破竹の勢いの語源は、確か三国志末期の呉攻撃の時の逸話。そういえば既に「ことば検定」に出ていた記憶が。
2月18日 午前6時
南鳥島(マーカス島)は、北緯24度17分、東経153度58分にある絶海の孤島で、本土からは南東に1500キロ離れている。
現在は日本最東端として、地理の授業で名前が出る事もある。ちなみに戦前は委任統治領の、ミリ環礁(東経172度)が日本最東端となる。
面積は僅か1.52平方キロメートルに過ぎず、1933年に民間人は全て退去している。島には気象観測所もあり、800人の守備隊が配置されていた。ただし、一般向けの気象発表は開戦直後に中断されている。米側に天気状況を知られるのを防ぐ為で、史実では終戦数日後まで継続された。
狭い島なので戦闘機や爆撃機の配備は無く、10機程度の《九六式陸攻》を改造した偵察機(対潜哨戒も兼務)と《九四式水上偵察機》4機が配備されているに過ぎない。
その日も朝予定通りに偵察機が発進の為、滑走路に移動していた。米空母が真珠湾を出た事は知っていたが、どうやら本土に向かったらしい事から、基地の中はのんびりした雰囲気が漂っていた。
偵察機がゆっくりと、滑走を開始する。間もなく離陸という時機長は、低空を向かって来る鳥に気付いた。
よく見ようと意識を集中させた時、その『鳥』が12.7ミリブローニング機銃をぶっ放して来た。機長は叫ぶ暇も無く、ボロ雑巾みたいに穴だらけになって機体諸共消し飛んだ。
《サラトガ》《エセックス》から発進した、60機の攻撃隊は超低空から南鳥島
に襲い掛かり、マーシャルの鬱憤を晴らした。多くの兵士は未だ就寝していたが、宿舎に機銃や爆弾をぶち込まれてそのまま永眠となった。滑走路や航空燃料の入ったドラム缶や、対空砲も徹底的に銃爆撃を受けた。
午前7時20分 マーカス島北東400キロ
《空母《サラトガ》に着艦した、ロイ・オルスター少佐が戦果報告を行っている。
「提督、作戦は大成功です。マーカス島は今後当分使用できないでしょう。航空機は全て破壊し、滑走路も使用不能です。更にガソリンタンクや、航空燃料入ったドラム缶も炎上させました。更に中型貨物船一隻を爆撃で転覆させ、小型哨戒艇数隻を撃沈しました」
ハルゼー中将は、キンメル大将より何処を空襲するかについては、一任されていた。もっとも、航空母艦の安全を最優先にという但し書き付きだが。マーシャル諸島にはプリキュアが配備されていると考え、艦隊保全の点からも危険と判断し、一計を案じた。
真珠湾から北東に進み、本土に戻るように偽装した。潜水艦に発見されたので、その日の夕方までは北東に進んだ。日没後に北に転進し、ミッドウェー島を迂回して西に進み17日午後には、マーカス島北東に達した。
ハルゼーは最初、『東京都』を空爆すると宣言し、参謀たちは仰天し反対した。しかし理由を聞いて納得した。南鳥島は小笠原村に編入されており、間違いなく東京都に属する。
「味方の損害は」
「皆無です。敵の対空射撃すらありませんでした」
「少しは手加減したか」
「はい宿舎の中の一つと、通信塔及び気象観測所を攻撃しないようにしました」
オルスターは、出撃前に指示された時怪訝な表情を浮かべたが、理由を知らされると二つ返事で了承した。
「例のお土産は、きっちりと配送しました」
ハルゼーが良くやったと、少佐を労った時参謀達が、第2波攻撃を具申して来た。
更に、護衛巡洋艦部隊の、トーマス・キンケード少将から重巡4隻を派遣して、マーカス島に艦砲射撃を行ってはどうかとの意見具申があった。
「諸君の敢闘精神は素晴らしい。敵が帝国海軍だけなら俺もさらに攻撃をするだろう。だが今回は見送ろう。何時プリキュアが現れるかもしれん。空襲なら未だしも艦砲射撃だと、重巡がマーカス島に到着するのに最低でも4時間はかかる。日本人やプリキュアを吹っ飛ばしたい気持ちは判るが、今回は自重してくれ」
プリキュアが存在しないのなら、一旦艦隊を東に退避させ、攻撃はもう無いと判断した日本側が、のこのこと南鳥島に救援の船団なり、艦隊なりを派遣して来た所を空襲し更に戦果拡大を狙うという積極策もあるのだが。
ここにいる空母は、緒戦で正規空母を3隻撃沈され、《ヨークタウン》が修理中の現在宝石よりも貴重な存在だ。これ以上危険に晒す訳にはいかない。《エセックス》級の新型空母が続々と、完成して来る年末までは、耐えがたい時を耐える事を求められるだろう。
「帰る時に、ウェーク島をついでに空襲してはどうでしょうか」
「私も賛成します。ウェーク島は戦闘機も配備されていますが、数は15機前後の様です。撃破する事は困難ではありません」
オルスター少佐と、参謀長のブローニング大佐が帰還途上のウェーク島空襲を提案した。
「ウェーク島か、確かにここで一度叩いておいた方が良いかもしれない。が、マーシャル諸島からプリキュアがウェーク島に、援軍に向かう可能性もある」
今度はハルゼーも迷っている風に、30秒ほど窓の外を眺めながら考えている。
「ウェーク島も空襲しよう。ただし、プリキュアが向かったらしい兆候が有ったら即座に中止する」
直後艦隊は直ちに、反転退避を開始した。
「置き土産を見た時の、プリキュア……あの桃色兎がどう反応するのか、見れないのが残念だが」
2月22日
リコ
「皆諦めないで! 必ず助かるから!」
南鳥島空襲により被害甚大との一報は、文字通り中部太平洋の帝国海軍を叩き起こした。
漸くハルゼー艦隊に、一杯食わされた事に気付いたのだ。
あおい
「体育会系みたいな顔しているのに、中々やるじゃないか」
連合艦隊司令部の命令で、急遽救援艦隊が派遣される事になった。南鳥島守備隊員800名の内、300名が死亡し、残りも大半が緊急の治療を要していた。
ゆかり
「大丈夫あきら?」
ゆかりに呼び止められた、あきらも作業を止めてゆかりに近付く。
あきら
「今の所は……それに、もし元の世界に戻れて、医者になれたら、今日みたいに緊急を要する患者さんを大勢助ける様な事があると思う。それよりも父島に大きな軍の病院があったとは知らなかった」
ゆかり
「父島は本土と南方を結ぶ、重要な拠点だからね」
父島にある海軍の病院は、かなり設備が整っているので重傷者は父島に搬送し、それ以外は横須賀基地に運ぶ事になった。
数時間後 プリキュア達は軍医さんから休息する様に言われた。
軍医さん
「敵機の一部が、爆弾じゃ無くビラをばらまいて行ったそうだよ」
シエル
「何が書いてあるのかしら」
ゆかり
「日本に勝ち目は無いとでも書いてあるんじゃないかしら。気にする必要は無いわ」
史実でも、戦争末期に《B-29》が日本本土で宣伝ビラや、爆撃予告を散布している。しかし、拾った住民がそれを読む事は厳禁とされて、速やかに警察や隣組の班長に提出すると定められていた。
その時、ひまりとことはが走って来た。何か慌てている様だ。
ひまり
「大変です!」
あきら
「どうしたの? 敵襲?」
ことは
「いちかの様子が変だよ! 震えているよ!」
急いで外に出ると、いちかが震えていた。
あおい
「どうした? 具合でも悪くなったのかよ」
よく見ると、いちかは具合が悪くなったのではなく、怒りで震えているらしい事が判明した。
みらい
「宣伝ビラなんて別に気にしなくても」
いちかの手から落ちたビラを、シエルが拾う。それを見たシエルも硬直した。
ウィリアム・ハルゼー提督より親愛なる桃色兎に
出て来い桃色兎、次はお前もこうしてやる。
その下には、ハルゼー提督とやらが桃色兎……つまりキュアホイップを海に蹴りこんでいるイラストが描かれている。むかつく事にカラーで印刷され、キュアホイップの絵はかなり本物に近い絵で描かれていた。
その瞬間、熱帯である筈なのに空気が真冬の北海道の様になった。救援の兵員や軽傷や無傷の守備隊員が、何人か思わず後退する。
あおい
「これはお礼参りって奴が必要だよね」
ゆかり
「ハルゼー提督、提督を私の敵に認定するわ。ふふふ」
いちかは悔しがったが、ハルゼー提督の艦隊は既に遠く逃げ去った後だった。
南鳥島空襲の10時間後、ウェーク島とマーシャル島の中間点で、哨戒任務に就いていた、《P級》潜水艦の《パイク》が、水平線上を北上するプリキュア数名を目撃した。
《P級》潜水艦は、1930年代前半に10隻が建造されたが、《ガトー級》や改良型の《バラオ級》の大量就役が開始されたので、近く前線任務を離れ、練習艦として使用される予定となっている。《パイク》艦長は、直ちにパールハーバーの潜水艦隊司令部に通報し、太平洋艦隊司令部はハルゼーに対し直ちに、ウェーク島にプリキュアが増援した可能性大。同島空襲は危険度大と思われる。ミッドウェー方面に退避せよと打電した。
ハルゼーも即座に、ウェーク空襲を断念し艦隊針路を北東に転じミッドウェー方面に退避した。
数日後、攻撃隊が撮影した南鳥島の写真は新聞に大きく掲載され、多くの合衆国市民が留飲を下げた。
史実でも南豊島はハルゼー艦隊の空襲を受けています。これらの戦果は大いに新聞で報道され、戦意高揚に一役買いました。