魔法のかかったようなテーブル(ヘタレ男がヤンデレ女に振り回される話) 作:バンバババルタリアン
テーブルにはアッツアツのチーズグラタン、フランスパン、サラダ、そしてグラス一杯のワインが二つずつ並んでいる。
休日にしては早めの夕食である。
彼女がグラタンをスプーンで残さず綺麗に平らげた後、口を開いた。
「ねぇあなた、お願いがあるんだけど…」
僕は少し嫌な顔をして、持っていたスプーンを食べかけのグラタンの皿に置いた。
「君のお願いを聴くと僕の身にろくなことが起きないんだけど…」
「まぁまぁ、確かにそうかもしれないわね。でも今回は普通のお願いよ。リスクも何もないわ。」
「…一体なんだい?」
彼女もスプーンを置き、テーブルに頬杖をつく。
「実は、私の中学の同級生が最近近くに引っ越してきたのよ。当時は仲が良かったんだけど…大学入ってからは一回も会ってないのよ。でも、ようやく知り合いのつながりで連絡先を手に入れることができたの。」
「それは男か?」
「……女よ…」
思わず突拍子も無い発言をしてしまったことに気付き、我に返って顔を赤らめた。
「ご、ごめん…ちょっと妬いちゃった…」
「好き。でね、その子が、私の結婚相手であるあなたを観て見たい〜ってしつこく言ってきたのよ。本当に仕方ないんだけれど、明日会うから一緒について来てもらえる?」
「あー…不安だなぁ…君の友達だから多分大丈夫だとおもうけど…何を話せばいいかさっぱりわからないなぁ。」
「ただ質問に答えればいいだけよ。それにあなたとあの子との一対一じゃなくて私もいるから平気よ。」
「そ、そうかぁ…じゃあせっかくだし行こうかな。」
そう返事した瞬間、彼女は目を細くし、ニタァ…と不敵な笑みを浮かべて席を立ち上がった。
「じゃあ、人前に出ても恥ずかしくないようにしなきゃいけないわね♪」
「…へ?」
「ほら!私が顔から足先、髪の毛一本まで全身整えてあげるわよ!ほら立って!♪」
「ちょ…!まだご飯食べ終わって…!」
本当に…この人の心とかペースって読むことができないなぁ…
僕は腕を引っ張られ、浴室に連れ込まれてしまった…
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翌日
「ちょうどこの前服を買っておいてよかったわねー。」
「やっぱりこの服派手だよ!君の友達がどんな人かは知らないけど、見たら幻滅するかも…」
「自信持ちなさいよ。」
電車から降り、駅を出ると冷たい夜の空気が僕たちの体を包み込んで来た。
厚着をしても足首や頬はビリビリと寒さで痺れてくる。
「確かこの辺にいるはずなんだけど…」
彼女は辺りをキョロキョロ見渡すがどうやらそれらしき人が見当たらないようだ。
…ん?
奥から一人の女性が近づいてくる。
肩までかかる長髪を持ち、キリッと凛々しい顔立ち、まさにキャリアウーマンという姿であった。
「橘さんですか?」
僕らの名字が呼ばれ、彼女が振り返る。
「杏…?」
「あら、久しぶりね。ふっ…何よ。あなたいつのまに金髪になんかしてるの?おまけにメイクもすっかり変わっちゃって…」
「この人の好みよ…紹介するわ。この人が私の夫よ。」
「あっ…よろしくお願いします…。」
そう挨拶すると、よくわかんないが杏さんはこちらを凄い勢いで睨みつけてきた。
こ、こわい!
い、イヤヤや…落ち着け落ち着け…もともとこう言う目なのかもしれないだろうが!それを信じるんだ!
「とりあえずレストラン予約してあるからそこに行きましょう?お二人さん。あなたとは積もる話もあるしねぇ。」
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レストランに着くと杏さんはコートを脱ぎ、マフラーを外した。
改めて見るとモデルみたいな体型だ。
僕は身長だけは自信があるのだが、ふつうに僕と変わらないから…きっと170後半は余裕であるんだろうなぁ。
「ここはコースがあらかじめ決まってるから、料理が来るまでお話ししましょう。」
「そうね。最後あったのは高校二年の時だったかしら?だいぶ身長が伸びたわねぇ。当時から高い方だったけど、もう一瞬誰かと思ったわ。」
「ふふ、あなたの方こそ最初黒い髪の毛を目印にしてたから見つけられなかったわよー。そしたらよりによって金髪とか、かなり遊んでたんじゃない?」
「まさか、そんなことないわよ。彼が選んでくれたのよ。」
本当だ。
彼女の髪で僕が一番好きなのは金髪のショートヘアなんだからな。
「ふーん。彼とはどうやって知り合ったの?」
「大学の新入生歓迎会でたまたま一緒になってね。少し話す機会があったからだんだん惹かれていったのよ。」
「そんな前なの!じゃあ一年の時?前の彼氏とはほとんど長続きなんてしなかったのにねぇ。」
杏さんがそう言うと、彼女は頰を赤らめた。
「…運命の人だから…//」
「」
杏さんは、はぁ…とため息をつき頭を抱えた。
「…あなたがそう言う事言うとは思わなかったわ…」
「あら?ダメかしら?人なんて十年経てば変わるものよ?趣向も性格も。」
「それもそうかしら…ところで旦那さん。彼女との生活ってすごい大変じゃない?」
今度は僕の方を向いて、質問してきた。
「えっ…そんなことはないですが、何故でしょうか?」
「いやぁね…彼女ってすごく冷淡で人と自分に厳しくて皮肉だったり小言ばっか言うから生活してて気になるでしょう?だから私絶対結婚なんてできないと思ってたのよ。ところがこんなイケメン連れてきて…まぁ…そう言う性格だから、わたしと馬があったのも事実だけどね。」
彼女の長いまつげがピクッと動く。
その表情はいかにも苦しそうだった。
「別に、そんなこと一つもないですよ…?少し、クールな部分もありますけど、可愛らしかったり愛嬌のあるところだってたくさんあると思います。」
「それは…本当…?」
ギロッと僕を睨みつける。
少し怖気付いたが、僕はそれをはねのけるように答える。
「本当です。」
「…そう…
あら、料理が来たわ。お話はこれくらいにして頂きましょう。」
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料理は非常に豪華なものばかりであった。
今までに食べたことのないような料理ばかりで少し困惑するほどだった。
「ごめんなさい、杏、お手洗いに行ってくるわ。」
「うん、わかったわ。」
そう言うと、食事中に彼女は席を立ちトイレへと向かった。
すると、
「…あなた…彼女のどんなところに惚れたの?」
「…え?」
彼女の姿が見えなくなった途端、杏さんは箸を置いて僕に問い詰めてきた。
「…」
正直何を言えばいいかわからなかった。
彼女と出会って10年。
紆余曲折あったが、それを全て受け入れて歩いてきたのだ。
今更好きなところと言われると困ってしまう…
「笑顔…ですかね。彼女が時折、見せてくれる優しい笑顔が好きです…普段あまり笑わないからそのギャップについクラッと来ちゃいますね…ハハハ…」
僕がそう笑いながら言うと、杏さんの顔はまるで信じられないことを聞いたかのような表情になっていた。
「…そうなのね。」
「何か問題でも?」
「いや、違うの…むしろ嬉しくて…」
表情が一変し、優しい笑みで杏さんは僕に語った。
「あの子って…中学の時本当に笑わなかったのよ…中学の頃男子に雪女ってあだ名がつけられたくらい…ふふふ…今思うと馬鹿らしいあだ名だけど、お似合いだったかもね…高校に入ってから少し笑うようになったけど、それはむしろ逆で冷笑というか皮肉な笑い方っていうそういう不純な笑い方が多くなってね…」
「…初めて知りました…」
「うん…でね、私って人と話すとその人の性格とか好みとか結構わかっちゃうのよ。昔、彼女の元カレとかとも会ったんだけど…なんていうか、付き合うことを単なるステータスとしか考えてないっていうか…相手をモノみたいに考えていたのよね…でも、あの子もそういう考えだったの…だから、別れろって言うにもなんだか悲しくて言えなくて…本当に辛かったの…」
「…」
人の過去を知っていいことなんてあまりない。
もちろん知ろうともしたくない。
だが、だがこの話は僕と彼女との関係をより密接になるきっかけになるだろうと真剣に耳を傾けた。
「あなたと話してわかったのは、とりあえずあなたは彼女を愛してるんだなぁってこと。それだけで及第点なんだけど…びっくりしたのはあなたの好きな所が笑顔だって所…どうやらあなたと過ごして、本当にあの子は変わったみたいね…ふふふ…」
杏さんはニコッと始めて自然な笑顔になった。
その笑顔は満面ではないものの心から彼女を祝福しているかのようだった。
「さすが、高級レストラン…トイレも一流だったわ…」
そんな事を話してるうちに彼女が帰ってきた。
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僕らは食事を終え、駅で別れることになった。
「じゃあまたね。今度はいつでも会えるから、何かあったら連絡ちょうだい。」
「わかったわ。杏もお仕事頑張ってね。体調とか崩すとこっちが困るわ。」
「わかってるわよ。じゃあね。」
杏さんは手を振って、僕らとは反対側のホームへと向かった。
その途中、僕の方を向いてニコッと笑ったあと背を向けた。
あの笑顔はどう言う意味だったのかな。
きっと…
「ねぇ…あの子どうだった?」
「とてもいい人だったね。君に少し似てるところもあったよ。」
「…浮気はダメだから…」
「ふふ、まさか…
あのさ…」
「ん?」
僕は彼女の肩に手を置き、まっすぐ彼女の目を見た。
「君を絶対幸せにするから。」
「…い、いきなり何を言うのかしら…//」
自分でも少し恥ずかしくなったが、これでいいんだ。これで…
彼女は一瞬目を逸らしたが、また僕の方を見て呟いた。
「ふふ。もう既に幸せよ。」
その笑顔はこの世界の誰よりも輝いていた。
ちょっとギャグすくねぇなぁ…
次はてんこ盛りにします。