プリキュアDOOMSDAY   作:宇宙とまと

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 遂に隣の県で新型コロナウィルスの感染者が。うがい手洗いが重要です。


第43話【キュアミラクルとは関係なし】

 

 

 

 TF-16は午前10時前に、サンフランシスコから出撃して来た増援部隊と合流した。肝心の《ヨークタウン》《インディアナ》が、潜水艦の魚雷を喰らって撤収せざるを得なくなったために、その価値は大きく落ちていた。それでも重巡《ウィチタ》、新鋭軽巡《デンバー》《モントピーリア》と《アトランタ級》防空巡洋艦《ジュノー》と駆逐艦9隻の合流は、味方将兵を勇気づけた、巡洋艦以上の船は、対空・対水上レーダーを新型に換装し、対空砲を多数装備している。

 

増備された『ボフォース40ミリ連装機関砲』は、21世紀でもまだ使用している国があるほどの、傑作対空機関砲で敵機にとっては大いに

脅威になるだろう。(ただし、プリキュアは別)

 

 

 

 

タコマ市ボー○ング社工場

 

 

 この日、不運な事にボーイング社タコマ工場では重要な会議が行われていた。次期主力爆撃機《B-29》の生産や品質管理についての会議が開催され、ボーイング社の幹部や、技術部門の責任者などを筆頭に大勢の関係者がタコマに集結していた。

ボーイング社は、1916年7月15日にウィリアム・E・ボー○ングとアメリカ合衆国海軍技師ジョージ・コンラッド・ウエスターバレットによって、シアトルで創業された。最初に作った航空機は、水上機を改造した練習機で海軍向けに700機生産し、以後のボー○ング社発展の基礎になった。

 

大型機専門というイメージが強いが、戦前は中型旅客機《ボーイング247》や、小型戦闘機《P-12》等も生産している。

 

 

 ボーイング社は、日本人にとっては光と影両方の歴史がある。闇の方は《B-17》と《B-29》で、特に《B-29》の空襲で100万人以上の

死傷者を出した。広島と長崎に原子爆弾を投下したのも《B-29》だ。

しかし、空襲で家を焼かれたり家族や友人を失った人も、その後仕事や旅行で《B-707》や《B-747》を利用した人は大勢いる。

 

 

 

 

 

 若手技術者ヤング・レンは、上司のお供で会議に参加していた。会議は一度中止が検討されたが、ボーイング社上層部に陸軍幹部から、敵攻撃目標はサンフランシスコと伝えられ、会議は予定通り開催となった。いやシアトルも空爆されるのではないかとの意見も社内にはあったが、上層部の判断で開催と決まってしまった。

遠方から来た社員や、技術者は前日夕方に到着し宿舎やホテルに泊まっていた。朝食堂で朝食を食べていると、突如空襲警報が鳴り響いた。直後は皆意外に冷静だった。

誤報か抜き打ちの避難訓練だと考えたからだ。だが数分後に、ラジオ放送で訓練ではなく本物の空襲だと知らされ大騒ぎになった。

 

 

 レン達は、食堂のある建物を出て外に避難した。工場には、万一に備え避難用の地下室は用意されていた。しかし、空襲に備えてというよりも、工場での火災事故に

備えての物だったので、耐久性には問題があった。

まず女性社員を地下室に避難させ、男性社員や労働者の一部は未だ外で空を見ていた。やがて西の空から多数の黒点が近付いて来た。レンは近くの警備員に双眼鏡を借りて、覗いた。

 

 

「あれが《ジーク》(《零戦》の米コードネーム)か、噂通りスマートな戦闘機だ」

合衆国の戦闘機には無い美しさを感じた。反対側から迎撃戦闘機が上昇して来ると、工員や社員達は歓声を送った。全てライバル会社の戦闘機だがこんな時は、関係無い事だ。

 

 

「日本の戦闘機はかなり小回りが利いてますよ」

「拙いなあ、味方戦闘機が挑発に乗せられているぞ。」

同量の社員に言われて、レンが上を見ると《P-38ライトニング》が、敵戦闘機の背後を取ろうとしているが、上手くいかない。その内に

身軽な《ジーク》に背後を取られて、あっけなく撃墜された。

 

「《ジーク》の特性を知らされていないんでしょうか?」

 

レン

「知らされていなという事も無いだろうが、初めての相手だから失念しているのかも知れない。」

 

 

 史実では、アリューシャン列島のアクタン島で、飛行可能な状態で不時着した《零戦》が捕獲されている。その調査で《零戦》の弱点が明らかになり、それを基に、米海軍は《零戦》に対する戦い方を研究した。しかし、この世界Aではそのような出来事は起きていない。ほっぽちゃんはこの世界では、《アクタン》を貰えそうにない。残念!(1)

 

 

 

 

 

 

「何だあれは!」

 

 

突然の叫び声に驚いていると、何人かの労働者が空を指差して騒いでいる。双眼鏡で彼らが指さす方向を見ると、一羽の『鳥』が新型戦闘機《P-51マスタング》と対峙している。よく見ると、鳥だと思ったがカラフルな服を着た人間で、背中に天使のような羽があり空を飛んでいる。

《マスタング》が、謎の存在に銃撃を加えるも、鮮やかに回避され逆に光の様な物体が機体を直撃し、右主翼が吹き飛んだ。パイロットが脱出した直後、その《マスタング》が、真っ逆さまに地面に向け落ちて行くのが見えた。

 

「朝だと思っていたが、どうやら未だ夜で夢を見ているんだろう。夢よ覚めろ」

レンは、全身に力を込めて夢から覚めようとしたが、全く効果が無かった。

 

 

 戦闘機隊が、離脱して行ったが数分も経過しない内に、再び敵機の大群が工場上空に現れた。今度はさっきと違い戦闘機だけでは無く、複座の爆撃機らしい機体も見える。レンの周囲では、外で様子を見ていた社員や作業員が、急いで地下室に避難を開始している。

 

 

 

 

 

 同時刻 

 

 

 高橋赫一(たかはしかくいち)少佐率いる第二次シアトル攻撃隊の内、《彗星》艦爆60機の中で、40機は航空基地の攻撃に向かわせ残り20機は、高橋少佐自身が率いてボーイ○グ社の工場に向かった。

 

「でかい工場ですね。国内の航空機メーカーの工場を見学に行ったことがありますが、こんなでかい工場は見た事がありません。《彗星》20機では少なかったのでは?」

「確かににそうだが、流石に航空基地を優先せにゃならんからな。それにしても、お前の言う通りでかい工場だな。日本のメーカーはこの工場と比べると残念だが、せいぜい町工場だろう」

 

 

 

 

 長方形の工場が10個近くも並んで立っている。普段は人で溢れているのかもしれないが、今日は人の姿は少ない。恐らく防空壕にでも避難してしまったのだろう。

工場に隣接している飛行場には、これから試験飛行でもする予定だったのだろう、爆撃機が何機か待機している。

工場の外を見ると、多数の家らしき建物が見える。工場で勤務している従業員の宿舎だろう。奥に見える少し大きな宿舎は、管理職用かもしれない。

更に従業員の福利厚生と思われる、野球場やテニスコート更には、商店や食堂らしい建物も見える。

 

 

 

(まるで一つの町だな。流石は合衆国と言うべきだろう。いやだからこそここで可能な限り叩かなくては)

高橋は関心しながら眼下に近付く、航空機工場を眺める。その時シアトル市の方角で閃光が何個も走り、黒煙が立ち上って来た。

 

「滑走路に5番(500キロ爆弾)3発命中!」(2)

「滑走路上で中型爆撃機3機破壊!」

「燃料貯蔵庫炎上!」

「敵対空砲陣地の反撃熾烈。全機注意せよ」

無線からは、続々と戦果報告や戦況報告が入って来る。シアトル近郊の、敵航空基地への攻撃は成功しつつあるようだ。

 

「敵戦闘機接近! およそ30」

機銃員の報告を聞いた、高橋が東側の空を見ると、《P40ウォーホーク》戦闘機の編隊が、接近して来るのが見えた。」

「ワシントン州の他の基地か、隣のモンタナ州辺りからの増援だろう」

 

 合衆国は、日本と比較にならない豊かな国だが物資が無限にある訳では無い。同盟国や中立国の大使館経由の情報によると、最新の戦闘機は、英本土や、最前線の北アフリカやハワイに優先的に配備されている。本土では、首都ワシントンやニューヨークがある東海岸、大規模油田があるテキサス州、軍港や産業地帯のある、カリフォルニア州は、新型機が配備されているとの事だ。

 

 しかし、西海岸でも軍事基地が少ないオレゴン州と、それ以外の州の航空隊は、旧式機が配備されている場所も多く、搭乗員のレベルも最前線よりは落ちる。との事だ。

即座に、高橋隊を護衛していた戦闘機隊が米戦闘機隊の迎撃に向かう。

 

「今のうちに工場を爆撃するぞ! 全機続け」

 

 

 

 レンは地下室に避難しようとした時、一人の女性事務員が足が竦んだのか、動けなくなっているのに気づいた。

 

 

 

(確かマリーさんだったかな)

レンは、素早く走り動けないでいるマリーを落ち着かせて立ち上がらせる。避難しようとした時、1機の戦闘機らしい機体が、工場に向け低空で迫って来るのに気付く。

 

 

レンは、マリーの腕をつかんだまま、反射的に地下室入り口とは正反対の方向に逃げた。直後日戦闘機が12.7ミリ機銃で射撃して来たが、レンが工場と正反対の方向に逃げた為に、コンクリートの破片をまき散らしただけだった。

 

(ここにいては危ない)

レンは、工場にいては危険だと判断し、敷地の外に避難するべきだと考え、マリーと共に走り出した。他にも何人かの社員や工員が敷地外に避難

した方が安全と判断したのか、二人に続くように門の外に向け走り出した。

 

 

 

 200mほど走りゲートの外に出たレン達は、社員向けレストランの店主が自前で作った、防空壕に飛び込んだ。店主が、他の避難者が逃げ込んだ後、扉を閉めて1分も経過しない内に、ヒューーーーという風の様な音が聞こえ、数秒後防空壕は、サンフランシスコ大地震みたいな揺れに襲われた。

 

 

 同時刻シアトル

 

 

 戦闘機と《彗星》《天山》隊による第二次攻撃隊は、プリキュア第二陣と共にシアトル近辺の軍事施設を攻撃していた。

 

 プリキュアと《天山》艦上攻撃機は、ファン・デ・フカ海峡やシアトルに隣接するピュージェット湾にいた米海軍と、英連邦に加盟しているカナダ海軍の艦艇

及び、輸送船やタンカー等に攻撃を開始。

 

残念ながら、戦艦や空母の様な大物はいない様だ。最大の艦は旧式化している《オマハ級》軽巡《コンコード》で、後は駆逐艦が護衛駆逐艦も含めて10隻前後

後は潜水艦を攻撃する小型艇や、湾内に潜水艦の侵入を防ぐ防潜網を設置する敷設艦の様な特務艦が、5隻ほど待機していた。

 

 

 

 1925年に完成した《コンコード》は、勇敢にも貧弱な対空火力でプリキュアに挑むが衆寡敵せず、前部7インチ主砲と煙突に直撃を受けた。

旧式巡洋艦の「無いよりはまし」な装甲を貫通し内部で爆発。《コンコード》は炎上しながら海峡内で転覆。

 

駆逐艦や小型特務艦は、5インチ対空砲や対空機関砲を撃ちまくって数機を撃墜するも、プリキュアにはかすり傷すら負わせる事も出来ず

反撃で次々と撃沈か転覆、又は大破炎上させられた。

 

 

 

ピュージェット湾や、ファン・デ・フカ海峡にいた米海軍とカナダ海軍艦船を全て片づけたプリキュアと、《天山》はピュージェット湾対岸にあるピュージェット・サウンド海軍工廠や、海軍基地攻撃を開始。

プリキュア達は、港湾作業員が逃げるのを確認してから、手始めに修理用ドックに置かれている、クレーンを破壊した。クレーンはそのまま倒れ

機関不調で、修理していた『ジョン・C・バトラー』級対潜護衛駆逐艦の船体を直撃し、艦橋が押しつぶされた。

 

 

 

 村田少佐(天山隊隊長)

「おっ、彼女達早速やってるな」

 

 星野(操縦員)

「俺達も、びしっと決めたいですね」

 

 村田

「やはり、大物はいないか?」

「いませんねえ」

 

 

 星野が湾内を見ても、最大の艦軽巡《コンコード》は既にプリキュアの攻撃で、沈没寸前だ。貨物船や輸送船も、沈没寸前か大破炎上している。

「バンクーバー付近まで北上して、カナダ海軍の船か貨物船を探しますか?」

大英連邦(3)の一員であるカナダと、大日本帝国は交戦状態にあるので、出撃前に余力有れば、カナダ海軍の船舶がいたら攻撃せよと指示されている。

 

「空母が修理中です!」

後部偵察員が、ドックで修理中の空母を発見する。

「大型空母か!」

「いいえ、中型いや1万トン級の小型空母です」

「対潜用の小型空母だな。よし、そいつをやろう」

 

 

 

 

 村田隊小隊6機は、修理用ドッグの方に進路を変えた。プリキュア達も空母に向かっていたが、天山隊を見て引き返した。

 

 

「彼女達、俺達に譲ってくれるそうですよ。武士の情けですね」

「武士の情けと言うより、戦乙女の情けだろう。ありがたく頂戴するぞ。各機に告げる、洋上ならともかく相手は陸に上がった河童だ。必ず仕留めるぞ」

 

洋上で、全速回避中の軍艦に水平からの爆弾命中率は極めて低い。だが、停止中の相手なら命中率は高くなる。爆撃コースに入った直後、ドック周辺から

散発的な高射砲の攻撃を受け、最後尾の1機が不運にも直撃弾を受けて撃墜された。

 

 

 

 

 5機の《天山》は高度3000メートルから、800kg対艦爆弾を投下し、4発が護衛空母《ロング・アイランド》』に命中した。同艦は、1941年6月に貨物船を改造した、米海軍の「対潜護衛空母第一号艦」と言える。

3発が飛行甲板、1発が艦首を直撃し、修理中で可燃物は撤去されていた為、大きな誘爆は無かったが、《ロング・アイランド》は、完全に破壊された。

「旗艦に連絡、我入渠中の対潜空母爆撃し4発命中。敵艦は完全破壊」

 

 

 

 湾内にいた輸送艦や、貨物船も攻撃を受けていた。見逃されたのは、漁船の他にはシアトルと対岸のブレマートン市や、海峡で繋がっているカナダ西岸最大の都市バンクーバー市を結んでいた、フェリーだけだった。

 

輸送艦や貨物船にも、多少は対空砲が装備されている。しかし、それを撃つ船員の多くは専門的な訓練を受けてはいなかった。

ろくに狙いも付けずに、撃った所で命中させる事は出来ない。いや、それだけならまだしも流れ弾の破片が港湾施設や、避難中の作業員に命中し無駄な犠牲者がでてしまった。重油備蓄タンク群も、プリキュアに爆破されブレマートン上空は黒煙に包まれた。





高橋少佐は実在の人物です。史実では昭和17年5月のサンゴ海海戦で戦死。キュアミラクルの中の人と、関係は無い……と思われます。

一部伏字になっているのは、規約上です。

1 ほっぽちゃん(艦これ)のイラストで、彼女が手に持っているのは、アクタン島で捕獲された《零戦》。次は次期主力艦上戦闘機《烈風》を欲しがっています。
2 250キロ爆弾=25番 800キロ爆弾=80番
3 他にはオーストラリア、ニュージーランド、ジャマイカなどが加入

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