爆弾を抱える少女達 作:自律人形の執筆
暗い空、美しい満月の夜だった。
何が皮切りになったのか、先程まで五月蝿いぐらいに鳴っていた銃火器の音も、みんなの声も、一瞬にして静まり返る。
俺はといえば、何が起こったのか全く理解出来ないまま、顔面に硬い土の感触を覚えていた。
「…………」
砂利が口の中に入っても、冷たい地面が体温を奪っても、俺はただ身を任せるだけだ。
目を閉じる。
気が付くとあいつらが手を振っていて、俺は苦笑いを浮かべながら、そちらへゆっくりと歩いていった。
仕事という
どんな会話をすればいいか悩む俺を見かねたのか、顔を合わせた彼女達一人一人が、おかしそうに笑いながら語りかけてきた。
指揮官が頑張ってくれたから、みんなが笑顔になれたんだよ! そんな顔しないで、あたしみたいにほら、スマイルだよ?
仕事の手は、休めたらだめよ。全部終わったら、まあ、どっかに遊びに行くぐらいは、しても良いんじゃない?
コーラ持ってこーいっ! 1人で飲むのも良いけど、やっぱりみんなで飲むコーラは最高だね。ね、指揮官っ。
姉さんに近づく、活路が見えた、気がします。指令官と、2人でなら……追い越せるかも、しれません…。
んふふふ、この子もあの子もみーんなまとめて指導してあげるわ。指令官、もちろんあなたもよ?
大丈夫です。そんなに近寄らなくても分かります。あ、別に嫌いな訳じゃないですよ? だって指揮官がくれた、音だから…。
あなたが私の指揮官で良かったです。あなたのお陰で、ようやく前を向けそうです。でも今はそうですね、取り敢えず寒いので、一緒にいて下さい。
誰が誰でどうなのかって、とても大切な事だったのね。そうだ、指揮官にとってのあたしって何? あたしにとっての指揮官はね……ふふっ、内緒だよ。
私は殺しの為に作られたけど、たまにはスコープの外を覗くのも、面白い顔が見られて良いものね。勉強になったわ。
指揮官が私達を信じてくれたお陰で、ここまで来れたんです。だから私達も、最後まで指揮官を信じます。
「あぁ、みんな、ありがとう……っ」
俺は撃ち抜かれた胸を押さえながら、空を見上げる。
濡れたように滲んだ星々が、硝煙に撒かれて消えていった。
***
大抵物語というものは、目が覚めるとそこは……だとか、腹減ったー……だとか、文学に精通している風を装った煩わしい長文だとか、そういうところから始まるのが一般的だ。
物語の内容には一切関わりのない、自己満足のような冒頭。読者の為だと声を上げながらも、その実は賢くみられたいだとか、或いは単なる文字数稼ぎだったりする。
分厚い書籍、賞を取った文学作品、はたまた偉そうなグルメリポーター。そのどれもが回りくどくジグザグに、紆余曲折してから内容を語り出す。
……もう気付いてるかもしれないが、この物語だって例に漏れずそれを体現している。
それに憧れた。
だから今回は、無謀にもこのチラリズムに挑戦したいと思う。
生活音。
鳥の囀りや時計の秒針が進む音、裁縫の音や母親の料理から果てにはニュースキャスターの挨拶など。ピッピだのチッチだのトントンだのカンカンだのコンコンだの。
そういう音から始めたい。
何故かって?
俺を知って貰う上で、この“生活音”が役に立つからさ。だからみんなには耳を澄ませてよく聞いて欲しい。
そうさ、モーニングコールからおやすみのベーゼまで、俺はこの音に支配されている。
ーーギュルルルッ! ピコピコチューンチューン、チーッ!! ヨンバンカラニジュウニバンマデ、イジョウナシ、ドゥルンドゥルンドゥルンゴォオオォオオインスタントノゴハンガデキタヨ、カタッカタッカタッカタッズダンスダンプーンッ! チュドーンッイラナイオー^^ジャキンジャキンポロンッオイコノスウシキ二ハケッテイテキナミスガアルジャナイカポチポチジュポジュポガラガラゴロゴロケタケタピカーンッ!! トゥルルル、トゥルルル、ピンポーンブゥーキラキラテロテロリーンダレカテノアイテイルモノハッ? ジュュバタンッ……!
……これぐらいのインパクトがあれば、ちょっとは気になってくれるだろう? 勿論、奇天烈さが売りだ。