【新・無敵艦隊】
〈第33・2任務艦隊(TF・タスクフリート)〉
司令官 :ヘンリー・ニューマン少将
空母 :《レキシントン》、《エンタープライズ》
重巡洋艦 :《ノーザンプトン》、《シカゴ》、《チェスター》
対空巡洋艦:《アトランタ》
駆逐艦 :12隻
〈第33・3任務艦隊
司令官 :フランク・ジャック・フレッチャー少将
空母 :《ホーネット》、《ヨークタウン》
重巡洋艦 :《ソルト・レイク・シティー》、《ルイスビル》、《アストリア》
対空巡洋艦:《リノ》
駆逐艦 :12隻
〈第33・1任務艦隊 (太平洋艦隊主力〉
司令官 :ハズバンド・キンメル大将直接指揮
戦艦 :《オクラホマ》、《ネヴァダ》、《アリゾナ》、《ペンシルヴァニア》
《テネシー》、《カリフォルニア》、《ウェストヴァージニア》
《メリーランド》
重巡洋艦:《サンフランシスコ》、《ニューオーリンズ》、《バルチモア》
《ミネアポリス》
軽巡洋艦:《グリーブランド》、《コロンビア》、《セントルイス》、《ホノルル》
《フェニックス》
護衛空母:《トラッカー》、《カード》、《クロアタン》、《ブレトン》
駆逐艦 :25隻
~1943年12月7日、午後5時 北緯8度30分、東経173度50分。真珠湾より南西1000キロ~
TF33・3、航空母艦《ヨークタウン》
12月5日、8時にハワイ真珠湾を出撃したTF33・3は針路を南西に転じ、6日夕刻にはオアフ島南西1900キロ、マーシャル諸島北東400キロに接近していた。
ジョンストン環礁は1807年に英装甲巡洋艦《コーンウォリス》の艦長が発見し、その艦長の名前が由来となっていた。
1898年にハワイ王国が米国に併合されて以来、米国領になり、1934年には海軍基地が設けられ、その後、小規模ながら航空基地も設置されていた。
空母《ヨークタウン》は、6年前の1937年9月30日に竣工した。
排水量19500トン、全長247メートル、速力32.5ノットで、搭載できる航空機は資料により、若干の違いがあるが90機から100機。
30ノットを超える高速空母としては《レキシントン》、《サラトガ》に続き3隻目となるが、《レキシントン》、《サラトガ》は元々、巡洋戦艦として建造が開始され、ワシントン軍縮条約で中止となり、その後、航空母艦に変更された。
《ヨークタウン》は、アメリカ合衆国では初めて空母として建造された本格空母となる。(低速空母《レンジャー》を除く)
《ヨークタウン》の後方2キロには、アトランタ級対空巡洋艦《リノ》が続いていた。
《リノ》の後方2000メートルには、1941年10月に就役した《ヨークタウン》の姉妹艦《ホーネット》が続いている。
《ヨークタウン》、《ホーネット》は、数か月前までは大西洋で英国に向かう米輸送船を護衛したり、カリブ海で訓練したり、また、アメリカの民間船にドイツの《Uボート》が不用意に接近しない様、監視しする任務に従事していた。
9月に米本土に戻り、整備と休養をしていたがオーガスタ号事件が起き、急遽対日戦に備える為にパナマ運河を超えて真珠湾に向かった。
《ヨークタウン》左舷中央にある20ミリ機銃の中で、機銃指揮官のケリー上等兵曹は、部下のノイマン一等兵曹とラムソン上等水兵と夕日を眺めながら雑談をしていた。
ケリー
「平和な内に拝める最後の夕日だ。よく見とけよ」
ラムソン
「ジャップも夕日を眺めているんでしょうかね?」
ケリー
「そうだろうよ。今日、夕陽を見たジャップ野郎の何人かは、生涯最後の夕日となるんだろうよ」
ノイマン
「日いずる国の天子、日没する国の王に、ご挨拶申し上げます」
ラムソン
「どういう意味です? なんか言い回しが日本とかアジアみたいですが?」
ノイマン
「今から1300年ほど前、日本のショートク・タイシ(聖徳太子)が、当時の中国の皇帝に送った手紙らしいですよ」
ケリー
「日本人も、なかなか味な真似をするな。ノイマン、お前、昔、日本に住んでいた事があるのか? それとも日本人に知人でもいるのか?」
ノイマン
「叔父が大西洋艦隊参謀なんですが、昔、アジア艦隊の駆逐艦の艦長だった時に、親善訪問した事があるそうで日本に詳しいんです」
ラムソン
「今度は日昇る国アメリカが、日の沈む国、日本帝国に挨拶しながら、ぶっ飛ばすんですね」
ケリー
「ガハハハハ、そういうことだぜ」
他の乗員も夕日を眺めながら、日本の国旗の日の丸を夕日に例えて、日本を小馬鹿にし、『最後の平和な夕日』を楽しんでいた。
一方、艦長のフレデリック・シャーマン大佐と飛行長は、実りある会話をしている。
飛行長(ヨークタウンの搭乗員の長)
「50キロほど南に敵機らしい反応を捉えたのですが、こちらには気付きませんでしたね」
シャーマン艦長
「マーシャルに配備された偵察機か水上飛行艇だろう」
今しがたレーダーで捕捉した日本機は艦隊に気付かなかったが、既に昨日から何度か艦隊の近くで、潜水艦らしい電波を捉えている。
ちょうど対潜哨戒から戻った艦上攻撃・偵察機のグラマン《TBFアベンジャー》が、着艦する45分前に艦隊前方に潜水艦らしい影が目撃されたので、確認に向かった。
しかし、今回は乗員が鯨と見間違えたらしい。
《アベンジャー》は、昨年4月に性能が低すぎた《TBDデバステーター》(1)から配備が更新された。
《アベンジャー》は時速438キロメートル、魚雷もしくは500キロ爆弾1発を搭載できる。機体重量は7トンあり、非常に重いが故障する事は少なく、頑丈で撃墜されにくい。
爆撃機はダグラス《SBDドーントレス》を搭載している。
本来なら新型の《SB2Cヘルダイバー》(2)を配備する筈が、《ヘルダイバー》は試作機が完成してから、度々、事故やトラブルを繰り返し修正が繰り返されていた。
漸く、まともな量産機が完成したのは先月で、向こう数か月は《ドーントレス》を使い続ける必要があった。
《ドーントレス》も、やや旧式といえ爆弾454キロを搭載可能で、頑丈で故障が少ない名機として知られている。ミッドウェーで『魔の5分間』をやってのけたのは、この《ドーントレス》だ。
(《彗星》艦爆は、その《ドーントレス》より150キロも早い事は、未だ知られていない)
航空参謀
「攻撃機と艦爆は良いとしても、戦闘機は新型機が欲しいですね」
シャーマン大佐
「しかし、空母で使うのは危険な戦闘機を配備するわけにはいかんからな」
数年前、米海軍は新型艦上戦闘機の試作を航空機メーカーに求めた。
その中でチャンスボート社が完成させた試作機は、初期段階で時速650キロ以上を記録した。
軍は大喜びで制式採用を決定した。2000馬力の強力なエンジンのお陰で、大きい機体には余裕があり、12.7ミリ機銃6丁の他に対地ロケットや爆弾を900キロも搭載可能で、戦闘機相手の戦闘だけでは無く、爆撃任務なども出来る万能機のはずだった。
しかし、航空母艦での運用試験を開始した途端、致命的な欠陥が明らかになった。
《F4Uコルセアー》戦闘機は、操縦席から前方の視界が悪い事が発覚した。つまり、着艦時に飛行甲板が良く見えず、また、着艦時に失速しやすい欠点も判明した。
空母への着艦は、現代でも針に糸を通す技量が必要とされる。搭乗員の中でも最も優秀な者だけが、空母艦載機搭乗員になれるのだった。
《コルセアー》は空母では危なくて使えないため、陸上航空基地で使用される事になった。
海軍上層部は慌てて次点の戦闘機を制式採用。しかし、前線に配備されるのは早くて来年初頭になる。
そんな訳で、米海軍は1940年に採用された《F4Fワイルドキャット》戦闘機を当面の間、使わざるを得ない。
シャーマン大佐
「敵の戦闘機(零戦)は機体形状から恐らく、速度や上昇速度より低空での格闘戦を重視した機体だと思う。味方搭乗員は格闘戦の挑発に乗らず、一撃離脱に徹するべきだ」
航空参謀
「1対1では戦わず、必ず2機から3機の《ワイルドキャット》で敵機に対抗する様に指示を出しています。十分に敵戦闘機に対処か……」
言いかけた時に通信長がやって来たので、二人は会話を切り上げた。
~空母《ヨークタウン》甲板~
ラムソン
「明日か明後日に戦争が始まったら、クリスマスまでには帰れるかな?」
ケリー
「クリスマスまでに帰れると言われて、そうなった事が無いそうだぜ」
ノイマン
「第一、もうクリスマスまで20日も無いぞ。日本軍が弱くても流石に無理さ」
ラムソン
「今年は流石に無理ですよ。来年……1944年のクリスマスならどうです?」
ノイマン
「来年のクリスマスか。それなら、あるかも知れんな」
ケリー
「開戦初頭の戦いで、味方が大勝ちすれば可能かもな。味方が大勝ちしても、流石に直ぐにお手上げにはならんだろうから、半年くらいは連中も戦うだろう。うーん、そうだなあ、来年の10月位までに戦争が終わればクリスマスまでには帰れるんじゃ……」
ビービーとマイクの音声が響いた。会話したりタバコを吸ったりしていた兵士が動きを止め、スピーカーの方に視線を向ける。
「3分後に重大通告がある。各員は手を休め、静聴するように」
その放送は2度繰り返された。
3分後、決戦の火蓋を告げる放送が全艦に送られた。
シャーマン大佐
「艦長より通達する。先ほど海軍作戦本部長ハロルド・スターク大将より通達があった。米東部標準時7日正午を期して、合衆国政府は大日本帝国に対し国交断絶、及び両国が戦闘状態に入った事を宣告する。その後、数時間以内に大英帝国も、日本帝国に対し宣戦する。各員は各々の部署で、アメリカ合衆国の為にベストを尽くす事を期待する」
一瞬の静寂の後、乗員からは歓声が上がった。
「オーガスタの仇討ちだ!」
「日本野郎をマーシャル諸島の海に蹴りこんでやる」
「それじゃ腹の虫がおさまらん、月まで蹴とばしてやろうぜ」
ノイマン
「日本や中国じゃ、月には伝説の白兎が住んでいると言い伝えがあるそうだ」
「へぇー、アジア人の風習は面白いな。月の穴ぼこ(クレーター)を兎に例えている訳か」
ノイマン
「月まで蹴とばされた日本人が、うっかり月の兎の尻尾を踏んでしまって……」
「兎が怒って日本兵を追いかけまわすってか。傑作だぜ」
ノイマンの軽口に、周囲からは歓声と笑い声が沸き起こる。確かに、兎には追いかけられる事になる。月の兎では無く桃色兎により追いかけられ、恐怖のどん底を味わう事になる。
しかし、被害者は『月まで蹴とばされた日本兵』では無く《ヨークタウン》のアメリカ兵なのだが、能天気に浮かれる彼らは、未だ、そのことを知らない。
1 史実ではミッドウェー海戦で壊滅的な被害を出し、実戦部隊から姿を消した。艦これでも装備品として登場しているが、図鑑を埋める以外には全く利用価値が無い
2 直訳すれば地獄の急降下爆撃? 《大和》等の日本軍艦を地獄に送り、故障で味方搭乗員が少なからず地獄へ行った。更に、終戦後メーカーも地獄に旅立った(倒産)
次回投稿未定です。年末は艦これ冬イベントがあるので、年明け以降になるかも。