メビウスの翼跡(※旧題:エースコンバットZEROのインタビューにあの人物を入れてみた) 作:白風 海斗
アレンフォートに降り立った俺を出迎えたのは歓声の声だった、それもそうだろう。
チェックどころかチェックメイト同然の状態から、こちらが一手差せる状態まで巻き返したのだから。
案内の兵の後ろに付き、揉みくちゃになりながらも、人混みから抜け出してパイロット待機室に逃げ込んだ俺を、今度は先にこの待機室の住人となっていたパイロット達が出迎える。
「よう撃墜王、いい腕じゃないか。その操縦、どこで覚えた?」
「へ、傭兵の癖してなかなかやるじゃねーか」
「おい、賭の事忘れてデカい態度とってるんじゃねーよ、一番高い酒奢らさせて貰うぜ?」
「そこまでにしておけ、今後の作戦を説明するぞ」
そう言いながら待機室に入って来たのはオメガチームのリーダーだ。
黒く日焼けした肌にがっちりと鍛えられた体躯に剃り上げられた禿頭は、一見して陸兵を思わせるものの、訓練校を首席で卒業したインテリで、エリートコースを蹴って現場に残ったと言う経歴の持ち主だ。
現状でのI.S.A.F.では、彼が無茶振りの多い首脳部と共に“作戦会議”を行い、現戦力で出来る範囲での作戦立案を行っている。
そんな事情もあってI.S.A.F.航空部隊の全権を首脳部から預かっており、空に居る間はAWACSでさえ彼の命令を元に各航空機の指示を行わなければならない。
そんな彼の入室と共に浮ついた空気であった部屋の中が、さも音を立てたように引き締まる。
「攻撃目標は……言うまでも無いな? 爆撃機の飛来して来た飛行場、こちらの準備が整い次第、うちらだけでも向こうに突っ込むぞ」
「そんな無茶苦茶な……」
そう呟いたのは先の防空戦闘で味方機とミサイルとの間に己の機体を割り込ませた猛者だ。
「各兵科の支援が無い中での作戦が無茶なのはわかってる……だが時間が無い、情報班や偵察部隊の報告では内地から爆撃機が向かっているそうだ、おそらく給油と爆弾の搭載を飛行場で行う算段だ、当日は二手に別れる、先行した機には爆撃機の補給作業の阻止として警戒網への陽動を行って貰う。後詰めには“編成が間に合っていれば”基地制圧用の歩兵等を載せた輸送機の護衛。以上だ、解散」
パイロットとしては、相棒の状況が気に掛かった、一応先の戦闘では被弾も無かった筈だ、なら補給さえきちんと行えば直ぐにでも飛ばせる筈だ。
他のパイロット達にちょっかい出される前に逃げるように待機室を抜け出した。
飛行場は雑然としていた。怪我人の呻く声、補給作業を行う機器の稼動音、破損した機体から使える部品を取り出すために機体を切り裂くカッターの音。
適当に捕まえた整備士から露天駐機から格納庫に移動された、と言うここでの“相棒”を探して格納庫を探すと、ちょうど整備士が操縦席付近を覗き込んでいた。
「すいません、こいつの整備状況を聞いても?」
格納庫は比較的小型の物で他に整備している機体も無く、外の喧噪も聞こえない。
これならさほど声を出さずとも声は聞こえた。
「あ、えっと。すみませんこの機体は内部チェックが済まないといけません、仮にチェックが終わったとしても無理ですよ、この機体はさっきの戦闘で乗ってた人の専用機として登録されてますから」
そう言って顔を上げたのは若い女性だ、赤みがかった茶髪と青い目が特徴的、だ。
「内部チェック……ってどうして?」
その言葉に、女性整備士が半ば呆れたように肩をすくめた。
「機体に無茶させすぎ何ですよ、格闘戦なんて対して想定されてない機体であんな動きさせたら異常が出ない方がおかしいですよ」
……正直申し訳ないな。
「まあ、そうしなければ仕方ないって言うのも分かりますけどね」
「すみません、気を付けます」
正直申し訳なくなってそんな言葉が口を突いて出る
「そんな謝らなくても……んっ」
そう言いながら大きく伸びをしながらコクピットから降りて来る、背は此方と大体同じか、此方がちょっと高い位だろうか。
「チェック、終わったんですか?」
「いいえ、1日2日じゃ終わる仕事じゃないし、時間も十分はあるし……大体さっきもいった通りこの機体は専用機扱いで……」
「大丈夫それ、俺だから」
「へ?」
「だから、俺が、この機体でさっき飛んでたの」
自身と機体と指差しつつ説明する。
「そんなまさか、冗談がお得意何ですね」
そんな風に行って笑いを堪えている。
「なんなら、食堂にでも行って他のパイロット達に聞いてみるかい? 俺の所為で苦労してる整備士を労いに何か奢らさせて頂くついでだ」
「やだ、口説いてるんですか?」
顔を真っ赤にして手をぶんぶん振る、その弾みでデータボートから留められた紙把が外れ、僅かに開いたスキマから入る風でバサバサと舞う。
「そんなつもりは無いんだけどな、っと」
手が届く範囲で、空中に舞うそれを掴んで回収する。
「あ、ありがとうございます」
拾ったそれを手渡すと先ほど以上に真っ赤になって受け取ってくれた。
機体の状態もわかったし、担当の士官に寝床を教えて貰うとするか。
そう思い格納庫を出ようと背中を向けると、その背中に声を掛けられた。
「昼食をご一緒する位なら……」
小さく溜め息を付くと踵を返して彼女が隣に来るのを待ち、共に食堂へと向かった。
そこで、ようやく「撃墜王は着陸後にも撃墜数を追加ですかい?」と冷やかされて彼がメビウス1だと気付いた彼女が書類を拾って貰った時以上に顔を真っ赤にするのはまた別の話。
ちなみにメビウスには整備兵を口説く気はさらさら在りません。
天然です。