Q.あなたが部活をつくるなら何の部活を作る?
「野球部っす!高校生になったら絶対に甲子園に行くって決めてるんす。だから野球部以外考えられないっす!」
「サッカー部かな。子供のころからやってたしサッカーやってるだけでモテるからね。ほら、今日も下駄箱にこんなにラブレターが入ってる。まったく困っちゃうよね」
「私は絶対軽音楽部!歌って踊れるボーカルやるの!ギターも弾きたいしドラムも叩きたいけど絶対ボーカルがいいの!」
「某は剣道部でござる。某の家系は代々剣の道に進むのがしきたりとなっているでござる。そのため幼き頃から竹刀を振り回す毎日。高校でも剣を握るのは自明の理。ただそれだけでござる」
「僕は帰宅部かな。家に帰るのが僕の生きがいだからさ」
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「なんと言うか皆ただただ自分の入ってる部活の所属動機を話してくれただけだったな」
1週間にわたり聞き込みを続けてみたが有力な案は出なかった。部員の成果ももちろんゼロ。なんというか満身創痍であった。
「なあ、サエコ嬢はなにか部活に入ってたっけ?」
隣の席のサエコ嬢に声をかけてみた。
「あたしが部活をやるって柄かい?そうゆうのは真面目な人間がやるの。あたしは不真面目な人間だから部活なんてやってないね」
サエコ嬢は気だるげにそう言うと机に顔を伏せた。耳がこちらを向いているので息を吹きかけてみる。フゥ
「次やったら窓から蹴落とすから」
僕の頬はいつの間にか赤く腫れあがっていた。ジンジンする。
「いきなり裏拳は女性としてどうかと思う」
「蹴り入れられなかっただけマシだと思いな」
ここは素直に引き下がるのが賢明か。でも息を吹きかけた瞬間のあの恥じらう乙女のような顔。可愛かったな。
「可愛かったな」
「あんたもしかしてマゾ?そんなにあたしに殴られたいの?」
おっと、本日二つ目の地雷を踏みぬいてしまったらしい。ここは慎重に手探りで地雷原から撤退するとしよう。
「いやいや、僕が言った可愛いってのはサエコ嬢の横に佇んでいるカメムシのことだよ。サエコ嬢はそのカメムシと比べると全然、いやホント全然可愛くないよ!」
ガコンッ
サエコ嬢が僕の後頭部を鷲掴みにし机に叩きつけた。痛い。いやマジで痛い。額が割れそう。
「次は無いって言ったよね?」
仏の顔も三度までらしい。いや多分今のサエコ嬢の顔は仏というより不動明王だと思うけど。
「ご、ごめんごめん。いやほら、サエコ嬢なんか疲れた顔してたから僕のジョークで疲れを取ってあげようかなって思ったんだ」
「あんたのジョークのせいで疲れが増した気がするのは気のせいだよね?」
こうなったら強引に話題を変えるしかない。
「さっきに質問の続きだけど、サエコ嬢はもし部活を作るとしたら何の部活をつくりたい?」
「話逸らしてんじゃねえぞ」
今日一のプレッシャーだ。だが、ここで押し負けるわけにはいかない。
「僕はサエコ嬢だからこそ今の質問をしたんだよ。もう頼りになるのはサエコ嬢しかいないんだ。頼む!僕の今生の質問に答えてくれ!」
「そ、そこまで言うんだったら仕方ねえ。一度だけだからな」
いや、ちょろい。ちょろいぞサエコ嬢。
「ありがとう!それじゃさっきの部活の質問だけど」
「なんの部活作るのかだったよな。そうだな、あたしはこう何て言うか…」
「なんて言うか?」
「青春…、どんな奴が入っても青春出来る部活があればいいなと思う」
ん?
「いやいやサエコ嬢。それは部活の前提条件だから何の部活を作るかの答えにはなってないと思うんだ」
「わ、わかってるって!それでもあたしは、どんな奴が入っても青春出来る部活、そんな部活を作ってみたい」
なるほど、いや、これはアリか
僕が一人考え事をしているとサエコ嬢は言い訳をするように一人早口でまくし立てていた。しかし、僕の耳にはその声は届かず、頭中にあるのは先ほどのサエコ嬢の言葉のみであった。
どんな人が入っても青春できる部活。多分そんな部活はこの学校の部活全部探しても見つからないだろう。人の数だけ青春があるから、皆色んな部活に入るのだ。
でももし万が一皆が青春できるような部活があったとしたら、それはどんな部活だろう。青春を…探す、いや試す…。
そうだ!皆が思う青春っぽいことをひたすらやってみる、そうすればどんな人でも青春を手に入れることが出来るのではないだろうか。
ただひたすら青春っぽいことをする部活。名前は……青春部。これだ!!
「ありがとうサエコ嬢!サエコ嬢のおかげでいい部活がつくれそうだ!」
僕はそう言うと教室を出てボンチのクラスに飛び込んだ。
「おい、ボンチ!何の部活作るか決まったぞ!青春部、青春部をつくろう!」
「待て待て落ち着け。いきなり来て意味不明な事を口走るな。時は金なりと言うが焦りは禁物だ。事のあらましをゆっくり俺に話して聞かせろ」
僕は先ほどサエコ嬢と話した内容をボンチに伝えた。ボンチは幾何は首を捻った後、口を開いた。
「その案、のった」
こうして僕たちの部活、青春部は今産声を上げようとしていた。
「どうでもいいけどお前、なんで頬腫れてるの?」
「この案のために差し出した対価の結果だよ。正直な話めっちゃ痛い」