プリキュアDOOMSDAY   作:宇宙とまと

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第44話「ハートシュート」

同日午前7時(ハワイ時間)

 

 

 

 ハワイでは第2ラウンドが開幕しようとしている。敵との距離が近付いた為単発戦闘機や単発攻撃機も攻撃可能となった。陸軍航空隊の他に、オアフ島エワ飛行場の海兵隊航空隊も参加する。キンメル艦隊の6隻の《ボーグ級》護衛空母艦載機も、発進準備を行っている。

 

搭載機は、各《F4Fワイルドキャット》12《TBFアベンジャー》」12だが6隻合計すると144機で、日本空母《飛龍》2隻分となり軽視はできない。戦闘機が《ワイルドキャット》なのは、短い護衛空母の甲板からは、新型戦闘機の発艦は困難だからだ。史実でも《ワイルドキャット》の改良版が、護衛空母の搭載機として終戦まで活躍した。

 

 

 

 

午前8時 エワ海兵隊基地から発進した、《シーリベレーター》が敵艦隊を発見し、味方に通報した。

 

「敵艦隊発見 北緯26度1分西経157度1分 正規空母5中型2小型3 戦艦6。針路南東、速力20ノット3隊に別れている」

直後プリキュアの攻撃を受けているとの急報の直後に、通信が途絶した。

 

 ショート大将(在ハワイ陸軍司令官 陸軍航空隊司令も兼任)直ちに、攻撃隊に発進命令を出した。

 

戦闘機《P-38ライトニング》25、《P-40ウォーホーク》20、中型爆撃機《B-26マローダー》20、《A-20ハボック》20、 重爆《B-17》30、《B-24リベレーター》35

海兵隊航空隊からは《F6Fヘルキャット》50、《SBDドーントレス》爆撃機、40《TBFアベンジャー》雷撃機20《シーリベレーター》重爆撃機30が発進した。

 

 

 

 

 同時刻キンメル大将は、護衛空母の航空隊にも発進命令を出した。

各護衛空母から、《ワイルドキャット》戦闘機10機と、《アベンジャー》12機を出撃させる事になったのだが、攻撃隊が発艦を開始した矢先……

 

「《ブロック・アイランド》被雷!」

見張り員の絶叫が、司令部内にに轟いた。キンメル達は、双眼鏡で護衛空母隊の方角を確認する。

 

 護衛空母隊列最後尾にいた、《ボーグ》級護衛空母8番艦、《ブロック・アイランド》左舷甲板に水柱が上がっている。どうやら3発以上直撃した様だ。

程なく甲板で待機していた、雷撃機の航空魚雷が次々と爆発。航空機のガソリンにも引火し、消火活動が行われる時間すらなく、後世の表現を用いるならば、1980年5月に起きた『セント・ヘレンズ山大噴火』(1)みたいに、船体が吹き飛び

海中に消えた。生存者は、被雷直前に発艦した2機の戦闘機搭乗員だけだった。

 

 

 

午前8時30分

 

 

合計390機のオアフ島陸海航空攻撃隊と、角田中将率いる第三航空戦隊艦載機+プリキュア連合軍の激闘が開始された。しかし、米側護衛空母艦載機隊は、潜水艦雷撃による空母轟沈の混乱で集結が遅れ、しばらく到着が遅れる見込みだ。

米戦闘機隊の内、半数は日戦闘機隊とプリキュアにに向かい残り半数は、攻撃機の周囲を守る様に展開した。

 

 

 

「敵の新型機だ。南鳥島を攻撃した奴かも知れんぞ」

 

南鳥島守備隊の証言によると、空襲を掛けてきた敵戦闘機は新型機だった。との事だがその機体の外見と一致している。生存者の一人は、以前ウィスキー工場で働いていたが、

「洋酒を発酵させる樽みたいな形」

と言っていたと聞いた。彼の証言通り、見た目は不格好だ。

 

 

 

 

 渡部大尉は近くにいた新型戦闘機に、20ミリ機関砲を発射する。気付いた敵機は急降下して逃げて行く。

その寸前に何発か命中している筈だが、敵機は火を噴かない。

 

 

「かなり硬そうな機体だな。まるで鉄工所だ」

 

 

その時、新米搭乗員が別の《ヘルキャット》戦闘機に追いかけられているのが見えた。後方から追いすがって12.7ミリ機銃を執拗に撃っている。

 

 

 

「今助けるぞ」

 

味方を追尾している《ヘルキャット》戦闘機が、近距離を通り過ぎた瞬間に真横から操縦席に20ミリ機関砲を発射。風防ガラスをぶち抜いた弾丸が、米搭乗員を射殺し、敵機は火を噴く事無く真っ逆さまに墜落して行く。追撃されていた味方機は

無事な様だ。

 

 

 

 戦闘開始から数分は、日本側搭乗員が敵新型戦闘機に戸惑った事から、米側有利に進むかと思われたが、程なく次第に日本側に押され始めた。

《F6F》戦闘機は《零戦64型》に対し、速度では30km/h勝り、防弾装備や上昇力でもかなり勝っている。敵が日本機だけなら、史実通り大活躍できただろう。

 

しかし、日本側には『朝鮮戦争時のジェット戦闘機』(2)級の速度が出る、プリキュアが居た事が《ヘルキャット》にとっては最大限の不運だった。

 

 

 《Me-262》は米爆撃機との戦闘で、速度差が大きくて攻撃が外れたり、タイミングを逸したり

という事も少なくなかったそうだ。更に、飛行中にエンジンの片方が故障する事も少なくなく、レシプロ戦闘機にあっけなく撃墜された事もある。更に離陸の直後や、着陸直前に米陸軍戦闘機の奇襲で撃墜されてしまう事もあり、《Me-262》の離着陸の時は、飛行場上空を従来のレシプロ戦闘機隊で護衛するという、情けない事態になった。

 

残念ながらプリキュアにはそのような欠点は無く、水平飛行ならまだしも、機動力は著しく劣る《Me-262》と違い、プリキュアは変幻自在な動きで米戦闘機を翻弄して来る。

 

 

 

 

 《零戦》に対し有利に戦っていた米戦闘機隊だったが、戦闘開始後ほどなくしてプリキュアが戦闘に参加すると、次第に恐怖心から冷静さを欠いてしまい、浮足立った所をや戦闘機や対空砲に撃墜される機体が続出した。

その結果、余裕が出て来た《零戦》隊は、一部が攻撃機に対する銃撃を開始。

 

 

 低空から接近していた雷撃隊が攻撃を受ける。《アベンジャー》は、12.7ミリ機銃を主翼に2丁後方旋回機銃と後下方に各1丁装備しており、日英の雷撃機に比べると遥かに重武装だ。しかし、重い航空魚雷を搭載している時に、戦闘機に攻撃された場合、回避する事は難しい。進路がずれてしまった場合元に戻すのも難しく、低空を飛行しているので、無理な機動をすれば海面に墜落してしまう。

 

 

《アベンジャー》隊は、必死に機関銃を撃ちまくり攻撃目標に向かおうとしたが、半数が撃墜され残りは、適当に魚雷を投下して逃走した。

 

 

 

 

 直後クラレンス・マクラスキー少佐率いる《ドーントレス》40機が上空に到着していた。

 

 

「敵戦闘機は、《アベンジャー》隊に気を取られているぞ! この隙に空母をやるぞ!」

マクラスキー少佐は、傍受していた味方戦闘機隊の無線交信から、プリキュアの単語が聞こえてこない事を、一瞬疑問に感じるも直ぐに無視した。

 

史実のミッドウェー海戦では、低空から侵入して来た《デバステーター》雷撃機隊を壊滅させて、安堵した僅かな瞬間に、マクラスキー少佐率いる《SBDドーントレス》隊が、急降下爆撃を敢行し《赤城》《加賀》《蒼龍》の三空母を被弾炎上させた。それはわずか数分間の間とされる。(3)

 

 

 

 

 

マクラスキーの脳裏には、被弾炎上した敵空母の姿が脳裏に浮かんだ。だが実際に目にしたのは被弾炎上した友軍機だった。

 

 

「クソッ! プリキュアの待ち伏せだ!」

 

マクラスキーは、《ジーク》隊は、油断していたのでは無い。信頼すべき盟友に上空の守りを託していたのだ、と言う事にようやく気付いた。

 

 

 腹を立てても意味は無い、少佐は12.7ミリ機銃をを撃ちまくれと命じる。編隊が撃ちまくる《ドーントレス》の後方機銃は、かなりの脅威となる。史実ではガダルカナル島上空で、名搭乗員坂井三郎氏に重傷を負わせている。

だがプリキュア達は、いともたやすく機銃弾を回避して攻撃して来る。

 

 

急降下に入っていれば、時速700kmは出せる。突っ込んで来る急降下爆撃機を対空砲で狙い撃つのは難しい。だが、急降下に入る前は重い爆弾を抱えて自在には動けない。まな板の上の高級鯛みたいに美味しく、プリキュアの餌食にされてしまう。

 

 

4割近くが撃墜された時少佐は決断した。このままでは全滅は避けられないだろう。護衛の戦闘機も自分達を守るのが限界で、こちらを助ける余裕は無い。

 

 

 

「全機爆弾を投棄して逃げろ!」

 

 

爆弾を投棄して身軽になった、《ドーントレス》は全機バラバラに逃げ出した。集団で逃げるのはこの場合かえって危険だ。纏めて全滅してしまう危険が高い。40機の内離脱に成功したのは、隊長機を含め16機だった。

 

(プリキュアめ! 戦死者の仇は必ず取るぞ! その日まで決して死なんぞ)

 

 

 

 ホールマーク中尉率いる《B-25ミッチェル》爆撃機10機が到着した時、戦闘は酣(4)になっていた。戦場を見ると、落ちて行くのは多くは米軍機だ。無線機からは、悲惨な悲鳴が多数聞こえる。

 

海面を見ると、駆逐艦らしき1隻がまぐれ弾でもあったのか洋上に停止している。更に別の1隻が、命中弾で火災が発生し速度が落ちている様だった。

 

 

 

(これでは昨日の繰り返しでは無いか。だが敵を放置して何もしない訳にはいかないだろう)

 

 ホールマーク大尉は、プリキュアに対する怒りと、いかに戦闘集団の少女と言っても恐らく10代半ばの少女たちに、戦いに参加させる帝国海軍に対する怒りと、プリキュアに無謀な攻撃を繰り返さなければならない自分達への不甲斐なさが過る。

 

 

 

 その時、敵戦闘機とプリキュアらしき影が一部南西に向かって移動しているのが見えた。

 

「キンメル提督の艦隊から発進した護衛空母攻撃隊でしょう。遅れてますが何かあったのかも」

「俺達みたいに、出がけに何かあったのかもな?」

 

 

 

護衛空母艦載機は、発進時の護衛空母被雷轟沈による混乱の遅れだが、ホールマーク中尉達は、倉庫から格納庫に爆弾を運搬していた、運搬車が突然パンクして動けなくなり爆弾搭載が遅れた。

そのお陰か他の小隊より発進時間が遅れ、ホールマーク隊は未だプリキュアには見つかってはいない。だが、そういつまでも発見を免れはするまい。

 

 

 

 

「機長! あれを見て下さい」

操縦士が、前方の一角を指さす。ホールマークが、前方を見ると2隻の中型空母の周囲に、プリキュアが居ない事に気付いた。遅れて来た護衛空母隊を迎撃する為に分散し、一部に僅かな間隙が出来ていた。上空に戦闘機はいるが、プリキュアはいない。

 

 

 

 

「あの中型空母に向かうぞ!」

 

 

 

その中型空母は、《隼鷹》型中型空母だ。元は日本郵船の《橿原丸》《出雲丸》として建造開始されたが、建造費用の6割を帝国海軍が負担している。最初から、有事に備え航空母艦に改造する前提で建造が開始された。速度は、25.5ノットで正規空母に比べるとかなり遅い。だが、最大53機を搭載可能で2隻では、《飛龍》と小型空母1隻の合計よりも多く、帝国海軍にとっては重要な戦力だ。

 

 

 

 

 あと1500メートルで敵に気付かれた。上空にいた戦闘機が慌てて高度を下げて来た。空母と周囲の護衛艦も慌てて対空砲撃を開始。

 

現代なら、慌てて射撃しても高確率で命中できるだろう。だが、この当時は多少はレーダーから得られる情報があるにしても、担当者の腕と勘が頼りだ。それでも、運が無かったのか《ミッチェル》の一機が、主翼を分断され落ちて行った。

 

 

 

 

(早く早く飛べ、プリキュアが来てしまうぞ)

ホールマーク中尉は、500km/h以上の速度で飛んでいる筈が、急に時間の感覚がゆっくりになった気がした。

 

「プリキュア接近中! 距離800!」

「爆弾投下!」

 

 

各機450kg徹甲(対艦)4発ずつ爆弾を投下する。爆弾は中型空母に吸い込まれていく……

 

 

キュアハート

「させないよ!」

 

 

 

 プリキュア達は、爆撃機よりも投下した爆弾を狙って来た。ハートや氷や光の盾や剣圧で、投下した爆弾が次々と破壊されるか、空母の上から弾き飛ばされた。

 

「な! 何だと……」

ホールマークは怒りで震え、今にも口から洪水の如くプリキュアに対する罵声が流れ出ようとした瞬間、素晴らしい光景が見えた。

 

 

 

 ホールマーク機が投下した、450キロ爆弾がギリギリでプリキュアハートシュートの迎撃を潜り抜け艦首と、前部飛行甲板に吸い込まれていった。

飛行甲板に落ちて行った爆弾は、前部昇降機を直撃貫通し格納庫内で爆発。

艦首に命中した爆弾は、キュアハートの迎撃で信管が狂ったのか、命中した瞬間に爆発してしまった様だ。

 

しかし、艦首と前部昇降機付近で甲板が大きく破壊され火災も発生した。二次誘爆は残念ながら起きず撃沈には至らない可能性が高いが、航空機の発着は不可能だろう。

 

 

 

 

「基地に打電! 我敵中型空母に爆弾2発命中」

しかし喜んでいる訳にも行かない。一旦爆炎を避ける為に分散したプリキュア達が

集結し《ミッチェル》隊を追撃して来る。数分後安全圏に離脱出来たのは、ホールマーク中尉機を含め、3機だけだった。それを見た、ホールマークも一瞬の興奮が直ぐに冷めてしまった。

 

 

 空母炎上が僅かに敵を混乱させたのか、直後《B-24》が投下した爆弾が駆逐艦1隻に命中し同艦は轟沈。護衛空母から飛来した雷撃機が発射した魚雷2本が、防空巡洋艦《石狩》に命中。《石狩》は洋上に停止し、30分後に放棄が決定された。

 

 

 





1 ワシントン州スカマニア郡にある火山。1980年5月に火山噴火で山頂部が吹き飛び、57名死亡。他にも橋や鉄道も被害を受けた。

2 ソ連《ミグ15》米《F-86》くらいか 速度は両者とも1100キロくらい

3 魔の5分間

4 たけなわ  クライマックス
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