プリキュアDOOMSDAY   作:宇宙とまと

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第17話【南シナ海航空戦前編】

 【南シナ海航空戦前編】

 

 ~1943年12月9日、6:00。北緯22度9分、東経119度4分。

  南シナ海(台湾高雄市南西100キロ)~     

  第五航空戦隊、旗艦《瑞鶴》

 

 後に、世界初の航空母艦同士の航空戦として、歴史に名前が残る『台湾南西沖航空戦』は、どちらが先に敵艦隊を発見するかという『偵察戦』から幕を開けた。

 第五航空戦隊(五航戦)は空母《瑞鶴》、《翔鶴》から艦上偵察機《二式艦上偵察機》を2機と雷撃機《天山》を各3機が。

 他に重巡《利根》と、近藤信竹中将の第二艦隊から支援に廻してもらった軽巡《鈴谷》、《熊野》から水上偵察機各2機が、南シナ海に向け偵察に発進した。

 更に、台湾南部の飛行場からも《一式陸上攻撃機》4機と、高雄港からは日本が誇る傑作飛行艇《二式飛行艇》2機も偵察に向かった。

 

 一方の英極東海軍も空母《インドミダブル》、《アークロイヤル》から艦上攻撃機《バラクーダー》各2機と、フィリピン中部の未だ爆撃を受けていないパナイ島と、セブ島の飛行場から《B-17》爆撃機数機が偵察に向け発進した。

 

 

 ~同日、6:50~

 

 輪形陣の南側に居た高速戦艦《榛名》の13号対空レーダーが、北上して来る航空機を探知した。距離は艦隊の南100キロで、編隊では無く偵察機と推定された。

 貝塚武男大佐(瑞鶴艦長)

「恐らくセブ島かパナイ島から離陸した《B-17》と思われます」

 原 忠一少将(五航戦司令)

「直ちに迎撃機を出してくれ」

 即座に岸部少尉と横島一等兵曹の《零式》戦闘機が、発進し迎撃に向かった。

 

 

 ~同日、7:10~

 

 横島

「岸部少尉! やはり《B-17》ですね」

 岸部

「上空から攻撃する。《B-17》は重武装だ。気を付けろ」

 《B-17》も迎撃機に気付いたのか、高度を6000から上昇させ回避しようとする。

 《零式》戦闘機は高度6000~7000を超えると、エンジン出力が低下して上昇速度が落ちる。

 岸部と横島は何とか《B-17》の上空に回り込み、攻撃を開始したが、《B-17》も12.7ミリ機銃12門の重武装で激しく撃ち返して来た。

 《零戦》は20ミリ機銃を何発か《B-17》のエンジンに命中させたが、それでも尚、《B-17》は煙を出しているにとどまり、悠々と飛び続けている。

 

 横島

「エンジン不調、離脱します」

 《B-17》の12.7ミリ機銃による攻撃を冷却器にでも被弾したのか、プロペラの回転がおかしくなっている。

 岸部

「離脱しろ」

 岸部は、今度は左上方から銃撃を加え、ようやく《B-17》のエンジンから黒煙が噴き出た。

 しかし、墜落したり炎上したりする事も無く飛行している。やや高度を下げつつ、積雲の中に退避しようとしている。

 更に追撃しようとしたが、20ミリ機関砲弾が、もう残り少ない事に気付き撃墜を断念した。

 岸部

「空飛ぶ要塞にふさわしい重防御だな。早く新型戦闘機を配備して貰わないと、かなりの難敵になるぞ」

 

 《B-17》から通信が発信された。

「日本艦隊発見。位置、台湾高雄南西50海里。正規空母2、小型1、戦艦2、巡洋艦4、駆逐艦10以上。大型空母は艦載機発進準備中、艦隊針路南西」

 英極東艦隊は、その通信を受信し、即座に攻撃隊の出撃を命令した。

 《インドミダブル》からはグラマン社製《マートレット》15機、フェアリー社製《バラクーダー》雷撃機15機。《アークロイヤル》からは《マートレット》18、《バラクーダー》雷撃機18機の合計66機が出撃した。

 《マートレット》は米海軍の《ワイルドキャット》戦闘機を英国に輸出したバージョンで、性能に違いは無く、速力530キロ。武装は12.7ミリ機銃4丁で、これも米国版と同じだ。

 

 

 ~同日、8:30~

 

 《B-17》に発見された第五航空戦隊は、まず第一次攻撃隊を空中に退避させ、索敵機から発見の報告が入り次第、攻撃に向かわせる事になった。

 

 

 ~同日、8:45~

 

 英空母攻撃隊が日本艦隊上空に到達したが、彼らを待ち受けていたのは、予想を超える多数の戦闘機だった。

 

 ショーン少佐(攻撃隊戦闘機隊隊長)

「艦長が敵の戦闘機は、昨日のマニラ空襲で多少は消耗しているだろうと言っていたが、どう見ても、そうは思えないぞ」

 日本軍の戦闘機は50機以上は居る。

 

 ショーン少佐は知る由も無いが、聯合艦隊は艦隊の小型空母に搭載する飛行機のほとんどを戦闘機に変更する事に決定し、一部の偵察機や対潜哨戒機を除き、爆撃機と雷撃機を廃止する方針を決定していた。

 五航戦の小型空母《瑞鳳》は戦闘機20、攻撃機15から、戦闘機38、偵察機3に変更されていた。

 戦闘機は爆撃機などよりは小型なので、戦闘機だけを搭載する場合、戦闘機以外を搭載するより、搭載機数が多くなる。更に爆弾庫や魚雷庫も廃止するので、空襲時に誘爆のリスクを下げる事も可能になる利点もある。

 

 英国の33機の戦闘機は、たちまち優勢な敵戦闘機隊から激しい攻撃を受ける。その行動も一糸乱れぬ動きで英搭乗員を驚かせた。

 ショーン

「くそっ! 誰だ、日本の戦闘機、《ジーク》(零戦)のレベルはイタリア空軍並だと吐かしたバカは!」

 《マートレット》より30キロ以上は速度が速いとショーンは感じた。恐らく《零戦》に新型のエンジンを搭載し、性能を向上させた機体だと判断した。

 

 周囲を見ると、《零戦》が1機落ちる間に《マートレット》は4機から5機が落ちて行く。 

 ショーン少佐も目についた敵機を攻撃するも、敵機は急旋回し回避していく。

 ショーンは新たな敵を探そうと愛機を飛ばし、それを見出した。

 ショーン

(あいつはスピードが出ていない? 銃撃されてエンジンがやられたか?)

 一機の《零戦》が銃弾を受けて損傷しているのか、ゆっくりと離脱しようとしているのが見えた。

 

 ショーン

「やってやる……!」

 その瞬間、ショーンは何か嫌な気配を感じた。

 周囲を確認しようと僅かに顔を動かした瞬間に、後方から20ミリ機関砲弾が操縦席に突入し、ショーンの後頭部に命中した。

 ショーンは熱い衝撃を感じた瞬間に意識を失い、うめき声を上げる事も無く、機体ごと南シナ海に落ちて行った。

 その間に艦上雷撃機《バラクーダー》は、3隻の空母――中でも大型空母《瑞鶴》、《翔鶴》――の2隻に向けて進撃したが、20機近くの戦闘機に阻まれた。

 

 《バラクーダー》雷撃機は、4月に配備が開始された最新鋭の艦上雷撃機の筈だ。最大速力は時速370キロを誇っていた。

(ちなみに、7年も前に初飛行した日本帝国海軍の《九七式艦上攻撃機》の最大速度は377キロだ。つまり日本軍の7年前の旧式機と同程度の最高速度しか出ない)

 無論、日米の新型雷撃機に比べ70キロ以上は低速だ。最新鋭雷撃機どころか、完全に周回遅れの駄作機でしかないとの事実を証明してしまった。

 《バラクーダー》は、もう魚雷攻撃どころか戦闘機から必死に逃げ回るしかなくなっていた。

 

 零式搭乗員

「おいおい、あいつら本当に新型機かよ」

「《バラクーダー》ってのは、干物にするカマスって魚と同じらしいぞ。今日は美味い干物が、たっぷり食べられるぞ」

 その日の戦闘は、後年、『南シナ海の干物狩り』という英国にとって、不名誉極まりない名前を付けられてしまう。

 無論、魚雷は一本も命中せず――投弾前に大半が撃墜された――、10機ほどが辛うじて攻撃をかいくぐり逃走に成功した。

 戦闘の終盤、撃墜された《マートレット》戦闘機が操縦不能で、戦艦《金剛》の左舷甲板に墜落。機銃座一基が破壊され、乗員約10名が死傷し黒煙が上がった。(すぐに鎮火された)

 更に撃墜された《バラクーダー》雷撃機の破片で、《雪風》の乗員2名が軽傷を負った。

 

 

 

 

 余談 サリヴァン兄弟の悲劇(史実)

 

 

 1942年(昭和17年)11月13日 ガダルカナル島を巡る攻防戦の最中、第3次ソロモン海戦で、《アトランタ》級軽巡洋艦《ジュノー》は、酸素魚雷が命中し大きな損傷を受け、後方に向け離脱を開始しました。しかし、数時間後潜水艦《伊-26》

の魚雷3本を被弾して轟沈。生存者も最初は100名ほどいましたが、サメや飢えで次々と死亡し、最終的に生還したのは10名でした。

 

 《ジュノー》には、アイオワ州出身者のサリヴァン兄弟5名が勤務していましたが、全員戦死しました。その後同様の悲劇を避ける為に、兄弟や近親者を同じ艦に配属する事は禁止されました。陸軍でも兄弟全員が戦死した場合、残った一人は実家断絶を避ける為に、前線勤務から外される事になりました。

 

 

 ちなみに、このエピソードは某ハリウッド映画の構想に繋がったそうです。(監督は宇宙人と少年が遭遇する映画の監督)

 




後編は明日投稿予定
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