いやぁ、ちょっと難産でしたが無事に出来て良かったです。次からは2週間に一回ぐらいの更新になるかも知れないのでご容赦下さい。
天晴は事務所の自分のオフィスにいた。
本当は相棒やメカニックとコミュニケーションをもっと取りたいので要らないと思っていたが、所長や父から説得されて持ったが正直に言って天晴は折角のいい部屋を使い余していた。
やることと言ったら資料を読むくらいだった。
コンコンとドアが叩かれた。
「開いてるぞ」
天晴はそう言うと入ってきたのは天哉だった。
目は先程よりもマシになっていたが天晴はだからどうしたと言わんばかりに冷たい目を向けた。
「何のようだ?」
「インゲニウム。今日の事は本当に申し訳ございませんでした!僕のしでかした事で顔に泥を塗ってしまい申し訳ございません!」
「言いたいことはそれだけか?・・・これはヒーローとして言う言葉だが今日のお前がやったことは絶対に俺は許さない!どんな理由であれ、ヒーローが市民を見捨てたんだ。そんな奴の言葉も行動も価値なんてない。それにお前が泥を塗ったのは俺の顔じゃねぇ。俺のヒーローとしての矜持だ。人を助ける・・・それをお前には丁寧に教えてきた筈なのに・・・お前が泥を塗ったのはもう絶対に拭えない物なんだよ・・・だが俺はお前の兄貴だ。兄として先輩として徹底的にしごくし教える。わかったらとっとと寝ろ。これで寝坊してみろ?雄英に送り返してやるからな」
「・・・はい!」
天哉は天晴の言葉にきちんと返事を返すと部屋から出た。そして航一が入れ違いに入ってきた。天晴は暫くの相棒がやってきたので先程までと態度を変えて資料を置いた。
「クロウラーどうしたんだ?」
「いや、一緒に保須をもう一回パトロールしません?今度はジョギングで」
航一からの言葉に天晴は気分転換も兼ねて一緒に走ることにした。
共にジョギングの格好と緊急時の為に免許を確りと持って走る。
「ねぇ、天哉君にあそこまで言わなくても良かったんじゃないんですか?どんなにヒーロースーツを着てもまだ学生だし、おまけにあのぐらいの時期はああしたくなるものなのは分かってるんじゃ?」
「あぁ、わかってる!俺もそうだった。初めての仕事で父の相棒になって手柄欲しさに大事な事を忘れてボコボコに殴られた!あの時期にああなるのはわかってるよ!」
「だったら何で??厳しくするだけが教えるって事じゃ無いでしょ?天哉君は真面目みたいだから、あの時の説教で大丈夫だと思うけど?」
「君の言うとおりだ!さっきの俺は明らかに言い過ぎてた!」
天晴はそう断言すると止まった。少し肩で息をしていた。
「もっと上手く行くと思ってた。俺の弟だから知ってるし、教えるのもきっと上手く行くと・・・けど、今日のアレを見て・・・ちゃんと教えてきたはずなのに全然出来なくて悔しくて・・・結果こんなんだよ。ままならねぇな」
「大丈夫だって。きっと上手くいく。なんせ、インゲニウムは良いヒーローだし、天哉君も凄く良い子だ。ボタンの掛け違いなんてゆっくり向き合えばきっと綺麗になるよ!」
「・・・ありがとうクロ・・・航一君」
天晴は航一にそう言うともう一度2人は走り始めた。それはかつて鳴羽田で一緒にジョギングしていたあの頃に戻ったような感覚を2人は味わっていた。
〇〇〇
グラントリノはぐっすり寝たので非常に気分が良い朝を迎えていた。コスチュームがもうすでに私服と化してる彼は寝間着から着替えて一階に行くと結構ボロボロになってた出久と電気がもうすでには起きて朝食を準備していた。
「おはようさん。お前らちゃんと寝たか?」
「おはようございます!勿論寝ました!」
「今日は勝つぜ。グラントリノ!」
「まぁ、年寄りを急かすな。先に食べてからだ」
朝食を食べる3人だが出久と電気は早食いでよほど昨日のリベンジに自信があるのか燃えていた。
(こいつら・・・年寄りは流石に労るよな?)
未だに自分は若々しいと内心思ってるグラントリノだが流石にこの2人のもはや清々しさも感じるほどの燃えてる心に珍しく弱気になった。
朝食を食べ終えて出久と電気はコスチュームである道着に変えると構えた。
馬鹿正直によーいドンなんて言うわけもなく、急に飛んで2人の腹を殴る。
「おいおい、敵がノンビリとよーいドンなんて言うと思ったのか?そんな気の抜けた事じゃまたやられるだけだぜ」
グラントリノは昨日と同じように周りを飛んで2人を翻弄しようとするが特に慌てずに冷静に2人はグラントリノを見ようとしていた。
グラントリノは思いっきり、そこに突っ込むと電気が昨日と同じように飛び上がって上から殴ろうとする。
(昨日と同じなら進歩はねぇな!)
グラントリノはまた空中で一時停止し、通り過ぎていく電気の腹に一発ぶちかまそうとしたが電気は全身から少し電気を放出して同じように空中で一瞬止まった。
そして鍛え上げられた体幹でそのまま空中で体を捻り、グラントリノの顎に一発入れて吹き飛ばした。自分は無理に捻ったせいで受け身を取れずに地面に激突した。
だがグラントリノはすぐに体制を立て直して出久に向かっていく。飛んでくるグラントリノ目掛けて出久は手刀を繰り出した。そんな分かりやすい攻撃を避けれない分けなく必要最小限、顔だけ横にずらして避けると手刀で横に向いてた掌から気が放たれた。
人が簡単に吹き飛ばされるくらいの量でグラントリノは間一髪、全身を更に浮かせて避けた。
だが、出久は放ったその気をブーストにして右足を軸に回転し、グラントリノの頭に思いっきりハイキックを叩き込んだ。
見事に蹴られたグラントリノはなんとかギリギリのところで止まったがあまりにも強烈だったのか鼻血を流しながら、座り込んだ。
「やべっ!」
「大丈夫ですか!?」
「大丈夫なもんか、思いっきりやりやがって俺は年寄りだぞ!」
「「す、すみません!」」
鼻血を拭ってグラントリノはやりすぎな出久と電気に悪態をつくも笑っていた。
「だがお前ら、よくこんなに早く殻を破ったな。色々と危ないとこだらけだが、こっからは籠もってやるよりも実践で体に染み込ませた方が良い。本当は明日か明後日のつもりだったが、出掛けに行くぞ・・・俺が回復したらな・・・」
「あっ、ならこれをどうぞ。体の調子が戻ります」
出久はそう言うとグラントリノに亀仙豆を渡した。
渡されたグラントリノは訝しげに亀仙豆を見ながらも優しい目をしてくる出久と電気を信用してさっさと食べた。するとさっきまでのダメージが無くなった。まぁ本物の仙豆じゃないので体力は戻らなかったがその効果に驚いた。
「こりゃ、たまげたわ!」
「少ししか持ってきてないですけど使えるかと思って」
「よし、ならすぐに行くぞ。体力はそのうち戻る」
「よっしゃ、実践だ!」
出久と電気、グラントリノは荷物を纏めて事務所を出た。
〇〇〇
保須市にあるマニュアルのヒーロー事務所の会議室に色々な事務所のヒーロー達が集結していた。
エンデヴァー事務所からエンデヴァーと焦凍、そして相棒のバーニン。地元のマニュアル事務所からマニュアルと相棒のネイティブ。単独で行動するミルコ。そしてチームIDATENから天晴と航一、天哉。本来、明日以降の合流のはずだったがすぐに来たグラントリノ、出久、電気がその場にいた。
他にも様々な相棒がいるが会議室に入り切らなかった。
「それでは今回の作戦のリーダーを務めるインゲニウムから作戦の概要を説明します。我々が逮捕するのはステイン。通称“ヒーロー殺し”。これまでに17名のヒーローを殺し、22名を再起不能にした男でまたステインと名乗る前はスタンダールという自警団として動いており、そこでも少なくとも8人の殺人に関与していた疑いがある男です。神出鬼没、1つの街で数度犯行をしたのち、別の街に動くタイプで個性は相手の動きを止める厄介な物。全身にある刃物から恐らくトリガーはその人間の血液によるものと推測。また止められたら一定の時間を過ぎないと指1つ動けないほど強力です。ですので基本的にチームとして行動し、数の力を持って当たります。またGPSを内蔵した特殊なインカムをつけて常にその情報をうちのトレーラーに送り、すぐに現場に駆けつけられるように共有させます」
天晴が作戦の概要を説明するととあるヒーローから手が挙がった。それは基本的に単独行動が主体のミルコからだった。
「私は1人が性にあってるから単独で動かせて貰うぜ」
「勿論、ただしインカムは付けてもらう」
「わかった。ならOKだ!」
単独で動けるのがわかったのかミルコは実に良い笑顔を天晴に向けて礼を言った。天晴もミルコだけでなくエンデヴァーにも協力を仰いだのはステイン対策というよりもフリーザ対策の意味合いが強かった。
「俺からも1ついいか?凶悪犯罪者を捕まえる場に呼んで貰ったのは感謝するが俺にミルコ、そして地元のマニュアル、チームIDATENは過剰すぎないか?」
「轟、ナチュラルに俺を省くな!」
グラントリノの批判は無視して、エンデヴァーは集まった面子を見てそういった。そもそも今回のその協同作戦は少し異質だった。本来なら地元のマニュアルを中心に近隣のヒーロー事務所と連携をするはずだが、今回のは近隣のヒーローではなく寧ろ、すぐにでも戦力として使える面子といった感じにエンデヴァーは奇妙に思えた。
天晴はエンデヴァーの疑問に対して手元にある資料の8ページを開くよう言った。
(なっ!?)
(嘘だろ!?)
(マジか・・・)
そこには監視カメラから捉えたフリーザの姿があった。出久、電気、焦凍はその事に内心冷や汗が出まくった。
「なんだコイツは?」
「今、資料を集めてる所だがフリーザと名乗る存在です。性別年齢個性のあらゆる情報が一切ないです。ステインと交戦したときに奴を勧誘していました。バックにどんな組織があるのか検討もつきませんが実際に会ってみて奴は危険です。今回の作戦でステインと同時に相手をする可能性があり、そのために呼びました」
「こんなにちっこい奴がか?」
冷や汗を流しながら言う天晴に流石のミルコも普通じゃないとは感じつつもフリーザの写真をパンパンと叩きながら言った。
「今まで凶悪犯罪者は何回も捕まえてきたがソイツはその中でもド級だ。下手に嘗めて被害を拡大するより過剰戦力でマスコミに非難される方がまだ良い」
天晴の言葉にその場にいた全員が息をのんだ。インゲニウムの人となりは多少なりとも知っているが臆病でもましてやおちゃらけてるわけでもない。自分の活動方法に誇りを持ってる。そんな彼が手柄を全て横取りにされる可能性が高いこの作戦を決行した。エンデヴァー達は全員、改めて気合を入れ直した。
会議が終わり、それぞれが自分の事務所の人間と動こうとしてる中、出久、電気、天哉、焦凍は集まっていた。
「フリーザってやつも関わってるなんて」
「僕達だけじゃ戦力にもならない」
「ヒーロー殺しは奴らの仲間なのか?悟空さん達に連絡した方がいいんじゃねぇか?」
「悟空さん達、一応一般人の扱いだから下手にやると騒乱が起きるかも」
「今はとにかく情報がない。全員、気を引き締めて雄英の名に恥じぬように動こう!」
調子の戻ってきた天哉がそう言うと他の3人も気を引き締め直す。そうやってると航一が4人に近づく。
「2号。パトロールに・・・もしかして体育祭で1位と2位だった子達?」
「はい!自慢の学友です」
「あぁ!ザ・クロウラー!!アジアで数十年ぶりに自警団からヒーローに成り上がった方でこれまでにも数々の実績を積み上げ、特に最初の2年間の功績は歴代アメリカのヒーローの中でもトップクラスで最速で独立する相棒と言われていたヒーロー!!」
航一は出久と電気を見てそう言うとヒーローオタクな出久が興奮しながら近づき、握手を求めた。そして今でも変わらないヒーローオタクな一面を持つ航一は出久にそう言われて嬉しいのか気軽に手を握った。
「うわぁ、嬉しいな!こんなに熱狂的なファンがいて」
「僕も会えて嬉しいです!そのスーツってもしかしてオールマイトのヤングエイジですか?」
「そっ!よく分かったね。どうもオールマイトに似せないと勇気が出しづらくてね」
「分かります!オールマイトを真似ると凄くなんか心が落ち着くというか」
「わかる!!ねぇ知ってるオールマイトのご利益って凄くてオールマイトデザインのパーカーを着れば凄く強くなるよ!」
「本当ですか!?」
「うん、俺も浅草限定モデルと大阪限定モデルを着たときには凄く調子が良かったんだ!だから、今でも新作のオールマイトデザインは全て買ってるどころかアメリカの部屋は全てオールマイトグッズだらけだよ!」
「知ってます!キャプテン・セレブリティが以前に半ば騙すような形で世界中に中継したので」
「暫く、本気でキレたけど。今ではキャラとして受け入れて貰えてるから嬉しいよ!まぁ、サー・ナイトアイと対決する事になった時は大変だったけど・・・」
「去年のやつですね!オールマイトの相棒だったナイトアイが真のオールマイトオタクは私だと言ってグッズや功績の自慢合戦をすることになったテレビ局の質の悪い企画でしたけどお2人のオールマイト愛で神回になって僕、テレビで見てて大号泣しました!」
「やっぱりオタクってのは比べるものじゃないよね!?」
「勿論です!」
早口で話す2人はそのまま感極まったのか互いに抱きしめあった。
「君、名前は?」
「緑谷出久です!ヒーロー名はデクです!」
「ねぇ、今から俺と一緒にパトロールしよう!君とはもう一緒に行動したい!」
「僕も一緒に行動したいです!」
盛り上がっているがその時、2人は脳天に思いっきり強い拳骨を受けて沈んだ。
「「勝手に盛り上がるな!!」」
殴ったのは電気と天晴だった。天晴は頭を抑えてる航一に近づいて胸ぐらを掴み、電気は出久の胸ぐらを掴んだ。
「何勝手な事を言ってるんだ!今は俺の相棒だろうが、しかも君が一緒じゃないと危険だってあれほど言っただろうが!」
「いやぁ、つい盛り上がって」
「なんで盛り上がってんだよ!俺達はグラントリノと行動するって言われてただろうが!!」
「ごめん、感極まっちゃって」
「「はぁ?盛り上がるのは良いが急にそんな事をやるんじゃねぇよ!」」
「「「ハハハ、すみません」」
完全にシンクロしてる4人に周りは奇妙さを感じつつも笑った。
〇〇〇
それぞれのヒーローが保須を見回ってるのを見て市民の反応は様々だった。ヒーローが集結している事に興奮してる者が多数だが、その面子に何か大きな事件が起きるのではないかと言う不安が水面下で拡がっていた。
夕暮れになり、ステインの活動時間になりつつある状況で天哉は天晴や航一と共にパトロールしていた。
「ヒーロー殺しは昼よりも夜での行動が多い。改めて気を引き締めないとな」
「「はい!」」
天晴の言葉に天哉も航一もより集中し始める。
BOOOM!!
突然と爆発音が3人の耳に入った。
3人とも爆発音が鳴った方向を向くと火が広がったのかそこら辺の空が明るかった。
『今のはなんだ!?』
『おい、どうなってる!?』
『一体、何が起こった!?』
『何だコイツラは!?』
通信が混乱していく中で現場近くにいたエンデヴァーから映像が送られた。それは脳がむき出しになっていた敵連合の戦闘員である脳無が8体暴れていた。
雄英高校襲撃の際にフリーザは公には伏せられたが脳無や敵連合の事は報道されたので各ヒーローが脳無については存在自体は知っていた。更に問題なのが爆発音が大きかった為に自分達の近くでも野次馬が出来ていた。
「俺達も急行するぞ!」
「おう!」
「2号はここの人達を避難させろ!」
「わかりました!」
猛スピードで現場に急行していく天晴と航一を見つつも天哉は野次馬に対して避難誘導を始める。
〇〇〇
大混乱になりつつある保須をビルの上から弔は笑いながら見ていた。
「良いね最高だよ。この感じがたまらなく大好きだ」
「死柄木弔、ここからでよろしいのですか?」
「あぁ、ここでいい。良いなぁこのチートで全部台無しにしていくの」
弔は笑いながら混乱を見ていて黒霧は近くで同じように笑っていたフリーザ(第一形態)に近づいた。
「良いのですか?このような事をさせて」
「構いません。ドクターやキコノ曰く脳無の実験も兼ねてるので問題はないとの事です」
フリーザはそう言うと弔達から離れて違うビルに移った。
「フフフ、良いですよ。全てを破壊する感覚に酔えば酔うほどより邪悪になる。そのために私やAFOさんは貴方を痛めつけていたのですから・・・」
フリーザはニヤニヤとしながら、自分の目的であった出久と電気がグラントリノと共に脳無に対峙しているのをビルの上から見ていた。
「緑谷出久さん、貴方にはもっともっと強くなって貰わなくては困るんですよ。そのために孫悟空をここに呼んだのですから」
〇〇〇
出久と電気はグラントリノと共に爆発現場に向かってると暴れてる脳無に遭遇した。しかもそれは以前、USJでオールマイトに吹き飛ばされてフリーザに回収されていた奴だ。
「コイツ、あの時の!」
「てことはこの爆発はフリーザって奴の仕業か!」
「おい、お前ら。アイツを知ってるのか!?」
「敵連合って奴らの仲間です!」
「そうか、ならぶっ潰すに限るな!お前らはどうする?」
「勿論!」
「戦うに決まってるぜ!」
拳を構える2人にグラントリノはブチのめして止めようかと一瞬考えるが、折角の実戦を止めたくは無かった。何故なら、オールマイトから聞いた知恵の育成の為に2人の成長は必要不可欠であり、その為に自分がペナルティを喰らうのは別に良かった。
「よっしゃ、行くぞ小僧共!敵退治だ!」
「「はい!」」
〇〇〇
天哉は上手く野次馬に避難するように伝えられた。それは普段から天晴の避難誘導のやり方を見て勉強し続けていた成果だった。
「よし!ここら辺にはもう誰もいない!僕も現場に・・・」
『こちらチームIDATEN!ヒーロー殺しを発見。ネイティブが1人で交戦中です!場所は保須市2-5の路地裏です!誰か急行をお願いします』
「2-5ってこの近くじゃないですか!」
天哉はそこまで考えて止まった。相手は凶悪敵であり自分はまだ学生の身でしかも天晴に説教されたばかり、体が硬直してしまう。色々と最善を考えるが先程から聴こえてくる交信は全て人手不足と避難するために大声を出して誘導する声だらけ。ミルコやエンデヴァーに関しては脳無を2体ずつ相手にしている。他のヒーローも脳無と救助、防衛の為に動いていて今、ここで動けるのは現場から離れた場所で粗方の避難誘導をし終わった天哉だけだった。
天哉はそこまで考えると吹っ切れたのかヒーロー殺しの所まで走った。
(まず、ネイティブさんと共に当たれるように!大丈夫!僕だって緑谷君達と肩を並ばせないといけないんだ!)
天哉は全力で走って、目的地である路地裏まで来るとステインが頬から血を流してるネイティブの首を掴んで長剣で殺そうとしていたがステインは流石に脳無の騒動が気になってたのかそっちの方を向いていた。
「騒々しいアホが出たのか?後で始末してやる。その前に為すべき事を為す」
「くたばれクソ野郎」
「ヒーローを名乗るなら死に際の台詞は選べ」
天哉は長剣を振りかぶったステイン目掛けて蹴りを入れに行った。しかし、ステインは長剣の腹で天哉の頭を殴り、メット弾き飛ばした。
「スーツを着た子供?何のようだ・・・正しい事の邪魔をするな」
ステインは天哉に長剣を向けながらそう吐き捨てた。
(正しい?人殺しが正しいわけがない!絶対にコイツの思い通りにさせるか!)
「・・・僕の名前はインゲニウム2号!ネイティブさんを絶対に助ける!」
「そうか・・・痛い目に合わないとわからんか・・・」
ステインはそう呟くと容赦なく長剣を天哉の胴体目掛けて突いてくる。天哉は反応に遅れてしまったが防刃対策用のスーツのお陰で傷1つ付かなかった。
「チッ!またそれか」
「気をつけろ!コイツの個性は血を舐めて発動・・・」
「黙ってろ偽物」
情報を教えるネイティブをステインは蹴り一発でのして長剣で斬りかかってくる。天哉は両腕のアーマーでそれを受け止める。
(よし!先ずはこの長いのを・・・)
(甘い!)
ステインはすぐに長剣から手を離し、懐の短剣で斬りかかってきた。天哉は極めて冷静にそれを右腕のアーマーで防ぎ、ステインは空いてる手にも短剣を持って天哉を左右から挟み込むように振るってきたがそれを天哉は左腕のアーマーで防いだ。
ステインは靴のスパイクで天哉の顎を蹴りに来たが天哉はそれを仰け反って避けた。
(危なかった!悟空さん達に鍛えられてなかったら避けれなかった)
(この動き、接近戦をよく教え込まれてるな・・・だが!)
天哉のガラ空きの胴体に蹴りを入れて下がらせるステイン。
(まだまだ鍛え方が足りんな)
腹を抑える天哉にステインは短剣を次々と振って来る。天哉は後ろに下がりつつ、アーマーで防いでいくが段々とそれが防げなくなってきた。初の一対一での実戦と刃物という2つの精神的要因によって離れた所から強烈な蹴りを入れるといういつもの自分のスタイルを出来ないでいた。幾ら、悟空や亀仙人達に鍛えられていたとしてもそこら辺はまだまだ鍛えたりてなかった。
そして遂に短剣が天哉の頬を掠った。天哉はそれを見て慌ててしまい、短剣を蹴り飛ばそうとしたがステインはそれを避けて天哉の腕を斬った。
「ぐぁっ!」
「焦ったなインゲニウム2号・・・」
ステインは短剣に付いた血を舐めた。すると個性が発動し、天哉は地面に倒れて指1つも動けなくなった。なんとかして動こうとするが本当に全く動けなかった。
「己を省みず、他者を救う。お前はそれが出来ている。見所があるな・・・生かしておいてやる。正しいことを為す」
ステインはそのまま、気絶してるネイティブの所まで行って長剣を刺そうとしていた。
「これ以上、人を傷つけるのは止めろ!」
天哉の叫びをステインは無視した。そしてネイティブの首を斬り捨てようと長剣を振りかぶった。
「どれだけ御託を綺麗に並べてもお前のやってることは犯罪だ!!」
「正しいことを為すには罪を犯さなければならない!」
ステインはまるで自分にも言い聞かせるように叫びながらネイティブの首目掛けて剣を振り下ろした。
しかし、その斬撃は横から体ごと蹴り飛ばされて止められた。
蹴り飛ばしたのは天晴だった。そして横には航一もいた。ステインはこの前、やり損なった天晴と以前、自分の殺人を止めた航一が来たことに唸り声を上げながら立ち上がり、長剣を構えた。
「インゲニウム・・・クロウラー・・・」
「ステイン・・・この前の決着をつけるぞ」
「今日で必ずアンタを止める」
天晴と航一は倒れてるネイティブや天哉の前に立って構えた。
「この偽物どもかぁ!!」
ステインはそんな2人に対して長剣を振るった。
漸く、インゲニウム&ザ・クロウラーVSステインを始められて嬉しいです!実はこれに関しては結構初期から決めてました!
後、ステインの長いのは長剣ではなくてたぶん打刀か刀もしくは長刀と書くのが良いと思うのですがこの人、全身刃物で胴体のを短剣と書くべきかナイフと書くべきか色々と迷って出来る限り、カタカナと漢字がごっちゃにさせたくは無かったので長いのは長剣、胴体のは短剣、後の小さいのはナイフとするのが1番分かりやすいと思い、そう書かせていただきます。