メビウスの翼跡(※旧題:エースコンバットZEROのインタビューにあの人物を入れてみた) 作:白風 海斗
大陸戦争編00 ー敗走ー
それは、小惑星が落下する、と言う仮説から始まった。
識別番号1994XF04 名称、ユリシーズ。
直径およそ1.6km 落下すれば間違い無く「核の冬」が訪れると言う。
幾度となる調査の結果、それが防ぎようのない事実と判明すると、人々は知恵を絞り、技術の粋を尽くした。
ここ、ユージア大陸の中央に設置された巨大砲台“ストーン・ヘンジ”などが最たる例だろう。
しかし、それでも防ぎきる事は不可能だった。
隕石は地へと降り注ぎ、未曽有の惨事が地上を襲った。
その規模はユージア大陸だけで死者数50万と言うのだから想像に難くない。
経済基盤の崩壊、農産物の減少、治安の悪化……数え出したらキリが無いだろう。
「血で血は止められない、か。 それでも俺は……」
ここ数日の間にすっかりと見慣れたものとなった自室で一人ごちる。
端的に言えば、“暇”なのだ。
傭兵として、この地へ訪れたのは良いが、一方的とも言える戦況、日々悪化する戦局に司令部が混乱状態にあり、雇われた時に宿舎として部屋を与えられて以来、司令部からは音沙汰が無かった。
「まさか忘れられてるんじゃ……」
そう思った時、基地に警報音が鳴り響いた。
アラートの音に、まるで押さえられていた“ばね”のように飛び上がるとアナウンスの指示に従ってブリーフィングルームへと向かった。
* * *
ブリーフィングルームについたのは、俺が一番最後だったようだ。
正規軍なら文句の一つも飛んで来るだろうが、傭兵という立場上そんなことは無かった。
「よし、全員揃ったな。これより作戦を説明する……と言っても大した説明では無いんだがな」
俺が適等な席に座るのを確認すると、痩せすぎな印象を与える壮年将校が口を開いた。
「本日、9月17日を持って、本基地は撤収行動を開始。ノース・ポイントに仮設されるISAF総司令部に合流を目指す、以上だ。
各員が取るべき行動は追って指示する、解散」
開いた口が塞がらないとは正にこの事だろう。
ようやく声がかかったと思えば出番も無しに撤収、とは正直拍子抜けだ。
「あーきみ、傭兵のきみ」
三々五々、正規の部隊員や当基地の司令部要員がブリーフィングルームから出て行き始めた頃、例の痩せすぎの将校がこちらに歩いて来た。
「きみの予定だけどね、小型船舶で沖合に移動、沖合で空母に回収してもらってノースポイントに向かってもらうよ。
戦闘機乗りのきみには悪いけど、基地の飛行機は正規の者がノースポイントに退避させるからね。」
いよいよ持ってツキが無い。
飛行機乗りが船で撤収なんてお笑い種も良いところだ。
(もっとも、少なからず戦闘機と関わりのある空母と言うのがせめてもの救いだが)
もともと大して多くもない手荷物を纏めると、小型船舶の乗り込みが行われる港へと向かった。