第一幕 僕は緑谷出久。ダメダメ少年です。
この世は、生まれながらにして平等ではない。
齢四歳で、嫌でもわかる現実だ。
「止めろ、かっ、かっちゃん!これ以上は、ぼ、僕が許さないぞ」
「はっ!、無個性の癖に何、ヒーロー気取ってんだよ?デク!!」
大勢で、小さな子供をいじめてたから助けに入った。でも僕はそれだけしか出来ない。ここから大逆転みたいな事をできる『個性』がない。
そう、僕は人口の80%が何らかの超能力『個性』を持っている世界で、『無個性』で生まれた。
どう考えても、主人公じゃない、[戦闘力、たったの5か、ゴミめ]って言われて無惨に殺されるだけの人間だ。
そう、この時僕はいやほど思い知らされた。
力なき者は無力であると、でもそんな僕でも憧れてしまったんだ【ヒーロー】に
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あれから、成長して僕は今、12歳。でも何も変わらない。変わってない。
あの頃と同じ弱いまま、あの時と似たような事が起こった。あの時、大勢で子供(たぶん9才)をいじめてた僕の幼なじみの爆豪勝己・・・かっちゃんがまた自分の取り巻きと一緒に小さな子供をいじめてたから、僕は子供を助けなきゃって思って、助けにいって、ボコられた。
皆の個性で徹底的に殴られて蹴られた。
どこも折れてないと思う、でもたくさん怪我をしている。痛い・・・痛いよ。
それで、あの子が逃げれるならって思った。
でも、僕が殴られて蹴られる度にあの子は、顔を歪めた。誰かを救うのがヒーローなのに、何で僕は誰かを苦しめるのだろう?
結局、かっちゃんらは僕をやってて気がすんだのか?
その子には何もしなかった。
僕は、その子と別れて、ボロボロの神社の裏で座って泣いている。
ここは僕のお気に入りの場所だ。
それに今日は凄い曇り空だから、暗くて分かりにくい。
ここで泣いてたら、誰も気がつかないから、思いっきり泣けるから。
「もう嫌だよ」
もう嫌だ、もう嫌だ、もう嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌嫌嫌嫌嫌嫌!!
もうこんな力がない体なんか、大嫌いだ!!
そんな時だった。
「どうしたんじゃ少年?」
そんな幻聴が聞こえてきた。
僕は、遂に頭がおかしくなったんだ。
だって、誰も周りにいないのにこんな声が聞こえてるんだもの、
「どうしたんじゃ?」
「誰?」
「わしの名は、武天老師。にして少年よ、何があったのじゃ?」
僕は、その謎の声に全部話した。
自分の事を
なぜ泣いてるかを話した。
苦しかったから。
気が楽になると思ったんだ。
でも、言えば言うほどどんどん苦しくなってきて、
惨めになってきて、
話してる最中なのに
また、鼻をずるずる鳴らした。
「さぞ、辛かったのじゃろう」
声が僕を慰めてくれる。
何でこんなに暖かいんだろう?
「主は、優しい心を持っているんじゃな。よく頑張った」
僕は、その言葉を聞いて、完全に涙腺が崩壊した。
ずっと、誰かに言って欲しかった。
僕は、弱いから、誰かに支えてもらえないと生きていけないほど弱く、脆く、幼稚な存在だから、
今も、こんな感情を出して情けない。
「どうしたんじゃ?」
「すみません。嬉しくなって、」
「そうか・・・」
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あれから、少したち、僕はやっと泣き止んだ。
声は僕を待っていてくれたみたいだ。
迷惑をかけてかけてばっかりだな。
「少年よ、お主は力はないと言ったな」
「はい、僕は無個性で」
「わしが思うに、主は誰よりも凄い力を持っていると思うぞ」
「えっ?、それって・・・」
「その答えは自分で探すんじゃ」
声が、僕に提示した宿題。
こんな無力な僕に何の力があるんだろう?
「わしの力を見せてやる」
「えっ?、ど、どうやって?だってあなたは声だけしか、聞こえないのに」
「よく見るんじゃ、近くにおるぞ」
急に声が近くなった。
後ろからまるで、最初から居たみたいな。
一瞬の恐怖を感じたが、好奇心が遥かに上回り、僕は後ろを振り向いた。
「ほら、いたじゃろ?」
何てことない、気の合う友達に話しかけるみたいにそのお爺ちゃんは、僕に話しかけた。
髪の毛はなく、長い髭があり、アロハシャツに焦げ茶色の長ズボン、草履を履いていて、どういうわけか亀の甲羅と仙人が持っているような杖を持っている。
「あ、あ、あ、あ、」
「これこれ、会ってそうそうそんなに緊張するでない、少しばかし傷つくぞ」
「あ、あ、す、すみました!」
何てことを、知らない人に会ってそうそう失礼な事をしてしまった。
急いで立ち上がり、頭を下げた。
「はは、冗談じゃ。そんなに畏まらんでよろしい」
「あ、ありがとうございます?」
はて、僕は知らない人なのに何でこんなに打ち解けて話してるんだ?
「それは、主が善人だからじゃ」
「えっ?こ、心を?」
「完全じゃないがある程度は読めるぞ」
「す、凄い個性ですね」
「まぁ、ある種の技術の延長線上にあるものなんじゃが、その方がいいか」
何を言っているのか、あまりわからないけどどうやらこの人の個性は、心を読む個性みたいだ。
「でも、凄い個性ですよ」
「そうかの?」
「ええ、もしも人質をとった犯人がいたら、犯人の心理がわかるし、普段のカウンセリングでも心を閉ざした人の心理を読み取って解決策を練られるし、いや、そこはあえて読んでしまったら並の精神力じゃ、潰れてしまうのでは?・・・・」
「これこれ、そんなに分析する必要はないぞ」
「す、すみません、いつもの癖で」
また、やっちゃった!この癖はなかなか直らないな。
「その癖は、いずれお主の役に立つじゃろう、じゃが深読みしすぎて、目の前の事が疎かになってはいかんぞ」
「は、はい、あのそれで、さっき言っていた・・・」
「おお、忘れてた。お主の名は?」
「み、緑谷出久です」
「よし、出久よ、お主、わしの元で修行でもしてみんか?」
「しゅ、修行ですか?」
「そうじゃ?」
「で、でも一体どうして?」
「何、お主に興味が引かれたんじゃ」
「で、でも僕には個性がなくて・・・」
「個性何てものはたかが自分を作る上の一部分でしかないわ。大事なのは、それを使うものの心じゃ。主は力が無いものは無力と思ってるじゃろうが、それにある続きを忘れておる。正義なき力は暴力なり、それを忘れてさえいなければ、後は力をつけるだけで良い」
この人の言った言葉に僕は目から鱗が落ちた。
何で、忘れてたんだろう。
オールマイトも言ってたじゃないか、大事なのは個性じゃなくて心だって、僕は何でこれを忘れてたんだろう?
「あ、あの、僕は本当に鍛えたら強くなりましか?誰かを守れるヒーローになれますか?」
「それは、わしにもわからぬ。じゃが、ヒーローの定義なぞ曖昧じゃが、もしもヒーローになる条件があるとするなら、それは恐らく自分が無力なのをわかった上で立ち向かわなくてはいけない時に立ち向かう覚悟だと思うぞ。主の努力しだいじゃ、本当に救う事は出来ないかも知れない。じゃが、少なくともそこに救いに行ける力は得られる」
重い言葉だ。
本当に重く、そして重圧が凄い。
でも、それでも憧れたんだ。
「お願いします。僕に修行をつけて下さい」
お爺ちゃんは僕をただただ真っ直ぐ見て、うなずいた。
「いい目をしておる。その目をしている者を見るのは、わしの弟子達以外じゃ何十年ぶりじゃろうな、いいものを見せよう」
すると、お爺ちゃんは僕に背を向けて一、二歩、歩いて杖と甲羅を置き、一呼吸する。
「よく、見ておきなさい」
お爺ちゃんは、中腰になって、力をためた。
ためてる感じ何て、実際に見ても何もわからないが、確かにそう見えたとしか言い表す事が出来ない。
そしたら、お爺ちゃんの体が急に大きくなった。
比喩ではなく、本当に急に大きくなったのだ。
さっきまでは、至って普通のお爺ちゃんに見えたが、今は筋骨隆々のマッチョになったんだ。
その大きさは、オールマイト以上に大きい。
「出久よ、これは修行の成果の片鱗じゃ、そしてこれがわしの代名詞」
か~め~は~め~波!!!
かめはめ波と叫びながら、空に向かって手を突き上げた。
すると、どういう訳か、手からビームが飛び出し、そのビームは、延々と空に上昇し、曇り空を晴天に変えた。
急に眩しい光が降り注ぎ、僕は目を閉じて手で光を遮る。
「これ、よく見てみなさい。良い天気じゃ」
僕は、手を戻し、目を開けると、元の体型に戻っていたお爺ちゃんがいた。
「どうじゃ?これで、修行に励めるぞ」
「ぼ、僕はこのような力を得られるでしょうか?」
「わからぬ。それは結局、お主の努力しだいじゃ。じゃがここの片鱗に行くまでには誰しも苦痛といえる努力をしておる。少なくともそこの片鱗までは行けると約束できる」
僕みたいな夢を諦めてた人間でも、力を得られる。
その提示だけしてくれただけでも嬉しい。
「よろしく、お願いします」
「よし、ついてきなさい。出久よ」
「はい!」
もう一度、僕は夢を目指したい。
これは僕が最高に最強なヒーローになるまでの物語だ。
ひとまず、緑谷出久の変化を1話でできたので、区切りが良いので、今日はこれで終わります。亀仙人が何故、緑谷出久を弟子にしたのか、亀仙人の心情また、今、どういう状況なのかは次回以降にします。
弟子にした部分の心情は書きますが、なぜこの世界にいるかは、ひょっとしたら、設定だけのせる形になるかもしれません。とりあえず、雄英合格まで、詳しい設定集をなしで行きます。