今日から俺は……   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。

結構急展開です。
後は予定通り後半③で終了です。


第三話

明日、一学期の終業式を控え、明後日から、皆が待ち望んだ夏季長期休暇が始まる。ようするに夏休みだ。

高二の夏休みとは世間一般では、思いっきり遊べる最後の夏という認識だ。リア充共は好きなあの子や友達とひと夏の思い出作るために、あれやこれやと今から計画を立て、思いを馳せていることだろう。

友達や恋人が居ないお前はどうかって?

何を言ってる。ボッチであるからこそ、この夏休みという真っ白なキャンパスを自由に泳ぐことができるのだ。そう、エアコンが効いた家の中で、ジュースと菓子を買いだめ、好きなゲームやアニメやラノベを誰に気兼ねなしに楽しむのだ!

……寂しくないかって?

放っておけ!

まあ、それだけではない。やはり勉学も必要だ。受験に備え俺は塾に夏期講習を受けに行く事を決めている。しかもスカラシップ制度を利用し、夏期講習代はタダとなった。親からは夏期講習代をせ占めているため。夏期講習代は全て俺の懐に。前から欲しかったゲームを買っても十分おつりがくるのだ。

 

 

俺は今日、奉仕部を休んで、千葉駅のサイゼで人と待ち合わせをしてる。

一応雪ノ下には事前に休むことは伝えている。

家の用事と誤魔化してな。

 

「あっ、はっちゃん久しぶり!」

「よっ、八幡久々」

サイゼの窓際の席から、小柄な可愛らしい少女と、これまた小柄な幼い顔つきの少年が俺を見つけ、手を上げていた。傍から見たら仲がいい姉弟に見えなくもない。

 

「久しぶりだな、赤坂と良くん」

そう、軟葉高校時代に世話になった赤坂理子と田中良だ。

軟葉高校時代の俺の事情をよく知る人物だ。

この二人は、唯一の心の拠り所だったと言っていい。

赤坂理子、この可愛らしい少女はこんななりだが、合気道の赤坂流道場の跡取り娘だ。

そんじょ、そこらの不良など、数人がかりでも相手にならないだろう。軟高の裏番とまで噂されるぐらいだ。軟高では学業も優秀で、良識も持ってる。しかし、なぜだかあの三橋に惚れてるのだ。

田中良は一見中学生位に見える童顔だが、相当根性は座ってる。不良共に真っ向から絡まれても物怖じしない。三橋、伊藤にもため口で堂々と文句を言う事が出来る存在だ。ケンカは決して強くは無いが、俺よりは十分出来る。赤坂流道場に通っていて、赤坂の弟分のような感じで、よく二人は一緒に居る。

 

「はっちゃんはさ、やっぱりそのメガネに、総武高校の制服がよく似合ってるよ」

 

「そうか?」

 

「そうだ。お前はさ、その方がいい。軟高の元ナンバー3とはとても見えないな」

 

「それはやめてくれ。あれは俺で有って、俺じゃなかったんだ。未だに不良を見ると怖くて震える」

 

「はっちゃんらしい」

「お前らしいな」

 

今日はこの二人と夏休みについて打ち合わせをする日だった。

打ち合わせと言っても、遊びに行くとかじゃないぞ。

赤坂と良くんは大学進学志望だ。あの軟高から大学に行く人間はほんの一握りだ。

しかも、そこそこレベルの高い大学を狙ってる。

2人なら、ちゃんと勉強すれば大丈夫だと思うが、軟高の授業レベルが低いのがネックだ。

それでだ。2人から是非にとお願いをされ、夏休みの何日間は二人に総武高の授業と塾の夏期講習の内容について勉強会をすることになった。

まあ、教えることで俺も深く身につくしな。それに、この二人には相当世話になった。

恩返しのつもりでもある。

 

ある程度の日程を決め、打ち合わせを終え、雑談に入った。

 

「そういえば、はっちゃん。今度、総武高校にうちの高校のサッカー部が練習試合に行くらしいの知ってる?」

 

「はぁ?軟高が?いや……忠高が試合を申し込んできてるのは知ってたが……」

 

「佐川が助っ人で出るらしいぞ」

 

「……まさか、三橋は?」

 

「ううん、三ちゃんはサッカーとか興味ないし」

俺はその赤坂の言葉にホッとする。

あいつが総武高校に来ると、多分ろくなことをしないだろう。

まあ、サッカー部の試合に軟高の連中が来たところで、夏休み中の試合だ。

俺は顔を合わすことは無いだろう。

 

「という事は、忠高とは別口なのか?」

 

「いや、忠高と軟高と紅高、総武高で親善練習試合だそうだ。俺も一応、生徒会として当日同行する」

 

「はぁ!?なんだそれ!!まじか!?」

おいーーー!!葉山の奴、何やってるんだ!!忠高だけでなく、軟高と紅高とも練習試合って、あいつ馬鹿じゃないのか!!千葉の不良校ベスト4、三校と練習試合など、正気の沙汰じゃないぞ!!

 

「総武高校のグランドはサッカー2面あるからな。ハーフ試合を一日で6試合、十分行える」

 

「……紅高の今井が来るとかないだろうな」

 

「今井君?サッカーの試合出るらしいよ。私のところに来て、見に来てくださいって誘われたけど、断る前に、三ちゃんに追い払われてた」

赤坂は思い出したかのように苦笑していた。

 

「はぁ!?なんだそれ!!」

あいつ!絶対あれだ!!女子目当てだ!!総武高校の女子のレベルは高い事で有名だからな!紅高は男子校だし、あいつは黙ってればモテそうな雰囲気はあるが、馬鹿だから全くモテないんだよな。そのくせ、赤坂にしょっちゅう、ちょっかい出しては、三橋に追い払われてるし、しかも、女の子にモテたい願望が丸出しなんだよ!!

あの馬ズラめ!!

 

「八幡が驚くのも無理はない。はぁ、これがよく通ったと、俺も思う」

 

「誰がこんなのを企画したんだよ」

忠高に紅高に軟高だぞ!!絶対荒れるに決まってるだろそれ!!よく総武高校の教師陣もOK出したな!!頭の中お花畑じゃないのか!?馬鹿だろう!!

 

「忠高の生徒会らしい。親善試合だとかなんとか。忠高は今立場が非常に弱いからな。軟高と紅高と手を結んでる風に見せつけるのが目的じゃないか?」

なるほどな。開久を三橋らが落としたあの後、今迄、開久に虐げられてきた千葉県下や、近隣県の不良共やヤンキーが、一斉に開久を包囲し、今までのうっ憤を晴らしに来たことは結構有名だ。開久はそのおかげで、しばらく回復できないぐらいのダメージを受けたのだ。

そして、忠高もそのあおりを受けたらしいのだ。あいつら手広く悪事を働いてきた連中だ。

自分らより弱い他の学校や近隣県の不良校の連中をターゲットにして、アクドイ強請を行って来たのだ。しかし、全国でも最強の一角である開久が、瓦解したことで、忠高にも、開久同様に今迄のうっ憤を晴らすように、不良共が忠高を狙いだしたらしい。

俺の情報網ではある噂を耳にしたことがある。忠高は開久と裏取引をしていたらしいのだ。自分たちの学校を狙わないようにと……だから、あいつらは、小さないざこざは起きても、本格的な開久の抗争の対象にならなかった。開久のターゲットにならずに千葉県下で堂々と悪事を働けた。下手をすると開久に、金を渡していたかもしれない。

 

「忠高か。あいつらなら、やりかねないな。裏で手を引いてるだろきっと」

良くんも、なかなかいいところに目をつけてるな。多分そんなもんだろう。開久が頼りにならない今、県下と近隣の不良高に軟高と紅高と手を結んだと見せつけるためだろう。

忠高には頭が切れる奴がいるのは間違いない。表だたずに、裏から不良共を操るような奴だ。

そういえば、俺が昔、忠高と軟高がやりやった際、終戦交渉をしに行った時だ、明らかに雰囲気が違う奴が向こうに1人いたな。しかも、かなり権力を持ってそうだった。

 

「そうだな。だからこその総武高校での試合だろう。その三校のどこかでやるなんて事はあり得ないからな」

 

「そういう事だろうな。きっと」

俺は良くんの考えに同意する。

忠高は今、一番立場が弱いのは間違いない。開久への殴り込みにも、もちろん参加してない。参加したのは軟高三橋、伊藤、八幡(俺)と紅高の今井、小山、中野だからな、一応谷川もいたが、名は知れ渡ってない。

今や、県下では軟高と紅高がトップを争っていると見られてる。

だから、今回のこれは、奴らにとって起死回生のチャンスだったのだろう。

今回のサッカー部親善試合は、軟高と紅高との見せかけ同盟を演出するためだ。忠高の連中はこういう搦め手が得意中の得意だ。

総武高校サッカー部はダシに使われ、巻き込まれたと言うわけだ。

最初は忠高と総武高の二校での練習試合を申し込み、それが了承されると、忠高は折角だからと、四校での親善練習試合をすることを提案したのだろう。そして、総武高校から軟高と紅高に声を掛ける。

たぶん。そんな感じだろうな。

総武高校の連中は不良共については疎いからな。多分教師陣もそうなのだろう。

まんまと嵌められたと言うわけだ。

 

「良くん……頑張ってくれ、精々奴らが問題行動を起こさないように見てやってくれ」

まあ、今回は無難に終わるかもしれないな。

忠高としては、開久に、軟高と紅高と同盟を結んでる様に見せかけたいため、自らは手を上げたくないだろう。しかし、末端は知らん。忠高の連中は性根の腐った、腐れ外道が多い。女とみれば手を出さずにはいられないだろう。まあ、早川京子の学校に手出しした際は、逆に奴らボコボコにされてたけどな。主に伊藤に。

軟高も、三橋伊藤が居なくちゃ、話にならないし大丈夫だろう。あいつらから手を上げないだろう。佐川は見掛けだおしだし。

問題は今井か……赤坂が来てくれるのなら、大人しくしてるのだろうが。まあ、馬鹿やって自爆するだけで、実質大きな事にはならないだろう。

試合は夏休み中で、グランド二面使うという事は、その日はサッカー部がグランドをすべて専有するという事だ。他のほとんどの体育会系の部活は休みだろう。ということは文科系や水泳部以外の生徒は学校に来ないだろう。

文科系の部活のほとんどが、奉仕部と同じく別棟で活動してるし、部活動中に女子が他校の連中と接することはほぼないだろう。

不良共が女子生徒に手を出す機会はほぼない。引率の先生もいるだろうし、生徒会も関わっているようだしな。今井め、当てが外れたな。

接するとすれば、サッカー部のマネージャーぐらいか、そこは葉山が何とかするだろう。

最悪、休ませろ。

……まあ、俺には関係ないか。

俺は当日、学校には居ないし。葉山、精々そのイケメンスマイルで切り抜けてくれ。

 

「はぁ、気が重い」

良くんは盛大にため息を吐く。

まあ、軟高の連中は良くんのいう事だったら素直に聞くだろう。

相手が手を出さない限りは、と条件は付くが。

 

 

 

一学期最後の登校日、終業式で長ったらしい校長の話を聞き、クラスでホームルームを終えた後、いつも通り奉仕部に向かう。

一学期最後の部活動だ。といっても、依頼がなきゃ、ただの読書タイムなのだがな。

 

しかし……

 

「はぁ!?なんだって?」

 

「明後日のサッカー部四校合同試合の手伝いをすることになったと言ったのだけど、眼だけでなく、耳も悪くなったのかしら?」

雪ノ下はツンとしながらそんな事を言ったのだ。

 

「いや、聞いてないぞ、そんな事」

 

「あなた、昨日いなかったじゃない」

雪ノ下はプイっと顔をそらす。

 

「ヒッキー、昨日ヒッキー部活休んでたでしょ。生徒会の城廻先輩が来て、手伝ってほしいって、急に決まったらしくて、メンバーが足りないんだって」

由比ヶ浜が俺と雪ノ下を交互に見ながら、オロオロと説明する。

どういうことだ?親善試合とはいえ、たかがサッカー部の対外練習試合だろ?

なぜ、人手が居るんだ?しかもなぜ奉仕部にお鉢が回って来る?

何かがおかしい。

 

「何で受けた?」

 

「仕方がなかったのよ」

 

「おい、あれだぞ。あの軟葉高校と忠実高校、紅羽高校だぞ!不良共の巣窟のような連中の相手をしないといけないんだぞ!」

俺は語気をつい強めてしまった。

いや、それよりもヤバいな。

雪ノ下と由比ヶ浜は正直、最上級にレベルが高い美少女だ。あいつらがちょっかいかけないはずがない。特に忠高の連中は何してくるかわかったもんじゃない。

 

「あなた、その三校の名前を聞いて怖気づいたのかしら?これは学校も了承した、ただのスポーツの親善試合よ。何を恐れるのかしら?それに不良と言っても所詮、学生がチンピラの真似事をしてるだけの事でしょ」

ああ、確かに俺は不良共が怖い。あいつらに囲まれ、怖気付いて、なんどもチビリそうになった。

しかし、そうじゃない。

 

「いいから、やめておけ。何かあってからでは手遅れだ。他の男連中がいるラクビー部とか、そういう体育会系の奴らにやらせればいい」

本来、体育系の部活の奴らに手伝ってもらうのが筋だろ。なぜ奉仕部なんだ?いや、城廻先輩が俺らを頼りにしているからか?

雪ノ下はかなり認識が薄い。もしかしたら城廻先輩もその程度の認識しかないのかもしれない。

いや、この学校の教師も生徒もみんなそうなのかもしれない。

 

「嫌なら、あなたは来なくていいわ」

 

「そういう事を言ってるんじゃない!」

 

「ゆきのん、ヒッキーも……ケンカはよくないよ」

由比ヶ浜はオロオロと俺たちを止めようとする。

 

「もう、決まったことよ」

 

「……雪ノ下、やめる気は無いんだな。俺は先生にやめさせるように直訴する……」

 

「ヒッキー、そんな怖い顔しないで、らしくないよ」

由比ヶ浜は目に涙をためていた。

すまん由比ヶ浜。ここは譲れない。

 

俺は部室を飛び出し、職員室に行こうとしたが、廊下に平塚先生が立っていた。

平塚先生の表情は硬い。どうやら俺たちの会話を聞いていた様だ。

 

「比企谷……ちょっと来てくれ」

 

俺は頷いて見せ、平塚先生の後について行く。

屋上に出た平塚先生は俺にいきなり頭を下げた。

「すまん。比企谷。私の力不足だ」

 

「私は反対したのだが、上がこの四校合同練習試合を決め、どうにもならなかった」

ちっ、忠高のやつらだな、上からも抑えて来たか。あの金持ちのボンボン野郎か?それとも議員の息子か?それとも闇金連中か?何か手札を使ったな!

 

「先生、せめて、女子生徒は当日参加させないでください」

 

「上がな、せっかくのイベントだと、華やかな方が良いと、女子に案内係をと」

どうやら、奉仕部が巻き込まれたのは城廻先輩の一存ではなかったようだ。……教頭か、それとも理事長クラスか?

 

「平塚先生、俺が軟葉高校出身だと知ってるでしょ……そんな甘い連中じゃないんだ!」

 

「………」

 

「骨の一本や二本折ろうとどうってことないような連中なんです!女子にだって手を上げる。最悪取り返しのつかない事になる!」

俺は憤りを覚える。しかし俺は何にこんなに苛立ち、怒ってるのか?

先日は、関係ないと思っていた。総武高校で奴らに来ようが、まったくの無関係だと……

……そうか、俺はあんな世界に雪ノ下と由比ヶ浜を巻き込みたくなかったのか。

 

「君が言うんだ。真実なのだろう……私はどうしたらいいのか……」

よく見ると平塚先生も若干やつれてる様に見える。上の連中……いや、教頭か理事長クラスとやめさせるようにと散々やりやったのだろう。

 

「……わかりました。雪ノ下や由比ヶ浜は俺が何とかします。但し、上の判断という物がどれだけ馬鹿らしかったのかも証明しますよ」

それに、何かがおかしい。かなり強引な手札を使ってきたようだ忠高の連中は、裏に何かがある。

良くんが言っていた軟高と紅高との見せかけ同盟を演出するためにだけにしては、大掛かり過ぎる。

 

「比企谷……君は……いったい」

 

俺には地位も力も無い。運動神経も普通だ。足が特別速いわけでもない。ケンカだってまともにできない。

不良連中が目の前にいると、未だに恐ろしくて震える。メンタルもチキンだ。

俺にあるのは、あの1年間の経験と、この腐った目と、張ったりだけだ。

だがしかし……

俺の頭の中がチリチリと冴え渡って来る。半年前のように………

 

俺がやることは、不良連中から、由比ヶ浜と雪ノ下を守る事。

こんなイベントを了承した学校の教職員連中の鼻を明かしてやること。

そして、この学校を巻き込み、俺の平和の安息と生活圏を脅かした忠高の生徒会やらを、二度とそんな気を起こさせないようにすることだ。

 

ピエロはピエロらしく踊り続け……

勘違いは勘違いのまま、偽物の俺を最大に利用し、完結させてやる。

 

思考をフル回転させ計画を思い描く。

 

 

さあ、やるか……

 

無意識に口元がニヤリと歪んでいた。




というわけで、後半③は、八幡らしい手札をと考えております。
今日俺の雰囲気も取り入れたいので、ちょいギャグというかそう言うのも入ってるかもしれません。
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