魔法のかかったようなテーブル(ヘタレ男がヤンデレ女に振り回される話) 作:バンバババルタリアン
「はい…はい…そうですか…はい…ありがとうございます…それでは、失礼します。」ガチャ…
僕はジョブローテションにより以前の部署から新たな部署へと異動することになった。人事異動自体僕にとっては初めての出来事であり、新しい仕事や役職にかなりの戸惑いがあった。でもこのくらいは以前の地獄のような生活に比べたらむしろ天国と言える…またこの部署はチームで動くこともなく、基本的に各々の仕事をしっかりとこなすのがモットーになってるので僕にとってはやりやすい。
「課長さん!お疲れ様です♪」
机の右側からお茶をスッと渡される。
「あぁ、ありがとう。助かるよ。」
「ふふ、課長さんは真面目なんですから少し休憩を取った方がいいと思いますよ?」
そう言い、優しく微笑みかけてくるのは先日、支社から転勤してきた新山さんだ。仕事をテキパキとこなし、愛想も良いので他部署からも人気急上昇中の女の子だ。
「良いんだよ。僕は集中出来る時に集中したいタイプでね。」
「そうなんですかーでは引き続き頑張ってくださいね♪」
そう言い終わると彼女は自分のデスクに戻って行った。
恥ずかしながら今の職場で仕事を頑張ろうと思うのは彼女の励ましが大きい。本当にいい部下を持ったと思う。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「……最近あなた陰気な雰囲気がなくなったわね?」
「ん?そうかな?まぁ前の職場から移ってかなりモチベーション高くなったからねー」
彼女は少し面白くないと感じる。
「…それは何よりだけど。なんだか、いつものあなたに比べて自信がついたと言うか、ちょっと態度が積極的になってない?今日はケーキまで買ってくるし。いつもは絶対買わないでしょ…」
「ふふ、実はね…」
僕は新山さんのことを彼女に話そうとしたがすんでのところで、危険だと判断して、嘘をつくことにした。
彼女は人よりも何十倍も嫉妬深いから、他の女性の話をしたらきっと起こるに違いないと思ったからだ。
「…新しい上司に褒められてさ…これからも期待してるよーなんて言われてますますやる気になってね…ははは…」
もちろん嘘だ。普段から愛想なんて振る舞えない僕が上司に褒められるわけがない。
「ふーん…そうなのね…」
彼女はテーブルの木目を眺め、弧を描くようにそれをひたすら指でなぞり、やっぱり面白くない顔をした。
「それはそうと、そろそろ寝る時間だよ。寝室に行こう?」
「…そうね…」
リビングの明かりを消し、一緒に寝室に向入る。
僕が寝室の明かりをつけようとした時、彼女が珍しく僕に抱きついてきた。
「…する?」
コクッ…
こんなにしおらしい彼女は久しぶりに見たなぁ…そんなことを思った次の瞬間だった。
僕は彼女にベッドへ投げ飛ばされ、腹部にのしかかられる状態でマウントを取られた。
「うっ!な、何するんだよ!」
僕はあまりの驚きについ怒鳴り声を上げてしまう。しかし、その声など何も響かない様子で彼女は息を荒げて僕の首筋にがぶりと噛み付いてきた。
「痛い!痛い痛い痛い!」
それは愛情表現の一環である甘噛みなんかとは違い、本当に人の肉を抉るような勢いだった。首筋はガリガリと削られ、血がドクドクと垂れてくる。離そうと試みるも元々力では勝てない僕が成功するはずもなく、痛みだけがどんどん強くなってくる。
や、やばい…これはガチで死ぬ…死ぬ!
そう思った瞬間、彼女の口が首から離れた。
俯く彼女の顔を覗き込むとと、瞳は涙でいっぱいになってた。
「…どうしてこんなことしたのか、説明してくれるかな?」
首からは未だに血が流れ続けてる…
「グスッ…わかりゃない…わから…ないよぉ…ヒクッ…た、たぶん…多分なんだけど…ヒクッ…いいかな……」
「うん、ちゃんと話して。」
すると彼女は顔を上げ僕の顔を見つめて話した。
「私…あなたが今の職場が辛いって言ってた時…内心すごく嬉しかったの…私を頼ってくれるって…私だけがあなたを幸せにできるんだって…グスッ…でも…今みたいな元気な姿を見ると…私以外にもあなたを囲んで笑顔にしてくれる世界があるって思ったら…自然と…体が動いて…ヒクッ…」
その言葉からは彼女の行動が悪意の入りまじったものではなく、純粋な嫉妬によって起きたことだと理解した。
でも僕は許せなかった。だがそれはあくまで彼女の行動についてではなく言動と思考に対してだ。
「…君は少し支配欲にかられすぎなところが多いと思うよ?夫婦ってのは互いを幸せにしたいから成立するものであって、独善的な愛情は返って身を滅ぼすことになるよ?僕は君のそういう所が嫌いだよ。」
「…そうだよね…わかってる…でもこれだけはわかって…あなたを愛してるってこと…」
「もちろんだよ。僕も一番大切にしてるのは君なんだから…」
彼女は安心した顔つきで僕に抱きついてきた。
今日は少し冷たい態度を取ってしまったかもしれない…でも僕がここで受け入れてしまったら、僕らは何も成長できない。ただの共依存のカップルになってしまう。返ってよかったとすら思っている。でもまぁ…それを彼女が理解したかは別としてだけどね。
「好きい…♡スキィ…♡んん…♡」
溢れ出てくる僕の血を愛おしそうにペロペロ等の舐め回す。
もしあの時、僕が新山さんの名前を出していたら、いったいこれの何倍の量の血を出すことになったんだろう…
考えてみたが、怖くなったのでやめることにした。