色々と予定を片付けながらやっていったらこんなに遅れるとは思いませんでした。すみませんでした!
電気と天哉の高速戦が終わり、出久と焦凍がストレッチをしながら、司会者の合図を待つ。
(絶対に優勝するんだ)
焦凍はこの大会で勝ち上がる為に戦う。誰でもない自分のために優勝する。そしてもう“大丈夫“だからと声を上げて言うため、自分の左手を見る焦凍。未だに炎は上手く出てこない。攻撃をしようとすると絶対に出てこない。自分の氷を使い続けて低温になった時の調整ならば、出来るが攻撃の時は出なかった。
『続きまして第十一回戦を始まります、選手の方は入場をお願いします!』
焦凍は武舞台に上がる。
『轟選手は第五回戦で巨大な氷を出現させた個性だけでなく、判断の素早さも我々に見せつけて貰いました!』
『対する緑谷選手は第六回戦で切島選手と熱い試合をしてくださり、近接戦では今大会最強候補です!』
焦凍と出久が武舞台に上がり、司会の声を聴きながら構える。互いに油断も隙もなかった。
「轟君・・・」
「緑谷、さっきは本当にすまない。手加「すると思う?」・・・良かった、安心したよ」
『第十一回戦、始め!』
出久と焦凍の戦いが始まる。
●●●
~約20分前~
冷が私服のまま病室で座っていた。
すると冬美が病室に入ってくる。
「冬美、出来そう?」
「うん、夏が今、車を飛ばして来てるからお母さん、出よう」
「うん」
冬美は帽子を取り出して冷に渡す。
冷は帽子を深く被る。
春用のコートに帽子にマスクを着用した状態で出る。
「よし、お母さん。出よう」
「うん」
冬美は冷を連れて病室を出る。
そして受付の横を通って出る。
忙しかったのか受付には一人しか居らずその人は別の作業で忙しそうにしていた為、これを機にせっせとエレベーター前に行き、エレベーターに乗る。
エレベーターで、冷は帽子とマスクを取ろうとする。
「お母さん、ダメだよ」
「ごめん、ちょっと暑くて」
「車に乗ったら脱いでいいから今は我慢して」
「わかった」
携帯のバイブが鳴り、冬美は携帯を見る。
弟の夏雄からだ。
車を駐車場に停めたと言うメールだった。
「お母さん、夏から駐車場に車を停めたって一階に着いたら急いで駐車場まで行こう」
「うん」
エレベーターが一階に着く前に停まる。
扉が開き、中に入って来たのは冷の担当をしてくれてる先生だった。
冬美と冷に緊張が走る。
「こんにちは轟さん、もうお帰りですか?」
「は、はい、あの母を宜しくお願いします」
「任せてください・・・そう言えば弟さんは雄英生でしたね。これから体育祭を見に行くのですか?」
「そうです」
「そうでしたか」
先生は冷を一目見る。
冷は体を少し縮める。
エレベーター内に緊張が走る。
するとエレベーターが止まり、扉が開いて先生が降りる。
「轟さん、ではまた後日。それと息子さんの試合を楽しんできて下さい」
先生はそう言って去っていった。
見逃した理由は冷が病室から出ようとした事が一切なく、10年も続くといっそのこと出した方が良いと思いやったの事。後日、クビを言い渡された。
「バレた?」
「お母さん、急ごう!」
エレベーターが一階に着き、二人は病院を出て駐車場に向かう。
そして、夏雄が乗ってる車に乗り込む。
冬美は助手席に冷は後ろに乗る。
「夏、早く出して!バレた!」
「えぇ!?マジかよ!」
「ごめんね、夏君・・・」
「母さんは謝んなくて良いから、急いで焦凍の所に行こう!」
車をバックさせて病院の敷地を出る。
冷と冬美は安堵の息をする。
「二人ともありがとう」
「良いよ、お母さん」
「母さんの頼みなら断れないよ・・・でも会場にはあいつもいるよ。姉ちゃん、どうする?」
冬美は頭を抱えた。
父親のエンデヴァーがいることを完全に忘れてのだ。
見つけたら冷に何をするか分かったものではない。
「冬美、私は、大丈夫・・・」
「お母さん、無理は止めて」
冷が虚勢をはっていたのを冬美は一発でわかった。
彼女にとってエンデヴァーは恐怖でしかないのだ。
エンデヴァーが冷を苦しめた結果が焦凍の火傷なのだ。
「母さん、病院に戻っ「良いから行って」・・でも「お願い、焦凍が待ってるの」・・・・・わかった」
「夏、どうするの?」
「あいつが来たら、殴って近づかせない」
夏雄の言葉に二人の顔が青くなる。
「ねぇ、そんなのダメ!」
「姉ちゃんは黙って。殴っても止まりそうにないならこうするしかねぇじゃん」
「夏君、そんなのダメ、夏君が危険よ」
「母さん・・・焦凍の活躍が見たいんだろ?」
「それは・・・」
「だったら、こうするしかない。上手く行くさ。あいつは俺には関心ねぇから、そんなにしないよ」
「わかった」
「お母さん!?」
「夏君、ありがとう」
冷の言葉に夏雄は頬を緩ます。
冬美は助手席で頭を更に悩ませるがこうなると夏雄が止まらないのは知っている。
このまま行くしかないと腹を括った。
折角の母親からの貴重な我が儘を叶えられなくなる方がもっと嫌だからだ。
こうして冷達は雄英に向かった。
●●●
冷の病院逃亡から10分後。
エンデヴァーは非常に嬉しく思いながら、トイレを出る。自慢の最高の息子が遂に炎の個性を使うとこの前、冬美からの会話で分かったからだ。第一種目でも第二種目でも使ってないし、トーナメントでもまだ出てないが次は必ず使う。
何故なら相手が出久だからだ。
エンデヴァーは今日初めて出久を見たが一目でわかった強いと直感した。
氷だけじゃ天地が引っくり返っても勝てない。
焦凍は必ず炎を使う。
オールマイトを超える使命を背負っている焦凍のデモンストレーションには最高の相手だ。
こんなに清々しくなったのは久しぶりだ。今ならキャラではないがスキップをするほど嬉しい。
そんな頭が花畑になってるエンデヴァーの携帯がなる。何だと思い、着信画面を見ると病院からでエンデヴァーは嫌々でた。
入院してる冷に何かあると面倒だからだ。
「もしもし、轟ですが?」
「すみません、奥様の轟冷さんが消えました」
「消えっ!?」
「今、捜索中ですが心当たりはありま・・・」
エンデヴァーは携帯をすぐに切り、冬美に掛けるが出ない。冬美は病院を出た瞬間から携帯の電源を切ったのだ。理由は冷を焦凍の所へ送り届けるのに邪魔な物は全部切ったのだ。学校からの連絡は無いことを祈りながらではあるが。
エンデヴァーは焦凍の試合か冷を探すかどちらか迷った挙げ句、冷を探しに会場を出た。
●●●
~約10分後~
『第十一回戦、始め!』
銅鑼の音が鳴り、出久と焦凍は構える。
焦凍はすぐに氷で出久を捉えようとする。出久も負けずにかめはめ波を撃ち、氷を粉砕する。
『これは序盤から凄い火力同士の戦いだ!』
『遠距離戦は今のところ、互角ですね』
出久は焦凍に突っ込む。
焦凍は来る前に氷の壁を作る。
出久の拳が氷の壁にぶつかり、罅が入るが壊れない。
焦凍は牽制が上手くいったと思ったが下から気弾が出て来て、焦凍の顎をかち上げる。
出久の操気弾だ。
『ああーっと、これはどういう事だ!?』
『緑谷選手のエネルギー弾が地面を回って轟選手の顎に炸裂しました』
すると氷の壁が出久の拳によって破壊される。
『緑谷選手、氷の壁を力ずくで壊した!』
『凄い、ゴリ押しですね』
出久は焦凍の顔面に拳を放つ。
焦凍は炎で牽制しようとするが“出せない“。
拳が顔面に入り、焦凍は後ろにぶっ飛ぶ。
ゴロゴロと転がり続けるが、氷を作って勢いを殺す。
氷の使いすぎで体が冷えてきた為に炎で暖める。
こう言う事なら全然問題ないのだが、攻撃をしようとすると全く出てこなくなる。
体の問題ではない、精神的な問題だ。
氷は冷の個性でそこには愛情がある。しかし、炎はエンデヴァーの個性で一方通行な愛情はあるが、焦凍にとっては憎しみしかない。
頭では受け入れているが、心がまだ受け入れていない。受け入れていないと云うよりも恐怖している。その炎を使おうとすると焦凍の脳裏に過るのは冷の怯えた顔と煮え湯をかけた時の絶望の表情。その二つが焦凍の中で消えない限り、炎が使えることは永遠にない。
(くそ!なんで炎が出ねぇんだよ!?)
焦凍は心で自分に毒づきながら出久を見るともう目の前に迫って拳を引いていた。そして拳を放つ。焦凍は当たる寸前のスレスレで顔を横にずらして避ける。出久は避けられた事に特に驚く様子もなく、避けてがら空きになってる焦凍の脇腹を殴る。
横にふっ飛ぶがまた氷をはって止まる。
素早く立ち上がり、氷で出久を捕まえようとするが出久は気弾を放ち、全力で斜めに動きながら、焦凍の氷を相殺しつつ向かっていく。
焦凍は一先ず、後ろではなく、横に逃げる。
正方形のデカイ武舞台でこじんまりとした逃げではすぐに退路を潰されて追い詰められるからだ。
しかし、出久はその動きに対応して焦凍を追いかける。焦凍は氷で攻撃する。対する出久も操気弾を放ち、氷を粉砕しながら焦凍の鳩尾に入る。
そして出久がすかさずに殴り、また吹き飛ばす。
今度は氷で止まる事が出来ずにゴロゴロと転がるがやがて勢いが落ちて武舞台の端で止まる。
『轟選手、緑谷選手の猛攻を凌げません!』
『緑谷選手が有利ですね』
出久は追撃をせずに武舞台の中央に立つ。
今なら焦凍を追撃すれば確実に落とせるがやらない。何故なら出久は正真正銘の焦凍の全力とぶつかりたいのだ。家族の問題に首を突っ込む気はないが、個性を上手く出せない焦凍を出久はなんとかしたいのだ。
故に出久は武舞台で焦凍が立ち上がるのを待つ。この行動が手を抜いている様に見えるか、それとも全力の戦いをする為の行為と見るかは人によって違う。
各宇宙の神々や戦士達や電気は全力でやるための行為として判断しヒーロー科の面々は手を抜いたのか?と見る。
『これは緑谷選手、一体どういう事だ!?武舞台中央で止まったぞ!?』
『手を抜いてるかそれとも何かを待ってるか・・・判断するには難しいですね』
司会者やクリリンも恐らくは全力の為の待ちだと思っているが二人とも実況と解説と云う仕事をしているために自身の考えを押し付けるのではなく、両方の解釈を出すだけに止めた。
両方とも間違っていない。
間違っていないがやられてる方の怒りは上がる。
焦凍は立ち上がり、怒気の籠った目で見る。
「緑谷・・・今の落とせただろ、緑谷!」
「落とせたね・・・けど言ったでしょ、全力の君に勝つって」
出久は拳を構える。
焦凍は先程とはうって変わって自ら攻めに行くが徒手空拳では出久に一日の長がある。
空を切る焦凍の拳。
軽々と避けていく出久。
『轟選手、近接戦を仕掛けたが全く掠りもしない!』
『緑谷選手に一日の長がありますね』
出久はそれを避けて焦凍の腹にカウンターを決め、くの字に折れた所にハイキックをぶちこみ、地面へと叩きつける。
しかし、焦凍も負けておらず、倒れたまま氷で出久の足を掴まえようとするが逃げられる。
焦凍は立ち上がり、出久を睨む。
出久は右手の人差し指を上に気を指先に集中する。
そしてそのままドーナツ状の気弾を作る。
気弾を放り投げると焦凍を中心にドーナツが広がり、そして出久が拳を合わせるとドーナツ状の気弾が焦凍を締め上げる。
焦凍は締め上げに苦しくなる。
「見たか!名付けて気輪縛!」
『これは凄い!緑谷選手、エネルギー弾を拘束具として使った!柔軟な発想だ!』
『動けないようですけどね』
この技はゴテンクスのギャラックティカードーナツである。修業中に悟空、ベジータ二人による強烈な技の批判を出久達は徹底的に聴いていたので、真似たのだ。
やった出久は意外に簡単だと思いながらやってるが、締め上げていると動けなくなった。
ゴテンクスがやれば動けるのか、それとも動けなくなる技かわからないが捕縛には持ってこいの技だ。
苦しむ焦凍。
「轟君!このまま参ったと言って貰うよ!」
「くそ!」
焦凍は気輪縛から脱け出せないでいた。
●●●
一方、冷達は漸く雄英高校の体育祭会場に来ることができた。そして何とか会場に入るが、行けないでいた。
エンデヴァーがいると思ったからだ。
実際にはエンデヴァーは会場を出て冷達を探しに行ったが、そんな事を冷達は知らなかった。
「どうしよう?」
「早く、観客席に行こうってアイツなら俺が」
「だから、夏の身が危ないじゃん。出来る限り、会いたくないよ!」
「じゃ、どうすんだよ!このままだと終わっちまうよ」
焦る夏とどうしようかと悩む冬美。
そして冷は一人、二人から離れて歩いていき、選手関係者以外立ち入り禁止のドアを見た。
そこに冬美と夏が来る。
二人とも流石にここに入る気はなかった。
冷もである。
「流石にここはダメだって」
「お母さん、ここはやめよう」
「うん、ちょっと見えたから気になっちゃって」
三人で意を決して観客席に向かおうとするとそこに何故かオールマイトがやってくる(怪我が消えたのと鍛え直しの為に筋肉ムキムキです)
「おや、君達は確か・・・」
「オ、オールマイト!?」
「嘘!?」
オールマイトは轟家の家の事情は全く知らない。そもそもエンデヴァーが漏らすわけがない。
見覚えがあるのはエンデヴァーと冷のマスメディア用の結婚式には一応呼ばれて冬美は焦凍の保護者として知っている為である。
「そうだ、エンデヴァーの奥様の・・・「轟冷です」・・すぐに思い出せずに申し訳ありません」
「いえいえ」
社交辞令の挨拶をやる二人。
「早く行こうぜ」
「うん、お母さん・・・」
「そうだね。ではまた後日・・・」
「宜しく、お願いします・・・これから息子さんの試合を?」
「えぇ、少し遅れてしまったので・・・」
「でしたら、此方から見た方が良いですよ」
オールマイトは関係者以外立ち入り禁止のドアを開ける。
「良いんですか!?」
夏がオールマイトの行動に驚く。
「大丈夫ですよ、私も此方から見ようと思っていたので、立ち見になってしまいますが一緒にどうですか?」
「いきます!」
冷がオールマイトの言葉に力強く答える。
そして冷達はオールマイトと一緒に入っていった。
通路は途中で控え室があったのと医務室があった位で何も無かった。
(オールマイトは医務室の万人であるリカバリー・ガールに掴まり、説教の為に冷達と離れた)
これより先は武舞台だけだったから、リカバリー・ガールも口うるさく言うつもりは無かった。
その役目はオールマイトになった。
●●●
焦凍が気輪縛に捉えられて締め上げられている。
これを脱出するには純粋な力でどうにかするしかない。つまり、個性で何とかするしかないのだが、強烈な締め上げと焦凍の内心抱えている問題のせいで脱け出せないでいた。
「轟君!参ったと言え!」
「言うもん・・・か」
『轟選手、意地を見せるがこの状況は絶望的だ!』
『あれを解除すると強烈な氷が来ますから、緑谷選手は解けませんね』
観客も焦凍のこの意地に感心しつつももう無理だと感じていた。
司会の声も観客の声も焦凍を蝕む。
この締め上げのせいでより加速されていく。
(も、もう無理だ・・・)
「焦凍!!」
突然、焦凍の耳に声が聞こえる。
顔を動かして周りを見ると自分が入ってきたゲートには冷が立っていた。
冷だけでない、冬美も夏もいた。
「お母さん・・・」
「焦凍、頑張って・・・お母さんも頑張るから!・・・負けないで!!」
「焦凍、頑張れ!」
「俺の弟だろ!?諦めんな!」
焦凍は嬉しくなった。
大好きな家族からの声援。そして冷がこの会場の何処かにいるエンデヴァーを恐れずに来てくれた。
その事実に焦凍は嬉しくなり、そして諦めかけていた心に再び焔が燃え上がる。
(負けてたまるか!!)
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
焦凍の叫び声と共に左から燃え広がる炎が左から美しい巨大な氷が右から出て来て気輪縛を破壊する。
『轟選手、緑谷選手の拘束を破った!!』
会場がこの意外な脱出に喜ぶ。
更には先程なかった炎の力も出て来てまた興奮が出てくる。
冷は焦凍のその姿を確り見る。
「やっぱり壊れたか・・・」
出久が気輪縛が破壊された事に対して特に慌てずに焦凍を見る。
「緑谷・・・お前、これを待ってくれてたのか?」
「言っただろ?全力でやろうって・・・炎を出せるようになったじゃないか」
「敵のパワーアップを待つ奴が何処にいんだよ・・・余計なお世話をしやがって・・・」
「君の全力と戦いたかったからね」
笑い会う二人。
出久はかめはめ波の体勢になる。
焦凍も左の炎の火力を上げていく。
(緑谷・・・ありがとな)
「豪龍・かめはめ波!!!」
「膨冷熱波!!!」
出久は最強の技を焦凍は熱膨張の原理を使い巨大な氷の後に超高温の炎をぶつけて爆風を起こす技をぶつける。
そのぶつかり合いは会場を騒然とさせた。
特大の技がぶつかり合い、会場は轟音と爆風に包まれる。
主審のミッドナイトはそれに耐えて武舞台を見るとそのには落ちる寸前の出久以外誰もいなかった。
相手の焦凍は場外で倒れていた。
「轟選手、場外!緑谷選手の勝ち!」
主審ミッドナイトの采配はやっと武舞台を見ることができた会場の観客を興奮させた。
『緑谷選手の勝利だ!!一見優勢かに思われた緑谷選手、しかし負けずにパワーアップした轟選手。それすらも吹き飛ばした緑谷選手、なんと見所が多かった試合でしょうか!!』
『凄い戦いでしたね、それにしても何と言う威力でしょうか』
クリリンは二人の最大火力に少し冷や汗をかいていた。
各宇宙の破壊神や天使は平然とし界王神は冷や汗をかいて人間達の反応は疎らだった。
出久がボロボロになりながら、武舞台を降りて焦凍の方を見ると、焦凍は立ち上がって出久を見ていた。
「緑谷・・・優勝しろよ」
その言葉と共に拳を前に出す焦凍。
出久も拳を前に出す。
それを見た焦凍は笑いながら、冷の待つゲートの方に向かっていった。
出久も武舞台を後にした。
●●●
焦凍がゲートに入り、外からここが見にくくなると焦凍は冷に抱き締められた。
「お母さん?」
「焦凍・・・手紙読んだよ・・・ごめんね、遅くなっちゃって・・・今、答えを言わせて」
冷は一旦、離れて焦凍の目を見る。
焦凍の目には不安が出ていた。
「焦凍が赦してくれるなら、もう一度チャンスをくれるなら、もう一度、焦凍のお母さんになっても良いですか?」
冷の言葉に焦凍の目から自然と涙が溢れてきて静かに頬を流れていく。
「俺の・・・お母さんは・・・お母さんだけだよ・・・ごめんね・・・優勝出来なくて・・・」
「来年、今度は最初から観客席で冬美達と見るからその時まで待ってるね」
「うん・・・うん」
互いに涙に溢れてもう一度抱き締め会う。
冬美も夏も二人のこの状況に嬉しくなった。
轟家の物語は・・・轟焦凍の物語はここでもう一度始まった。
●●●
その様子を影に隠れながら見ていた男がいたエンデヴァーである。
あれから必死に探して冷達が見つからず、もしかしたらと思って会場に戻り、探していなかったここを探してたら、抱き締め合っていた冷達を見つけた。
冷達には何も言わずにその場を静かに離れたがその心情は穏やかではなかった。
冷達が逃げたことに対する物ではない。
焦凍が冷達の言葉によって炎を使えるようになったからだ。自分の最高の息子の問題が自分でも焦凍自身でもなく冷達によって解決された。
どんだけ自分が一方通行の愛を捧げても治らなかった物が冷によっていとも容易く治された。
その事実にエンデヴァーは冷に嫉妬し、怒りが溢れてきた。
同時に悲しくなった。
何故自分ではないのか・・・何を間違えていたのか・・・エンデヴァーはそんな事を思いながら、観客席に戻っていく。
そして、観客席に続く階段で座った。
単純に疲れてしまった。
心身ともにである。
そしてこれからどうしたら良いか、エンデヴァーには分からなくなってきた。
「ここにも迷える若者が一人いたか」
エンデヴァーは声のした方を見るとそこには亀仙人がいた。
「何のようだ?ご老公は誰だ?」
「何、少しお節介な老人じゃ、何やら悩んでいるようじゃったのでな。年寄りからも口うるさいアドバイスをと思ってな」
飄々と喋る亀仙人にエンデヴァーはイライラする。
「結構、ほっといてくれ。俺は45だ。もういい年でアドバイスなぞいらん」
「まぁ堅苦しい事はいうでない。聴くだけならすぐに終わるぞ」
エンデヴァーはイライラしながらも聴くことにしたそしたら消えてくれるだろうと思ったからだ。
「さっさと言って、何処かに行ってくれ」
「では一言、お主の人生で楽しかったのは?」
「は?」
「それがわかれば悩みも解決するぞ」
そう言って亀仙人は去っていった。
エンデヴァーはすぐに忘れようとしたが、亀仙人の妙な含蓄のある言葉を忘れられず、その事を思い出しながら観客席に戻っていった。
ここからエンデヴァーは変わるのだろうか?
それはまだエンデヴァー自身も知らない。
遅れてすみません!(三度目)
元々はすんなり書けるだろうと思って書いてたのですが予定を諸々片付けながらやってて尚且つ、戦闘が無茶苦茶難しかったので遅れてしまいました!
焦凍君の戦闘がまさかこんなに難しくなるとは作者も予想外だったので・・・本当にすみません!
そして出久君・・・主人公の一人なのに影が薄くなってごめんよ。焦凍君の家問題が濃すぎてバランスが取りにくかったんだよ!
何でこんなに主人公属性豊富なんだ!?
エンデヴァーと冷達の和解はすんなりさせませんでした。これに関してはそんなにすんなり解決する問題ではなく永遠に終わらない可能性の問題でもあるのでさせませんでした。
次は準決勝です。
2試合やります!
んで自分でも書きたかった決勝にいきます!
批判感想質問は早急に必ず返信しますので気軽にドンドン送って下さい。私にとれば褒美です。
それと体育祭後の短編の募集を今から始めます。また活動報告に送ってきて下さい。
期限は体育祭が終わるまでです。