僕の亀仙流アカデミア   作:怪獣馬鹿

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ギリギリ間に合いました!
ではどうぞ!


最速王決定戦!そして轟家大作戦!

出久と鋭児郎の熱い漢の闘いが終わり、出久は鋭児郎よりも先に観客席に戻ってきた。

 

「お疲れ様」

 

「いやぁ、凄かったなぁ」

 

「後、一歩で切島にやられる所だったじゃねぇか」

 

それぞれが思ったことを口にする。

出久は一人違う方向を見てる電気の方に行く。

 

「電気、見てくれたんだね」

 

「・・・・・」

 

電気は出久を無視する。

そりゃそうだ。

電気はさっき出久に同じ事をされたのだ。

これで謝りもせずに言われたら誰だってキレる。

出久はとりあえず自分の席に座る。

 

「緑谷」

 

「どうしたの耳郎さん?」

 

「あのノート、上鳴が持ってる」

 

「えっ?」

 

出久は試合が始まる前に自分の席の下に置いといた。

ヒーロー科で取る生徒はいないし、見られても問題ないかと思った趣味のノートだからだ。

まぁ電気に取られていたのは予想外で席の下を見るが確かにノートは無かった。

 

「さっさと謝りなよ・・・怒らせたんだから」

 

出久はさっきの電気に対する自分の行いを省みる。

確かに最低である。

いくら衝撃を受けてノートを取るのに忙しくてもそれが人を無視する理由にはならない。

出久はもう一回電気の近くに行く。

 

「電気・・・ノート持っててくれたんだ」

 

「・・・・・・・・・」

 

「さっきはごめん」

 

「・・・・・・・・・」

 

「僕の本当に悪い癖だね・・・ごめん」

 

「分かってるなら良いよ」

 

電気はそのまま振り向かずにノートを出久に差し出す。

出久はノートを見る。

中をなんとなく見ると自分と鋭児郎の試合の事が細かく載ってあった。

 

「電気・・・これ」

 

「下手だけどな・・・お前、絶対書くし」

 

そう電気は出久のノートに出久の試合の事を書いていたのだ。

勝手にノートを書かれた事に対する怒りと云うものは存在しなかった。怒らせたのに頼んでないのにやってくれた電気の優しさに嬉しくなった。

出久は電気にもう一回向き合う。

 

「電気、ありがとう」

 

「もうするなよ?俺だって落ち込むからな」

 

「うん」

 

電気は出久に手を伸ばす。

出久は電気の手を取る。

 

そして電気から出久にお仕置きの電気が流れる。

 

急な電撃に出久は痺れる。

手を離し、電気の顔を見る出久。

その顔は見事にしてやったりの顔だった。

 

「あー、スッキリした!」

 

「己、電気~」

 

「天誅だ!」

 

「この場合は人誅だよ!」

 

恨み言を言う出久。

電気の顔は笑ってる。

憎たらしくなるが、それを見てると出久も笑い出す。

二人揃って笑う。

変な関係である。

周りも変な二人だと思う。

出久は立ち上がる。

 

「電気、こんな事に個性使っていいの?バテない?」

 

「亀仙豆が試合前に食べれるから問題なしだ」

 

「んじゃ、次の試合は期待してるね」

 

「おう!驚かせてやる」

 

「飯田君に速さで敗けたら良いとこ無しだしね」

 

「んだと、このやろう!」

 

ヘッドロックを笑いながらかける電気。

出久も笑う。

この二人にはこの関係が一番である。

そして次の試合が始まる前に出久も電気も席に座った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●●●

あれから二試合が終わった。

鉄哲徹鐵と常闇踏影の試合と麗日お茶子と八百万百の試合は面白くないほど普通に終わった。

金属化した徹鐵を踏影の黒影が近づく前に連打で武舞台の外にぶっ飛ばし、お茶子と百の試合に関しては女子同士の闘いとあってエロ魔人の三人がエロを求めたが、そんな展開なんてあるわけなく、Z戦士によって鍛えられたお茶子と百の戦いは古いカンフー映画バリに中々拮抗して百が勝った。

 

そして第九回戦 芦戸三奈と心操人使の闘いが始まろうとしていた。

 

『続きまして第九回戦が始まります!選手の方は入場をお願いします!』

 

三奈と人使が武舞台の上に立つ。

 

『心操選手は先程の試合、見事に爆豪選手を退いて勝ち上がった実力者!!』

 

「けっ!」

 

司会者の実況に勝己はイライラしていた。

 

『対する芦戸選手は先程の試合で青山選手を翻弄して勝ち上がった実力者!!これは今までの試合に負けず劣らず凄い闘いが期待できます!!』

 

互いに互いを見る。

 

『それでは第九回戦始め!』

 

銅鑼の音が鳴り響く。

三奈は構える。

人使が何をやって来るかわからないからだ。

八人に絞られてからの第九回戦はそれぞれの個性が相手にばれてる。

初見殺しの個性になればなるほどどんどん不利になってくる。

しかし、これで油断するほど三奈は馬鹿ではない。

ぶっちゃけ言ってもしも煽られて全力で受け答えをしないように頑張るが、それを貫ける自信なんてないが、何を言ってくるかわからない人間に突っ込むほど能天気なわけではない。特に勝己をやられた後では尚更だ。

暫く、睨み合う。

 

「随分とヒーロー科は拍子抜けも良いところだな」

 

人使が挑発する。

三奈は怒りを声に出さずに行動で表す。

突っ込んで行き、鳩尾を殴る。

そしてくの字に折れ曲がった人使の頬を殴る。

Z戦士に鍛えられた影響で少し飛ぶ人使。

しかし、すぐに立ち上がる。

 

「こんなもんか?へっぽこも良いところだな。さっきのあの切島って言うバカの拳よりはキツそうだがな」

 

三奈が人使の所まで行き、殴りまくる。

もうボコボコにと言えるくらいに同中出身の三奈に取って鋭児郎が頑張っていたのは知っているその拳が強く重いのも知っている。

それをこうも言われたら怒りが出てくる。

 

(人選ミスったか?)

 

人使が鋭児郎をネタにしたのは良い試合をしたからだ。それどころか戦闘向きで漢らしい鋭児郎は良くも悪くも自分の個性のコンプレックスを付いていた為にネタにしようとして、バカにすれば怒りで声が出るだろと思ったが、ここまで強烈に無言になるとは思っていなかった。

 

『芦戸選手、恐ろしい猛攻だ!心操選手、手が出せません!!』

 

『女性を怒らすと怖いのは世界の真理ですね』

 

三奈の飛び蹴りが人使の顔面を捉える。

吹き飛ばされるがなんとか武舞台にしがみついて立ち上がる。

顔は口からも鼻からも血が出ているだけでなく、目には青タンが出来て、片方の目が腫れ上がった瞼によって隠れていた。

三奈は最後の押しとして突っ込む。

地面に酸をかけてスピードを上げて人使に向かう。

絶対にどんだけ煽られてもクラスメイトを罵倒されても喋らないと心に誓って、互いの声が普通に話しても聞こえる距離になる。

 

「あんたカワイイね」

 

「!!?!?!?!?!?!?」

 

人使は煽る事を止めて口説き始めた。

流石の三奈も煽りや罵倒には堪えようと誓っても口説かれるとは予想外も良いところで突っ込んで行く足が止まり、顔が赤くなる。

 

「いや、マジでカワイイよ。ほらその桃のような肌に黒真珠みたいな綺麗な目、それに行動も天真爛漫で元気があって」

 

三奈は顔を赤くなってるのが見られないように隠す。

 

「ねぇ、今度お茶しない?」

 

「ちょっと今試合中!・・・・・」

 

(上手く行くもんだな)

 

三奈は受け答えをしてしまった為に洗脳に掛かってしまう。

 

『あー!!芦戸選手、洗脳に掛かってしまった。心操選手まさかまさかの試合中に口説くとはなんと豪胆な作戦を仕掛けたのか!正直に言いますが私は今、心操選手の個性が非常に羨ましいです!」

 

三奈は何も油断はしてなかった。

人使が一歩上だったのと自分がナンパに対して耐性が無かったのが運のツキである。

 

「そのまま、場外へ出ろ」

 

三奈は場外へ出る。

 

「芦戸選手、場外!心操選手の勝ち!!」

 

会場がまたもや困惑する。

そりゃまぁこんな勝ち方は古今東西中々ない。

相手にナンパして勝つ方法を実践で試した奴がいたら歴史に名を残すレベルである。

 

(解除)

 

「へ?・・・・あぁ!!?えぇぇぇ!?!?しまった!!」

 

頭を押さえて地団駄する三奈。

人使は三奈に近づく。

 

「おい」

 

人使の言葉に三奈は嫌な顔をしながら向く。

 

「悪かったな色々と言って、これでしかお前らに勝てねぇんでな」

 

歯切れ悪そうに言う人使。

三奈はその姿に拍子抜けする。

あんなに憎たらしかったのが薄れていった。

 

「今度は勝つ!」

 

人使に指差して宣言する三奈。

人使はその言葉に何も言わずに武舞台を去りながら手を振った。

 

 

 

 

 

 

●●●

三奈がぶっ飛んだやられ方をしたのでまたもや困惑していた。しかも今回は勝己の時と全く同じ展開なのに全く違う勝ちかたをしたために困惑していた。

ヒーロー科の女性陣の人使に対する評価がうなぎ登りではなくてエンジェルフォール並みの深さに下がっていった。

出久がノートに三奈の弱点としてナンパを含めたお世辞と書いているのを隣で見ていた響香は素で引いていた。

 

 

 

 

エロ魔人の実と亀仙人はよからぬ事を考える前に気絶させられた。

 

 

 

 

そして女好きである電気は人使の個性ならナンパしやすいと羨ましがり、隣にいたお茶子が面白く無さそうな顔をして電気を見てた。

 

 

 

 

●●●

 

天哉は先程の試合を控え室で見ていた。

そして次は自分と電気との最速王決定戦、意気込みをする。

すると天哉の携帯がなる。

それは敬愛するヒーローインゲニウムである兄の天晴からだ。

 

「もしもし、兄さん?どうしたんだ?まだ勤務中の筈だ?」

 

「何だ?兄が大事な弟に電話をしたらいけないのか?」

 

「そういう事ではない!勤務中に私事を挟むなど持っての他だ!働いてくれてるサイドキックの方や兄さんのファンの皆様に対する酷い裏切り行為だ!」

 

「ハハハ、天哉は相変わらず真面目だな。でどうだ?次の試合、勝てそうか?」

 

天晴の言葉に天哉は黙る。

 

「どうした?」

 

「上鳴君の速度は僕より速い。全ての実力で敵わない」

 

「珍しく弱気だな」

 

「彼は本当に凄い人なんだ。僕なんかとは比べるのも烏滸がましい位に」

 

天哉の弱気に天晴は電話越しで笑う。

 

「ハハハ、良かったよ。上手く雄英に揉まれてるな」

 

「兄さん?」

 

「挑め挑め!雄英の教訓は“PULS ULTRA“だろ?」

 

「兄さん・・・・・あぁ、挑戦してくる!」

 

「そうか、急にかけて悪かったな」

 

「兄さんも仕事頑張って」

 

天晴はそう言って電話を切った。

天哉は軽く屈伸をして、武舞台に向かうために部屋を出た。

 

 

 

 

●●●

天晴は体を解しながら、手配中の敵“ステイン“の捜索を続ける。

ステインは犯行を路地裏で人知れずやっている。

その情報を元にしらみ潰しに路地裏をサイドキック達と協力して探していた。

 

そしていくつかの路地裏を確認してる時に見つけた。

刀を背負いナイフを持った敵“ステイン“を見つけた。

天晴は急いでステインの前に入る。

 

「見つけたぞ、ヒーロー殺し“ステイン“」

 

「インゲニウムか・・・お前も偽物だ」

 

天晴がいざステインに向かい攻撃するがステインは避けてすれ違い様に刀で天晴の腹を斬る。

天晴も負けずに避けるが反応が少し遅れて掠り傷を負う。

天晴が再度、突っ込んでいくが届く前にステインは刀に着いた天晴の血を舐める。

すると一切の自由を奪われて天晴は動けなくなる。

 

「これは!?」

 

これがステインの個性の“凝血“。

相手の血を舐めると自由を奪う個性である。

 

「じゃあな、偽物・・・」

 

ステインが動けない天晴に近づき、天晴に向けて刀を抜くと何処からか拍手が聴こえてくる。

ステインは天晴を刺さずにその拍手の元を見る。

そこにはフリーザがいた。

 

「誰だ、貴様は?」

 

「私の名前はフリーザ。ヒーロー殺しさん、ビジネスの話をしましょう。小物は相手をせずに」

 

フリーザは動けない天晴に近づき、思いっきり蹴る。

天晴は路地裏から飛ばされて外の道路に出された。

多くの通行人やサイドキック達が動けなくなった天晴に近づく。

天晴は動けないながらも路地裏を見るがそこには誰も居なかった。

 

 

 

 

 

 

●●●

『さぁ、続きまして第十回戦、選手の方は入場をお願いいたします!』

 

電気と天哉が武舞台の上に立つ。

 

『上鳴選手は持ち前の超高速でトーナメントまで勝ち上がり、先程の試合では新技を編み出した今大会の超新星です!』

 

『対する飯田選手も高速でこのトーナメントを勝ち上がり、第二種目で超高速を見せた最速候補!この戦いで今大会の最速が決まります!』

 

会場も熱狂する。

誰だってシンプルな闘いが見たいのだ。

最速VS最速。

速い方が勝つ、一瞬の気の緩みが命取りになる真剣勝負。

 

「飯田、俺の高速の対策したか?」

 

「いや、上鳴君は?」

 

「まさか」

 

「だろうな」

 

二人とも直感で理解していた。

この相手に対策は立てようがない。

何故なら二人とも闘い方が似てるからだ。

高速で動いて相手を一瞬で倒すやり方は対策を立てにくい。相手も同じなら尚更だ。

故に考えていることは一つ、相手よりも早く速く動いてノックアウトさせるのみ。

 

『第十回戦、始め!』

 

天哉は開始と同時にレシブロを使い一気に詰め寄る。

10秒以内に終わらせないとどうやっても天哉には勝ち目がない。

短期決戦である。

しかし、それを狙っていたのは天哉だけでなかった。

電気も最高速度で突っ込んでいく。

天哉は電気に蹴りを入れる為に足を引くが電気はそのまま飛び蹴りを天哉の鳩尾に放つ。

何処のライダーだと見間違えんばかりのキックを放つ電気。

電気は先程の試合で物のいいように手玉に取られた。

それ故に電気は心から誓ったのだ。

 

“度肝を抜く“と開始早々の最速蹴り。

 

天哉の体はそのまま場外へ吹っ飛ばされた。

そして会場の壁に激突した。

 

この間、僅か5秒である。

 

「い、飯田選手、場外!上鳴選手の勝ち!!」

 

ミッドナイトの判定が会場に響き渡る。

そして大熱狂が会場にあふれでる。

 

『凄い!もの凄い速さを見せつけた上鳴選手!速きこと風の如しいや、雷の如しだ』

 

『飯田選手も悪くはありませんでしたが、上鳴選手の方が地力は圧倒的に上でした』

 

天哉は負けた事に悔しさで一杯になるが、これもいい勉強になったと思い、会場を後にした。

控え室に戻ると天哉の携帯がなる。

母親からだった。

 

「もしもし母さん、試合に負けてしまい申し訳ありませんでした」

 

「そんな事良いのよ。それより天晴が・・・」

 

「兄さん?」

 

天哉の頭に天晴がまさか敵にやられて重傷なのかと言う最悪の展開が過る。

 

「兄さんに何か?」

 

「代わるわね」

 

携帯越しに母親が天晴に携帯を貸すのがわかる。

 

「天哉・・・負けちまったよ」

 

「兄さん・・・大丈夫なのか?」

 

「あぁ、医者からは二、三日安静って言われてるが大丈夫だ。手足を折ったわけじゃない・・・天哉、折角お前の憧れなのに負けて悪いな」

 

天晴の言葉は試合前に比べると弱々しかった。

それほど天晴にとってショックだったのだ。

あんなにも呆気なくやられた事がショックなのだ。

 

「兄さん、僕も負けてしまった・・・たったの5秒しか持たなかった。」

 

「そうか・・・」

 

「ここで言わせてくれ・・・僕は強くなる。強くなっていつか兄さんに最高の誇りだって思えるように強くなる!最高のヒーローになる!」

 

天哉は静かに泣きながら、兄にそう宣言する。

 

「天哉、俺も強くなる。お前に最高のヒーローって胸はって誇れるようなヒーローになる!」

 

天晴の誓い。

天哉は涙を拭いて、元気よく答える。

ここからこの兄弟のヒーローの物語が始まる。

 

 

 

 

 

●●●

病院で焦凍の母親である冷は焦凍からの手紙を見ていた。

封はまだ開けていない。

焦凍は会いに来てくれたあの日以降、休日になるとほぼ必ず来てくれるようになった。

冷としては非常に嬉しかったが、非常に申し訳なかった。

焦凍の火傷は冷が負わせた。

気にしてないと焦凍は言ったし、冷は謝り共に前に向いていくと決めた。

互いに前に進めると思った。

しかし、焦凍は自分の個性の恐怖がまだ残っていた。

何故ならその炎は他でもない母親の人生を狂わせた炎だからだ。そのせいで焦凍が炎を使おうとすると母親の怯えた顔を思い出すようになった。

自分の個性。

しかし、それは“個性の呪い“を受けた個性である。

 

焦凍は自分の問題に冷を捲き込めず、自分の今の思いを手紙に書いた。

今、冷が持ってるのがその手紙である。

しかし、冷には開けられなかった。

口下手な焦凍がこの手紙を渡すときに、

 

「これ書いたから読んでくれ」

 

とだけ言って病室から出たのだ。

休日に来るといつも学校での話だったり、自分の趣味だったりを喋ってほとんど話す内容が無いからだ。

しいてあるとすれば焦凍が母親を恨んでいるかどうかの話だけある。

最初に来た時に解消出来たと思ったが、冷にしてみればまだまだ謝り足りないのだ。

 

中身を言わずに渡された手紙に何が書いてあるのだろう。

自身に対する怨みか?

それならまだ良い。

けど、もしも生きてる事に苦しんでたら、どうしたら良い?

そしたら、また辛くなる。

焦凍にとっても・・・自分も。

冷はそんな事を考えていた。

 

(焦凍、本当に私を恨んでないのかな?・・・けど、あんな事した私はもう母親じゃないよね)

 

「お母さん、どうしたの?」

 

焦凍の姉の冬美が病室に入ってくる。

冬美が焦凍の開けられてない手紙を見る。

 

「お母さん、まだ開けられてなかったの?」

 

「うん・・・怖くて・・・焦凍が恨んでたらどうしよう?」

 

冬美は冷から手紙を取る。

 

「冬美?」

 

「お母さん大丈夫だよ。焦凍は恨んでないから!」

 

「でも・・・あんな酷いこと・・・」

 

「お母さんが開けられないなら私が開ける」

 

冬美はそう言って手紙の封を破り、冷に渡した。

 

「それじゃ、私はちょっと下の自販機で飲み物買ってくるから、読んであげてね」

 

冬美はそう言って部屋を出る。

冷は震える手で手紙を読み始める。

 

そこには恨み言なんて何一つ書いてなかった。

 

『お母さんへ

今日は手紙を書いたのは、お母さんに相談したい事があったからです。内緒にしてて冬姉や夏兄にも話してないけど、お母さんに会いに行った前の日、俺、死にかけたんだ。物凄く強い敵が授業中に現れて先生もクラスメイトも殺しかけた。それから色々あって怪我も問題なく治った。けどその時に後悔したのは俺、母さんの個性だけ使ってあいつの力使わなかった。もしもあの時使ってたら守れたのかなって本当に思った。母さんに会いに行ったのはもう会えなくなると本気で思ったから、会いに行った。今はいつか会えなくなるまで一生懸命やってるよ。先生もクラスメイトも優しいし今の生活は楽しい。キツイ事もあるけどそれでも楽しいんだ。

お母さんは俺の火傷で本当に辛いと思う。

けど、俺はその事で恨んでないし憎んでいない。

冬姉からお母さんの資格がないって聞いた。

俺にとってお母さんはお母さんだよ。

もう俺は大丈夫だから、だからお母さんが大丈夫だったら病院のテレビで俺を見て欲しい。絶対に優勝するから、そしたらもう一度、お母さんになってくれますか?』

 

冷は読みながら泣いた。

恨んでなかった。

焦凍は立ち上がろうとしてた。

臆病なのは自分だけだった。

 

冷は直ぐ様、病院服から私服に着替える。

棚から冬美が持って来てくれた服に着替える。

そんな時、冬美が病室に戻ってくる。

 

「お母さん、何してるの?」

 

「冬美、お願いがあるの」

 

冷は冬美に近づき、手を握る。

いつもと違う状況に冬美は買ってきた飲み物を置く。

 

「私を雄英に連れてってお願い」

 

震えてる母親の手。

冬美は優しく握り返す。

いつも優しくていつも甘やかせてくれた母親の我が儘。

それを断る選択肢は冬美にはなかった。

病院には多大な迷惑を掛けるが、火消しはお父さんに任せようと心に決める。

 

「うん、行こう。雄英に!」

 

今、轟家一世一代の逃亡が始まる。




まず、前回の出久の電気に対する反応で天罰を落としました。
まぁ、この二人にはこれがお似合いだと感じます。
人使君、まさかのナンパで勝つとは・・・ごめんね罵倒ネタは使い古されてて使えなかったんだよ!

電気と天哉の戦いの前にステインとインゲニウムの戦いにフリーザの横やりが入りました。
何故なら、ステイン編がこのまま行くと絶対に原作通りやってもおかしくなるのは目に見えていたので調整が必要だったんです!これで出久らを出さなくても問題なくなった。

電気と天哉の戦いは一瞬で着けました。
最速通しの戦いなので一撃必殺の方が映えると思ったのでやりました。

そして轟のお母さんの冷さんがまさかの病院の抜け出しをやると言う急展開です。
いや、原作を見てるとなんで轟君、お母さんを苦しめた炎を訓練してないのにそんなにガンガン敵にぶつけられるの?って思ったのでそこに対する葛藤がある筈だと思ったのでやりました。
体育祭編は轟編でもありますので

批判感想質問は早急にお答えしますので気軽に送って下さい。
こないと作者の枕元が涙で濡れます。

最強は誰だ!?(トーナメントに影響はありません)

  • 緑谷出久
  • 上鳴電気
  • 常闇踏影
  • 轟焦凍
  • 心操人使

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