予想以上に難産+大学が忙しくなり、このまま行くと永遠に投稿できなさそうなので、最低限の変化は出来ましたから、投稿します。
誠に申し訳ありません‼
太陽が照らされている海岸に出久と電気は、互いに向き合っていた。
亀仙人の突然の宣告に二人とも頭が追い付いていなかったのだ。
互いに互いの傷を自覚無しに抉りあった結果がこれである。
当たり前だ。
亀仙人は、確かに最低な部分もある。
しかし、根本にある信念は誰よりも強靭である。
どんな強い敵にも折れず。
どんな苦難にもめげず。
武道を育て上げた立派な人間である。
出久も電気もヒーローに成りたい。
しかし、ヒーローとは聖人君子の象徴である。
どんな苦難にもめげず。
例え勝てないとわかっていても立ち向かわなくてはいけない。
人々の前に立ち、人々の希望になり、救世主に近い存在になる、なってしまうのだ。
二人は、お互いの問題を他人に八つ当たりをしてしまった。
出久は、己の無個性の問題を電気に当たってしまった。
電気は、己の気の問題を出久に当たってしまった。
勿論、互いに互いが傷に塩を塗りあったから、納得はできる。
しかし、彼らはヒーローになろうとしている武道家になったのだ。
ヒーローに憧れ、亀仙人の元で修行を決意したその時から、彼らは武道家なのだ。
そしたら、もう自分の体でも自由には使えない。
その手足は、人を救うために・・・
その心は人を導くために存在するのである。
まだ、子供とか言うのは通用しない。
出久も電気もそれをわかっていないのだ。
出久は、電気に近づき、止まる。
どう声を掛ければいいのかわからない。
生まれて初めての喧嘩で友達もいなかったから仲直りの 仕方がわからないのだ。
いや、知ってはいる。
ごめんなさいと言うだけだ。
でも、どんな時に言えばいいのかわからないのだ。
電気は、出久を見る。
一緒に修行して5ヶ月、これが始めての喧嘩である。
彼も謝る時がわからない。
出久よりもわかってはいる。
しかし、彼にとってみれば今回は出久から始めたと思っている。
頭では自分も悪いと理解しているが、心が納得していないのだ。
故に、これからどうすれば良いのかわからないのだ。
沈黙の時は永い。
電気は、立ち上がり、出久に肩をぶつけて、その場を去る。
出久は電気を追いかける。
「来るな!」
電気は出久の方を向き、吼える。
自分でもらしくはないと考えているが、それほどまでに電気は冷静ではないのだ。
「お前なんか、大っ嫌いだ!!」
電気は、そのまま去っていく。
出久は、その場で立ち止まる。
●●●
家に帰った電気は、風呂を浴びて部屋に入ると、ベットに潜った。
考えているのは、自分の個性。
『帯電』
この自由に使うことが出来ない個性で大分苦しめられた。
ただ、纏うだけ。
それで、小学生三年まで人から避けられた。
理由は、上手く操れない個性だ。
大怪我をさせたことはないが静電気はドンドン溢れるように出てしまうから、操るのに苦労した。
人間関係は自分なりに明るく振る舞って、何とか人に好かれるようになったし、昨日まではこの個性も自分なんだなって考えていたが、それも昨日まで・・・
今は、またこの個性・・・そして出久に対しての怒りで、頭が一杯になってる。
そもそも、電気は出久が少し苦手だった。
自分よりも強いのに、異様なまでの低い自己評価と腹が立つぐらいの謙遜、称賛。
持ち前の明るさで何とかしようにも、壁がある感じで苦手だった。
ベッドで泣いている。
長いこと泣いてる。
家族がご飯だと呼んでも、彼はベットに入り、苦しんでいた。
暗い夜になり、電気は、自分の部屋にある父親から貰ったお古のパソコンを見て、起動する。
古い型なためか、いささか遅いが気になるほどではない。
起動されたパソコンでインターネットを始める電気。
調べるのは、無個性に関することだ。
幾つか、無個性に関して、記事がある。
『南米で、無個性の人間を隔離する無個性安全法が施行、世界中で非難の的に』
『アメリカで13歳の少年が死亡。理由は無個性でいじめられて?』
『ロシアで無個性の人間が自爆テロ!』
『フランスで無個性の人間達が大規模なデモを!スローガンに【無個性に平等を!】』
『無個性至上主義者であり、イギリス至上最悪の殺人鬼、通称皆殺しジャックが脱獄!』
『オーストリアで個性至上主義の二人の少年が無個性の一家を惨殺!』
etc
電気は、その大量の記事を見る。
世界で今、問題になっている無個性問題!
今まで、自分の周りには個性持ちしかいなかったし、自分には関係ないなって思っていた。
電気は、アメリカの無個性の少年の自殺記事を見る。
アメリカの田舎で起きた事件で、周りは個性持ち。
少年の両親や、兄弟すらも個性持ちで、居場所が無くなったようだ。
電気は、その記事を見ながら、固まっていた。
●●●
今まで、個性を持っているのが普通だと思っていた。
でも、一緒に何ヵ月も修行を共にしたやつは無個性だった。
だから、あいつ・・・・・あんなに怒ったんだろうなぁ。
俺の個性。
好きじゃないし、便利じゃないけど、有るからなぁ。
思えば、あいつの自分の過小評価もネガティブな所も全部、そこからじゃないのか?
俺、なんで、あんな馬鹿な事、言ったんだ?
あいつに対して申し訳ねぇ。
そう考えたら、涙が出てきた。
「すまねぇ、すまない緑谷・・・」
後は、鼻をすする音だけしか、俺の耳には聞こえなかった。
●●●
出久は、家に帰ってきて、玄関の部屋を開ける。
「出久?もう帰ってきたの?」
母親の引子が、玄関に来る。
「どうしたの?」
明らかに暗い表情の息子に聞く引子。
「お母さん、ちょっと上鳴君と喧嘩しちゃって・・・それで師匠に怒られて・・・」
その言葉を聞いた引子は、手を口に当てる。
明らかに驚いている。
無理もない、出久はどんな事でも今まで溜め込む方の人間だったのに、こんな状態で言ったのは引子の記憶にはなかった。
「だ、大丈夫なの?」
「上鳴君は大丈夫だ「出久は?」」
「お互いに怪我をしなくてすんだから、大丈夫!」
「後で仲直りしなさいよ」
「わかってるよ・・・」
出久は、引子の横を通り、部屋に入る。
ベットに寝転がり、暫く天井を見る。
初めての喧嘩。
腐れ縁のかっちゃんとは違って妙に意地をはってしまっていた。
出久の頭にあるのは、その事だった。
上鳴の言葉は理解できる。
無個性だと知った時から、個性について勉強し続けてきた、そして個性を上手く使えなくて事故を起こしてしまった、個性被害者についても・・・
出久は、自分の本棚の中に入れているノートを1つ取り出す。
タイトルは『個性による事故』
色んな個性による事件を纏めたノートで、出久はそれを一枚一枚めくる。
『アメリカでサイコキネシスの少女、個性を上手く操れず、車の事故を起こしてしまう。両親が死亡』
『個性黎明期から生きてきた、ジェームズ・ハウレット氏が自殺。自らの超回復が原因か?首には個性封じの首輪が』
『23の人格が入れ替わる個性のケビン・クラム氏が死亡。自らの個性の暴走か?』
『アメリカで、突然200人が緊急搬送。世界最高のサイコキネシスの持ち主で現在認知症のチャールズ・アイゼンハート氏が関与か?』
etc
個性が発現されてから今の今までずっと続いている個性の暴走。
年々、酷くなり増え続けていくと言う学説まで唱えるほどで、出久は現実を知っていた。
でも、目を背けてきた。
そんな事は、今までただの力を持つ人間の戯言だと思っていたからだ。
でも、電気と出会い、電気と喧嘩して、出久の心にあったもの(偏見)は、完全にとは言わないが確かに壊れたのである。
(謝らないと・・・)
玄関に行く出久。
引子が、外に出ようとする出久に近づく。
「出久、どうしたの?」
「ごめん、お母さん!ちょっと行かないと・・・」
出久は、玄関を出る。
すると外は真っ暗だった。
「もう、夜よ」
そう、調べてたりしている内に夜になってしまったのだ。
「それでも行く!」
飛び出す出久。
引子は、その後ろ姿を見ながら笑っていた。
夜道を走り続ける出久。
前の方から誰かが来る。
ぶつからないように避けようと、右側に行く出久は、向かいから走ってきた人物を見て立ち止まる。
それは、肩で息を切らしながら走ってきた電気だった。
「緑谷・・・」
「上鳴君・・・」
●●●
夜の浜辺にいる出久と電気。
互いに謝ろうと家を飛び出して来たのは良いものの、まさか、互いの家に行く道中で会うとは思っておらず、また、急に会った為に気まずくなり、いつもの修行場の浜辺へと来た。
長い沈黙
二人とも、言い出す切っ掛けがないのだ。
((・・・でも、謝らないと!・・・))
互いに互いが同じ事を考えていたのは互いに優しい人間だからであろう。
「緑「上鳴君!ゴメン!」・・・・」
電気の言葉を遮って、腰を曲げて謝る出久。
「本当に「緑谷!ゴメン!」・・・・上鳴君・・・」
電気は、土下座の体制になっていた。
「俺、自分が上手くできなくて・・・隣で上達してたお前に嫉妬してた・・・いつも・・・いつも・・・毎日・・・何をやっても俺より凄かったから・・・・でも、俺・・・・あんなこと言って・・・本当にごめんなさい!」
「上鳴君・・・僕の方こそ、君にずっと嫉妬してたんだ・・・僕は無個性で・・・君の個性が凄く眩しく見えたんだ・・・だから、君に負けたくなくて・・・僕は本当に無神経の最低な男なんだ・・・」
出久も土下座の体制になった。
長いこと、頭を互いに下げている。
すると、二人とも笑いだした。
緊張の糸が解けたのか、それともこの状況が馬鹿馬鹿しくなったのか?
何はともあれ、二人には朝にあった嫉妬の感情は存在しなかった。
互いに同時に立ち上がり、目線を交わす二人。
出久が右手を出し、電気も右手を出し、互いに握手をする二人。
「俺は、絶対にこのまま終わりたくねぇ」
「僕もだよ」
「これからもよろしくな・・・緑谷」
「うん・・・・・上鳴君」
二人は、同門から友人になった瞬間である。
そして物語は、一週間後に進む。