「すまん!やっぱり無理そうだ!」
この人は末永芳樹先生、ボンチのクラスの担任だ。末永先生は申し訳なさそうに顔を下げると下から伺うようにボンチの顔を覗いていた。
「先生には先生の都合があるでしょうし、それはしょうがないですが理由ぐらいは聞いてもいいでしょう?」
ボンチは静かにそう告げた。
「いや、実はここ一週間でボンチ君以外から二人の生徒から顧問をしてくださいと言われてしまってな。断るのもあれなんで了承してしまったのだが…」
「それなら先に約束をしていた、俺たちの顧問を断るというのは可笑しな話じゃないですか!」
末永先生は申し訳なさそうに口ごもるだけで肝心の理由を述べようとしない。すると後ろの扉が開く音が聞こえた。
「先生、それ以上言う必要はありませんわ」
扉から現れたのは金髪美女であり我が校の生徒会長、霧崎妃花であった。
「な、お前は…」
ボンチは驚愕に顔を染めていた。と言うか僕が置いてきぼり過ぎて肩身が狭い。
「あなたが部活を作るというのを聞きましたので、こういう処置を取らさせて頂きました」
いかにも生徒会長であるって喋り方だ。僕もこういう喋り方したらモテるかな。いや、サエコ嬢にど突かれるのがオチだから止めておこう。
「末永先生には先ほど言った二つの部活の顧問をしてもらいます。ですから、あなたの部活の顧問を引き受ける暇はありませんの。そしてあなたの部活、青春部でしたっけ?そんなふざけた部活の創部は認められませんこと。いいですわね?」
霧崎さんは一息にそう言うと、踵をかえし去っていこうとした。そろそろ喋っていいのかな?
「あの、霧崎さんでしたっけ?」
霧崎さんは振り返ると、こちらを見下すような顔で喋りかけてきた。
「おや、増田さんの金魚の糞さんじゃないですか。喋る口があったんですのね」
え、なにこの娘?ナチュラルに毒吐きすぎじゃない?それとも意図して吐いてるのか。
「…まあこの際僕の呼び方はなんでもいいけど、部活の件さ僕は納得できないんだよね」
「あなたが納得できなくても私が納得できればそれでいいんですこと」
我儘を三次元に具現化したらこんな感じなのかな。と言うかこの人よく生徒会長になれたな。
「そんな圧政を敷いてたらいつか反乱がおきそうだけど」
「であればその反乱ごと叩き潰せばいいだけの話ですわ」
なんか段々話が脱線してきたからもとに戻す。
「つまりだ、僕が言いたいのは個々人の生徒の意向で部活の有り無しが決められるのはどうかと言いたいんだ!」
そう言うと霧崎さんは考えような素振りを見せ始めた。
「なあボンチ。お前、霧崎さんに嫌われてるの?」
「ん?ああ、生徒会選挙の時に俺だけアイツのこと不信任にしたら後でバレてな。それから何かと突っかかるようになってきたんだ」
はへー、そう言えば7月あたりに生徒会選挙があってその時信任か不信任かのアンケート用紙が配られたっけな。
「僕はその紙チリ紙交換に出したからイチャモンつけられなかったのか。出してたら絶対不信任にしてたもん」
「それが正解だ。なんでも不信任にした生徒1人1人を脅しているらしいぜ。次の選挙では絶対に信任にしろってな」
我儘を通り越してもはや狂気の沙汰だと思う。
すると、霧崎さんが顔を上げ口を開く。
「あなたの言い分は分かりましたわ。でしたらこう言うのはどうでしょう。今回作られる部活三つを二週間後の今日、アンケートを取り、作るに相応しくない部活一つを選ぶ。これでしたら私の意向ではなくて全生徒の意向でしょう。金魚の糞さん、これでどうでしょう?」
多分これは罠だ。このまま了承しアンケートを取ってみたらまず間違いなく僕たちの部活は消えるだろう。霧崎妃花の力を持ってすれば、二週間で学校中の生徒の意向を操作するの等容易いことだと思う。だが、ここで下手に断ったら今すぐ部活を消されないとも言い切れない。これはある意味ではチャンスではある。相手の土俵ではあるが勝てば文句は言えまい。
ボンチに目配せすると、力強く頷いてきた。
「その案、のった!」
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放課後いつもの空き教室で僕とボンチは向かい合っていた。今後の動きについて話し合うため集まったのだが、ボンチは話そっちのけで帰宅中の女子生徒を眺めている。
「なあボンチ、真面目に話し合わないと勝てないぞ」
「まあそう焦るな。焦って出した案程度で奴に勝てるとは到底思えん。悔しいがあいつにはそれだけの人脈と手腕がある」
心底嫌っている様子だったけど一応霧崎さんの手腕は認めてるのか。
「だからって下校中の女子生徒を眺める理由にはならないじゃないか」
「馬鹿野郎。俺が学校に来るのは女子の無防備な太ももを見るためだぞ。俺からその楽しみを奪うのであればお前と言えども容赦はせん」
そう言うとボンチは双眼鏡に目を付けたまま黙りこくってしまった。
「まあ僕も女性の太ももを見るのは好きだけど今はそれどころじゃないよ!」
反応なし。ただの覗き魔のようだ。仕方ない。こうなったボンチは動くことを知らない壊れたラジコン自動車のようになってしまう。
「僕一人で考えるか。とは言っても相手の動きを知らなければ、こちらも動きようがないからなぁ。うん、よし!まずは敵情視察だ!」
背後で覗きの虫になっているボンチを置き、僕は生徒会室に走り出した。
因みに主人公とボンチは高校一年生です。