魔法のかかったようなテーブル(ヘタレ男がヤンデレ女に振り回される話) 作:バンバババルタリアン
プルルルルル ガチャ
「田村です。」
「田村先輩ですか?お久しぶりです。僕のことを覚えてますか?」
彼は数秒置いた後、驚いたように言った。
「あぁ!君か。久しぶりじゃないかー。それに君から連絡をしてくるなんて、今晩は雷雨でも起きそうだ。」
「ははっ、ご冗談を。いやぁ、久しぶりに先輩に会いたいと思いまして…今度の土曜にそちらへお伺いしても構いませんか?」
「うん、良いとも。君と話してて退屈することはないからね。」
毒のある口調と嫌味ったらしいジョーク。この人は相変わらずのようだ。
「では、土曜の午後に先輩のご自宅へ向かいます。」
「わかった。楽しみにしてるよ。」ガチャ プ-プ-プ-
………
……
…
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僕は先輩から送られてきた住所を頼りに高級住宅街を彷徨っていた。
ここかなと思われる場所に着くと、目の前には一軒家やマンションが立ち並ぶ中、一際異彩を放つ洋館が建っていた。それは決して豪華でも壮大でもないが、どことなく優雅で趣深い雰囲気を醸し出していた。
僕はその家の柵を開け、玄関のドアをノックした。するとドアが開き、中から白髪で古い丸渕眼鏡をかけた痩せた男性が現れた。その容貌は20代と言われても60代と言われても納得するなんだか不思議なものだった。
「よく来たね。面白くもない所だけどとりあえず上がってよ。」
「そんなまさか、とりあえず失礼します。」
玄関に靴を脱ぐ場所はなく、単なる洋風建築ではなく本当に洋館なんだなぁと感心した。
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招かれた場所は木漏れ日が射す、美しい客室だった。
「どうぞ。」
先輩が紅茶と高価そうな茶菓子を僕の目の前にある小さなテーブルに置く。
「ありがとうございます…」
差し出された紅茶の水面に高い天井と部屋をびっしりと埋め尽くす本棚が映る。僕は思わず辺りを見渡し、感慨に浸った。
「ふふふ、驚いただろう?客室にある本は小説とちょっとした古い絵本だけなんだよ…リビングにはこれの5倍は軽く超える、洋書だったり学術書があるよ。」
「…さすが、先輩です…」
僕が先程から「先輩」と慕うこの人。彼は田村さんという僕の高校、大学時代での先輩だ。多分大学の中で僕が友達と唯一言えた人はこの人だけだ。僕はこの人から沢山のことを学び、偏屈だった自分でも沢山の考えを持てるようになった。今は哲学者として若年ながらも一線で活躍してるそうだ。
「君が僕のところを訪れたってことは…それ相応の理由があるに違いないな?まぁ…本題を聞こうか…君の悩みを聞くのは昔から好きだったからね。」
「はい…」
僕は客室の天井を映す、紅茶の水面をひたすら眺め続けた。
「僕の妻のことなんですけど。」
「ほぉ、あの君にはもったいないほど立派な彼女のことか?」
「余計なお世話です…ですが、本当にそうだと思います…僕は彼女の事をできる限り幸せにしてあげたいと思ってます。でも…先日、彼女に対して無礼を働いて、それのお詫びに二つ彼女のお願いを聞くことになったんです。一つは実現することを約束したんですけど…二つ目を聞いた時、僕は怒ってそれを断ってしまったのです。そしたら、彼女は泣きじゃくってしまって…それからは会話が途切れてしまいました。本当に僕は大馬鹿者です。僕は生来、不幸を永遠に背負って生きてくべき人間だと自覚してました。でも、彼女と出会ったことで全てが変わったのです。だから、いつまでも彼女を笑顔にすると覚悟を決めて結婚したんです。ですが…彼女の真摯なる好意をある時からなぜか恐ろしく思って素直に受け入れられない自分がでてきたのです…最近はあまり構ってもあげれず、ただでさえ寂しい思いをさせていたのに…挙げ句の果てにこんなことに…こんな人間、愛することも愛される資格すらありません…先輩。僕はどうすればこの性分を変えられると思いますか?」
「…」
先輩は信者の懺悔を聞くシスターのような優しさと、単純生物の行動を観察する科学者のような好奇心が入り混じった表情を浮かべる。
そして、普通よりも砂糖が何倍も盛られた甘い甘い紅茶を一口すすり、こう言った。
「…君はなんというか、言動や行動は随分と丸みを帯びたが…やっぱり芯は昔と変わらないんだね。なんというか安心したよ。」
その言葉を聞き、僕は顔を上げる。
穏やかな目が僕を見つめていた。
「今の話からわかる君の昔から変わらない性分は『過度な自己犠牲主義』と『悲観性』、他者との関わりの乏しさからの『精神的な耐久性の低さ』だよ。君が社会という鳥籠の中で生き続けると言うのなら、この三つを克服しなければならないかもね。要するに、わがままになれってことかな。」
「はぁ…」
「お人好しな君が断るほどの願い事なんて多分かなり無理難題なものなんだろうな。それを断ることは全然悪いことじゃないさ。増して、それは君の精神が歪んでいると言う証拠にと一切ならないしね。君の方ばかりが歩み寄るんではなく、逆に彼女を引き寄せてみてはいかがかな?」
いつもならこの時点で彼の言葉に納得し、心が楽になるはずなのだがまだ僕の気持ちは暗く、邪悪なものに包み込まれていた。
「彼女はすでに僕に歩み寄ってきてくれてます。僕が許せないのはそれを受け入れず、ただ被害者ヅラをして距離を取り続けてる僕の心です!そこには何かしらの悪魔が住み着いていて、僕の使命の遂行を阻もうとしているのです!このままでは彼女の人生を狂わせることになる!…僕は…ぼくは…本当に、情けない…この悪魔は…いったい何物なんだ!?」
ガンッ!
僕はテーブルに拳を叩きつけ、プルプルと全身を震わせた。
すると先輩は普段は決して見せない、険しい表情で僕に問い詰めた。
「それは単に君が『過度な幸せを感じている現状が怖い』だけなのではないのか?」
「…!」
「君は若い頃、多難で不幸な生涯を送っていたそうだね。僕も一部は知ってるよ。だから、今起きてる彼女との幸せな日々を偽りだと認識してしまい、ただ疑って信頼しようとしない。確かに同情するべき点もあるが、過去を捨て、もう少し今を生きることに精一杯の努力を費やしてみなよ。君の心に住みついてるのは悪魔なんかじゃない。過去の自分自身なんだよ。僕は君が聡明な人間であることは十分理解してる。もちろん、一時の色欲にも負けない道徳心も持ってるはずだ。そんな君が選んだ女性は必ず、これからの幸福を約束してくれるはずさ。これは、世間一般からすれば『人は化けの皮などいくらでも被れる。』と少し甘い考えと認識されるだろう。だけど、道を貫き続ける君には、これぐらいがちょうどいいんだよ。」
やっぱりだ…僕はこの人の言葉を聞くと、自身の弱い所が全て裸になったように感じる。
「ニーチェの名言の一つに『自己侮蔑という男子の病気には、賢い女に愛されるのがもっとも確実な療法である。』というのがあるんだ。まさに君らにぴったりの言葉だと思ったんだが…君がもし、自身の性分を改めようと決意を固めるのなら、この言葉を是非勧めたいね。
『みずから苦しむか、
もしくは他人を苦しませるか、
そのいずれかなしには
恋愛というものは存在しない。』
心に永遠の恋を留めるように。それが夫婦の一番の支えになるはずだよ。」
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「今日はありがとうございました。おかげさまで気分が楽になりました。」
「いやいや、役に立ってくれたなら幸いだよ。」
先輩が見送る中、僕はバスに乗る。
「それでは先輩。またいつか。彼女のためにも頑張ります。」
「うん。バイバイ。」
バスが走り始め、我が家へと向かって行く。
先輩の姿はどんどん薄くなって行き、やがて視界から消えていった。
「………
『真面目に恋をする男は、
恋人の前では困惑したり拙劣であり、
愛嬌もろくにないものである。』
…これは言わなくてもよかったな…ふふふ…」
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おまけ(今回のわずかなギャグ回)
「やっぱり僕、君の願いを叶えたいんだ!もう弱音は一切吐かないよ!」
「本当…?私のエゴなのに…?」
「そんなことないよ!君のことを幸せにするって決めたんだ!だから、ちょっとの辛いことなんて耐えてみせるよ!」
5時間後
「しゅきぃ…♡あっあっ♡だめぇ…♡ぎゅーってしてて♡離れてると切なくて恐くなっちゃうのぉ…♡ぎゅーっ…♡」
「こんなにトロトロな表情して…ふふふ…やっぱり前○腺開発は成功のようね…彼ならやっぱりいい反応してくれると思っていたのよ…♡願いが叶ってすごく嬉しいわ…♡…いいわよ♡ギューってしてあげる♡そのまま私の胸で眠りなさい♡」
辛いことには耐えられるけど、快楽には耐えられませんでした。
これからも新キャラは出して行こうと思ってます。
そろそろ、二人の名前も出して行こうかなぁ…どうしよう…
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