僕の亀仙流アカデミア   作:怪獣馬鹿

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なんとか、ギリギリ1月中には間に合わせました!

それではどうぞ!!

因みに今回は色々と原作解離がありますので後書きの方で説明します!


雄英高校入学編
オールマイト


あれから2年以上経ち、出久と電気は中学三年生になっていた。

 

相も変わらず、修行の日々を送っていた。

毎日、毎日地獄の修行の積み重ねに出久と電気の体は以前と比べてかなり変わっていた。

ほぼもやしっ子のような体つきの二人だったが今ではバランスの整った素晴らしい肉体になっている。

 

だが、ガチガチのムチムチのキン肉マンになっていないのは亀仙人からの教えである。

 

”パワーを上げたところで当てなくては意味がない“

 

との事、故に二人にはパワーを上げる修行ではなく当てる為に速さを鍛えていった。

 

 

 

こうして二人の雄英高校の試験まで後1年だった。

 

 

 

 

●●●

折寺中学

 

喧騒な教室の中に教師が入ってくる。

「えー、お前らも3年と言うことでそろそろ本格的に将来を考える時期だ。今から進路希望の紙を配るが・・・皆ヒーロー志望だよね!」

 

『ハーイ!!』

 

「センセー!皆とか一緒にすんなよ。俺はこんな没個性共と仲良く底辺なんかに行かねーよ!!」

 

いかにも昭和のチンピラを絵に描いたような性格の男。

爆豪勝己がメンチをきっていた。

話してる事はやれナンバーワンヒーローになるとかトップ納税者ランキングに名を連ねるとか俗物的な内容だ。

出久は後ろの席でそれを眺めていた。

確かに彼の個性は強力。

 

個性”爆破“

 

凄まじい威力を出せる個性。能力は名前の通り、掌から爆破を出せる。しかも起爆剤は自分の掌から出るニトログリセリンのような汗であり、汗腺が拡がれば拡がるほど強力になってくる。

 

性格も相まって出久とは180度違う存在である。

 

 

「そういや、緑谷も雄英志望だったよな~」

 

クラスメイトの誰かが呟いた台詞にクラスが静まり返る。そして爆豪が凄い目付きで出久を睨む。

 

「おいこら!デク!何で無個性のてめぇが俺と同じ土俵に立てるんだぁ!?」

 

明らかにヒーローになるような人間の行動ではない。

ただのチンピラである。

しかし、出久はそんなチンピラに対して特にビビることなく目を会わせる。

 

「何でって・・・志望してるから・・・」

 

「だから、何で志望してんだよ!」

 

「ヒーローになりたいから・・・」

 

出久の言葉にクラス中が大爆笑になった。

当然、チンピラ本人も大爆笑である。

 

「なんで無個性のお前がヒーローになれるんだよ!?」

 

「別になれないなんて理由もないじゃん。前例がない=無理じゃないよ」

 

出久の物言いにクラスが静まり返る。

いや、驚きのあまりに口が止まったのだ。

そもそも爆豪に対してクラスでも穏健な出久がここまで反論したのは初めての事だ。

 

 

まぁ、出久からしてみれば亀仙人の方が百倍怖いし、修行の地獄さに比べれば爆豪との気まずい雰囲気からのプレッシャーなんてのは風の前の塵と同じである。

 

 

放課後

出久は座りながら、いそいそと自らのノートに最新のヒーローを更新していると横から爆豪が取り巻きを連れてやって来た。

 

「デクぅ・・まだ話しは終わってねぇぞ」

 

爆豪は出久のノートを取ろうとするが、出久は素早く動きノートを取られないようにする。

 

手は空を切り、唖然とする爆豪。

酷く滑稽に見える。

 

何回かノートを取ろうとするも出久からすればもっと速い電気を知っているので、それに比べれば遅い。

止まっていると勘違いするほどに遅い。

 

「デクの分際で~」

 

恨み言を言ってるが出久は何も言わずに見ている。

 

「爆豪・・・もう行こうぜ・・・」

 

「そうだよ・・・な?」

 

身内に言われ半ば無理矢理に去っていく爆豪を出久は見ていた。

 

出久は荷物を鞄に入れて教室を出た。

階段を降りて下駄箱で靴を履き替えて学校を出た。

いつもならこれから亀仙人の修行が始まるが、今日は違う。

何でも亀仙人に外せない用事があり、放課後からの修行が無くなったのだ。

勿論、出久と電気はいつも通り修行をしようとしたが、亀仙人から1日ゆっくり休めと言われたので二人とも休むことにした。

 

 

●●●

高架線の下を歩く出久。

薄暗くてうるさい所を歩いてる理由は様々ある。

単純に近道だから、人がいなくて静かだから、

まぁ色々ある。

自分の少し落ち込んだ空気も癒される。

 

出久は落ち込んでいる。

別にヒーローになれないと言われるのはこれが最初ではない。

特に爆豪もといチンピラからは毎日毎日毎日毎日、言われ続けてきた言葉である。

慣れたし、亀仙人の修行であまり気にしなくなった。

 

たが、それは言われて落ち込むのを克服したわけではない。

誰だって褒められれば喜ぶ。

貶させれば腹が立つ。

嗤われれば落ち込む。

喜んでくれれば楽しくなるものである。

 

喜怒哀楽の単純な理論である。

 

出久のこの気持ちの発散は恐らく明日の修行で発散されるだろう。

 

そんな時、後ろのマンホールから突然何かの液体が、出久に纏まり憑こうとしたが、出久は即座にその事に気がつき、避けた。

 

「勘がいいなぁ」

 

液体が不気味な声を出す。

 

敵だ。

 

出久は直感した。

 

「よこせ、隠れ蓑!!!」

 

敵が襲ってくるが出久は気弾を放った。

違法な個性の使用に該当すると思うがこの状況だ。

無断使用も糞もない。

 

出久は二三発放つが敵には全く効かなかった。

 

「嘘だろ?」

「そんなのが効くか!!」

 

敵は出久を呑み込もうと纏わりついた。

出久は手を素早く動かしたりして抜け出そうとするが抜け出せない。

何故ならこの敵は液体でそんな力任せでは絶対に抜け出せないからだ。

抜け出すには弱点を付くか、圧倒的なパワーで吹き飛ばすかしかない。

しかし、出久にはその両方とも無かった。

2年たった修行の成果は素晴らしくそこら辺の敵ですら諸ともしない程に出久も電気も強くなったが、相性の悪さは克服出来ないでいた。

 

「何で、この街にあいつがいるんだよ?ついてねぇ」

 

(あいつって誰だ?)

 

「よこせ、隠れ蓑になれ、苦しいのは少しだけだ」

 

(絶対に嘘だ)

 

出久はもうだめだと思ったその時、後ろのマンホールが突然ぶっ飛んだ。

 

敵も出久もマンホールの方を見るとマンホールから大男が出てきた。

金髪で筋骨粒々の大男だ。

 

そう、彼の名は“オールマイト“

 

史上最高のヒーロー

 

「もう大丈夫だ少年!何故かって?私が来た!!」

 

オールマイトは思いっきり力を溜めて・・・

 

「TAXES SMASH!!!」

 

強烈なパンチを解き放った。

液体の敵は吹き飛び、出久は意識を喪いそうになるも気合いと根性で耐えた。

 

周りにはのびてる敵の残骸が大量に散らばり、出久は荒い息をしながらも立ち上がった。

 

「いやー、いつもはこんなミスしないのだが、オフだったのと慣れない土地で浮かれちゃったかなぁ!」

 

爽やかに話すオールマイトに出久は固まったてた。

そりゃそうだ。

憧れのヒーローが目の前にいるんだから、固まらない方がおかしい。

 

「助けてくれて、ありがとうございます!」

 

90度腰をきっちりかっちり曲げてお辞儀をする出久。

オールマイトは少しばかり引いてる。

 

「何はともあれ、あとはプロに任せて君は離れなさい。いつ敵が起きるかわからないから」

 

「あ、あの少し聞いても良いですか?」

 

「なんだい?」

 

「個性が無くても貴方のようなヒーローに成れますか?無個性でもヒーローに成れますか?」

 

出久の言葉にオールマイトが何か言おうとするが、オールマイトの体から蒸気が溢れでる。

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

「なんで、こんなに早く・・・」

 

オールマイトを中心に辺り一面に大量の蒸気が溢れる。

出久はその蒸気に思わず顔を手で隠す。

蒸気が収まり、オールマイトの方を見る出久。

そこには筋骨粒々の大男ではなく、ガリガリ鶏ガラな人間がいた。

 

「しぼんでる~!えっ 偽物!?」

 

突如現れた謎の人物に驚く出久。

 

「私はオールマイト…」

 

謎の人物“オールマイト“は血を吐きながら話す。

見ていて痛々しい。

 

「プールで腹筋を力み続ける人がいるでしょ、あれと一緒さ」

 

「嘘だ!!」

 

何とも訳のわからない理屈にツッコミを入れる出久。

オールマイトはそのまま壁に背中を預けて座る。

 

「見られたついでだ少年。間違ってもネットには書き込むな」

 

オールマイトは自分のシャツを捲り、脇腹を出久に見せる。

その脇腹は酷い傷痕がまるで呪いのように痛々しく重く残酷に存在していた。

出久はその傷に思わず口を手で覆う。

 

「5年前の闘いの時に受けた傷さ」

 

「5年前って毒々チェーンソーの時に?」

 

「詳しいな、だがあんなチンピラにはやられはしないさ」

 

シャツを戻して笑顔を出久に見せるオールマイト。

 

「これは世間には公表していない事だ。平和の象徴は決して悪に屈してはいけないんだ」

 

オールマイトの言葉の重さに出久は黙って聞いてることしか出来ない。

 

「プロは何時だって命懸けだよ。とても個性が無くてもヒーローが出来るなんて言えないね」

 

明らかな拒絶。

それはオールマイトがプロであるゆえの言葉だろう。

 

「人の役に立ちたいなら警察って言うのもある。敵受け取り人なんて批判もあるがあれも立派な職業だし、ヒーローとの連携もキチンと考えられてるしね」

 

出久に夢を諦めろと言うオールマイト。

勿論、出久の夢は亀仙人によって鍛えられた為に最早頑として変わるなんてあり得ない。

しかし、憧れの人の言葉はある種、親や友人の言葉よりも遥かに重い。

それこそ天秤で測るのが馬鹿馬鹿しい程に重い。

 

「夢を見ることは悪いことじゃないが、現実も相応に見ないと」

 

オールマイトは立ち上がり、延びてる敵を一つ一つ丁寧にペットボトルに入れ始めた。

 

出久はその場を離れた。

出久の目からは涙が静かに流れていた。

 

 

 

 

 

 

●●●

ペットボトルに敵を入れたオールマイトは去っていった出久について少しだけ考えていた。

悪いことをしたとは微塵も思ってはいない。

どんなにヒーローを目指していても無理なものもある。

そう、自分がそうだった。

オールマイトも無個性の頃を思い出した。

7代目“ワンフォーオール継承者“の師匠に出会わなければずっと無個性のままだったろう。

勿論、出久に対して何も思わないわけではない。

しかし、5年前の闘いとそれに伴う代償のせいで夢物語にはほとほと疲れたのだ。

平和の象徴を辞めるわけでも力を継承させないわけでもない。

しかし、無個性だった自分を重ねて出久に無責任にヒーローに成れると言っても彼の人生を壊すだけだと思ったのだ。

 

ペットボトルに敵を全て入れるとオールマイトはその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、彼は気づかなかった。

たったホントに一ミリリットルにも満たない程の敵の体が道路脇にある用水路に流れていた事を

これはオールマイトのせいでも出久のせいでもない。

不運なだけだ。

しかし、この不運は必ず返ってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●●●

一人、道を歩く出久。

先程のオールマイトの一言が強烈に心に来たんだろう。

別に否定されるのは慣れてる。

しかし、憧れからの否定と知ってる人間からの否定は根本的に違う。

一人、涙を流しながら歩く出久。

その足取りは重い。

そんな出久に近づく人間がいた。

上鳴電気だ。

肩を叩き、明るく接触してきた電気に出久も少し驚く。

 

「電気、どうしたの?」

 

「帰りがてらブラブラ遊んでたんだよ。折角の休みだしな」

「そう・・・」

 

「どうしたんだよ?そんなに暗くなって・・・・・何時もの事だけど・・・」

 

「ちょっと!?」

 

電気からのまさかのカミングアウトに驚く出久。

顔には心外と書いてる程の反応である。

 

「僕はそんなに暗くないよ!」

 

「いやいや、毎日ブツブツ言ってるから!あれは見てて暗いとしか思わねぇから!」

 

「僕は電気と違って無駄に明るく無いだけだよ!!」

 

「無駄とはなんだ!?無駄とは!?」

 

少し、言い争う二人。

互いに互いを弄くりあう、その時の出久の顔は先程の暗さは薄れていた。

 

「真面目な話、何があったんだよ?」

 

「電気はさ、誰かから夢を否定されたことはある?」

 

電気に話す出久。

そこにはキチンと話して欲しいと言う出久からのプレッシャーもあり、電気も真面目に考える。

 

「あるぞ、それは多分誰でもあると思うぞ」

 

「そうだよね・・・ごめん、変な事聞いちゃって・・・」

 

「もしかして、ヒーローの誰かから言われたのか?」

 

「へ?」

 

電気の推論に思わず変な声を出す出久。

そりゃそうだ。

こんな推論になんて聞いてても達する人間はそういない。

 

「どうして?」

 

「だって、ほら、出久がいつも言われてるって勉強してる時に良く言うから、ここまで落ち込むってヒーローに言われるぐらいじゃないかと思って・・・」

 

電気の推理は物の見事に的中していた。

出久はそれに対して沈黙していた。

電気は出久の沈黙に対してこれから話を切り出すなんて出来なかった。

 

必然的に沈黙が長く続く状態の最中、近くの商店街から爆発音がした。

 

出久と電気はあくまでもヒーロー活動の見物として現場に行った。

 

そこには先程の液体敵に纏まり憑かれてるチンピラもとい爆豪の姿があった。

 

 

 

 

 

●●●

出久が電気と話してる間。

液体敵はどうやってオールマイトから完全に逃げるかを考えていた。

そんな事を下水道で考えながら、自分の体を回復していった。

そんな時に下水道に足音が響き渡る。

液体敵はその足音のする方向を見ると“変な奴“が立っていた。

 

“白くて不気味な奴“だ。

 

だが、自分とは明らかに違う存在に液体敵は全力で逃げまくり、たまたま道に出た時にたまたま近くを歩いていた爆豪に取り憑こうとしたのだ。

 

「おやおや、急に逃げるとは失礼ですね。まぁいささか推薦するにはお粗末でしたから良いでしょう」

 

“白くて不気味な存在“は一人、下水道を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

●●●

出久は電気と共に液体敵に取り憑かれてる爆豪を見ていた。

必死に抵抗しようと暴れまくる爆豪の二次災害でドンドンと現場は混沌と化していく。

「そんな、何であれが?」

 

「あれを知ってんのか?」

 

電気からの問いに出久は先程の事を全て答えた。

ただし、オールマイトの傷の事は伏せて

 

暴れる爆豪の目を見てとっさに足が動く出久。

電気は出久の手を掴み止めた。

 

「離して、電気!行かないと助けを求めてる!」

 

「バカ!お前が行っても役に立たねぇだろ!」

 

「それでも行かないと、誰かを助けるのがヒーローだから・・・」

 

出久の言葉に電気は手を緩めなかった。

しかし、出久に顔を近づけた。

 

「なら、俺も行く!俺だってヒーローになる!無茶するお前を助ける!」

 

電気の強い言葉に出久も頷いた。

 

 

出久はまず気弾を液体敵の目に目掛けて放った。

目を潰して視界を奪う。

しかし、相手は液体だからもって数秒だ。

当然、たかが数秒で事態は好転しない。

 

 

 

上鳴電気がいなければ

 

 

 

電気の超高速で一瞬緩んだ液体敵の拘束から爆豪を引っ剥がす。

それは電気でないと恐らく出来なかっただろう。

刹那的な時間で動ける電気の十八番の技だ。

爆豪を引っ剥がした電気はそのまま爆豪を近くにいたヒーローに渡す。

 

出久はそれを確認したら、戦線離脱をしようとした。

しかし、液体敵も直ぐ様に回復をして、出久の腕を取り込んだ。

 

出久の攻撃そのものが液体敵に効かないのは先程証明された。

 

肘まで取り込まれ、電気を含めた他のヒーローが突っ込みに行く。

 

しかし、どんなヒーローよりも早く突っ込んだヒーローがいた。

 

オールマイトだ。

 

出久の手を掴み、地面に思いっきり、最大限のパワーを持って拳を撃ち込んだ。

 

「DETROIT SMASH!!」

 

液体敵はまたもや四方八方に飛び散り、今度こそ完全にお縄を頂戴することになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●●●

一時間ぐらいの間、出久と電気はプロヒーローからありがたい説教を受けていた。

下手をすれば更に被害を拡大する所だったので勿論それは二人とも甘んじて受けた。

 

ただし、それと同時にあることも言ってくれた。

 

一番、最後まできつく言ってたプロヒーロー“デステゴロ“からの言葉だ。

 

「君達が今回やった事は決して許される事ではない。危うく自分の身も危険に晒すところだったんだぞ!・・・次はキチンと訓練を受けたプロになってからやるんだ!」

 

出久も電気もこの言葉に嬉しくなった。

プロヒーローからの激励だ嬉しくないわけではない。

まぁ、笑顔を見せたとたんに拳骨まで貰ったのは痛かったが二人とも親身になって怒ってくれたヒーローには感謝こそあれ、怒りなんて感情は全く無かった。

 

 

二人で帰り道を歩いている最中、爆豪が二人の前にやって来た。

語る言葉はやれ何で助けたとか、お前の助けなんか無くても良かったとか、俺を見下そうとか、何とも一体どういう教育をされたらこんな酷い人間になるのかと言うような内容だった。

 

電気と爆豪はこれが初対面だったから、電気も爆豪に対して話そうとしたら、金髪モブと暴言を受けた。

 

結局、言いたい放題言った爆豪はそのまま去っていったが二人、特に電気は爆豪に対してキレていた。

 

「何だ?あの糞を下水で煮込んだ性格は!?良くあんなチンピラと付き合えるな出久」

 

「僕もそろそろ辞めたいけど、家が近くだから否応なしに係わっちゃうんだよね」

 

「家に塩を撒いて、お祓いして貰え!」

 

電気の怒りの言葉に出久は黙って聞いていた。

別に思うところが無いわけではない。

ただ、それほどまでに爆豪のやって来た事は重いのだ。

 

 

そんな中、オールマイトが筋骨粒々の姿でやって来た。

 

「いたいた!少年たち!!先程はプロヒーローとして礼を言いたいありがとう!」

 

「お、お、オールマイト!!?」

 

オールマイトの登場に驚く電気。

出久はさっき個人的な話もしたから現れた事に関してはあまりだった。

 

「君達、二人には色々と思い出させて貰ったよ。危うくヒーローとは名ばかりの木偶の坊になっていたよ」

 

「でも、僕達は結局、迷惑を掛けました」

 

「俺達、体が動いて・・・・」

 

二人の言葉にオールマイトは待っていたとばかりに答える。

 

「そうだ!二人とも体が動いてたんだろ?多くのヒーロー達の中でも伝説となっている人達は免許なんて物が無かった時から逸話を多く残してる。『体が勝手に動いていた』とね。君達もそうだったんだろ?・・・・・・・・君達はヒーローに成れる」

 

現在の日本最高のヒーローからの激励は二人の涙腺を崩壊させた。

それほどまでにこのヒーローからの言葉は優しく大きいのだ。

 

オールマイトは筋骨粒々の姿から鶏ガラの姿になった。

電気は驚いていたが、オールマイトは出久にやった説明と同じ説明を電気にもやった。

傷の事も含めて・・・・

 

「緑谷少年、君に私からの提案があるんだが?」

 

「何でしょうか?」

 

「私の個性を引き継ぐ気はないか?」

 

「え?」

 

オールマイトの説明は常軌を逸していた。

個性を引き継ぐなんてそんなぶっ飛んだ話はない。

しかもそれがまるで聖火の如く引き継がれてきたなんてのは個性史始まって以来の大事件だ。

 

出久は驚き、電気も驚いた。

 

「何で、僕なんですか?力や飛び出したなら電気でも・・・」

 

「俺は要らねぇぞ」

 

「へ?」

 

出久の疑心に電気が率直に答える。

 

「な、何で?」

 

「だって俺、個性あるし、亀仙流あるし、もう要らねぇよ。宝の持ち腐れはごめんだよ」

 

電気は要らないのだ。

彼にとって力とは身近な物である。

自らの個性と亀仙流。

この2つで電気はやっていくと誓ったのだ。

今さら、新しい個性なんてのは興味はあるが欲しくはない。

 

「緑谷少年、今は整理する時間が欲しいだろうと思うから3日後に返事が欲しい、出来るか?」

 

「わ、わかりました」

 

オールマイトはその場から去っていた。

残った出久と電気は互いに顔を見合わせた。

 

「すげぇじゃねぇか!出久!オールマイトの個性だぜ!貰っとけよ!」

 

電気の言葉に出久は戸惑う。

 

「なんだよ?」

 

「僕で良いのかなって、それに電気だってあの時一緒に・・・」

 

「俺は要らないって・・・だって俺の憧れはじいちゃんだからな。亀仙流と自分の個性でヒーローになってやる」

 

出久にとって電気の言葉は眩しかった。

自分の人生をきっぱりと決められる電気は文字通り眩しかった。

 

 

 

 

 

 

●●●

あれから、互いに別れて家に帰り、出久は柔軟を終え、オールマイトの事を考えてた。

オールマイトからの誘いは嬉しかった。

自分の憧れてきた人からの誘いだし、自分の無個性をどうにか出来る。

きっぱりと直ぐに受け継ぎますと言いたいのに言いたくない自分がいることに出久は戸惑っている。

 

悩んでも答えが出てこず、出久はとある人に電話を入れて海岸に向かった。

 

 

●●●

 

海岸の浜辺の街頭の下のベンチでエロ本を読みながら、情けない顔を晒してる亀仙人。

いつも通りの平常運転にやって来た出久はどこか安心した。

 

「師匠!」

 

「おお、来よったか?」

 

出久は今日会った事全てを話せなかった。

オールマイトの秘密はかなり重大でとても気軽に師匠とは言え話せる内容ではなかった。

必死に自分の中で掻い摘まみながら、話した。

亀仙人も読心術が使えてそれを理解した上で出久の話を聞いていた。

 

「ようはそのテレビゲームの主人公が力を引き継ぐことが出来て何も問題がないのに引き継ぎたくないと言ってる。そんな事があるのか?と言う事じゃな?」

 

「そうです」

 

亀仙人はエロ本を懐に入れて、財布を出した。

財布を開いて中からあるものを取り出した。

 

一枚の写真だ。

 

そこには、力の大会で一緒に戦ったメンバー(フリーザを除いた)全員と撮った写真だ。

 

「これは初めて見せるな」

 

亀仙人はその写真を出久に渡した。

出久は初めて見る写真をマジマジと見ていた。

 

「師匠、この人達は?」

 

「ワシの大事な仲間達じゃ、今は離れて違う場所にいるが、その内の山吹色の胴着を来た三人の内、二人はワシの弟子で、もう一人はその弟子の息子じゃ」

 

出久は山吹色の胴着の三人

 

“悟空“

 

“クリリン“

 

“悟飯“

 

を見た。

 

「じゃが、その二人はワシの流派ではあるがワシの流派を広めてはおらん」

 

出久はその言葉を聞いて疑問に思った。

どうして亀仙流なのに自分の流派を広めないのか?

心の底から疑問に思った。

 

「どうしてなんですか?」

 

「必要ないからじゃ、ワシの大事な教えはキチンと弟子達の中にある。これからもあり続ける。ワシのような古い人間の教えなんて永遠に続くべきではない、弟子達には弟子達のやり方がある、ワシはそっちをこれからの世代に教えて欲しいのじゃ」

 

出久は言葉の意味が分からなかった。

継承とは全てを継承するから継承なのだと思った。

今もそう思っている。

 

「出久よ、大事なのは力ではない。何を受け継ぐかじゃ、そしてそれを決めるのは出久自身じゃ」

 

亀仙人の言葉に出久は答えが出たのか、爽やかな表情で亀仙人を見ていた。

 

亀仙人も出久の表情に満足したのか、再びエロ本を読み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●●●

 

三日後の浜辺に出久とオールマイトはいた。

今日は亀仙流の修業があるが、亀仙人に話して特別に今は休憩を貰っている。

 

因みに亀仙人と電気は互いにこの事を自分なりの方法で知ってるので離れた。

 

「それでは緑谷少年、答えを聞かせてくれるかい?」

 

「はい!」

 

「私の個性を引き継ぐ話なのだが?」

 

「僕は“引き継ぎません“」

 

出久の言葉にオールマイトは極めて平常にそれを受け入れる。

 

「そうか、理由を聞いても良いかな?」

 

「最初は分からなかったんです。継承するの意味が・・・でもある人から教わったんです。大事なのは力だけじゃないって、それを選ぶのは僕自身だって」

 

「そうか・・・」

 

「僕は自分の力でヒーローになります。ヒーローになって“貴方の意思“を継ぎます。それが僕の“継承“です」

 

出久の言葉にオールマイトは感慨深い物を感じた。

それは、自分が三日前に勝手にそうだと思い込んでいたヒーローを目指す若者の言葉ではなく、若者のヒーローの言葉だったからだ。

 

「君は雄英に入るのかな?それとも士傑かな?」

 

「雄英を目指してます!」

 

「そうか、来年からは私も雄英の教師として勉を振るう事になっている。君も・・・・上鳴少年も二人とも待ってるよ」

 

「はい!」

 

オールマイトは去っていった。

 

浜辺に立つ出久の姿は誰よりも眩しかった。

“無個性“でもヒーローを目指す姿は“個性“飽和社会に置いて誰よりも気高く見えるだろう。

 

ここからが出久の本当の苦難の道である。

 

けど大丈夫であろう。

 

それは出久が亀仙流で平和の象徴を継承すると誓ったから・・・・・

 




と言うわけで、“ワンフォーオール“の継承は無くしました!!
色々と批判はもう既に来てます。
原作の意図を理解してないのでは?とか話の重要な部分はどうするの?とか
けど言わせて貰いますが、僕は結構初期から“ワンフォーオール“の継承は無くそうと考えてました。
理由としては、継承してようがしてまいがあまり重要な位置に存在して無いからです。
例えばドラゴンボールのドラゴンボールは願いを叶えるから作中で重要な位置にいましたが“ワンフォーオール“ってせいぜい“オールフォーワン“との因縁が強いだけで、死柄木との関連が無かったので無くしました。
死柄木はどっちかって言うとヒーローって言う存在との因縁が強かったですしね。
それにオールマイトも無下にするつもりは一切無いです。
出久の憧れはあくまでオールマイトです。
オールマイトに憧れてオールマイトの魂を受け継ぐのが原作を読んでて重要だと思ったので、そこはこれからも変えずに行きますが、オールマイトの力は余分と感じてこうしました。
原作者も元々は個性の引き継ぎをさせないつもりだったようですし、この作品はこのまま力の継承は無しで行きます。

それから、作中に登場した爆豪なのですが、私個人の意見でございますが、爆豪は神野事件の後の喧嘩まで大嫌いでした。
あの喧嘩の後で漸く自分でも納得して読めるようになりましたが、基本的には大嫌いです。

いじめをしてそのまま唯我独尊を進んでる人間が心の底から嫌いですので少なくともこの作品では最低でも入学してすぐのチーム戦が終わるまではこんな扱いです。

それから、書いててもう一回調べたら電気と出久の出身地が遠いと気が付きました。
この作品ではそういう裏設定はなるべく無視します。
すみません。(方言を使うキャラは別)

二人とも静岡か神奈川の生まれ育ちと考えてください。


今回の話は恐らく批判の嵐になるような気がしますので全て受け付けますので気軽にお願いします。
また基本的に私は来たコメントは次の話のネタバレになるような返信をしなければいけない場合以外は直ぐに答えますので気軽にお願いします。

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