魔法のかかったようなテーブル(ヘタレ男がヤンデレ女に振り回される話) 作:バンバババルタリアン
…
バンッ!!
「どうなってんだこのミスは!こんなに初歩的なもの間違えするなんて頭でもイカれてんじゃねぇのか⁉︎あぁ!?」
「本当に申し訳ございません…直ちにミスを修正してきます…」
「謝れば済む問題じゃあねぇだろうが!今月で何回目だよおい!テメェのチームはそんなんで成り立つのかよぉ!おい!」
また始まった…今月で何回目だ…これ…数えるのもめんどくさくなってきた…
仕事ぶりが認められ、課長に昇進したものの慣れない管理職と新しくコネで入ってきた無能な部下のせいで評価はどんどん下がって行く一方だ…
「いいから修正してまとめろよ!資料だってまだできてないんだからな!」
今日も徹夜か…最近あまり早く帰ることができなくなったなぁ…
席に着き作業を続けてるとミスをしでかした張本人が通りすがりに
「あっ、課長さんおつかれっす!先上がらせていただきますねー」
と言った。
おいちょっと待て、お前がミスしたせいでこちとら残業するんだぞ!手伝うとか強いて謝るとかしろよ!
でも僕はそんなことすら言えるような人間ではない…
「あ…う、うん…お疲れ…」
もちろん注意したい気持ちは山々だ…だけど彼は社長の友人の一人息子で気にくわないことがあればチクられて僕の立場が危うくなることもある…人を怒ったり注意したことのないような人間には相手の尺に触らず注意する方法なんてわかるはずないんだ…やっぱり僕はダメな人間だ…
女子社員のうち、一人は僕をみて嫌悪し、ほとんどは嘲笑い、男性社員を含めその他はみんなこの状況を無視していた。強いて言うなら僕に対して好意的な目を向ける人なんていないのだ。社会、つまり人との関わりは僕にとってやっぱり向いてなかったのかもしれない。
携帯に一通のラインが届く
『今夜はパエリア!お仕事頑張って!』
…どれだけこの仕事が嫌になっても、やめたいと思ったことは一度もない…頑張らなきゃいけない理由があるから…
僕はいつもよりキーボードを打つスピードを速くした…
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新調したダイニングテーブルの上にはサラダやパエリア、その他のおかずなど豪勢な食事が並んでいた。女は食器棚からワイングラス、貯蔵庫から彼の一番好きなお酒を手に取りテーブルに置いた。お酒をグラスに注ごうとキャップを外そうとした時、家のインターホンが鳴った。女はお酒を置き玄関へと小走りで向かっていく。
ガチャ
「おかえりなさい。」
「うん、ただいま。」
「今日もお疲れ様ーまた残業?」
「うん・まぁね…取り敢えずご飯を食べようよ。お腹ペコペコだよ笑」
「私もよー笑」
「「いただきまーす」」
二人は席につき食事に手をつけ始めた。
「美味しい?」
「うん、相変わらず美味しいよ。」
「ふふ、よかった。」
二人とも無言で食事を続ける。部屋には時計の針の音と食器の音、咀嚼音だけが聞こえる。そんな中先に口を破ったのは男の方からだった。
「ねぇ…僕はやっぱり、社会不適合者なのかな…?」
「…どうしたの?いきなり…」
「…実はさ…」
男は自分の今の現状と気持ちを洗いざらい彼女に話した。
「僕はやっぱり、心がないのかもしれない…情熱もないし努力もしない、ただ臆病で自尊心が高くてヘタレなんだよ…おまけに人ともろくに話せないしコミュニケーションも取れない…僕は社会に受け入れてもらってる感覚がないんだよ…こんな自分が本当に情けないと思うよ…」
彼女はその話を聞いてスプーンをテーブルの上に置いた。
「また悪い癖が出ちゃったわね…自分のことを低く見積もって勝手に落ち込むところ。」
「今回は思い込みとかじゃなくて本当のことだからね。揺るぎない事実なんだよ。」
彼女はため息をつき、こう話した。
「あのね?自分のいいところなんて自分でも見えないもんなのよ?鏡を見ても左右が逆になってるから本当の自分の顔はわからないみたいにね。逆に自分が悪いと思ってるところが相手にとっては良いところかもしれないわよ?」
「そんなもんなのかなぁ…試しにいくつかあげてみてよ?僕のことを一番知ってるのは君なんだからさ。」
「ま、まぁね…愛してるんだから、当然だわ…♡」
テーブルに肘をつき、頰を赤らめさせながら彼に熱い視線を送る。
普段は一筋縄ではいかない彼女は彼のことになるとこうなってしまう。
「そうね…やっぱり自発的には何もできないところじゃないかしら?あなたって消極的だから文句もあまり言わないし、かと言って気の利くことだってしないわよね。
つまりそれって私にずっと頼りっぱなしで私の言うことは何でも聞くってことじゃない♡ならばいつでも監禁してベッドの上で調教だってできるし、廃人にさせて私に依存させることだってできるし、一緒に永遠に狂い愛しあえることもできるわよね…♡ふふふ…♡」
…いつもの発作がまた出たな…彼女は感情を溜め込む性格だからたまにこういうことになる。
「そ、そう言う物騒なことはあまり良くないと思うなぁ…笑
は、他には無いかなぁ?」
「そうねぇ………ごめんなさい、認識する限りあなたは良いところばかりしかないから今すぐ探すのは難しいかも…」
そう言うと彼女は寂しそうな顔をする。
彼もまた自分の言動が彼女を困らせてしまったと思い、俯いた。
「そうか…いきなりこんなこと言ってごめんね…」
しばらく長い沈黙が続いた。時計の針の音だけがチクタクと聞こえる。
しばらくすると、彼女は自分のスプーンでパエリアを一口分すくい、フーッと息を拭いて彼の目の前に差し出した。
「はい、あーん♪
「えっ、あ、あーん…」
彼はそれを口に含み、ふわっと広がる香りと味をよく噛んで味わった。
「ふふ♡美味しい?」
「…こういうのは付き合いたてのカップルがやることだよ…」
彼は照れ臭くなって目線を彼女から、まだ手をつけてないマッシュポテトに移した。
「たまにはいいじゃない♪あなたの恥ずかしがってるその顔、私好きだから久しぶりに見たいなぁと思って…」
「僕はどちらかといえば嫌いな方だな。」
「ふふ…ならまた一つ見つかったじゃない♡」
やっぱり僕が今こうして満足に生きてられるのも全て彼女のおかげなんだなあと改めて感じた。
彼はすでに風呂から上がり、洗面所で歯ブラシをしている最中である。彼女は隣の洗濯機で洗濯をしている。
「あのさ、今日は…するの?」
「ん?するって何のことかしら?」
「その…性欲処理…」
「あぁ…したいのは山々だけど、かなり疲れてるみたいだし…それに今日は可愛い表情が見れたから十分満足したわ♡」
「ずるいなぁ…」
口の中をゆすぎ、大きなあくびをする。
「ふわぁぁ…じゃあお休み…今日も楽しかったよ。」
「うん、私も♪」
「よかった…あぁ、そうだこっちにきてよ。」
「ん?」
そう言われ、彼の近くに寄る。
チュッ…
彼は長い前髪を手で上に上げて、おでこに優しいキスをした。
「お休み。今日も明日からも君を愛してるよ。」
「……えっ//」
ブワァッと全身が熱くなる。
「いやぁ…いつも君の思いを通りにされるから、試しにこっちからアプローチしようとしたんだけど…ちょっとキザ過ぎて僕には合わなかったな…恥ずかしいなぁ…笑笑」
そう言い終わると寝室へと消えていった。彼女は普段の彼のヘタレさと臆病さを知る分、今の状況を飲み込めないまま立ち尽くしていた。
「…」
「ゴムってどこにあったかしら…」
彼の背中に少しだけ寒気がした…
今後もまたこの夫婦の話を投稿していこうと思いますー。感想お待ちしてます!