黒い炊飯器と無個性の少年 作:名無しの炊飯器
「こっちだイズク」
私はイズクを人目につかない場所と安全に周りを見渡せる場所……近場のビルの屋上を提案した。
イズクはこれに了解してトリオン体に換装。
比較的人のいない路地を走り、ビルの真下に到着すると「設」印で作成したグラスホッパーを使って1番上までひとっ飛び。
あっという間に事件の全貌を見渡せる場所まで来れたわけだ。
たくさんの野次馬がおり、中々に混沌とした状態である。現在そこにいるヒーローはシンリンカムイにMt.レディ、デステゴロ、バックドラフト……。
だかしかし、相手は爆発系の個性。迂闊に手を出せないでいるのか──
「か、かっちゃん!?かっちゃんじゃないか!?」
『む、確かに彼と外見と個性は99.9%一致するが──』
「そういうことじゃないよ!助けないと!!」
イズクはそう言っている。
が、ヒーロー免許を持たないものが個性を使用するということは、それ即ち自警団という扱いを受けてしまう。
『それでもイズクは行くのか?』
「行くよ。第一今の状況を見ている限りだとシンリンカムイは爆炎系個性には弱いしMt.レディは2車線以上じゃないと周りに被害が及んでしまうしバックドラフトは被害が広がらないように消火活動で精一杯だし他のヒーローは相手が子どもだから迂闊に手を出せずにいるわけでこの状況を打開するには新たな戦力が必要なんじゃないかなと思うしそれに──」
『ストップ、ストップだ、イズク。考察もいいが行動に移さなければ目も当てられない惨状が広がるぞ?』
「えっ……?ぁあぁぁあああ!!!」
カツキはドロヴィランから逃げ出そうと必死だが、あれでは周りに被害が及ぶだけだろう。
だからといって無抵抗ならそれはそれでまた別の嫌な事態が迫ってくるわけだが。
『まあ、最後に決めるのはイズク自身だ。結局どうするんだ?』
「行くよレプリカ。力を貸して」
『了解した』
「でもトリオン体に換装したからと言っても多分バレちゃうよね?」
『そうだな。だから私にいい考えがある』
「ほんと!?」
なんてこった!Holy shitだ!
私のせいでヴィランを逃してしまったじゃないか!
今の私は力の使いすぎでマッスルフォームになれずにいる……クソっ!
……おや?あそこにいるのはさっきの少年と少年の個性?だが服装が違うような……?
結論から言うと私がイズクの頭にまとわりついたのだ。イズクの頭が私の頭に置き換わった感じだな。
置き換わったと言ってもイズクの頭部をどこかに切り離した訳では無いからな。
この状態ならばイズクだとバレることはないだろう。恐らくは。
「
ビルから身投げするように真っ逆さまに飛び降りた。それに気づいた野次馬たちがなんだあれは!自殺か!と叫ぶ。
これもイズクの作戦のうちだ。
気づかれるかどうかは賭けになるが、落ちている途中に気づかれようともその後で気づかれようともヴィランの注意を引くことが出来るからだ。
落ちている途中で気づいてくれたのは僥倖だったな。
騒ぎに気づいてゆっくりとヴィランがこちらを向く。
──そこだ
私は『設』印を空中に配置してグラスホッパー生成。イズクの真下と敵に向かってジグザグに配置した。
ジグザグとはいえ身体を投げ出した人がいきなり高速移動を始めれば狼狽えるないし身構えることはするだろう。
確かこの技は『
アレは回避用だったが今回は回避兼接近用というところだろう。
三次元的に配置された光の通路の意味を理解するものは少ない。それは私たちにとってはありがたいことだな。
イズクが1つ目のグラスホッパーを踏み、加速が始まる。
訓練でも『
その割には上手くいっている。もしかして似たようなことをノートに書き記していたのだろうか?
ボンボンボンボンとジンが持っていたどこかのバトル漫画のように音を出しながらジグザグに飛んでいく。
さすがにドロのヴィランも投身していたやつがいきなり立体機動をし出すとは到底思わないだろう。
何とか迎撃を試みようとカツキの個性を使おうとするが、予想以上に反攻しているようだ。
ヴィランは中々に上手く爆破を使えない。
「
イズクはその隙を衝いてグラスホッパーと『強』印を併用して一気に肉薄。カツキに触れて次の印を使う。
「
カツキの身体に直接『鎖』印を付加。彼の身体から伸びた鎖を引っ張り一気にドロヴィランから引き離す。
「なっ!?テメェ!」
慌てふためくドロヴィランをよそにイズクはゆっくりとした動作で構えを取る。
「
純粋な身体能力を強化し、唸りを上げて拳を天に向かって突き上げた。
「SIETE SMASH!!」
その拳は空に立ち込めた暗雲を振り払い、新たなるヒーローの誕生を祝福するようでもあった。
SIETE SMASH ︰名前の通りそのまま。SIETEはスペイン語で「七」という意味だったのと語感がSEVENよりはいいかなぁと思って……。