黒い炊飯器と無個性の少年   作:名無しの炊飯器

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ヒーローとは

「ヴィジランテ……いや、ヴィランか?」

「どちらにしても捕まえなきゃな」

 

 ヒーローの誰かがそう言った。確か『自警団』という意味だったか。

 

 この世界ではヒーローが存在しているためにそんな非合法な集まりは必要ない。

 よって犯罪となっているわけだ。

 

 

(さてイズク、どうする?)

(どうするって逃げるに決まってるでしょ!?)

 

 

「先制必縛━━━━」

 

『まずいな……』

 

 シンリンカムイがこちらに腕を向けている。瞬間的に腕から樹木を伸ばして相手を拘束する必殺技だ。

 

 捕まってから逃れることは容易だが、それにはシンリンカムイの樹木を破壊しなければならない。

 

 捕まらなければ大丈夫、という訳では無いがこれ以上私達は余罪を増やしたくなかった。

 

「ウルシ鎖牢!!」 「『錨』印 +『射』印(アンカープラスボルト) !!」

 

 

 迫り来る樹木に対してイズクは焦らずに印を展開。

 

 瞬く間に樹木は錘だらけになってしまいシンリンカムイは行動不能となった。

 

「ぐあっ!!クソ、痛くないけど重いぞコレ!」

 

「シンリンカムイ!!」

 

 他のヒーローが錘を壊そうと頑張っているがアレはそう簡単には壊れない。

 

 まあ確かにシンリンカムイを直ぐに復帰させれば私たちを捕まえることも容易だろうが……。

 

 

「━━ッ!!『弾』印(バウンド) !!」

 

「あ゛〜もうっ!!逃げないで!!」

 

 先程まで小さくなっていたのか、Mt.レディが突如目の前に現れてこちらに掴みかかってきた。

 

 間一髪で避けられたが、握りつぶされれば一溜りもないぞ、イズク。

 

「分かってる。でも、一つだけヒーローたちに言いたいことがあるんだ。レプリカ、僕が今から言う言葉を復唱してくれないかな?」

 

『イズクがそう決めたのなら、私はそれに従おう』

 

 イズクは三階建ての一軒家の上に降りたってヒーロー達を眺めた。

 

『ヒーロー、あなた達は……』

 

 スウッと1拍置いてイズクは言った。

 

『本当に彼を助けようとしていましたか?』

 

 ヒーロー達は少し焦ったようだった。見透かされたのがそこまで悪手だったとは思えないが。

 

 

「『設』印 カメレオン 」

 

 

 周囲の風景と同化するトリガーを使用して私たちはさっさとその場から逃げ果せた。

 

 イズクだって状況は分かっている。

 だけどそれでも我慢ならなかったのだろう。ヒーローたちがカツキを後回しにしていたことを。

 

 

 

 

 

 

 事件の翌日、カツキはニュースなどに取り上げられ、プロからもスカウトが上がるほどの個性として一躍有名になった。

 しかしその一方でもう一つのニュースが波紋を広げている。

 ヒーローが他のヒーローに頼ってしまう、というニュースだ。

 

 事件のあらましを見れば仕方ないといえばそうかもしれないが、人を助けるはずのヒーローが他人頼りになってしまうというのはマスコミの恰好の的となってしまった。

 

『ヒーローの質の低下』、今回の事件でそれがしっかりと世に現れたといえるだろう。

 

 そしてカツキを助けた謎の戦士、ヴィジランテだったり謎のヒーローだったりと言われるが、他に類を見ない特殊な個性ということで話題になっている。

 

 最後に残した言葉もヒーローの質の低下を示唆していると推測されているようだ。

 

 空中移動やパワー強化、鎖の生成……ネットではどんな個性なのだろうかと熱い議論や大喜利が交わされていた。

 

 ヒーロー達の間では彼の者をスカウトするかお縄にかけるかと意見が分かれているようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてヘドロヴィラン事件から2日後、私たちはカツキに体育館裏に呼び出されていた。

 

「おい、デク」

「な、何、かっちゃん?」

 

「あんなクソカスはお前がいなくても俺だけでどうにかなった」

「━━━━!?」

『分かっていたのか?』

 

 その問いにカツキは当たり前だろ、と返した。

 

「完全にレプリカの顔のまんまだっただろ」

 

「確かに……」

 

「助けなんていらなかった、それだけだ。お前が助けなくてもどうにかなったんだからな!!」

 

 そう言うとカツキは踵を返して走っていってしまった。

 

「僕、余計なことしちゃったのかな」

『そんなことはないはずだ。カツキなりのケジメの付け方だったんだろう』

 

 

 自分と同じくらいだと思っていた人間に助けられるというのは存外心に響くものだ。

 カツキがそれを飲み込んでに「ありがとう」の一言で済ませられる人間ではないことを私は知っている。

 

 だからこうした。

 お前が来なくても大丈夫と言った。本当に大丈夫だったかは定かではないが、それを言うこと自体にケジメとしての意味があるのだろう。

 

 イズクもカツキの性格は知っているはずだが……まあ、少々鈍感なのかもしれない。

 

 

 

 

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