サイコロの黄昏 ~あるいは、黄昏時の神々~ 作:うみねこ06
成功判定はクリティカルでした。これには思わず《幻想》もガッツポーズ。久方ぶりに重要な場面で
やったなー、と《真実》。防御判定、うーん1足りない。光と秩序と宿命の神々がハイタッチを交わしあいます。刹那、歩哨に立っていたゴブリンが二匹、弓矢に射抜かれました。
続いて判定。2d6で6。今度はうーんとうめき声をあげた《幻想》でしたが、
即座に入り口に向かうことを決断した
舞台は森人領域。魔神将が僕の一つ、
とまれ、そんなわけですから重要性はそれなりにある冒険です。俄然、秩序勢のやる気も湧こうというもの。凹んでいた《幻想》だって、なんやかんやと妖精弓手の骰子を振るっているくらいには乗り気でした。それでこの結果ですから、いつぞやとは異なりすっかり笑顔です。
と、一党がゴブリンの死体の前で止まります。《
「奴らは匂いに敏感だ。特に女子供、森人の匂いには」
「!? 嘘でしょちょっと!!」
おい《幻想》、と《真実》。骰子振ろうか? とニタニタした《真実》が、大変いやそうな顔をした《幻想》に声を掛けました。なお、出目が2以上で漏れなく血をかぶることになります。生理的な嫌悪感以外、理にかなってるし冒険が崩壊するわけでもないからね。仕方ないね。
えいや、と力なく《幻想》が一投。4です。見事、どうでも良いところで骰子運を維持できました。《幻想》の勝利です!
あーあと可哀そうなものを見るような秩序勢。げらげらと事の成り行きに笑いが止まらない混沌勢。常識的なことを言う神なんぞ、この場にはもはや。
「あ、あのあの! 少し、可哀そうではありませんか!?」
心優しい地母神さまくらいしかおりません。嫌がる妖精弓手を本気で心配しているようです。まさに善の善なる神たるや、と言ったところでしょうか。たった一つの問題を除けば。
ええと、《死》ちゃんお願い、と《幻想》。はいはーいと可哀そうなものを見る目で地母神さまを見つめながらのダイスロール。はい成功値。
「慣れますよ?」
「◎△$♪×¥●&%#?!」
お前が言うな、という問題さえなければ、ただの心優しい聖神なんだけどね、と《幻想》がしみじみつぶやきました。血濡れになった二人の少女はかくして生まれたのでしたとさ。
ここぞとばかりに冒険を楽しむ神々のお話
さて、そのあとしれっとボスの知識判定などなどに失敗した神々は置いておくとして、ゴブリンスレイヤー一行は神殿内部へ進入します。もちろん、ゴブリンスレイヤーはいつものように宣言もなしに剣を棒きれ代わりに床を叩き。《真実》は今日こそ不意の罠判定を振れるでしょうか?
神殿内部のレリーフに描かれた絵画の知識判定……部分成功。古代のなにがしかということは判明。
遺跡の構造……判定成功。一党はここが塔のようならせん構造になっており、注意して進まなければ罠に引っかかる可能性が高いことに気づきます。
妖精弓手の不快感判定……失敗。やっぱり女子供にゴブリンの生暖かい血脂は厳しいものがあるみたいですね。なお女神官は表面上はもはや平然極まりなく、地母神さまがさめざめと泣いておりました。
とまぁ、それぞれ《真実》と《幻想》が骰子を投じ、個別に判定。混沌勢がむむむとうなります。混沌と偶然を貴ぶ神々ですから、ここまで安定されると正直つまらない、というのが本音なのでしょう。まぁ、冒険も序の口だししょうがない、とお互いに慰めあっています。ただ、《真実》はと言えば、こんな有様でも不敵に笑うのみ。それを《幻想》がじとーと見つめております。ちらちらと、妖精弓手を気にしています。
「待って」
と妖精弓手が声をあげた瞬間、《幻想》が思わずガッツポーズ。嬉々として目星判定。2d6でふりふりしたところ8と上出来。固定値と合わせて完全看破です。ゴブリンスレイヤー一党は床に鳴子が仕込まれている事実に気づきます。
と、ここでさらに追加ロール。ゴブリンスレイヤーが、兜の顎の部分に手を当てます。どうも、トーテムがないことに気づきそうな模様。知識判定、と《真実》。聖典を捲るところによれば――固定値で自動成功でした。ですよねー、と神々がため息。
さ、さぁ気を取り直していこう! 《真実》が声をあげました。《幻想》がそれを見て口に手を当て笑います。あんだよぅ、と《真実》がぷりぷり怒りますが、いい加減ド安定の一党に焦りを隠せなくなってきた様子。ゴブリンスレイヤーの語る数々の
と、このあたりでいよいよ《真実》含めた混沌勢がざわざわとし始めました。反対に、秩序勢は唖然としたように盤面を眺めています。あれ、この一党、ゴブスレさんの自動成功はともかく普通に冒険できてね?
神々の瞳に俄然やる気が浮かんできました。ゴブリンとあらば骰子をガン無視し殲滅してきた彼に、ついに冒険の二文字が浮かんできたかもしれないのです。この一党ならば、
とはいえ、それは他の一党の犠牲、例えばゴブリンスレイヤーの今までの
(すっかり強くなっちゃって、まぁ)
と地母神さまが息をつきました。ため息とも安堵ともとれる、曖昧な吐息でした。女神官がなんか変なのに付き従ってかれこれ数か月となります。染まった、というには短すぎるのか、長すぎるのか。地母神さまに定命のもの時の感覚など理解はできません。けれども、《
と、一党の動きが一瞬鈍ります。が、《
(匂いがきついくらいで、体が震えるものでしょうか?)
声をあげる他の一党でも、淡々と扉の前に歩みを進めるゴブリンスレイヤーでもなく、女神官だけを追いかけていた地母神さまだからこそわかる変化でした。なにせ、口と鼻の先で手を震わせるその姿は、きつい匂いに耐えかねてのものに見えなくもありません。実際、他の一党はそう解釈したのか、そんな様子を気にも留めずにゴブリンスレイヤーの後についていきます。けれども、地母神さまの違和感はぬぐえません。
そのまま扉の前に立ったゴブリンスレイヤーが、扉を力づくでけ破るまで、そのもやもやは続きました。おかげで、混沌の神々が固唾をのんで一行の様子を見つめていることに、地母神さまはついに気づけませんでした。
「汚物っ!? なんでそんな所に……」
妖精弓手が荒げた声に、ようやく地母神さまの意識が遺跡へと戻ります。小さく響かないように、しかし細かく震える女神官が、おっかなびっくりと、けれども確固たる足取りでゴブリンスレイヤーに続きます。目星判定は、流石にいらんか、と《真実》。妖精弓手が息を呑み、鉱人道士と蜥蜴人僧侶が目を見開いたのはそんな瞬間でした。
「……ころして」
半身をズタズタにされた森人の冒険者がそこにいました。いえ、もはやありましたと言った方が良いのでしょうか。まだ『酷い傷』で済んでいるとはいえ、いえだからこそ、痛々しさがより一層募ります。
趣味悪いよ、と《幻想》が苦言を呈し、ゴブリンだからな、と《真実》が頷きます。人の命を何だと――とは地母神さまは思いません。神々が骰子を振りあった時代のすぐあとに生まれた地母神さまたちは、ここにいる神々が誰よりも生き物を創造し、そして死なせ、殺してきたかを知っています。定命の者と神々では、生死に関する根本的なところで共有できることなど一つもありません。それでも、地母神さまはいと慈悲深きを以て讃えられる方でした。慈悲や慈愛、といった定命の者が持つ感覚を守護することこそが地母神さまのお役目です。ぎり、と心がきしみ声をあげます。けれども、今地母神さまにできることはただそこまで。今回は、
え、と地母神さまが声をあげます。周りを見れば、ほぅ、と秩序と混沌の神々が感心したように四方世界を眺めています。地母神さまが呼ばれたのです。誰に? 決まっているでしょう。
慌てて四方世界へと意識を戻せば。汚物が飛び散るのも気にせず、女神官が部屋の中を一目散、駆けんばかりに進んでおりました。ぎゅっと錫杖を握りしめるその手つきはは、絶対に恐怖のためではないと断言はできませんでしたが、けれども確かに、地母神さまを求めての行動でありました。むろん、助けを求めてのそれではありません。力を求めてのそれでした。もし、ゴブリンスレイヤーが松明で制止さえしなければ、きっと走りながらでも奇跡を唱え始めていたでしょう。
「ころして……ころしてよ……」
なおも喘ぐ森人の前に、抜き身の刃を携えて、小鬼殺しが立ち止まりました。女神官が、今度こそは恐れで震えます。目の前の恩人が何をしようか、彼女なりに結論が出たのでした。それを食い止めようと、女神官が声をあげ、身を挺してでも止めようと飛び出そうとしました。
あ、と地母神さまが声をあげます。光と秩序と宿命の神々がやっぱりか、とため息をつきました。森人のすぐ後ろで息をひそめるゴブリンにようやく気付いたのです。一党は、誰も目星に成功していないようでした。殺して、という言葉の意味に、やっと地母神さまは思い至ります。道理で、精神崩壊していそう森人という格好の獲物なのに、部屋に入った瞬間の妖精弓手に対しては
けれども、それは女神官が自ら死地へ飛び込もうとしていることにほかなりません。地母神さまが止めようとして、ぐっと自制します。隣で骰子を振った《幻想》が、出目を見せてくれたからです。2d6で11。地母神さまは神々によって創られし神でした。そして託宣とは、神による
ゴブリンスレイヤーが、森人にとどめを刺すかとばかりに剣を振り上げました。その隙を突こうと、ゴブリンが飛び出してきます。ゴブリンスレイヤーの脇をすり抜け、後ろにいる支援職を――一番組みしやすそうな、女神官を狙う肚でした。《真実》が骰子を振るいます。地母神さまが、縋るようにそれを見つめ――。
ゴブリンが、一刀で切り伏せられました。ゴブリンスレイヤーの行動です。
その様をたははと力なく笑いながら見やり、やっぱり気づくよね、と《幻想》。手の中の骰子をコリコリとかち合わせて弄んでいます。
「……あの、判ってらしたんですか?」
地母神さまがぼそりと尋ねました。汚濁がその身を汚すのも厭わず、と申しますか気にも留めない様子で森人を支えた女神官を、困惑したようなけれどもどこか納得したように眺め、求められるままに奇跡を授けてから《幻想》を見ます。奇跡の効果に骰子を振ってもらう必要はありませんでした。彼女の可愛い信徒は、ゴブリンスレイヤーからの強い薫陶を受けているようなのです。あるいは、それに揺るがない心があるから、かもしれませんが。
わかるわけないよ、と《幻想》が笑いました。
「
だからね、と《幻想》が言い、その言葉は、汚物だめの中に吸い込まれるように、消えていきました。
さらっと流されてたけど、きっと神々、森人救出までの道で罠に引っかかるのすっごい期待してたと思うんだ。なおサイコロ振っても普通に大丈夫だった模様
アニメと漫画と原作で描写違うところから取捨選択するのめんど楽しいお!