メビウスの翼跡(※旧題:エースコンバットZEROのインタビューにあの人物を入れてみた) 作:白風 海斗
『21から隊長へ、隊長でもゴキゲンな事があるんですね、歌なんて口遊んで。あの少年の事が気に入りでもしましたか?』
『作戦中です、無駄な会話は謹んでください』
石油採掘、精製施設の防衛戦からの帰還中、いつの間にか、酒場で少年と奏でた曲を歌っていた“私”に三番機から珍しい物でも見たかのような声が聞こえ、そして間髪入れず二番機から注意が飛ぶ。
二番機を務める“彼女”は“私”を信頼し常に傍に控え、私もまた“彼女”を信用し“空で背中を預けられる”と思っているのだが、“私”以外には少々生真面目が過ぎると言うか、堅物な所があった。
そんな事を頭の片隅に考えながら二番機を制する。
“空の上では誰であっても自由である”と
すこしロマンチストが過ぎるだろうか、それでもこの“青と白だけの世界”“紅に染まる黄昏の刻”“黒の宵闇に星々が瞬く空と地上の光”……
そんな光景を一度でも見てしまえば誰だってそんな思いに駆られるだろう。
だからだろうか、つい饒舌になってしまったのだろう。
「気分が良いのは確かだ、久方振りに懐かしい人のことを思い出したからな」
“私”が口を開くと、皆がその話しに耳を傾け始めた。
「その人物は私に空を飛ぶことを教えてくれた、だから私はその人を特別な意味を持って<先生>と呼ぶ」
『隊長の“先生”ですか、でも、私にとって最高のパイロットは、やはり隊長しかいませんよ』
“21”を先頭に僚機の面々が言い回しは違えど、同様の旨を己が口々に語る。
「そう言って慕ってくれるのは嬉しい、だが未だに私は<先生>を越えられてはいない。 それは断言できる」
なにせ、コブラの要領でレシプロ機で空中に静止してみせ、模擬戦形式とはいえど、私の駆る当時の最新鋭の戦闘機相手に「撃墜判定」の泥を付けたのだ。
負けた悔しさよりもなによりも、記憶に残るのは猫を思わせるターボ・チャージャの鳴き声と上層部の連中の何とも言えない表情の方だ。
時刻はまもなく6:23、そろそろ基地が見えてくる時間だ。
精製、貯蔵施設こそ守り通したが、油田の方は我々がたどり着くまでに見事にやられてしまった。
本部の椅子に長く座る事しか考えていないお偉方からはとやかく言われるかもしれないが、知ったところではない。
私が興味を持つのは空戦とその相手…… 特に“あの”油田上空で戦ったリボンを模したエンブレムをした戦闘機──とやりあって僚機を失わずに済んだ、ただそれを喜ぶだけである。