魔法のかかったようなテーブル(ヘタレ男がヤンデレ女に振り回される話)   作:バンバババルタリアン

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(投稿頻度)こわれちゃ〜う
すいません…かなり遅れました。ここ数日寝落ちを繰り返しました。





嫁の飯が不味い男と健康第一を勘違いしてる妻が送るお弁当の話

二つの時計の針がちょうど12の方向を指した。お昼休みの時間だ。

 

お昼休みといえば職場で唯一の楽しい時間である。

 

普通の人ならみんなで食事を楽しんだり、外で買い物や所用をすませるのに時間を使うだろう。

 

かく言う僕はパパッとデスクで弁当を食べて、残りの時間は細かい仕事を終わらせてしまう派である。周りから見たら寂しい男だろう。

 

僕にとってはこの昼休みすらあまり楽しい時間とは言えない…

 

彼女が丹精込めて作るちょっとした「訳あり」弁当を残さず食べなければいけないからだ。

 

僕は先ほどまでカタカタと打ち込んでいたキーボードから両手を離し、カバンからそれを取り出して机の上に置いた。

 

すると

 

 

「あ、課長さんってやっぱりお昼は愛妻弁当だったんですね!」

 

 

うっ…

 

蓋を開けようとした瞬間、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

 

「前から課長さんって食堂で見かけることなかったからどうしてるのかなーって思ってたんですけど…ここにいたんですねぇ♪」

 

 

そう、新山さん(クソ○マ)が僕の真横に立っていたのだ。

 

 

「…そう言う君はどうしてここに?いつもは食堂か外でも行ってるじゃないか?」

 

「その通りなんですけど、今日仕事が溜まっちゃってるのでコンビニでサラダだけ買ってここでパパッと食べようかなぁって…それにしてもすごく豪華な弁当箱ですね!何が入ってるんですか?」

 

 

そう言うと、彼女は僕の漆塗りの弁当箱をヒョイっと持ち上げていろいろな角度から見つめる。

 

僕はそれを両手で掴み、バッと奪い返した。

 

 

「人の弁当をジロジロ見つめんじゃない。行儀が悪い…」

 

「えー、課長さんあの事あってから私に冷たくないですか?」

 

「当たり前だろ!危うく不倫になるところだったんだぞ!?」

 

「まぁ…そうですけど…あ、そうだ、愛人募集するときはいつでも言ってくださいね?♪」「死んでもするもんか!」

 

 

怒声を浴びた彼女は眉をひそめ、つまらなそうな顔をする。

 

 

「はー…まぁ冗談ですよ…それより弁当の中見て見たいです!あの純愛(笑)に溢れた奥様のことなんですから相当豪華なんでしょう?」

 

 

僕はその言葉を聞いてフフッと小さく冷笑した。

 

 

「あぁ、そうだね…いろんな意味で愛に溢れてるよ…」

 

 

僕は弁当の蓋を開けた。

 

するとなんということだろうか。

 

中には茶色い「何か」とニンニクやよくわからん生き物の丸焼きなどが小分けされて詰め込まれており、しかもそれは普通の人なら嗅いだことのないような奇妙な匂いがムワッと漂ってくるではないか…

 

 

「うっ!な、なんですか!?この匂いと見た目は!」

 

「これは、ニンニクのホイル焼きでこれは高麗人参を煮た奴…で、これは多分…中国の方の食用のトカゲかなんか、でこれは…」

 

 

僕が具を指差しながらメニューを言っていく度、彼女は目を見開いていく。見ていると少し面白い。

 

全て紹介し終わると彼女は珍しく態度を変え、声を荒げてきた。

 

 

「ふ、普通じゃないですよ!な、なんであの人はこんなものを弁当に入れるんですか!?おかしいでしょうが!」

 

「…多分…その…夜の…君に言うと立場的にセクハラになっちゃうようなことのためだよ…精力をつけるというか…」

 

「?……うーん、あっセッ○スですね!」「人の気遣いを無駄にしやがって!」

 

 

僕が再びツッコミを入れると、彼女は先ほどの激しい形相から一般不思議そうに首を傾げた。

 

 

「ていうか、これ弁当なんですか?ご飯もないですし、ましておかずになりそうなものすら一つもないですよ?」

 

「あぁ、それならーー」

 

そう言い、僕はカバンから2段重ねの重箱弁当を取り出し、ドンと机に大きい音を立てて置いてみせた。

 

 

「これが主食だよ。」

 

 

蓋をあけると中には、二段目には先ほどのゲテモノたちを料理した人の作品とは思えない美しいおかず達、一段目には白飯がぎっしりと詰まっていた。

 

 

「うわ!す、すごい…やっぱりあの奥様らしいです。完璧主義っぽいところとか几帳面そうなところとか…」

 

 

残念だが、その見当はハズレだ。フッ、本当の彼女のことを知っているのが自分だけというのはやはり優越感に浸れるな。

 

そんなことを考えてると、再び彼女は首を傾げた。

 

 

「でもこれ…

 

量多くないですか?」

 

「そう、そこなんだよ。あちらのゲテモノは量があまりないからなんとか食べ切れるんだけど…このいかにも体育会系の高校生が食べるみたいな量の弁当は小分けして食べてかないとしんどいんだよ…それも妻が『冬なんだから風邪ひかないように栄養つけてね!』って心配してくれるからなんだけど…流石にしんどいよねぇ。」

 

僕はため息をついて、橋をホルダーから取り出してゲテモノ弁当の中から一つつまみ出した。

 

「うーん…ちょっとこれはダメなんじゃないですか?課長さんの業務とかにも影響出ますし…奥様には言わないんですか?」

 

「言ったら絶対『あなたのために作ったのに!』みたいな感じでヒステリックになるからなぁ。それは避けたいな。」

 

「じゃあこうしましょ?『今日は食欲がなかったから全部たべれなかった』って言って残しましょ?それなら多分許してくれますよ!」

 

「そ、そんなもんなのかな、でもそれを毎日続けるのは流石に心が痛くなるよ…」

 

「そうですよね………これならどうですか!?『上の人に部下とのコミュニケーションのために一緒に食事をしろと言われたから。」どうでしょう!」

 

「いやいや!そんな無茶な命令があるか!速攻拒否だろうが!」

 

「もし奥様に言ってくれたら駅の近くに最近出来た海鮮丼のお店に連れてってあげますよ?」

 

「な、何だと…」

 

 

か、海鮮丼!冬は菌が繁殖するからと妻に止められてる刺身の丼!た、食べたすぎる!で、でもぉ…うーん……

 

 

「わ、わかった…今日の夜帰ったら言ってみるよ…」

 

「さすが課長さん♪よろしくお願いしますね!」

 

 

そう言うと、彼女は自分のデスクに戻り、僕は箸で持ったゲテモノのかけらを元あった場所に戻した。

 

 

 

 

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その日の夜

 

 

「ただいまー。」

 

「あれ?鍵持ってたの?ピンポン鳴らしてくれたら開けてあげたのに。」

 

「まぁ君も面倒だしいいだろ。あ、そうだ。弁当なんだけどさ、今日少し具合悪くて食欲がないせいで残しちゃったんだよね…本当ごめん…」

 

 

そう言い、僕は台所で料理をしてる彼女へ食べかけのゲテモノ弁当箱を差し出した。

 

すると、

 

 

「う…うそ…」

 

 

彼女が僕の方へ首を向け、プルプルと身を震わせ始めた。

 

あ、やっぱりダメだわ、死んだわ。と僕は思った。しかし、

 

 

「何で?どうして…なんでなんでなんで…」

 

「…え?」

 

 

彼女から発せられた言葉は怒りではなく嘆きであった。

 

 

「あなたのために栄養管理士の資格も取って…料理も済美までこだわって作ったのに…具合が悪いなんて…慢心してたわ…私…ただ料理を完成しただけで満足していた大馬鹿ものよ!あなたのためになんて言ってカッコつけて…本当の思いやりなんて微塵もしてなかった!」

 

「え、ええ…」

 

「ごめんなさい…あなた、本当にごめんなさい!あなたが体調を崩したのは私のせいよ…私がもっと心を込めてお弁当を作っていれば…私…私もっと料理を極めて満足してもらえるように頑張るわ!」

 

「いや、あのその…」

 

「ふふふ…安心して、あなたのことを一番に考えてるのは私…だから今回のことは本当に最低だったわ…でも改心してこれからは愛情をもっと費やしてあげるわ…だから期待してね♪」

 

 

彼女はなんか目の奥が暗いのに、笑顔で僕の手を痛いぐらい強く握ってきた。

 

こ、こんなこと言われたら『ごっめぇーん!☆明日から弁当いらねぇやぁい☆ばいぴょーん!」なんて事言えるわけねぇ!ど、どうしよう…

 

 

そうだ!

 

 

「あ、あぁ。わかったよ。でもあんまり無理しないでね…」

 

「うん…わかってるわ…あなたがそう言うのだから…♪」

 

 

彼女は嬉しそうにニコッと微笑んでくれた。可愛い。

 

 

「ご飯はいらないって言ったよね?じゃあ今日は風呂入って寝るよ。」

 

「うん…体調悪いなら今日は夜伽ぐらい我慢するわ…」

 

 

夜伽かぁ…こういうところで女の品が出てくるんだろうなぁ…

 

そんなことを考えながら僕は風呂場へと向かった。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

翌朝

 

朝が来た。今日も素晴らしい心地で目覚められたわ…昨日の夜交尾できなかったのは残念だけど…まぁ、いいわ。朝の恒例彼への目覚めの口内直接洗浄キスをしてあげなきゃ…ってあれ?

 

起き上がって横を見ると彼の姿はなかった。

 

 

えっ?

 

 

私はベッドから降りて、階段を下ってリビングに向かう。

 

リビングにも彼はいなかった。しかし代わりにテーブルの上には一枚の置き手紙があった。

 

そこにはこう書いてあった。

 

「上司から早出のラインをもらっちゃった。

その後すぐに寝ちゃったから昨日の夜君に伝えられなかった。ごめん。

今日のお昼はコンビニで済ますよ。」

 

 

…………フフフ…

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

お昼休みがやってきた。

 

今日も僕のデスクにクソ○マ(新山さん)がやってきた。

 

 

「えー!結局ダメだったんですか!?」

 

「うん。なんか怒られたっていうより悲しませちゃってお昼いらないって言えなかったよ。本当ごめん。」

 

「もーしょうがないですね…じゃあ課長さんのお弁当少し食べてあげますよ。食費も浮きますし。ただし大きい方だけです。」

 

「言うと思ったよ…」

 

 

彼女はすごく残念そうな顔をしてる。よほどあの店に行きたかったのかもしれないな。

 

だが、僕も馬鹿ではない。少し頭の回転が早い方なんだぞ。

 

 

「じゃあ弁当箱をカバンから取り出さないとなぁ。ってあれ?ない!弁当がないぞ!」

 

 

僕はカバンの中をわざとらしく弄り回す。

 

 

「…課長さん?」

 

「あー!弁当忘れちゃった。ごめんごめん。じゃあ代わりにどっかでお昼取らないとなぁ?ねぇ?」

 

「課長さぁん…」

 

「…行こうか。」

 

 

彼女の顔がパァっと明るくなっていく。

 

 

「い、イケメンすぎます!い、行きましょう!是非とも行きましょう!」

 

「はは、全くしょうがないなぁ。」

 

僕は席を立って上に向かって大きく背伸びをした。しかし

 

こんな二人の勝利確定ムードに水を差すように横から一人の女性社員が現れた。

 

 

「あ、あの、経理部の橘課長ですよね!?」

 

「ん?そうだが、どうかしたのかな?」

 

「えっと!課長の奥様とおっしゃる方が本社にいら…「あらぁ?あなたぁ♪」ひいっ!」

 

 

彼女の後ろから殺気でビンビンの図太いがよく耳にする声が聞こえた。

 

それを聞いた瞬間、女性社員の子は怯えるように体を震わせてささっと走って逃げていった。

 

 

「な、なんで君がここにいるんだ!」

 

「なんでって…そりゃあお弁当を届けるために決まってるでしょう?あなたが体調を崩さないように朝からお昼まで一ミリ単位で調節して使ったのよぉ…うふふふ…」

 

「そ、そうなのかぁ…あ、ありがとう…丁重にお預かりするよ。」

 

 

僕は、多分怒り心頭の彼女から差し出された重箱をプルプルと震えた手でゆっくり受け取った。

 

 

「あぁ、受け取るのね…てっきり受け取らないと思ってたわぁ…」

 

「え?受け取らないって?」

 

「だってぇ…そこの女とご飯に行くのでしょう?

 

そう言うと、妻はクソ○マの方をギロっと睨んだ。

 

「ひいっ!しょ、しょれわぁ…」

 

彼女は白目を向いて失禁したんじゃないかと心配になるほどビクビク痙攣している。

 

 

「さっきからずっと聴いてたわよ…しかも海鮮丼って…あなた…あんだけ冬に生物は危ないって言ったのに、どうしてそんなところに行くのかしら?」

 

「しゅ、しゅいましぇん…」

 

「お仕置き。よね?」

 

「は、はい!」

 

 

あぁ、殺される。というより具体的にはけつの穴の中を犯される。やばいやばい!

 

僕はいつでも土下座ができるように両膝を地面をつけようとした。

 

すると

 

 

「か、課長しゃんはお弁当を食べるのが嫌だったから私とご飯を食べに行くんんでしゅ!」

 

「「!!」」

 

 

横からクソa…新山さんの震え声ながらも勇ましい叫び声が聞こえた。

 

彼女は口をポカンと開けて呆然としている。

 

新山さんは主張を続ける。

 

 

「あなたがお弁当を作ってあげるのは愛なんですよね!?なら思いやりという愛も必要だと思うんです!あなたが作る弁当は課長さんにしては多すぎるし、もう一つの弁当なんか食べれたもんじゃありません!増して時間制限があるお昼休みにです!課長さんは今まで頑張ってそれを全て完食していたんですよ!どう思ってるんですか!」

 

なんか言葉は聞き取れるんだけど、膝が震えすぎてなんかのダンスみたいになってる。ちょっと面白くなってきたぞ。

 

と思ってるのも束の間。我に帰って妻の方を振り返ると、彼女の頬を涙が一筋伝っていた。

 

 

「そうだったわ…私は同じ失敗を繰り返して…妻として失格よ…あなた…そんなに我慢してたなんて。」

 

「君が丁寧に作ってくれたのを残すなんて出来なかったんだ。でも…少し限界が来て…本当、ごめん…」

 

「ううん…今回は私がほとんど悪かったわ…ごめんなさい…でもね、私たちに隠し事はいらないわ、言ってくれたらいいものの…嘘をつかれたのは、悲しいわ…」

 

「それは僕の責任だ!君には本当に申し訳ないことをした。僕らは夫婦だっていうのに…嘘なんかついて…」

 

 

僕は面と向かい合い、妻の手を取ってぎゅっと握りしめた。

 

 

「やっぱり僕が代償を払うべきだよ。嘘が一番いけないことだってわかってたのにしたんだから。」

 

「わかったわ…弁当はもちろんあなたが作って欲しい通りにこれからは作るようにするわ。でも今回のことで少しだけ信用を失ったわ…」

 

「うん…もちろんわかってるよ…」

 

 

僕は俯いて握り締める手の力を弱くする。

 

すると今度は彼女の方から強く握りしめ、口を開く。

 

 

「だからね。しばらくの間…………

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「……

 

 

 

 

あの…邪魔なんですけど…」

 

「やだぁ♪どかない♪」

 

「ええ…」

 

 

彼女がお願いしたこととは、出勤中も僕のそばにずっといるということだった。しかもゼロ距離で。

 

今、僕の妻は何十人もの部下がいる公衆の面前で後ろから、僕にあすなろ抱きをしている。

 

 

「あ、あの課長…書類にサインを…」

 

「あぁ、わかったよ。」

 

 

一人の女性社員が差し出した書類を受け取ろうとしたところ、うっかり彼女の指に触れてしまった。

 

すると僕の妻は腕を解いて、社員の方へ歩いていく。

 

顔はデレデレの緩んだ顔から即座に鬼の形相へと変化している。

 

 

「おい。」

 

ビクッ「ひいいい!な、なんでしょうか…」

 

 

彼女の唇が女性社員の耳元に近づく…

 

 

…色目使ってんじゃねぇぞ…

 

「イヤァァァァァァァ!」ビュ-ン

 

「あぁぁ!まだ書類のハンコ押してな…「ねぇあなた?」はい!何でしょうか…」

 

 

彼女がフーッと大きく息を吐くと僕の方へ振り返り、満面の笑みを見せた。

 

 

「ずっと

 

 

 

 

 

 

 

 

いっしょよね?

 

 

見開いた目の奥はまさに地獄のような色だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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