キョエ「未だ終わって無いよバカー!」
4月27日 アリューシャン列島 アダック島 500キロ南方洋上
アダック島空襲から戻って来た航空隊が空母に着艦し、甲板付下士官や整備員が駆け寄って行く。機数は発進した時と比べても、一機も欠けておらず、機体に損傷痕がある機体も無い。本来なら、米海軍の基地があるダッチハーバー(ウラナスカ島)
を空襲する予定だったが、偵察機を飛ばした所現地は深い霧で、島が全く視認できない状態なので、攻撃を一日延ばし米海軍が航空基地を建設している、アダック島を空襲する事になった。
「アダック島上空に敵影無し。我奇襲に成功
「攻撃成功。建設中の滑走路及び、宿舎、港湾施設を爆撃。効果甚大。敵の抵抗は皆無で、急遽島を放棄して撤退したものと推測される」
と言う無線が入っていたので、この結果を予測はしていた。
「アメリカ軍が島を放棄したのは間違い無さそうか?」
「敵兵らしき姿は一切無く、対空砲撃もありませんでした。建設中の滑走路も爆破する時間も無かったのでしょう。紙一重の差で急遽島を放棄したのだと推測します」
「撤退して行ったのは、恐らく昨日の午後以降だろう。いやもしかするとほんの3.4時間前かも」
攻撃隊指揮官によると、一隻だけ中型輸送船が残っていた。この船も機関が故障でもしたのか、乗員だけ他の船に収容して放棄されたのだろう。
ふと見るとプリキュア達は、全員の表情を浮かべている。
「彼女達は俺達が戦果を挙げた事よりも、全員無事に帰還した事を喜んでくれている」
「口やかましい、幼馴染の許嫁と交換したいよ」
「本当なら、彼女達が戦わずに済むのが最善なのだが……」
山口中将の言う通り、本来なら彼女達が戦わなくても良い様にするべきなのだろう。しかし悲しいかな、日本とアメリカと間には、国力や天然資源保有量で、圧倒的な
差がある。プリキュアの協力が有ってどうにか辛うじて戦場での優勢を保っているに過ぎない。
山口は、本当は君達が戦わずに済む様にするべきだと思っていると、言ってみた事もあるのだが……
あきら
「お気持ちは大変ありがたいのですが……ソ連では、私達と同じ年代の子達が、パルチザンに加わったり、戦闘機で侵略者と戦っていると聞きます」
と言われてしまうと、沈黙せざるを得ない。
確かに、ソ連では残虐な侵略者……第三帝国軍との戦闘には、多くの女性や子供までが加わっている。ゲリラ部隊だけでは無く、戦車の搭乗員にも女性がいた。
空軍も女性だけの部隊を編成している。モスクワの日本大使館からの情報で、帝国海軍もそれらの事実は知っている。
戦闘機に載っている兵士は、戦う武器があるだけマシかもしれない。ゲリラ部隊に加わっている子供は、まともな武器も持たされておらず、ドラクエの初期装備
みたいな武器で戦っているのではないだろうか。(子供でも簡単に使えるライフル《AK-47》が完成するのは戦後)
あおい
「山上さん無事だと良いけどなぁ」
山上中尉の機体は、ハルゼー隊を爆撃した際に、敵戦闘機を2機撃墜したが、敵の反撃で燃料タンクに被弾して帰還途中に、燃料が足りなくなり止む無く海上に不時着していたと帰還後に聞いた。
ゆかり
「不時着した搭乗員救助の為に、何隻かの潜水艦が配備されている筈だから、救助されている可能性もあるわ」
ひまり
「あゆみさんに、無事かもしれないって勝手に手紙とかで知らせる訳にも行かないです」
あゆみというのは、山上中尉の奥さんで年齢は今年で19歳らしい。
「それはダメだぞ」
「びっくりしましたぞ」
いちか達の話に割り込んできたのは、堺だ。
「糠喜びさせちゃだめだ」
「海面に不時着できても、命を落としてしまう事も多いんですか?」
「少なくは無いよ。海面へ不時着するのは、想像以上に難しいんだ。上手く行ったと思っても、着水した瞬間に高い波が来て機体がひっくり返ったり、
衝撃で頭をぶつけて、気絶したらそのまま溺れてしまう」
堺によると、開戦前に訓練中にそういう事故を目撃した事があるらしい。それを聞いていたいちか達は更に落ち込む。
「救助用の潜水艦に救助されているかもしれないから、そう落ち込むなよ」
「潜水艦に救助された人は、そのまま潜水艦で日本に帰るのかしら?」
シエルが、潜水艦に救助されたパイロットの復帰する方法を質問する。
「そうなるな。潜水艦の速度では艦隊には追いつけない。搭乗員が原隊に復帰するのは、一か月くらいは先だなあ。負傷していたり、衰弱していると
入院が必要だから、さらに時間が掛る」(1)
「まあ、便りが無いのは無事の証って言うだろ」
いちか達を元気づける為に、堺はわざと大声で励まして去って行く。後日、10名以上の搭乗員が潜水艦に救助されていた事が判明し、大半は数か月以内に復帰し
怪我が酷い何人かは、後方勤務に転属になったり、軍を除隊する事になるのだが、そのいずれにも山上中尉は含まれていなかった。
数日後 広島県 呉軍港
「おーい、面白い写真が手に入ったぞ」
移動距離が短い、ハワイ攻撃艦隊は数日早く本土に帰還していた。
「ん、何の写真ですか?」
マナ達プリキュアが、周囲に集まって来る。
「第三帝国軍が、新兵器を開発したらしい」
「秘密兵器……まさか原子爆弾!」
「毒ガスとか……」
第三帝国の新兵器と聞いて、マナ達がざわつく。ヒトラ―に核兵器を持たせるのは、どう考えても某○ランプに核のボタンを持たせるよりも、1万倍危険だろう。
「あ、いやそんな物騒なものじゃないんだ。新兵器と言うよりも珍兵器だな。試作偵察機らしい」
(本当に原爆でも開発成功したのなら、日本に教えてくれる筈も無いわね。確かヒトラー総統の著作『我が闘争』の中にも、日本人をバカにした部分があるはず)
と六花は思ったが、マナと違い口にはしなかった。(2)
「試験飛行成功直後の写真らしい」
マナが写真を見ると、そこには中型偵察機らしき機体が映っているのだが……
「普通の偵察機……左右対称じゃない!」
中型爆撃機なら、左右に1基ずつエンジンが有り、中央の胴体部に操縦席がある。だが写真の飛行機は操縦席の左にしかエンジンが無い。
コナン劇場版第一作の真犯人、森谷帝二がこの写真を見たら卒倒するか、怒りのあまり憤死する事疑いないw 半世紀後数ある珍兵器の中でも、代表の一つになってしまう
その機体は、《BV141》。左右非対称機ばかり構想する、変人リヒャルト・フォークト博士渾身の大作だ?w
「これ、本当に飛べるんですか?」
と真琴が聞くが、大半の人が同じ感想を抱くだろう。
「何と問題無く飛んだらしい。競合機よりも速力が速く、安定性も問題なかったそうだよ」
「何でこんな変な姿になったんですか?」
「機種にあるプロペラが、偵察機からの前方の視界を遮らない様にするように要求が有ったらしいよ」
「では、これが採用されたんですね」
何故かありすが嬉しそうな表情で、《Bv-141》を見ている。ジコチューをお持ち帰りしてペットにしようとした、奇人であるありすとは何か相通じるものが……
「いや、どうも不採用にされたみたいだ」
「やっぱり見た目が変だからかしら」
マナの指摘を聞いたありすは逆に落ち込んでいる。原因についてはエンジンに不具合があったそうだ。それとライバル企業の方が、ナチ政権上層部と親しいので、
それも原因だろうとの事だ。
「あ、そういえばある噂を聞いたんですが?」
4月28日 正午 サンフランシスコ
「ここを出港した時は、まさかこんな姿で帰還するとは思いもしなかったなあ」
「三本目、四本目の魚雷を喰らった時はこれで終わりだと思ったよ」
「入港するまで未だ時間がかかる。それまで油断してはならん。サンフランシスコ湾内に潜水艦か、イタリア海軍のような小型潜水艇が潜んでいるかもしれんぞ」
1941年(昭和16年)12月19日に、イタリア潜水艦から、発進した小型潜水艇がエジプトのアレクサンドリア軍港に潜入し、潜水隊員が停泊していた、戦艦《クィーンエリザベス》《ヴァリアント》の艦底部に爆弾を仕掛けた。両艦は大爆発し大破着底し復帰に1年半以上費やした。
《エセックス》艦長クラーク大佐に喝を入れられた乗員達は、慌てて見張りに戻る。
(ま、乗員達の感想は正しい。私も3本目と4本目の魚雷を喰らった時は、沈没は免れないと思ったからな)
もし、最初の2本と同じ側に命中していたら、打たれ強さと優れたダメコンチームをアメリカ空母でも、沈没は免れなかっただろう。
幸か不幸か、残り2本は艦の左舷側……ほぼ最初の二本が命中した、正反対側に命中した。その為に、右に傾いていた傾斜が復元した。
乗員総出で、復旧作業を行い何とか10ノットで航行可能となった。(3)
後方から、飛行機のエンジンが聞こえほどなく上空を一機の大型爆撃機が通り過ぎていく。恐らく対潜哨戒任務に向かうのだろう。《エセックス》や他の艦
の帰還を支援する為に、海軍と陸軍航空隊は総力を挙げて潜水艦狩りを行った。その結果3隻は撃沈が確認された。他にも、撃沈は免れたが任務を断念して逃走した潜水艦
もいるだろう。
「運が悪くなければ、4隻目を私達が沈める筈だったんですがね」
昨日午後に拾ったお客人……《TBFアベンジャー》雷撃機の機長 ジャービス中尉だ。中尉達は、《エセックス》上空で機体を放棄して、見事なパラシュート降下で着艦し、乗員の拍手喝采を受けた。
中尉の報告によると、飛行中に敵潜水艦を発見したが、そ奴は潜航しようとしない。どうやら損傷を受けて、潜航不能の様だ。爆弾を投下してやろうと近付いたら、生意気にも対空機銃で反撃して来た。2発ほど機体を掠めたがダメージは無さそうだ。が、爆弾を投下しよとしてレバーを何度引いても、爆弾が投下されない。
どうも、機体を掠めた時に機体と爆弾を繋ぐ電気回路が故障したのだろう。何度か投下を試みるが投下できず、潜水艦は積乱雲の下に逃げてしまった。
基地への着陸は爆弾が爆発する危険性が高いので、途中遭遇した《エセックス》上空で機体を放棄した。
(運が悪かったのは確かだが、無事生還できたのだし敵潜水艦の対空機銃弾が、対潜爆弾に命中していたら跡形も無かっただろう。逆に幸運だったのでは?)
クラーク大佐はそう思ったのだが、そっとして置く事にした。
甲板
「この船修理して貰えるんだろうか?」
「これだけの被害だと、修理には1年……いやもっとかかるかもしれない。他の船の修理が優先されたら、このまま予備艦送りで、乗員の大半は他の船に転属とか……」
「そんな事は無い!!」
上官に気付いた、二人は慌てて敬礼する。
「修理は必ず行われる。だから安心するんだ! しかし、まあお前たちが言うような事態も、絶対に無いとは、その……言えないなあ」
発言の出だしは某300億の火柱みたいに勇ましかったが、後半はまるで自信喪失状態の某水柱みたいに、ぼそぼそとしている。
「しかし戦いが続く以上、時間はかかっても修理はされるだろう。尤も、かなり時間がかかるだろうからそれまでに、乗員の何割かは他に転属になるだろう。
もし、そうなっても気落ちせずに任務に従事して欲しい」
「無論です」
「仮に、プリキュアが存在せず、合衆国が圧倒的に有利な状況で同じ被害を受けていたら、予備艦送りになっていたでしょうか?」
「そうだな、仮にプリキュアが存在せず日本近海まで攻めている状況で、悪天候とかのアクシデントで奇襲を許し、同じ様な被害を受けたら
本土に引き上げた後、修理せずの判断になり数年後ひっそりと除籍……になったかもしれん。科学者は平行世界なるものがあると言うやつもある。もしかすると、
プリキュアが居ない日本軍と戦う異世界もあり、そこで《エセックス》は同じ様な被害を受けて……戯言だ、忘れてくれ」
史実でも、太平洋戦争後半……特に最後の1年間で、アメリカの大型空母の中に喪失艦は皆無だ。しかし、硫黄島や沖縄近海で爆撃を受けて《エセックス級》の《フランクリン》と《バンカーヒル》は、危うく爆沈しかねない大損害を受けた。他の姉妹船は、近代化されて朝鮮戦争やベトナム戦争に参加し一部は昭和50年代まで、現役に留まった。しかし、上記の2艦は二度と現役に戻る事は無く、戦後程なく退役している。
数時間後、潜水艦や小型潜水艇の襲撃を受ける事も無く入港を果たした。
「あっ、《ヨークタウン》だ」
乗員達が、近くの修理工廠で修理を受けている《ヨークタウン》に気付いた。途端に、周囲からは《ヨークタウン》に向けてブーイングが起きる。
潜水艦の魚雷を喰らって、操艦に異常が出ている船が戦場に居ても漁礁が一つ増えただけだろう。無論全員その事は理解はしているだけど、怒りや無念を向ける相手が必要だった。
流石に上官達がブーイングを制止しようとした時、《ヨークタウン》からの信号に気付いた。
「信号! 負傷者収容作業への支援参加との事です」
その事に更に、一部から反発の声が上がろうとしたが……
準備している《ヨークタウン》の乗員達の中に、少なくない負傷者がいるのに気付いた。頭に包帯を巻いている負傷者までも、救助作業に志願している様だ。
数秒後一転して、乗員からは歓声が起きる。
「《ヨークタウン》に返信、救助作業支援参加に謹んで感謝すると」
タイトルの意味の回収は後編で。エビを食べたいのはプリキュアでは無く……(無論キョエちゃんでも無いw)
1 アメリカ潜水艦も大戦終盤になると、日本近海で不時着した《B-29》や空母艦載機乗員救助任務が付け加えられた。
2 日本語版では削除されているらしい。
3 シブヤン海で沈んだ戦艦《武蔵》は魚雷20本以上が命中。米軍機が両側から攻撃したので、かなり時間がかかった。《大和》は、命中魚雷12本。《武蔵》撃沈時の戦訓から、「徹底して片側だけを攻撃せよ」という命令が出たから。
BV-143は実在する珍兵器 艦これには出ません(出ても役に立たないw)
噂については後日明らかに。
《ヨークタウン》と《エセックス》の乗員達の間には友情が生まれたみたいです。
今、太閤立志伝5PSP版と「エヴァリースサガ」(ロマサガフリーゲーム)にはまったため終わるまで休むかも…… 光秀で秀吉に1000倍返しを
あと3回で「太平記」の再放映終わる。次は1983年の「徳川家康」か78年の「黄金の日々」のどちらかを期待