魔法のかかったようなテーブル(ヘタレ男がヤンデレ女に振り回される話)   作:バンバババルタリアン

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UA15000記念!
今回は男と女が子供を作り、息子が結婚するときの話です。


番外編「ヤンデレな女が好きな男とヤンデレな女が好きなその息子が送る結婚の挨拶の話」

ジ- ジ- ジ-…

 

カチッ

 

 

「こんなものかなぁ…」

 

 

普段、邪魔だと思うまで絶対に髭を剃らない僕がなんと2日ぶりに髭を剃っている。

 

別に生活習慣を変えたとか、ただ忘れていたと言うわけでもない。

 

今日はこの多難だった55年の人生の中で最も待ちわびていた日の一つであるからだ。

 

 

シャッ シャッ シャッ シャキ-ン

 

 

「…君は何をしてるんだい?」

 

 

僕の妻がなぜか台所で包丁を丹念に研いでいた。

 

 

「ふふふ…何って…挨拶のおもてなしの準備に決まってるじゃない…ねぇ?」

 

「…なんでおもてなしが包丁を研ぐことであると解釈したんだい…?」

 

「そりゃあねぇ…もしあの子がどこの馬の骨かもわからないあばずれクソアマだったらどうするのよぉ…そんな奴を連れて来たら、わたしがぁ…ふふふふふふふ♪」

 

 

…この人は相変わらずだなぁ…

 

今日はそう、僕らの長男である雄星が結婚相手を連れてくるのだ。

 

 

雄星は今26歳。彼女によく似た長い睫毛と端正な顔立ち、冷静でクールな所、僕に似た高身長と少し癖っ毛だが黒くて美しい髪に自分としては自覚はないが…真面目で強い正義感を持った青年だ。

 

彼女からしたら当然だが、僕にとってはこれこそまさに「トンビが鷹を産む」と言ったところだ。

 

彼は根っからの努力家で、一番は取れないもののいつも何事でも熱心に取り組み素晴らしい結果を残すタイプだ。

 

本当僕とは正反対だ…

 

そんな彼は学生の頃から色々な女の子からモテてたらしい。陽キャめ。

 

だが、その数多くの女子の中で最も彼を愛してたのは僕の妻だろう。

 

彼への愛は尋常でなく、過保護というか心配性というか…彼女が雄星にする母としての行動は、母親というより王を崇拝する家臣のような異常さであるのだ。

 

 

「私たちの愛の結晶を簡単に壊されてたまるものですか…絶対に…そんなこと許さない!」

 

 

彼女が包丁をプルプルと震えながら握りしめてると、家のインターホンが鳴った、

 

 

「お、ついに来たみたいだよ。」

 

 

玄関に向かい扉を開ける。

 

そこには僕らの自慢の息子、そして彼の婚約者であろう女性が立っていた。

 

 

「やぁ、父さん。紹介するよ、この人が今度結婚する楓さんだよ。」

 

「大祓楓ですぅ…この度はお機会を頂きありがとうございます…ふふふ…」

 

「あ、あぁ…どうも。」

 

 

その女性は柔らかくも妖艶な笑顔と色欲を狩られるような色気を醸し出していた。

 

多分彼とそれほど年齢は変わらないだろうが…20代とは思えないほどの魅力を持った人だ。

 

「あらぁ!こんばんは〜…その方が雄の結婚相手なのねぇ…まぁ、とりあえず中に入ってもらって…ね?」

 

 

彼女が僕の後ろで挨拶する。

 

普通に聞こえる挨拶だが、長年付き添って来た僕ならわかる。

 

 

 

この声はガチで怒っているーー

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「なるほど…つまり、楓さんは会社の受付嬢の方でうちの息子に一目惚れしたと…」

 

「はい…♪その時は運命だと思いましたわ…そのあと、色々な手を打ってなんとか会う機会をいただくことができましたの…♪あの時は人生で最も嬉しかったくらいですぅ…」

 

「いやぁ…そんなこと言われると、照れるじゃないか。」

 

 

僕らがテーブルの席について和やかに普通の会話を続ける中、彼女は依然と愛想笑いを続けていた。

 

ただの愛想笑いではない、こめかみのところがピクピクと震えてるのをみるとなんとか怒りを抑えている、と言う感じだ。

 

僕は内心めちゃくちゃ焦っていた。

 

そんな中、

 

 

プルルルル

 

 

「ん?…あぁ、会社から電話だ。」

 

 

と言い、雄星は楓さんにスマホの画面を見せる。

 

 

「ごめん…三人とも話の途中だけど一回抜けるね!すぐ終わるから!」

 

 

そう言い残し、席を立って廊下へと去って行った。

 

 

部屋は沈黙に包まれた。

 

………

 

……

 

 

 

しばらく経ったあと、口を開いたのは彼女であった。

 

 

「…楓さん…だったかしら?あなたは雄のどこが好きなのかしら?」

 

 

楓さんは、笑顔は崩さないものの少し戸惑った表情に変わった。

 

 

「ええ…そうですね…雄星さんの好きな所…全てですかねぇ…一言では言い尽くせませんわ…」

 

「なら、お断りよ。」

 

そう言うと、彼女は鬼神の如き表情でそう言い放った。

 

「ええ!?」

 

「ちょ、ちょっと待て母さん!彼女はしっかりとした家柄だし、礼儀も整ってるし分別も常識だってある!非の打ち所がないじゃないか!それに君がそんなこと言う立場じゃないぞ!?」

 

 

咄嗟に僕が正論を言い放つも彼女はその表情を変えようとしない。

 

楓さんの笑顔も遂に崩れて半泣きである。

 

 

「結婚において大事なのはそう!愛よ!愛!あなたは雄のいいところを『全て』と言ったわね?そんなの誰でも言える常套文句じゃない!私なら夫のいいところを円周率の暗記の如くスラスラ言えるわよ!結局あの子のルックスと地位と金目当てなんでしょ!このアバズレ女が!」

 

「あ、アバズレ!そんな…ううう…」グスッ,,,

 

 

あー泣かした!この人、息子の結婚相手泣かせちゃったよ!

 

 

「あと、さっきから思ったのだけど…

 

 

 

なんで家の中なのにそんな厚着なの?」

 

「えっ…それは…」

 

 

たしかに、部屋の中で楓さんはマフラーと手袋をしていた。

 

冬だとは言え家の中は暖房を入れているはずなのに…

 

 

「そんだけ厚着…しかも部分的に着ているってことは、恐らく肌かなにかを見せたくないってことかしら?…ふっ、わかったわ…あなたもしかしてタトゥー入れてるんじゃないかしら?このヤリ○ンが…さんざん遊んだ挙句、身を固めようと雄くんに色仕掛けでもしたんじゃないの!?」

 

「母さん…それは言い過ぎだろ…」

 

「そんなことないです…ただ冷え性なだけで…」

 

「じゃあなんで服はそこまで厚着じゃないのよ!首とか手の甲までびっしりタトゥーなんて…あぁぁ!本当にクソビッチね!さぁ、その汚らわしい肌を見せつけなさい!」

 

「母さん!」

 

僕が止めようとするも彼女は椅子から立ち上がり、無理やり楓さんの服を引っ剥がそうとしている。

 

 

 

「や、やめてください!」

 

「うるさいわね!タトゥー野郎に処女は絶対いないはずよ!間違えないわ!」

 

「母さん!?」

 

「今までに最高何Pしたかも白状させてやるわよ!」

 

「母さん!?」

 

「もしかして、息子の純潔はあんたが……

 

 

 

 

 

 

 

だとしたら絶対許さねえええええ!

 

「かあさぁぁぁぁぁん!」

 

「いやぁぁぁぁ!」

 

 

僕は彼女の愚行を止めるべく羽交い締めでなんとか動きを制御しようとした。

 

しかし、抵抗も虚しく彼女の身につけていた服はほとんど剥ぎ取られてしまった。

 

そこには…

 

 

「!!??」

 

 

 

 

 

全身手の甲から首筋にかけて火傷の跡で覆われており、背中は無数の深い傷が刻み込まれていた…

 

 

「あの…こ、これって…」

 

 

僕らが戸惑っていると楓さんは瞳孔がガンびらきになり、不敵な笑みを浮かべて立ち上がった。

 

 

「ふふふふ…見てしまったのですね…♪この傷は決して暴行だとか虐待でできた傷じゃないです…全て私がやったもの…これは全て彼への誠意の具現化なのです♡彼以外には決して肌を見せたりなんかしない…私は彼のものだっていうのをどう証明すればいいのかと思って。結果こんな感じにしてみましたの♪」

 

「」

 

 

僕は反応に困ったので目で合図を送ろうと彼女の顔を覗くと…

 

 

 

なぜか涙を流していた。

 

 

「うう…

 

 

 

 

息子をよろしくお願いします…」

 

「かあさぁぁぁぁぁぁん⁈」

 

「本当ですか!?」

 

「ええ…あなたの誠意と愛、十分に伝わりました。あなたなら息子を安心して送り出せます…」

 

「母さん!?母さん!?ちょっと待って!なんでそんな手のひら返しに…」

 

「ね?そうよね?あ・な・た?♪」

 

 

なんでそんな笑顔なんですか…しかもその笑顔すごく怖いんですけど!

 

 

「あ、あぁ…いいんじゃないかなぁ?↑」

 

 

彼女の雰囲気に圧倒され思わず声が裏返った。

 

 

「よかったわ…さぁ楓さん♪今から雄の素晴らしい幼少の頃からの写真をアルバムに保存してあるから一緒に見ましょう♪」

 

「はい!お義母さま!♪」

 

 

そう言うと、二人は階段を登って二階へと行ってしまった。

 

僕は一人リビングに取り残され、立ちすくんでいた。

 

………

 

……

 

 

「いやーごめんごめん!上司の無駄話がまた始まってさぁ〜…ってあれ?なんで父さんだけなの?二人は?」

 

「……なぁ、雄星よ…お前はあの子のどんな所が好きなんだ?」

 

「え、どこって…うーん…彼女の美しい心かな?容貌ももちろんそうだけど、僕のことを気遣ってくれたら落ち込んでいたりしたらすぐ心配してくれるところとか好きだなぁ…」

 

「そうか…」

 

 

僕は雄星の肩に手を置き、生暖かい目でニコッと笑った。

 

 

 

 

 

 

「血は争えんな…我が息子よ…」

 

「何、それ!気持ち悪っ!」

 

ヤンデレは正義だって、はっきりわかったんだね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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