僕の亀仙流アカデミア   作:怪獣馬鹿

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遅れてすみません!
一度書いてみて、ちょっと違うと思って全部書き直したら時間が掛かってしまいました。
すみませんでした。


出久の悪夢、再び!

桜が葉桜になり、徐々に夏の季節に代わり始める。

雄英高校の波乱の春は終わり、入学した1年生も徐々にこの学校に慣れてくる。

そして、雄英高校はあの地獄を体験しながらも普段と何も変わらない日常を繰り返していた。

 

そして、それは1年A組でも変わりなかったが、1つだけ変わった事がある。

 

出久の無個性が1年生ヒーロー科の全員にカミングアウトされたのだ。

その時はその場で解散になり、何も追求することが出来なかった。

 

 

 

それから2日後の今日。

あれから、亀仙人もZ戦士達もヒーロー科に修業をつける事はなかった。

それどころかいつもやっていた亀仙人無双の鬼ごっこでさえ、やらなくなった。

全員、急いで強くなりたいのに何もしてない状況に戸惑う。

それだけでなく、出久のカミングアウトも波乱を呼んでいた。

突然の“無個性“というカミングアウトは2日間ずっとヒーロー科生徒達が悩むと言うか、話題の種になった。

 

それは個性が基本的にある出久達の世代では珍しい無個性の人間。しかもそれが1年生最強の二人の内の一人なら尚更である。

しかし、出久はそれに対しては徹底的に何も言わなかった。それどころか、この2日間は明らかに今までと違って人との付き合いを徹底的に避けていた。

 

今までの出久とは違うこの態度に電気と勝己以外は困惑していた。

 

そして、授業が終わり、昼休みになる。

 

「緑谷!一緒に・・・」

 

鋭児郎が出久に授業終わりとほぼ同時に声を掛けるが、何ともうすでに教室から出ていた。

 

「またかよ!?」

 

「速いな」

 

あまりの速業にクラス中が唖然となる。

 

「んだよ!緑谷やつ!無駄に暗くなってよ!」

 

実の怒りの言葉にこの2日間の出久の態度を見ていたクラスメイト達も怒りが出てくる。

 

「ったく、出久のやつ」

 

電気が出久の後を追おうと教室を出ようとする。

 

「上鳴、緑谷の事なんだけど」

 

鋭児郎が電気近づきながら話す。

 

「悪い、それは俺からは言えねぇから、待ってくれ」

 

電気は鋭児郎が聞きたがっている事を察して言う。

そう、この問題は親友の電気とて簡単に話していい内容ではないからだ。

 

「んじゃ」

 

電気はそう言って、教室を出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●●●

 

雄英は敷地内に様々な物がある。

様々な状況に対応できるヒーローになれるよう、膨大な敷地と施設がある。

この森もその1つだ。

出久はその森の中で一人、購買のパンを食べていた。

ランチクックが作る食堂でカツ丼を食べたいが、今は食堂を使う気になれない。

 

無個性である事が皆にバレた。

正直に言って怖いのだ。

今までそれでかなり酷い目にあってきて、亀仙人との修業で何とかしてきた。

勿論、出久本人もこの雄英に入ってヒーローを目指す生徒がそんな人間ではないのはわかっている。

わかっているが、心が言うことを利かないのだ。

 

 

「本当に大丈夫か?」

 

 

出久は声のした方を向く。

そこには電気が立っていた。

 

 

「電気・・・」

 

 

「皆なら大丈夫だって」

 

 

「わかってるよ、そんな事」

 

 

電気は出久に近づく。

 

 

「皆を信じてやれば・・・」

 

 

出久の肩を掴む電気。

その肩は震えていた。

 

 

「怖いんだ、怖いんだ電気・・・皆が怖いんだ」

 

 

「出久」

 

 

「頭では皆は違うってわかってるのに全然、体が言うことを利かないんだ」

 

 

出久は電気の胸を借りて泣く。

電気も背中をトントンと叩く。

 

 

「大丈夫だ、大丈夫だから」

 

 

「ごめん、いつも助けられてばっかで」

 

 

「いいから涙を何とかしろ、次はAB合同でヒーロー基礎学だぞ」

 

 

出久は離れて、涙を拭う。

 

 

「昼飯は食ったか?」

 

 

「さっき食べた、電気は?」

 

 

「もう購買のパンを食ったよ・・・ほら、戻るぞ」

 

 

電気は教室に戻ろうとし、出久も付いていく。

森から、二人は去るが二人から離れた位置で亀仙人、悟空、クリリン、べジータ、ピッコロ、天津飯の6人が気配を消しながら、その話を聞いていた。

 

 

「フン、軟弱な奴め」

 

 

「そう言うなよ、べジータ」

 

 

「そうだ、誰にだって怖いことの1つや2つあるだろ?」

 

 

厳しい事を言うべジータに反論する悟空とクリリン。

しかし、べジータはそんな事はお構いなしの様である。

 

 

「そんなものは誇り高きサイヤ人にはない」

 

 

「へぇ~、この前、ブルマにこっぴどく怒られてたのにか?」

 

 

「き、貴様!何故それを!?」

 

 

「ん?ブルマから言われたぞ」

 

 

悟空の言葉にべジータが顔を赤くする。

言い争う二人に他の四人は離れて一塊に集まる。

 

 

「べジータの奴、一体何を言われたんだ?」

 

 

「何でもトランクスの学校の父親参観を1週間前から言われて更に前日にもきっちり言われてたのに悟空と一緒にビルス様の所へ修業に行ったらしいです」

 

 

「ほぉ~、それでこっぴどく怒られたと」

 

 

「もうブルマさん、カンカンでしたよ。『自分の息子との約束を破るなんて何がサイヤ人の王子よ!』ってしかも、トランクスにも『パパなんて大っ嫌いだ!』って言われて、次の日は1日中家族サービスしてたらしいですよ」

 

 

「べジータが宇宙一怖いものはブルマだな」

 

 

「違いない」

 

 

笑い会うガヤの四人にべジータは睨む。

 

 

「貴様ら、止めろ!ブッ飛ばされたいのか!」

 

 

和む六人。

亀仙人がわざとらしく咳をして、五人を止める。

 

 

「五人とも、お主らの初仕事はまだまだ先になるじゃろう、午後からの授業を見て生徒らそれぞれに会った修業法を一人一人考えてくれ、お主らに頼むときはそれを実践して欲しい」

 

 

「ええ~、オラ達の出番はまだかよ~」

 

 

「出番も何も悟空、まだ生徒らの事を知らんだろ?ワシが頼むまでよく見て修業法を考えるのじゃ」

 

 

「なんか、めんどくせぇな」

 

 

「学ぶのも修業じゃ」

 

 

「くだらん、俺様はトランクスを鍛えてた。今さらそんなめんどくさい事が出来るか!」

 

 

「べジータよ、トランクスと生徒達は違う。人に合わせて人を強くさせるのは教える師匠にとっても立派な修業じゃ、それにこれは悟空でもやった事が無いから、悟空を越えられるかも知れんぞ?」

 

 

亀仙人の言葉にべジータは黙る。

流石は武天老師、修業と指導に関しては地球一である。

(宇宙一は天使になるので逆立ちしても無理)

 

 

「クリリンも天津飯もピッコロもそれで構わぬな?」

 

 

「はい!勉強させていただきます!」

 

 

「私も自分の道場の教え子達の為に精進します」

 

 

「ま、当たり前だな」

 

 

三人ともいい返事を亀仙人に返す。

ピッコロはどこかはなにかけて言っている。

 

 

「何だよ、ピッコロ。そんな当然みたいな返事して」

 

 

「当然だ。俺は悟飯を鍛えたからな、少なくともこの中じゃ武天老師の次に師匠として優秀なのは俺だ」

 

 

「何だと?トランクスを強く鍛えてきたのはこの俺だ、いずれトランクスは悟飯よりも強くなる」

 

 

ピッコロの言葉にべジータが反論する。

 

 

「フン、あんなガキの頃からガールフレンドがいる不純な奴に悟飯は超えられん」

 

 

「黙れ!古くさい陰気な奴め!」

 

 

「そうだぜ、ピッコロ。本人同士が好きなら良いじゃねぇか」

 

 

「ませたガキがサイヤ人一頭脳明晰な悟飯を越えるなど絶対にありえん」

 

 

「面白い、いずれトランクスと悟飯を勝負させてどっちが優秀な師匠か試してやる」

 

 

「勝つのは悟飯だ」

 

 

ピッコロはべジータは互いに睨みあう。

 

 

「まぁ、その勝負やいずれ見させて貰うとして、お主達よ。午後からの授業に遅れぬようにな、特に悟空」

 

 

亀仙人は五人に言った。

悟空には杖を突きつけて名指しで、

 

 

「何だよ、じっちゃん?オラだってちゃんとやるぞ」

 

 

「お主がこの中で一番時間にルーズじゃから言っておるのじゃ、昔、天下一武道会で危うくエントリー出来ない所だったのを忘れると思うたか」

 

 

「その次はちゃんと間に合わせただろ?」

 

 

「そうじゃが、お主のその他人に合わせなさすぎる所は目に余るぞ、お主もいい年して二児の父で一児の祖父なんじゃから」

 

 

「武天老師様、大丈夫ですよ。俺が一緒に居ますから」

 

 

「うむ、頼んだぞクリリン」

 

 

「悪いなクリリン」

 

 

「良いって気にすんな」

 

 

六人はその場で解散し、午後からの授業に向けてそれぞれ時間を潰していた。

悟空とべジータは食堂に入り、食堂の食料の半分を平らげてしまい、料理長のランチラッシュが過労で倒れた為に腹八分目で食事が終わるはめになった。

この時の二人を見た雄英生徒は二人のブラックホール並の食欲に引っくり返ったのは言うまでもない。

因みに二人はこの2日間の間、学校の食堂ではなく、クリリンが近場でやってる大食いチャレンジのチラシを持ってきてそこで飯を食べていた。

稼いだ額は二人とも互いに20万を超えており、学校の近場の店から出禁にされた。

更に二人の食いっぷりに負けん気を起こしたとある店の店主が1日の内で更に二人に挑戦してとんでもない大赤字を出してしまい、その店は1ヶ月後に潰れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●●●

A組、B組の生徒達がコスチュームに着替えて、グラウンドβに集合する。

担任の消太とブラドが生徒達の前に立つ。

 

 

「お前達がこの前の戦いを経験してその上でこうして全員が辞めなかったのはヒーローとして本当に嬉しく思い、心の底から尊敬する」

 

 

「だが、教師としては嬉しく思う半分、自分達の体や命を大事にして欲しい。誰しも永遠にヒーローは出来ない、ヒーローが体を壊して引退して苦悩の余り、自殺した例は世界中で後を絶たない。若いお前達にそのような人生を歩んでほしくはない」

 

 

消太とブラドは生徒達の覚悟を嬉しく思い、大人としてヒーローの先輩として教師として、生徒達に語る。

その姿に生徒達はより一層自分の将来の事を考えるようになった。

 

 

「今日のヒーロー基礎学は戦闘訓練だ」

 

 

「先日の件でお前達にこんな悪趣味な争いの戦士として登録されたのは本当にすまなかった。お前達を守るのが仕事なのに何も出来なかった俺達を恨んでも構わない」

 

 

「だから、今回の授業は武天老師さん以外の人がお前達の事を知るために戦闘訓練をする事になった」

 

 

「詳しい内容は発案者の武天老師さんが話してくれるのでよく聞くように」

 

 

「「「「「はい!」」」」」

 

 

「では武天老師さん達、来て下さい」

 

 

亀仙人達は生徒達の前に立つ。

 

 

「ここで改めて自己紹介をさせて貰う。ワシは武天老師、他の星では武術の神と呼ばれていた者じゃ、亀仙人と人はそう呼ぶ」

 

 

「オッス、オラ孫悟空だ!じっちゃんの弟子でサイヤ人ちゅう宇宙人だけど、よろしくな!」

 

 

「俺はクリリン、武天老師様の弟子で悟空とは同じ釜の飯を食べた仲だ。俺はあんまり強くないし、精神が未熟な時期が長かったから、辛いことがあったら相談して欲しい」

 

 

「べジータだ。貴様らを徹底的に鍛え上げるが泣き言は一切認めん、以上だ」

 

 

「ピッコロ。俺にも一人弟子がいる、勿論お前達があいつと同じとは一切思わんが容赦の無さは変えるつもりはない」

 

 

「俺は天津飯、皆には言っておかなければいけないが、俺は今はもう関わってはいないが、桃白白と同じ鶴仙流の弟子だった。お前達を痛め付けた技は俺も使える。俺を元同じ流派として恨むも憎むも好きにしてくれていい、次にあの人と闘うまでの対策は協力する」

 

 

全員の自己紹介が終わり、天津飯の内容には驚きこそすれ、誰一人恨む人間はいなかった。

全員、天津飯の言葉の重みがわかったからである。

 

 

「それじゃ、自己紹介も終わった所で本日の訓練の内容を伝える。本日の訓練は出久と電気の二人とそれ以外の生徒で戦って貰う」

 

 

亀仙人の言葉に生徒達は戸惑う。

その通りだ。

内容がとてつもなく不安だからである。

 

 

「そして、もう一度言うが出久は無個性じゃ」

 

 

「じいちゃん!」

 

 

「黙っておれ、電気」

 

 

電気からの抗議を亀仙人は却下する。

出久は不安な目で亀仙人を見る。

 

 

「何か質問があるものはおるか?」

 

 

「武天老師先生!戦いと云うのはどのように?」

 

 

「出久と電気のペアを30分以内に制圧できれば、お主らの勝ちで出久と電気は逆に30分以内に他の皆を無力化すれば良い。時間切れは引き分けとする、それでは時間が無いことじゃし、5分後に始める。出久と電気はワシらの近くでスタートし、お主らはここからスタートじゃ」

 

 

亀仙人達はそう言って去り、出久と電気もそれに付いていく。

他の皆も戸惑いながら準備を始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●●●

出久と電気は互いにストレッチをしながら、合図を待つ。

亀仙人達も出久と電気を見てる。

 

 

「出久、大丈夫か?」

 

 

「大丈夫だよ、皆、いい人だもん」

 

 

「なら、良いけど」

 

 

明らかに作り笑いをしてる出久に電気は何も言えなかった。電気は亀仙人を睨むが亀仙人はどこ吹く風だった。

 

 

「それでは行くぞ!よーい、始め!!」

 

 

出久と電気は猛スピードで開始と同時に突っ込んでいく。亀仙人はストップウォッチを持ちながら走っていった二人を見る。

 

 

 

 

 

 

●●●

二人が走っていくと何とAB組の殆どがその場を動いていなかった。

寧ろ、二人が突っ込んできて始めて始まったことに気づいてる人もいた。

 

「いくぜ、緑谷!上鳴!」

 

鋭児郎が二人もとい、出久に突っ込んでいく。

全身を硬化して、出久を殴ろうとする。

出久は本気で向かいに来てくれる鋭児郎に心の底から嬉しかったが、拳が自分の顔に向かってる途中、硬化が解けた。

これは鋭児郎自身、本当に無意識でやってしまった事だ。何も悪意なんて物はなかった。本人が持つ本来の優しさゆえに無意識でやってしまったのだ。

 

しかし、それは残酷にも出久が最も辛く感じる“侮辱“の行為であった。

 

この行為は亀仙人達も目を鋭くさせた。

 

ブチっと何かの琴線がキレた。

 

出久は鋭児郎をたった一発のカウンターで気絶させた。

 

「出久!」

 

電気が出久の名前を呼ぶが本人はもう怒りに囚われてまともに聴いていなかった。

 

「電気、かっちゃんだけお願いして良いかな?」

 

「あ、あぁ」

 

出久の変貌に電気は言葉を喪った。

 

「すぐに終わらせる」

 

出久はそう言って、突っ込んでいった。

電気は言われた通り、勝己の相手をして10分かけて沈めていたが、出久はその間でほぼ全員を沈めていた。

本来、いくら出久でもこんなに早く沈ませる事は出来ないが、出久が無個性である事で全員、無意識の内に一瞬だけ手加減してしまい、そこを出久が怒りの鉄拳で沈めていたのだ。

もう残っているのは、手袋と靴を履いている透明女子の透だけだった。

出久は透を睨む。

透は体を大きくビクつかせて両手を上げる。

 

 

「こ、降参する。緑谷君、降参する」

 

 

「そう、葉隠さんも真剣にやってくれないんだね」

 

 

「真剣だよ!けど、勝てない戦いは「真剣じゃないじゃないか!!」・・・えっ?」

 

 

透は突然の出久の激昂に言葉を喪う。

 

 

「君は何で透明になってない!その手袋と靴は何だ!?真剣じゃないじゃないか!!君の個性の良さは透明になれる事だろ!?」

 

 

透は出久に指摘されて、始めて自分が本気でやっていなかったことを理解した。

 

 

「こんなのが嫌だから、必死で隠してたのに、ここの皆は違うと思ってたのに!信じてたのに!・・・もういい」

 

 

出久は透に向かっていく。

手袋があるお陰で何処に急所があるのか一目瞭然だからだ。

透は出久に恐怖し、手を前に出す。

しかし、出久の拳は超高速を使って出久と透の間に入った電気が止めた。

 

 

「電気、退いてよ!」

 

 

「出久、もう終わった。拳を引かせないと俺も容赦しねぇぞ」

 

 

「どっちの味方だよ?」

 

 

「少なくとも降参してる相手を殴ろうとする奴の味方じゃない」

 

 

出久は透を見た。

透は腰を抜かしてへたり込んでいた。

出久は拳を引き、電気は透に手を差し伸べて立たせた。

 

 

「それまで!」

 

 

亀仙人のストップの合図が響く。

30分の戦闘訓練はわずか10分で終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●●●

戦闘訓練が終わったが、勝己以外、全員浮かない顔をしてる。

そうである。

勝己以外、出久を侮辱したのだ。

しかも悪意がない善意でやったのだ。

出久と電気は亀仙人から講評を受けていたが、皆は悟空達から受ける事となった。

悟空達もまさかこんな事になるとは思っておらずに困惑していた。

そして、その沈黙を破ったのは悟空だった。

 

 

「お前らも悪くなかったけどよぉ、もっと本気を出さねぇと二人に失礼だぞ」

 

 

「貴様らがやった事は戦士に取っては侮辱以外の何物でもない。恥を知れ」

 

 

「今のお前達が桃白白と戦うなんて夢でも無理だ」

 

 

「俺は弱いけど、あんな手の抜き方をされたら、流石に腹が立つよ」

 

 

「お前達がやったのは優しさではない。自分は優しいと自惚れた結果のただエゴだ」

 

 

 

五人のダメ出しはこれで終わった。

五人ももう何も語りたくないと言う感じだった。

一方、出久と電気は亀仙人の講評を受けていた。

 

 

「電気よ。勝己一人相手にあそこまで時間を掛けてはいかん、卑怯じゃないとは言わないが、誰かと一緒に仕事する時はチームワークが必要じゃから、次は気を付けるように」

 

 

「わかった」

 

 

「出久よ、確かに皆の行動に腹を立てるのはしょうがないが、降参してる相手にまで手を掛けて良い理由にはならないぞ」

 

 

「すみません」

 

 

「それは武術ではなく、暴力になるから頭を冷やしなさい」

 

 

「ちょっと待ってくれよ、じいちゃん、元はと言えばじいちゃんが皆の前で・・・」

 

 

「良いよ、電気、これは僕が乗り越えないといけない問題だから」

 

 

「出久」

 

 

出久はそう言って去った。

電気は亀仙人を睨む。

 

 

「じいちゃんのせいだ!じいちゃんが言わなければこんな事には・・・」

 

 

「そうやって、皆に隠し続けるのか?それは皆に対する侮辱じゃ」

 

 

「こんな事に意味はねぇよ!俺達はあのクソ野郎をブッ飛ばさねぇといけねぇんだ!強くしてくれよ、じいちゃん!俺と出久なら出来る!」

 

 

「電気よ、今のお主には足りないものがある。それを知るのじゃ」

 

 

「何だよ!足りないものって!?」

 

 

「それを学ぶのじゃ」

 

 

電気は出久を追いかけようとする。

 

 

「いくら、戦士としてじいちゃんの言ってる事が正しくても人としてヒーローとして出久の親友として絶対に正しいなんて認めない!絶対に!」

 

 

そう言って出久を追いかける。

こうして、訓練が終わった。

 

 

 

 

●●●

授業が早く終わり、残りの時間は亀仙人は校長室で校長とブラド、消太と四人で話してる。

 

「次のヒーロー基礎学も戦闘訓練にして欲しいって無理だよ、ヒーローは戦闘だけできれば良い存在じゃない。法律や救助、それに生き残るための渡世術も必要だから、二回続けて戦闘訓練は無理だよ。ましてや同じ内容じゃ」

 

 

「無理なのは承知の上です。どうか、もう一度頼みます」

 

 

頭を下げる亀仙人に校長は困る。

 

 

「校長どうでしょう?次の時間は互いに前の授業の反省も兼ねた道徳ですから、一緒に受けてもらい、放課後、グラウンドβでやって貰うのは?」

 

 

消太が校長に対して進言する。

 

 

「けど、たった一時間ちょっとで直るとは思えないよ」

 

 

校長が紅茶を飲みながら、頭を掻く。

 

 

「私達もサポートしますので」

 

 

ブラドも熱意ある言葉で話す。

 

 

「しょうがないな、許可するよ。但し、今日だけでそれでも同じ結果になったら、この内容では二度と許可しないよ」

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

亀仙人は校長と消太、ブラドに礼を言って、消太、ブラドと一緒に校長室を出た。

 

 

「先生方、ありがとうございます!」

 

 

「いえ、俺達はその位でしか役に立てませんので」

 

 

「しかし、今回の内容はあまりにも厳しすぎたのは?まだ、皆は学生です」

 

 

「厳しいのはわかっております。皆、心優しき生徒ですので、しかし、相手に対して敬意を伴ってなければこの先チームとして彼らは必ず崩壊します。それは何としててでも避けなければいけません」

 

 

亀仙人はそう言い、去っていった。

残った二人は亀仙人の背中を見ながら、心から思った。

教師として桁が違いすぎる。

二人ともその事実を噛み締めて互いにもっと上を目指すと誓った。

 

 

 

 

 

 

 

●●●

六限目の授業

A組教室でミッドナイトが先ほどの授業の反省も兼ねて道徳の授業をする。

B組では13号がやることとなってるが、全員明らかに沈んでいた。

 

 

「よし、授業を始める前に皆に知らせよ。放課後、グラウンドβでさっきの補習をします。条件はさっきと一緒よ。全員さっきの事について道徳も兼ねながら、B組と一緒に受けるからこれから大教室に移動よ。但し、緑谷君と上鳴君は先にβへ行ってて、作戦会議も兼ねてるから」

 

 

「「わかりました」」

 

 

出久と電気はそう言って教室を出た。

 

 

「よし、皆移動よ!」

 

 

A組はそう言うミッドナイトの言葉を受けて教室を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●●●

βでは亀仙豆を食べた出久と電気がシャドーしてる。

出久のシャドーは明らかに力が入りすぎていた。

 

 

「出久、皆もわかってくれるって」

 

 

「無理だよ、そんなに人間が変わるわけない」

 

 

「大丈夫だって、俺だって」

 

 

電気の言葉に出久は電気に詰めより、胴着の襟を持った。

 

 

「皆が皆、電気みたいに強くないんだよ!勝手な事言うな!」

 

 

出久の怒号に電気は呆然となる。

出久は電気を怒ってしまった事に気がついた。

 

 

「ご、ごめん、電気を責めるつもりは無かったんだ」

 

 

「良いよ、俺は大丈夫だから」

 

 

「僕は何をやってんだ!?自分の問題に皆を捲き込んで、親身になってくれてる電気にまで・・・」

 

 

「出久・・・」

 

 

「ごめん・・・頭を冷やしてくる」

 

 

出久はそう言って去った。

電気はその場に踞った。

傷つけるつもりは無かったのに傷つけた自分のアホさ加減に幻滅した。

 

「オッス、お前は上鳴だったっけ?ちょっとオラと始まるまで話さねぇか?」

 

 

電気は悟空を見ながら話す事を決めた。

一方、頭を冷やすために、手洗い場の蛇口の水を頭に掛ける出久。

しかし、顔はさっきと何も変わっていなかった。

 

 

「お?ここに居たか?どれちょっと俺と始めるまで話さねぇか?」

 

 

出久は顔を上げて、やって来たクリリンを見た。

 

 

「これは僕の問題ですので」

 

 

「そうだけど、誰かに話すと気が楽に成るかも知れねぇぜ。亀仙流の先輩として相談に乗ってやる」

 

 

クリリンはそうやって胸を叩いてむせた。

出久はその姿に和みながら、話す事を決めた。

 

亀仙流の先輩として悟空とクリリンは二人に何を言うのか?

果たして、皆はこの試練を乗り越えられるのか?




第15話が終わりました。
出久の無個性というある種の呪いが解けるまでを次は書きます。
この話は体育祭前に全員、亀仙人主導の特訓に付き合うんだから、いつかはばれると思ったので書きました。

いわゆる彼らがクラスメイトからチームになるまでの物語で体育祭はそんな彼らの青春で行こうと思います。

次回は遅れる可能性が高いので待ってて下さい。
失礼しました!

批判感想質問は次回のネタバレをしないといけなくなる物以外はなるべく早く必ず返信しますので気軽にどうぞよろしくお願いいたします。

出久と電気で悟空とクリリンに似てるのはどっち?

  • 出久→悟空
  • 出久→クリリン
  • 電気→悟空
  • 電気→クリリン

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