誤字脱字報告ありがとうございます。
またしても、すみません。
後半③じゃ終わらなかったです。
このままだと、⑤位、行きそうな勢いです。
夏休みに入った次の日。
総武高校では軟葉高校、忠実高校、紅羽高校とのサッカー部四校親善練習試合が開催された。
俺は、校門のグラウンド側に建てられた受付案内所と大きく書かれた簡易テントに顔を出す。
「あっ!ヒッキー!来てくれたんだ!」
「てっきり逃げ出して、来ないものだと思っていたわ」
俺は雪ノ下が不機嫌なものだと思っていたが、言葉とは裏腹に、ホッとしたような顔をしていた。
まあ、3か月間ほぼ、毎日顔を合わせていた俺や由比ヶ浜じゃないとわからないぐらいの変化だがな。
「先日は悪かったな。だがな、俺の意見はかわらない。今からでも、お前らだけでも帰ってほしいぐらいだ」
俺は軽く頭を下げたが、言うべきことは言った。
「え?それって、ヒッキーは私達の事を心配してくれてるの!」
由比ヶ浜は終始笑顔だ。
「そうだな」
「…そう」
雪ノ下はプイっと俺から顔をそらす。
昨日、夏休み初日、今日のサッカー部四校親善練習試合の打ち合わせが生徒会で行われ、奉仕部もそれに参加したのだった。
雪ノ下と言い合いをした後、由比ヶ浜がメールでその事を知らせてくれたのだが、俺は用事があると返信して、参加していない。
俺は昨日、今日のために、やっておかなければならない事があったからだ。
由比ヶ浜は、その打ち合わせが終わった後だろうか、昼過ぎ位に、当日の奉仕部の役割分担についてメールで送ってくれた。それと来てほしいと……
奉仕部の役割は、朝一番にこの受付テントで他校の選手や来客の受付をし、簡単な説明と注意事項及び案内のチラシを渡す役割だ。
要するに総武高校の看板娘だ。教職員の連中が指名したらしい。
確かに適材な場所ではある。俺以外はな。
由比ヶ浜は明るくて愛想がいいため、看板娘にもってこいだろう。
雪ノ下は、その毒舌を抑え、澄ましていれば、クール系の美少女そのものだ。
きっと受けも良いだろう。
そんなこんなで、予定の時間が差し迫ってきた。
最初に来たのは、忠実高校の連中だ。
選手とその応援の奴らだろう。
応援の奴らは、あれだ不良連中だ。何人か俺も見たことがある。
この伊達眼鏡をかけてる限りは、俺が恐眼の八幡だとはバレないだろうが……
キャプテンらしい奴が最初に受付テントに来て、署名をする。
そして、雪ノ下がそのキャプテンに、簡単に着替えに使用する場所やトイレや進入禁止区域などを説明し、チラシを渡す。
後続の選手たちや応援の連中にも由比ヶ浜と雪ノ下は一人一人に手渡ししていく。
俺はそのチラシの準備やらの裏方作業だ。
キャプテンもそうだが、選手の連中は意外と普通の連中だ。
雪ノ下と由比ヶ浜に声を掛けられ、顔を赤らめていた。
その後に続く、応援の不良連中はいやらし笑みを浮かべ、由比ヶ浜と雪ノ下を舐めまわすように見ていた。
「うわ、マビーな。流石レベル高いべ」
「ふっ、一発お相手しもらうか?」
「お前じゃ無理無理。ぎゃっはっはーーー」
「後で付き合ってもらおうぜ!」
ムカツク連中だ。
そして、連中の最初の一人がチラシを配る由比ヶ浜の手を掴んだのだ。
「後でさ、俺と遊ばない?」
「あの、その」
由比ヶ浜はかなり困った顔をする。
だがそいつは、
「………あわわ、し、失礼しました!!」
慌てて、チラシも受け取らず逃げて行った。
その後の後続の連中も同じような反応で、次々と逃げていく。
「あれ?あたし、なにかしたのかな?」
由比ヶ浜はそんな奴の後姿を見て疑問顔をする。
「きっと、あなたの陰険な顔を見て、驚いたのね」
雪ノ下はクスっと笑い、そんな事を俺に言ってくる。
雪ノ下。間違いでもないが、正解でもない。
そう俺は、連中が由比ヶ浜と雪ノ下に手を触れようとする瞬間に、由比ヶ浜と雪ノ下の後ろにスッと立ち、伊達眼鏡をはずし、一人一人奴らを凄み、睨んだのだ。
「ふぅ」
俺はホッと肩を撫でおろす。
久々だったからな、足もまだ震えてる。
俺の眼力はどうやら半年前と変わらず、不良共に高い効果を発揮するようだ。
奴らは俺の眼力に恐れを無し、逃げ出したのだ。
ふん、根性の無い忠高の不良連中程度であれば、これで十分だ。
そういえば、忠高の生徒会連中は来てないようだ。
彼奴とあのボンボンが居なかったな。
その後に、青いブレザー姿の一団が現れる。
紅高だ。
しかし、奴らは何時もの着崩した格好ではなく、全員きちっとネクタイを締め、ぴっちりブレザーを着こなしていた。
さらに、全員髪型はきっちり七三分けで決まっている。
しかも、なぜだか全員黒縁眼鏡をしているのだ。
今時七三分けは無いだろう。ひと昔前のサラリーマンみたいだ!
軍隊のように一糸乱れず行進し整列をしたまま、受付の前に連中はピタっと止まる。
「全員止まれ!!」
「ぷふっ!」
俺は思わずその光景を見て、笑いを堪えることができず、吹き出してしまった。
その中から、ひと際ガタイが大きい奴が俺達の元に行進してきた。
そして、そいつだけ眼鏡が他の連中と違い、ぐるぐる眼鏡なのだ!
「ぶはっ!!くっ!!」
俺は笑いを我慢するのに精いっぱいだ。
今井ーーー!!行進って手と足が一緒に出てるぞ!!ぷふっ!!その恰好に合いすぎ!!
そう……これは俺の策略。
先日俺は部活を休んで数々の謀略を巡らせていた。
その一環がこれだ。
先日、今井に俺は電話をかけ、こう言ってやったのだ。
「今井、総武高校でモテる基準ってなんだかわかるか?」
「何を言うかと思えば!それは男らしさだ!!」
「ばっかだなお前、今のこの時代は、真面目がブームなんだよ。しかも勉強が出来ないとモテないんだぜ。馬鹿なお前だと絶対無理だぞ」
「なんだと!腐れ目!!」
「まあ、聞け今井、俺に秘策がある」
俺は秘策と称して、今日のこの格好を皆にさせるように言ったのだ。
そして、モテるステータスとして、自衛官がいかにモテるという事をとうとうと説明し、一糸乱れずに行動させる上のものこそが、一番モテると。そして、そのキャプテンはぐるぐる眼鏡を必ずしてると言ってやったのだ。
「腐れ目!いや、八!!お前は心の友だ!!」
電話越しに感謝の言葉を言ってくる今井。
それで今日のこの格好なのだ。
「紅羽高校!!サッカー部キャプテン!!二年!!今井勝俊17歳!!以下サッカー部及び生徒会23名引き連れ、ただいま参上しました!!彼女はいません!!」
今井は受付の由比ヶ浜と雪ノ下の前でテーブル越しに、直立不動に立ち、目線を上にし大声でそう宣言した。
雪ノ下はいぶかし気に、由比ヶ浜はめちゃくちゃ引いていた。
俺は、奴の視界に入らない様にし、由比ヶ浜の耳元に小声で囁く。
「由比ヶ浜、笑顔だ。折角来た客だ。相手を褒めてやれ」
由比ヶ浜は小さく頷く。
「あの、そのメガネ、なんか、良い感じですね。今日は頑張ってね」
由比ヶ浜はぎこちない笑顔ながら、そう言って今井の馬鹿を褒める。
メガネが良い感じって何だよ由比ヶ浜!褒めるとこってそこしかないのか?
ぐるぐる眼鏡が良い感じって、ぷふっ!
「うおーー!!感動だ!!こんな可愛いお嬢さんに褒められるなんて!!今井勝俊、生涯わすれません!!彼奴の言っていたことは本当だった!!ありがとうーーーー!!八ーーーー!!」
こいつ、本物の馬鹿だ。
今井は天に向かって叫び、感動していた。なんか涙流してるし。
ぷふっ!とりあえずだ。写メ取っておくか!
いかん。腹が痛い。笑いがこらえきれないぞ!
しかし、紅高に対しての工作は第一段階は成功だな。俺は伊達や酔狂で今井にこんな格好をさせてるわけではない。これも作戦の一環なのだ。
谷川の奴も機能してるみたいだ。
今井の子分の谷川には別の事を言い含めているのだ。
そして、紅高の連中は去って行った。
「おかしな人たちね」
雪ノ下はいぶかし気にその後姿を見送った。
「でも、なんか聞いてたのと違うね。最初の忠実高校は怖かったけど、今の紅羽高校の人たちは、真面目そうだったね。キャプテンの人は声が大きくて、変な人だったけど」
由比ヶ浜はそんな感想を漏らしていた。
ぷふっ!や、やばいなこれ、自分で仕掛けておいて、これは、ぷふっ!
期待を裏切らない男、今井!流石だ!ぷふっ!
そして、ダラダラと歩いてくる一団が現れる。
私立軟葉高校の連中だ。
俺は隠れないと、俺の眼鏡姿も知ってる奴は知ってるからな。
特に三橋にはまだ、バレるわけにはいかない。
そう、今日のサッカーの練習試合。三橋も来るのだ。もちろん伊藤もだ。
俺がそう言う風に仕向けたのだ。
良くんを先頭に、サッカー部の連中、その後ろに、ほんわか花畑が頭のツンツンに浮かび上がってる伊藤と早川京子のバカップル。その後ろに佐川と眠たげで不機嫌そうな三橋と赤坂。
計画通りだ。
俺は荷物の後ろに隠れ、奴らが通り過ぎるのを待つ。
どうやら、良くんがテキパキと受付を澄ましてくれたようだ。
直ぐに、奴らはここを立ち去る。
俺は荷物の影から体を起こす。
どうやら、軟高の連中にはバレなかったようだ。
「ヒッキー、あれって、不良で有名な人たちじゃない?金髪パーマとそのトゲトゲの人がいたよ」
「いや、そんな不良がこんなところに来ないだろう。そっくりさんじゃないか?」
俺はそう言ってごまかす。あいつら見た目派手だからな、直ぐにバレる。
「これで、昨日までに連絡を受けた選手と生徒会、応援団は全員来てるわね。後は各学校から応援の生徒が来るのを待ちましょう」
雪ノ下はそう言って、名簿の整理をし出した。
「ちょっとまて、忠実高校の生徒会はどうした?」
「彼らは、午後から来るらしいわ。昨日連絡があったそうよ」
「……そうか」
なるほど、そう来たか。
だが、計画の範囲内だ。
計画の第一段階はこれでOKだ。
俺は受付テントを出て、グラウンドの方を眺めニヤリと一人ほくそ笑んでいたが……
「痛っ!」
俺の頭に痛みが走る。
足元には松ぼっくりが転がってる。
なぜ松ぼっくりがここに?
「痛たたたっ!」
さらに痛みが走り、松ぼっくりが地面に次々と落ちる。
こ、これは!?まさか!?
俺は痛みの方向に体を向けると……
ここから遠く離れた校舎の物陰に。
金髪の悪魔が凶悪な笑みを湛え、こちらを見据えて立っていたのだ!!
その手には多量の松ぼっくりを携えている。
や、やばい。ば、バレてた!!
ここからあいつの場所まで30メートルはあるぞ!それなのに、正確に俺の頭に松ぼっくりを!?しかもなぜ松ぼっくり!?
その金髪の悪魔の隣で、赤坂が、手を合わせて申し訳なさそうに無言で謝っていた。
先日、伊藤と赤坂にはここに三橋を連れてくるようにお願いしたのだ。
但し、俺がここに居る事を言わないようにと……
どうやら、バレたようだ。
しかも、あの滅茶苦茶悪い笑顔は、すべてがバレてる!!
きっと俺がここに転校している事もだ!!
直接、俺を殴りに来ないところを見ると、俺の計画もある程度知っての上だ。
赤坂か伊藤がしゃべってしまったのだろう。
それでも怒りの収まらない奴はこうして俺に攻撃をして来る。
その金髪の悪魔はどす黒い悪い笑みを零し、さらに松ぼっくりを投げつけてくる。
痛たたたたたっ!
し、仕方がない、対三橋専用奥義を出すしか……
俺は腕振り上げ、オーバーに手旗信号を三橋に送る!
【後・で・ラーメン・三杯・おごって・やる】
しかし、奴は悪魔の笑みのまま、正確無比なコントロールで松ぼっくりを投げつけてくる。
ダメか!
ならば、これでどうだ!!
俺はさらに思いっきり体を動かし、腕を大きく振る!
【チャーハン・付けて・やる】
すると奴は、悪魔の笑みから、ほんわかした天使の微笑みへと顔の表情を変化させたのだ。
ふーっ、どうやら、わかってくれたようだ。
「あなた、仕事をサボって何をしてるのかしら?」
「ヒッキー、それ何?」
由比ヶ浜と雪ノ下は俺の手旗信号を送ってる様子を後ろから見られていたようだ。
「……新しいエクササイズだ。この頃運動不足だからな」
三橋にバレるアクシデントはあったが、とりあえずは、計画の第一段階は終了だ。
すみません。
続きがありますので……