珍しいらしい。いや、私は『個性』ではないのだが。

 

 現段階で私のことを本当にイズクの『個性』か否か、見分けることが出来る可能性は皆無のようだ。

 

 「喋ると言っていたけど……」

 

『そうだ。私は喋ることが可能だ。初めまして、私はレプリカと言う』

 

 おお、と個性診断の先生は感嘆の声をもらす。

 

 私も同じ立場だとしたらそう感じるだろう。

 トリガーも初心者が使用するのと熟練者が使用するのとでは精度に雲泥の差がある。

 

 それは『個性』も同じだ。診断の先生が話してくれたことだが、持ち主とは独立して思考や判断ができる『個性』は総じて持ち主と似た思考回路をしているそうだ。

 

 持ち主の成長と共にその思考回路も育っていくという。

 

 

 「こんな年端もいかない子どもに似つかわしくない言葉遣いをするね」

 

『私もそう思う。私は周囲の情報を蓄積、解析することも可能だからそのおかげだろう』

 

 「レプリカすごーい!!」

 

『お褒めに預かり光栄だ、イズク』

 

 

 君の個性なのに保護者みたいだな、と言って診断の先生は個性届けに私が話した事と概ね一致する内容を書いてくれた。

 

 

 

 

 

 

『個性︰レプリカ』

 

 異形自律型個性。周囲の情報を蓄積・解析が可能。

 

 持ち主を纏っての身体強化、その他『印』と呼ばれる能力の行使が可能。

 

『印』の効果は「強化」、「射撃」、「シールド生成」等多岐にわたる。

 

 その全貌は計り知れないが、今挙げたものだけでもとても万能性の高い個性。

 

 

 

 

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