今日から俺は……   作:ローファイト

1 / 7
衝動的に書いたものですので、悪しからず。


第一話

艱難辛苦を乗り越え、2年時編入試験に無事合格し、今日から俺は千葉でも有数の進学校 私立総武高校に通い、真っ当な青春を謳歌するのだ。

 

 

そんな希望にあふれる明るい学校生活を想像していたのだが……

世の中は世知辛い。

2年の新学期に晴れて総武高校に転校を果たしたまではいいのだが、生来の人見知り(ボッチ)体質とひねくれた性格な上に、一年間のアドバンテージが無いのはでかすぎる。

結局クラスになじめず4月中旬でボッチ決定に。

 

 

しかも、何故か生徒指導の先生に目をつけられ、奉仕部なる部活に強制入部させられるはめになった。

その部活には、学内一の美少女で学年成績は常にトップだが、口を開けば毒舌を吐かずに入られない、部長の2年J組雪ノ下雪乃。

部員は同じクラスの、人当たりはいいが気弱なリア充ちょいビッチ、2年F組由比ヶ浜結衣。

転入生でボッチな俺との3人だけの部活だ。

部活内容は、生徒からの悩みや頼みごとのサポートをする部活だそうだ。

まあ、そんなよくわからん部活だが、意外と居心地は悪くはない。

依頼が頻繁にあるわけではないため、普段は部室で本を読んでまったりと過ごす事が出来る。

雪ノ下は毎度俺に対し毒舌を吐き、由比ヶ浜はトラブルを引っ提げてくるが……十分現代の高校生の範疇だ。全く問題ない。

 

なんだかんだと初夏が過ぎ、今は7月中旬に差し掛かろうとしていた。一学期の期末テストが終わり、後は夏休みを待つばかりだ。

 

奉仕部の部室では……

雪ノ下は窓際の椅子に綺麗な姿勢で座り、静かに本を読む。

由比ヶ浜はそのちょい横の椅子に座り、目の前の長テーブルに腕を預け、スマホをいじる。

俺はそこからかなり離れ、廊下側の椅子に座り、ラノベを読んでいた。

依頼が無いため、いつものポジションで座り、皆思い思いに時間を過ごしている。

 

「ヒッキー、期末テストどうだった?」

お団子頭の少し脱色しピンクっぽい髪色の由比ヶ浜は、スマホをいじりながら何気なしに聞いてきた。

 

「ああ、俺は総合学年19位だったな。数学が足を引っ張るからな」

俺は伊達眼鏡をかけなおし、由比ヶ浜に返答する。

 

「ええーっ?……ヒッキーってもしかして頭いいの?」

由比ヶ浜は大げさに驚いた後、小声で聞いてくる。

どうやら、俺が勉強できることが意外だったようだ。

 

「なんだ。俺が勉強できるのがおかしいか?」

 

「じゃ、じゃあ、ゆきのんは?」

由比ヶ浜は焦るような表情で雪ノ下に聞く。

 

「まあ、雪ノ下は総合1位だろ?」

俺が雪ノ下の代わりに答えた。

掲示板に張られた期末テスト上位者順位表の一番上に、雪ノ下の名前が載ってたのは誰もが知ってる事だ。

 

「そうね。……でも、国語と古典は、あなたに負けてるのが気にくわないわ」

雪ノ下は読んでいた本を静かに閉じて、俺に軽く視線を向ける。それほど気にくわないわけではないようだが、この毒舌の女王様は、そう言わないと気がすまないようだ。

 

「別にいいだろ。たまたまだ。たまたま」

 

「ううっ……二人とも頭いいんだ」

 

「そう言う由比ヶ浜さんはどうかしら?」

 

「え?あたし?あはははっ、別に普通かな?」

由比ヶ浜は何故か慌てる。挙動不審だ。

 

「……まさか赤点ではないでしょうね?」

雪ノ下はいぶかし気に由比ヶ浜を見据える。

 

「ゆきのん!馬鹿にし過ぎだし!」

なぜか語気を強く反論する由比ヶ浜。

 

「じゃあ、由比ヶ浜、国語は何点だ?」

まあ、聞くだけ野暮ではあるが、あいつから振ってきた話題だ、聞く位はいいだろう。

 

「……赤点ぎりぎりだったかな?」

由比ヶ浜の声が小さくなっていく。

 

「……お前、授業聞いてるのか?普通に授業聞いてノート取れば、80点は取れる内容だぞ」

 

「うーー、だってさ、勉強つまんないし」

 

「お前な、勉強がつまらないって、何のために学校来てるんだ?」

 

「それについては、あなたに遺憾ながら 同意するわ」

 

「雪ノ下、なぜそこに遺憾を足す?」

雪ノ下さんや、いちいちディスらないと気が済まないんでしょうか?

 

「ゆきのんイカンって何?」

 

「……残念な様を表す言葉よ。この場合は比企谷君と同じ意見で残念だと言う意味ね」

雪ノ下は呆れた表情をしながらも丁寧に由比ヶ浜に教える。

雪ノ下さん?わざわざそこを強調して言わなくてもいいのでは?わざとだな。

 

「そ、そう言ってくれればいいし!」

由比ヶ浜は拗ねたように言う。

 

由比ヶ浜、この期末テストで出たばかりだぞ。その学力で良くこの学校に入れたな……いや、この一年とちょっと、勉強せずに遊んでばかりいたな……もったいない。

 

真面に授業を受けれること自体、贅沢な事なのだ。

世界では学校に行くことができない子供たちが五万といる。

そしてこの日本でもだ。

総武高校はいい学校だ。

進学校とあって、カリキュラムや授業の内容は充実。教師の質もいい。何が不満なんだ?由比ヶ浜は!

大声を出したり、喧嘩したりとヤンキー達の授業妨害は無い。他校からのヤンキー襲撃は無い。

不良教師による不当なシゴキも無い。

他校への襲撃に駆り出されることも無ければ、喧嘩の仲裁に入る必要もない。セクハラ教師も存在しない。

なんてすばらしい学校なんだ!!

授業がつまらんとか罰当たりにもほどがある。

 

 

そう、俺は去年までは、そんな学校に通っていたのだ。あの不良の吹き溜まりと呼ばれる私立軟葉高校で……遺憾ながら一年間を過ごしていたのだ。

なんでそうなったって?

 

中学3年の2月下旬。

俺は元々総武高校を受験するつもりでいた。

千葉でも有数な進学校ではあったが、俺の学力もその程度はあったし、十分合格できると……

しかし、入試当日、不幸にも俺は交通事故に会ってしまった。

小さな犬が引かれそうになったのを助けたのだが、代わりに俺が車と衝突し、そのまま入院に……もちろん受験は出来ず、しばらく病院での入院生活を余儀なくされたのだ。

運良く、定員割れした高校の2次募集があって、何とかそれまでに退院し受験し合格した。

高校浪人だけはせずに済んだのだが、そこが不良の巣窟、私立軟葉高校だった。

 

他にも定員割れの学校はあったんだが、昨年新設された私立紅羽高校。軟葉高校よりもレベルが低い上に男子校だ。

流石に男子校は、行く気にもならない。

 

入学式の日

不良と言っても、過去の事だろうと、高を括っていたのだが……改造制服にリーゼントやら、ソリコミやらの不良共が居るは居るはで、昭和の時代にタイムスリップしたのかと一瞬思ってしまった。

生徒の約三分の一が不良のようだ。

 

そんで、俺は入学式の日に、いきなり上級生の不良に絡まれ、ガンつけたとかなんとかで、校舎の裏側に連れていかれる始末。……どうやら俺の生まれつきの目が気にくわなかったようだ。俺の目はもともとこんな感じなんだが………

とりあえず、全財産の昼飯代1000円で許してもらった。

ケンカとかできないし、殴られるのは嫌だ。財布の中身が1000円だけで助かったと思うしかない。

 

俺は、理不尽な因縁をつけられるのを避けるため、この腐った目とか、死んだ魚の目とか呼ばれる目を隠す必要性に迫られる。小町のアドバイスもあり、伊達眼鏡を着用することにした。

伊達眼鏡は小町が選んでくれたものだ。これで俺の腐れ目がかなり軽減するらしい。

 

そして、俺は不良共に絡まれないよう、気配を消し、風景に溶け込み、空気になる努力をする。

それ以降、俺は不良に絡まれる事なく。学校生活を過ごすが、クラスの連中で俺に話しかける奴もいなかった。俺はそれでもいいと思った。

総武高校に2年時転入することを決意していたからだ。学校は出席日数を稼ぐことと、勉強するだけの場所と決め、それ以上の事を求めないようにする。

この学校の授業レベルは高くない。授業だけでは、とても総武高校に転入するだけの学力を得ることはできない。普通に授業を受けてるだけではダメなのだ。

それだけではない。不良共が授業の妨害はするわ、教師をいびったり、一般生徒をいじめたりと、やりたい放題で、まともに授業が進まない。

俺は学校での授業を半ばあきらめ、家でネットの通信塾を利用しながら、独学で勉強に励む毎日であった。

こんな理不尽な学校から、俺は早くおさらばしたい一心で勉学に打ち込む。

必ず、来年度には総武高校へ転入を果たすために。

 

 

そんな日常に転機が訪れる。

5月の中間テストが終わり、6月の初旬に、俺のクラスに転校生が二人入ってきたのだ。

見るからに危なそうな不良の二人は、金髪パーマの三橋貴志とトゲトゲ頭の伊藤真司だ。

この時は、俺には関係ないと思っていた。俺はこいつらと関わるつもりもないし、クラスの空気となった俺に話しかけてこないだろうと……

 

この二人、転校初日で1年生の不良共全員はっ倒し、1年のボスとなった。

そんで、2週間ぐらいで、上級生ともやり合って、軟葉高校のトップに立ったのだ。

 

まあ、軟葉高校は不良学校の中でも、学力は一番高く、それに即して、ケンカは弱いと聞いている。

今迄、他校との本格抗争も逃げ腰で、軟高(軟葉高校)といえば、千葉の不良共にとっては最弱と言われてるらしい。この二人も軟高でトップを取ったからと言って、井の中の蛙ということだと……この時は思った。

 

しかし、この二人がトップを取ったことで、意外な恩恵を得ることができた。

三橋と伊藤は不良と言っても、一般の生徒には決して手を出さない。

三橋はたまに悪ふざけはするが、強請やケンカなどは吹っかけない。

伊藤は一般の生徒が不良に絡まれると、助けてくれる正義マンだ。

上級生の不良も、三橋と伊藤を恐れて、このクラスにはちょっかいを出さない。

三橋は授業を出ても、寝てるか早弁してるだけで、別に授業の妨害はしない。

伊藤も授業を出ても、騒いだりしない、一応勉強もしてるようだ。

他の不良も、伊藤が居るおかげで授業中は騒がない。

校内の安全と、授業の進行は、奴らのおかげで確保されたと言ってもいいだろう。

俺としては三橋、伊藤様様だ。

 

これで俺はよりいっそう勉学に励む事ができる。

 

 

しかし、そんな学校生活も長く続かなかった。

 

二学期の初めの頃だ。

俺は学校帰り、2年ぶりに新刊が発売された、お気に入りのラノベを買った後、家路への帰り道に、いきなり他校の不良共3人に囲まれ、殴られる。

久々の新刊とあって、浮かれ、気配を消し忘れていたのだ。

しかも、絡んできたのは、あの開久高校の連中だ。

なんでも、軟高狩りだとか……

 

いままで、軟高は他校の紅高(紅羽高校)と、いざこざを起こしていた事は知っていた。

確かに、三橋と伊藤が紅高(紅羽高校)の連中とケンカしたり、つるんだりしていたが、一般生徒には被害を被るレベルではなかった。

 

しかし、とうとう千葉随一の不良高校開久高校が出張ってきたのだ。

開久高校……全国でも有数な不良高校。全校生徒全員不良で、札付きの悪の巣窟。既に学校の秩序は崩壊し、卒業生の3割がヤクザになると言われる伝説の不良高校だ。

 

 

俺は開久の不良共に、殴り倒され、罵倒され、かばんは取られ、中身をばら撒かれる。

教科書等は踏みつけられ、しまいには俺の着てる制服を脱がそうとする。

 

俺はあまりの理不尽さに怒りを覚えるが、ここはグッと我慢だ。奴らが気が済めば、あっさり帰してくれるだろう。反抗するとさらに殴られ、ひどい目に合うのは目に見えてる。

しかし、やつらは、俺の伊達眼鏡を奪い踏みつけ、伊達眼鏡のフレームは真っ二つに……

 

俺は内心怒りの頂点に達する。小町が俺を心配して一緒に選んでくれた伊達眼鏡を理不尽な理由で壊したのだ。

だが、ここは冷静にだ。奴らに何を言っても無駄だ。俺はまだ冷静でいられる。

ここは低頭平身に許しを請うのだ。相手が悪かろうがだ。そうすれば奴らも引いてくれるかもしれない。

 

俺はゆっくりと立ち上がり、奴らを見据え、頭を下げる準備をする。

 

「な、なんだお前……」

「くっ、その目、ガンくれやがって!調子に乗んじゃねーぞ!」

「……なんて目をしてやがんだ。人を殺したことがある目だ!」

開久の不良共は何故か後ずさる。

 

「……?」

なにその反応は?どいう事、俺何もやってないよな。

……まさか、この目か、この目がまた知らず知らずのうちに悪さを……、もしかしたら俺の腐った目がガンつけてると思われたのか?眼鏡の無い素の俺の目は、かなりやばいようだ。しかも、この状況下だ。腐り具合も相当なものなのだろう。

 

「はったりだ!こんなひょろっちい奴に、なにビビってんだよ!」

「ビビってるわけねーだろ、よう、お前!なめんなよ!」

「開久なめんなコラ!」

開久の不良共は俺に凄んできた。

 

ちょ、待ってくれ。そんなつもりじゃ…確かにキレそうになったが、腕力じゃあんたらに勝てないし、ケンカもしたことないんだぞ。

俺は焦り、そんな事を頭を巡らせながら挙動不審になる。

 

「おい、こいつ、ヤクやってんじゃねーのか」

「目の動きが尋常じゃねーぞ」

「汗が異様に吹き出てるぞ。顔の色も土色に」

開久の不良共は恐れおののきまた一歩下がる。

いや、それ焦ってキョドってるだけだから、汗が出てるのは緊張と焦りだし、顔の色とかも変わっちゃうわけで……別にヤク中とかじゃないから……

 

と…とりあえず、謝って、お引き取りを……

 

俺は謝るために頭を素早く下げるが、焦りのあまり足元がふらついて、開久の不良共の真ん中の奴の顔面に頭突きをする形になってしまった。

 

「ぐあっ!」

何故か、クリーンヒットして、もんどりうって倒れる真ん中の不良。

えーーー!?ちょ、ちょっと待った。そんなつもりじゃ……

 

「おい!大丈夫か!」

「おいーー!!お前よくもダチを!」

怒りの形相で俺に凄む残りの二人。

 

ここは笑顔で対応だ。万国共通の博愛主義の象徴これで許してもらおう。

「いや……わざとじゃ」

 

「こいつ、やべーぞ。ニヤついてやがる」

「こんな恐ろし気な顔……見た事ない……こいつはやべーー…絶対ヤバいって」

俺の顔を見て恐れおののく、開久の二人。

 

「かん…ちがちがいい」

緊張と焦りで呂律が回らない。勘違いだって言いたいんだが……

 

「……やべーー、こいつ血がいいとか言ってるぞ」

「……くっ、まじやべー、一旦引くぞ……覚えてろよな!」

開久の不良共は倒れた奴を起こし、引っ張って去って行った。

 

 

「………」

あれ?これって助かったのか?なんか、とんでもない勘違いしてたような……

 

まあいいか、これで助かったんなら……しかし、この壊された伊達眼鏡は直せるのだろうか?小町に折角選んでもらったのにな……

俺は散らばった教科書を鞄に入れ、壊れた伊達眼鏡を眼鏡屋に持って行き、修理を頼む。

一応修理できるらしいが、丁度部品の在庫が無いとのことで、部品が届き、修理をするのに1週間かかるらしい。

修理に時間はかかるが、とりあえず直ると聞いてホッとする。

 

 

 

翌日学校に登校するが……何故か視線が痛い。

伊達眼鏡がないせいか、その場の空気と化するステルス効果が表れないようだ。

 

クラスにいつものように入り、席に着くが……やはり、クラスの連中の視線が俺に向いているようだ。

なぜ?

 

そこで、伊藤と三橋が教室に入ってくる。

 

「おおお!?なんだ彼奴、目がめっちゃ怖!ゾンビがいるぞ!伊藤、あんな奴クラスに居たか?」

三橋は一瞬後ろに飛びのき、伊藤に尋ねる。

なに、俺の目ってそんな事になってるの?ええ?眼鏡有る無しでそんなに違うのか?

 

「いや、知らないな………佐川知ってるか」

伊藤もこっちをじっと見据えながら、既に席に座ってるお調子者の不良、佐川に聞く。

 

「伊藤さん。あいつですよ。昨日開久の奴を1人で3人ぶっ倒したのは!」

ちょ、お前何言っちゃってんの?何それ、そんな事はしてないって、あれはたまたま偶然あいつらが勘違いして逃げただけで!

 

「まじでか」

伊藤は佐川に聞き返す。

 

「伊藤くん。私、見たわ!彼、眼鏡を壊されて相当怒って、相手の不良を睨んで、頭突き一発で一人倒したのを!」

何故か、近くの女子が伊藤に答える。

おいぃぃぃ!そこの名も知らん女子!見てたんなら助けを呼べよな!しかもそれ、偶然の産物だから!

しかも、他の連中も頷いてるし、なにこれ、噂になってんの?昨日の事…まじやばくね?

 

「ほう、伊藤、お前以外に開久にケンカ売った奴いたぞ。お仲間が増えてよかったな」

三橋は意地悪そうな顔で伊藤の肩をポンと叩く。

 

「三橋!元はと言えばお前が、開久の連中をのしたんだろ!」

「ちゃんと伊藤って奴らに名乗っておいたから、俺じゃない」

「ふざけるな!お前って奴は!」

伊藤と三橋は俺の前で口論を始めてしまった。

めちゃ迫力あるし怖いから、他所でやっていただけませんか?

 

「で、誰なんだこいつ、ああ!?俺にガンたれてるのか?ゾンビ目!開久のザコを3人倒したぐらいで、いい気になるなよ!?」

三橋は俺に近づいてきて、いきなり、因縁つけてきた。

あの、めちゃ怖いんでやめていただけませんかね。

 

「三橋やめろって、お前は……たしか、ん?誰だっけ」

伊藤も俺に近づき、三橋を止めてくれたのはいいが、名前は憶えられていなかったようだ。

 

「ひ、比企谷八幡だ」

まあ、空気な俺はクラスメイト全員に名前も覚えて貰えてないしな。聞かれたからには、ここは一応名乗っておかないとか……

 

「ヒキ?ヒキガエル、ハチマン?……そんな名前の奴、クラスに居たっけか?」

三橋、ヒキガエルってなんだ?俺の小学校の時のあだ名を何故知ってるんだ?

 

「ああ!!こいつあれですよ三橋さん。中間テストと期末テスト総合学年トップの奴ですよ」

佐川がまた、三橋に余計なことを報告する。

確かになトップだが、この学校で学力トップ取っても自慢にもならないぞ。

 

「ああん!?トップだと!?この三橋様を差し置いてトップを名乗るなど、怪しからん奴だ!」

三橋はまた俺に凄んできた。

まじ、怖いんでやめてください。金髪パーマに三白眼ってどんなに怖いか、しかも身長めちゃ高いし。

 

「三橋、馬鹿なお前には無理だろ?」

「何言ってやがる。お前よりましだ!」

「何だとコラ!」

「ああ!やんのかコラ!」

なぜか、またしてもケンカしだす伊藤と三橋。

 

「ん?んんんん?……あーーーーこいつ!オタメガネだ!オタク伊藤弐号!!」

三橋はガンつけながら、まじまじと俺の顔を見てくる。

なに、三橋、お前の中で俺はオタメガネってあだ名なのか?いや、初めてつけられたあだ名だぞ。

過去につけられたあだ名の中では一番ましなんじゃ……

 

「誰がオタクだ三橋!」

伊藤は三橋に言い返す。

そういえば、伊藤も三橋にネクラオタクとか言われてたな。

 

「ゾンビ目が、眼鏡をつけると……おお!オタメガネに戻った!!ぎゃはははははっ!見ろよ伊藤。すげーー、変身するぞこいつ!」

クラスの奴から眼鏡を取って、俺に眼鏡をつけ、爆笑する三橋。

なんなんだこいつは。

 

「ぷふっ!み、三橋、そ、そいつに失礼だろ!」

伊藤、お前も笑ってるからな。

 

「ぎゃはははははっ!」

三橋は爆笑して転げまわってる。

 

「ヒキ……ヒキ?……八幡と言ったか、お前、本当に開久の奴らを一人で倒したのか?」

伊藤は真剣な面持ちになり、俺に聞いてくる。

それにしてもなんだ、不良共には俺の苗字は呼びにくいのか?

 

「……偶然だ。あいつらが勘違いして逃げただけだ」

 

「ほう、お前漢(男)だな。普通はこの馬鹿(三橋)みたいに自慢するもんだ」

いや、まじで勘違いなんだって、何感心してるんだ伊藤。

 

「ああ!?誰が馬鹿だって?」

「お前の事だ三橋」

「やんのか?」

また、言い争いを始めたぞ。こいつら。

 

言い争いもそこそこに、三橋が俺にこんなことを言ってきた。

「まあ、オタメガネくんよ。大変だぞお前。ザコと言えども、あの開久の連中3人ものしたんだろ?付け狙われること間違いないな。まあ、頑張りたまえ」

……なにそれ、俺、開久の不良につけ狙われる?それって、人生終わってないか?

 

「おい、元はと言えばお前のせいだろ!」

「俺じゃないし、やったのは伊藤だし!」

「俺の名前を勝手に名乗ったおまえじゃねーか!」

こいつらは俺の目の前でまたしても言い争いを始める。

 

 

まじでどうすればいいんだ?不良につけ狙われるなんて……人生最大のピンチなのでは……

 

俺は冷静に考えをまとめる。

自分の身は自分で守るしかない。

しかし、どうやって……

そこで、思いついたのは、徹底的な情報収集だ。

敵を知り己を知らば百戦危うからず。

開久の連中の情報と、奴らの行動パターンを知り。

それによって俺は奴らの追跡から逃げ切る。

 

案の定、開久の先日絡んできた連中が、仲間を引き連れて俺をつけ狙ってきた。

俺は事前の計画の元、奴らの行動パターンを把握し、徹底的に避け、1週間逃げ切る事が出来た。

その後は、奴らからつけ狙われなくなる。奴らは俺を探す間に三橋のテリトリー(遊び場)に不用心に入り込んだらしく、不意打ちクラッシュを食らったようだ。

俺はこうなるだろう事を織り込み済みで、逃げ回っていた。

軟葉高校の学区に他校の不良がうろついてりゃ、三橋なり、伊藤なりと鉢合わせし、こうなるだろうと。

やはり、情報戦と言うのは大事だ。戦わずして勝つ、まさしくそれだ。

 

そんな日常を過ごしてる内に何故か伊藤と仲良くなり、三橋とも……軟高の不良共から普通に話しかけられることに……そして、紅高の今井とも打ち解ける。

 

何時しか、金髪の悪魔 三橋貴志、軟高の漢 伊藤真司、軟高の恐眼 八幡と……

知らない内に、軟高の不良共のナンバー3となっていたんですが………

いや、ケンカは未だしたことないし、ただ単に逃げてただけなんですが……まあ、はったりをかましながら逃げてたりしてたし、三橋や伊藤から、他校との交渉やらを無理やりやらされて、しぶしぶ、不良共と話し合いしたり………、軟高に出張ってきた他校の不良共の対処を、先生たちに任されたりとか……その時もはったりやブラフを使いつつ、伊藤あたりを連れ出して、何とかしのいだのだが……。どうやら、この腐った目とか死んだ魚の目とか言われてきた俺の目は、不良の世界では、かなり有効らしいのだ。はったりが最大限に効果を発揮するようだ。

いつも、いつも、怯え震えながら、話し合いするもんだから、挙動不審な俺の目はよけいに恐怖に映るらしい。

そんな事もあり、名前だけが独り歩きしてる感じで、そんなポジションを得ることに……

実力が全く伴ってないんですが……

もう、マジで勘弁してほしい。未だに不良共と話すと緊張するし、怖いし……後怖い。

 

そんで、3学期に入り……さらに俺を追い詰める。

何故か俺は全国でも不良校として名を轟かせる千葉ナンバーワン不良高、開久高校襲撃に参加することに……

開久に乗り込んだ俺たちは、当時の開久の番長末永を倒し、難攻不落の開久を落としたのだ。

開久に乗り込んだメンバーの軟高の三橋、伊藤、八幡、紅高の今井、小山、中野と不良共に伝説の6人とか呼ばれ、恐れられたり、敬われたりすることに………

 

いや、俺は何にも知らずに三橋に無理やり連れ出され、開久高校の裏門から、いきなり体育館にたむろする開久の不良共のど真ん中に、放り込まれただけなんだが!自己防衛のために、この目を使って、いつものはったりをかまし、時間稼ぎをして、タイミングを見計らって「あっ、あそこに三橋と伊藤だ!」とか言って、あいつらがよそ見してる内に、こそこそ逃げ隠れしてただけなんですが!身の安全を守るために、仕方なく、嘘の情報を流して開久の奴らを誘導したり、三橋達が有利になるようには仕向けたけどな……それは致し方なくだ。こんな恐怖体験二度とごめんだ!!

不良100人に囲まれるってどういう状況よ!しかもあの開久高校でだぞ!!毎度の事とは言え、在りえないんだが!!三橋の奴「お前だったら何とかなるだろ?ウケケケケケッ」とか言って、俺を囮にして、体育館のど真ん中に!!

……よく、俺生きて出てこれたもんだ。マジで……

 

それで、またしても、伝説の6人の一人として八幡の名前だけが独り歩きしだしたのだった。

 

その後は酷いものだ。

 

「八幡さんお疲れ様っす」

「八幡さん。今日もその眼力、素晴らしいっす」

家に伊達眼鏡を忘れて登校すると、不良共は何故か俺の前に整列し、大声で挨拶される始末。

あのー、不良とはいえ、先輩や同級生に、さん付けされるって何?

なぜか、昼飯食おうとしたら、勝手にパンを買ってきてくれたりするんだが……

いつの間にか、クラスの一般生徒には恐れられるわ……先生までにも………

俺の日常生活はどこに行った!!

 

さらに街のヤンキーや不良共には、巷で俺の事を『軟高の恐眼』の八幡やら、『神出鬼没恐眼』の八幡とか、『千葉一の眼力』八幡とか、『軟高の知将』八幡とか呼び、畏怖と恐怖の対象になってるらしいんだが!なにその明らかに恐ろしげな枕詞は!しかも、ほぼ目の事じゃねーか!

俺はただの一般ピープルよ。明らかに強そうで恐ろし気な感じなんだが!!

 

幸いにも、不良共からは比企谷の苗字を覚えられてないため、八幡の名前だけが知れ渡ってる。

しかもやつら、八幡が苗字だと勘違いしてるしな。この時ばかりは、この名前をくれた両親に感謝する。

それと、なぜか伊達眼鏡さえしとけば、絶対にバレることが無い。

………俺の目ってどうなってるんだ?

 

………

 

勘違いが勘違いを呼び起こし、なぜか俺が不良共の上に立つ事に!なぜ俺が矢面に立たなければならないんだ!!しかも、俺は三橋に巻き込まれて致し方なくだ!!……俺が出来ることって、睨んで、はったりかまして、逃げ隠れするだけだし!ケンカだって一回もしたことない!なんでこうなった!?

 

もう一回言う。何でこうなった!!

 

怖いのも痛いのも嫌なんだ。

もう嫌だ!こんな生活嫌なんだ!……不良に追いかけまわされるのも、懐かれるのも!

俺はごく普通の高校生活を送りたいだけなんだ!

静かに勉強させてくれ!

 

そして、3月中旬。

俺は入学当初の計画通り、こんなとんでもない生活を脱するため、総武高校の編入試験を受け、合格し、総武高校の生徒としての今の俺がある。

その際、不良連中には黙って転校したが、伊藤と良くんと赤坂にだけには、学校を転校することを伝えていた。

三橋には内密にだ。バレると何仕出かすか、わからないしな。

この3人に言っておけば、もし三橋が暴走しても、抑えてくれるだろう。

 

 

あの頃に比べれば、今の生活は天国の様だ。

授業もまともに受けられるし、まったりとした時間も過ごせる。

伊達眼鏡さえしとけば、不良共から、伝説の6人の八幡とバレることはない。

総武高校の連中は、あの不良共の抗争などには興味があるわけがない。俺の事はバレないのだ。

 

 

あの一年間の七難八苦の経験に比べれば、雪ノ下の毒舌もかわいいものだ。由比ヶ浜が持ってくるトラブルもまったく問題がない。

 

そう、俺はやっと得た安息の地と平和な生活を心から感謝し、今と言う時を過ごしているのだ。

 

 




後編は一週間後位かな?

原作よりちょっと勉強ができる八幡です。
勉学が普通にできる素晴らしさが、身に染みてわかったからこその、成績です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。