プリキュアDOOMSDAY   作:宇宙とまと

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図書館に行く(CVカネオ君)
地元の作者さんの作品コーナー(福井県)
「ん、この素晴らしい世界に祝福を作者さんって、越前市の人やったんか。ちょっと借りてみよー」
パラパラ
「面白い作品やなー。主人公が他の異世界転生ものにありがちなチートじゃないのが、新鮮で面白いなー。仲間が個性的なのもええで」

だが鹿士
カネオ君(涙目のバージョン)
「短編で、半日だけ日本に帰る話をあるんやけど、そこは秋葉原じゃ無く作者の故郷越前市か、福井市にして欲しかったなあ」

本作品はライトスタッフルール2015に準拠しております。


タイトルは元ネタは、銀英伝外伝「螺旋迷宮」で、英雄になってしまったヤン・ウェンリー少佐の独白より。




第71話【成功すると、親戚と友人が増える】

 

 

 

 

 横須賀から、南鳥島へ向かった輸送部隊と、トラックからウェーキへ向かった救援艦隊は、11月3日に日付が変わった直後、およそ40分の時間差で攻撃を受けた。何れも、朝には目的地に入港できる筈だった。

 

 

 

南鳥島救援艦隊

 

輸送隊《荻風》《嵐》(《陽炎型》)《江風》(《白露型》駆逐艦)

警戒隊 《時雨》(《白露型》)

 

 

ウェーキ救援艦隊

 

輸送隊

《天霧》《夕霧》(《吹雪型》駆逐艦)《卯月》(《睦月型》駆逐艦)

警戒隊

《大波》《巻波》(《夕雲型》駆逐艦)

 

 

 両方の艦隊は、完全な奇襲攻撃を受けた。(フレデリック・ムースブラッガー中佐及び、アーレイ・バ―ク大佐)《時雨》が、敵艦隊に気付いたのは、

前方を行く《荻風》《嵐》《江風》に、次々と米駆逐艦が発射した魚雷が命中した瞬間だった。《時雨》は最後尾にいた為に、運良く魚雷が命中しなかった。

 

《江風》は轟沈、《萩風》と《嵐》は航行不能に陥った。《時雨》は慌てて魚雷を討ちながら退避したが、一発も命中しなかった。30分後に魚雷を再装填し戻って来た所、既に米駆逐艦隊は立ち去った後で、《萩風》《嵐》も止めをされていた。《時雨》は、生存者を救助した後、作戦続行不可能と判断し撤退した。

 

 

《萩風》戦死者170名以上。《江風》艦長柳瀬中佐以下169名死亡 《嵐》艦長杉岡中佐以下178名死亡 

 

 

 ウェーキに向かっていた部隊も、魚雷が命中するまで全く気付かなかった。《大波》が轟沈、《夕霧》《巻波》が沈没。《卯月》(魚雷命中するも爆発せず)と旗艦の《天霧》は、辛うじて生還しトラック島に帰還した。

 

 

《夕霧》艦長尾辻中佐以下多数死亡 《巻波》艦長以下ほとんどの乗員が戦死。生存者は30名以下。《大波》生存者無し

 

《天霧》が発射した魚雷が、辛うじて駆逐艦《コンウェイ》に命中したが、無情にも不発魚雷だった。しかし爆発しなくても、被弾した駆逐艦は揺れる。この時機銃等に配属されていた、10名の兵士が海に投げ出された。

彼らは必死に泳ぎ、自艦のスクリューで粉砕されるのを免れた。しかし、船から大きく離れてしまい、戦闘中なので味方も彼らを救助しようとはしなかった。

 

 このとき一人の若い中尉が、必死に下士官や水兵を励まし、撃沈した日本側の駆逐艦から流れた浮遊物に捕まり、奇跡を信じて耐えた。およそ16時間後の夕方、10名は奇跡的に米潜水艦に全員救助された。若い中尉はリーダーシップを高く称賛され、戦後政治家になり16年後共和党の候補、リチャード・ニクソンを破り当時歳少年の合衆国大統領になる。(1)

 

 

 

 

 海軍は再び救援船団を派遣するつもりだったのだが、

「この際ウェーキ島は、放棄して守備隊は撤収させるべきだと思う。補給の負担や潜水艦の攻撃での、船舶や護衛艦の犠牲は少なくない」

山本大将は、復旧はせず放棄すべきだと主張し、一部反対意見も出たが、面積が狭く少数の航空機しか配備できず、(ゲームとは違うんです)大規模な艦隊が寄港できる入り江も無い。小笠原に近い、南鳥島は復旧させる事になったが、ウェーキ放棄は正式に認可された。

 

今度は重巡と航空母艦数隻を護衛に付け、ウェーキ島撤収艦隊には《金剛》と《榛名》も万一に備え同行させた。

 

 

 最初はプリキュアまでは、参加しなくても大丈夫かなと山本大将は考えていたのだ が、

 

 

「今度も米艦隊が攻撃して来る可能性があります。敵も空母を出して来る可能性を考慮すべきです」

「最初の救援艦隊を壊滅させたのは、主力艦隊を誘き出して叩くための罠とも考えられます」

と一部参謀が主張した。確かに焦るアメリカが政権維持の為に考えそうな話ではある。

 

 

 未だ迷いながらも山本大将は、プリキュアに打診してみたのだが、

「参加しまーす」

元々困っている人をほおっては置けないのがプリキュアなので、参加はあっさり決まってしまった。マナ王子パワーに押されたのが原因だがw

 

全チーム参加したかったが、くじ引きによりウェーキ島へはドキプリチームが、南鳥島にはアラモードチームが向かう事になった。

 

救援艦隊は11月12日に、両部隊とも横須賀から浦賀水道を抜け出撃して行った。

 

 

 

 

18日早朝 ウェーキ島

 

 

ありす

「今度は無事に到着できてよかったです」

真琴

「油断しちゃだめよ。帰りを攻撃して来る可能性もあるわ。途中何回か、潜水艦らしい無線も傍受してたみたいだから」

 

艦隊は攻撃を受ける事無く無事にウェーキ島に到着し、現在は救助隊の駆逐艦に守備隊員の収容作業を行っている。

《金剛》や空母などの護衛部隊は、環礁の外で米艦隊の出現に備え待機している。収容作業は正午までは終わる予定だ。

 

ありすと真琴は、ウェーキ島上空で空母から発進した戦闘機と共に待機して警戒している。マナと六花は地上で、負傷者の収容作業を手伝っている。

 

 

六花

「米海軍はなぜ攻撃してこなかったのかしら?」

マナ

「アメリカにも三度目の正直みたいな格言があるんじゃないの? もしくは潜水艦の潜望鏡から私達が見えたから、上の人……太平洋艦隊の偉い人が報告を聞いて、

危険だから攻撃はしないって事になったんじゃないの」

六花

「まあその可能性もありそうだけど」

マナ

「もしかして気分でも悪い?」

六花

「それは大丈夫。……なんかこの作戦に同行してから、どうも時々誰かに監視されている様な気がして」

マナ

「何と! 六花を狙う悪い虫が!」

マナは驚いて周囲を見るが、本土に生きて帰れそうなので、喜んでいる兵士や、マナ達に笑顔で手を振って来る人が良さそうな士官……しかいない。

上空を見ても、飛んでいるのはプリキュア以外では、上空警戒用の味方戦闘機や、対潜哨戒任務中の偵察機だけだ。

 

 

 

 

「えっ、大型の台風?」

マリアナ沖北西洋上で、発生した台風がこの時期にしては大型に発達し、小笠原方面に向かっているとの事。

「艦隊を直接日本本土に向かわせると、この台風に突っ込んでしまうから、艦隊は一旦マリアナ諸島方面に迂回するんだってさ」

 

容態が深刻な、重傷者や重病人は海軍が9月に実戦配備した、大型輸送用飛行艇から、旧式の飛行艇までをかき集めて重病人は、台風が来る前に横須賀へ急送。

中程度の患者や負傷者で入院が必要な人は、一旦サイパン島の病院に入院させる事が決定した。

 

マナ達プリキュアも、休息の為にサイパン島に向かうように指示が来た。艦隊が日本近海を離れてから、いつ米海軍の攻撃があるかと、緊張を緩める時間も無かった。

攻撃は一度も無かったが、何度か潜水艦のレーダー波や、無線をキャッチしていた。

 

 

マリアナ諸島への航路も、運良く潜水艦の攻撃も無く無事到着し、マナやいちか達は一週間ほど滞在し、完全回復した。

 

彼女達が、本土に戻る際海軍は、味方の誤射を避ける為に、暗号で本土に通知を事前に出した。数人規模以上で長距離を移動する際は、対空砲などでの誤射を避ける為に、事前に海軍が通知する事になっていた。

 

 

 

ここで時系列は二月ほど遡る。

 

 

9月15日 英国南部航空基地

 

 

 ジミーは、自分一人だけが叙勲や昇進したことに不公平だと考え、何とか仲間達にも昇進や勲章が授与されるように、実家にお手紙を書こうとした矢先、何と上の方が先に動いた。

欧州軍派遣軍総司令官、アイゼンハワー大将が叙勲の見直しを提案し、それによりラル機残り全員(ジミーの補充に入った搭乗員以外)も、昇進と叙勲が決定した。

更にラル機乗員達は、本国の実験航空隊への異動が内示された。実験航空隊は、主に新型機のテストを行う。

 

その日、ラル機はドイツ北部の港湾都市ブレーメンへの爆撃から無事生還した後でその通知を受けた。本来はテストパイロット部隊への異動は、別の機長に出される筈だったのだが、内示が出る直前に、ドイツへの爆撃任務で戦闘中消息不明になってしまい、次点候補だったラル大尉が繰り上げされた。

 

 

 

翌日夜 基地司令主催の送別会が開かれた。

 

「コズン昇進おめでとう」

「今度2人目が生まれるから、仕送りが増えるのは助かるね」

「テストするのは、噂の超重爆じゃないかな?」

「《B-29》より一回り以上でかいらしいから、翼の上でバーベキューが出来そうだぜ」

テストパイロットに選ばれるのは、優秀な登場だ。だから、選出されたと言う事は一流のクルーと認められる事なので、仲間達も喜んでいる。

 

ラル大尉(昇進は来月1日)は、

「本土へ帰還したら、全員に10日ほど休暇も出るらしい。コズンも生まれた二人目の顔を見たいだろうし、俺も含めて全員家族サービスの一つもしないとな。それに、本土勤務だからクリスマスもあいつらを家族の元に

返してやれるかもしれん。そういえば、ジミーは恋人の一人はいるのか?」

「うーん残念ながら……」

「ま、そのうち良い出会いもあるぞ」

 

 

「昇進おめでとう」

相手を見たジミーは慌てて敬礼した。その人物はあのカーチス・ルメイ参謀だったからだ。

「君に対しつまらん陰口を叩く輩もいるが、気にしちゃいかんぞ」

確かにジミーに対し、

「新米が偶々幸運に恵まれただけ」

と言う悪口もあるが、ジミー自身も「多分に幸運に恵まれた」と考えていたので、別に怒りは無かった。

「こんなご時世だ、実力も必要だが運も多少は無いと長生きは出来ない。どんな優秀な戦闘機搭乗員も、運悪くドイツの新米パイロットが適当に撃った流れ弾をまともに2、3発喰らったら墜落だ。ラッキーだったとしても、敵の撃墜王を仕留め多くの仲間の仇を打った事実は変わらんから、堂々としていろ」

「ありがとうございます」

「広報の仕事は、前線の兵士の活躍を国民に知らせる重要な仕事だから頑張ってくれ。まあ、帰国した直後から最前線が懐かしく思えるかもしれんがね」

最後は意味深な笑みを浮かべて、今度はラル大尉に話しかけている。

 

「大尉のチームの様な優秀なチームが抜けるのは、大変に惜しい事だと思う」

リップサービスでは無く、どうやら本当に惜しんでいるように聞こえる。

「また機会が有れば、何処かの最前線でお会いしましょう」

 

 18日に、ジミーとラル機乗員一行は基地を離れ、鉄道で港があるリバプールへ向かった。20日にジミーは大型客船で、他の一行は翌日に出る軍用輸送機で米本土へと向かう。

ジミーだけ大型客船なのは例の不思議な忖度で、20〇1年流行語大賞にノミネートしなかった、『何とかパワー』の様な、謎の力では無い。手違いでジミーだけ輸送機の枠から、漏れてしまったからだ。

 

この当時大型客船で一隻で、1万人以上の兵員を運べるので軒並み海軍に徴用されていた。ジミーが乗る客船は、速力が28ノットと新鋭戦艦並みの高速が出せるらしい。

 

 18日の夜最後に、仲間だけで食事会をして別れ翌日の昼に、客船に乗り込んだ。他にもジミー同様転属で本土に帰る兵士や、負傷して除隊する人や、戦地を訪問していた慰問団の歌手達、それに新聞記者等が多数乗船していた。

 

「えっ、単独で航行するんですか?」

「高速が出るからその方が安全なんです。他のタンカーとかは半分くらいの速力ですからね。むしろ一緒に航海する方が危険なんですよ」

乗員の説明によると、高速が出る客船は原則単独航海なのだそうだ。ちなみに航海中は何が有っても船を止めるなと言う厳命が出ているそうだ。

「一番辛いのは、他の船団が潜水艦の攻撃を受けて、救助を求める通信を傍受した時ですね。味方を助ける事も禁止されていますので」(2)

この船から、誰かが海に転落しても見殺し確定だ。だから風の強い日などは注意して欲しいとの事だ。

 

 

 20日早朝客船は、埠頭を離れた。

「港の近くでは、護衛も付くのですか」

「港に出入りする時や、近海じゃ最高速度で突っ走る訳にも行きませんしね。他の船も一杯いますから、広い海域に出るまでは英海軍や、アメリカさんの護衛が付きます」

なるほど、リバブール近海のアイリッシュ海は狭い上に、米英間の輸送ルートの重要航路だ。他の輸送艦やタンカーの他に、それらの護衛艦が何隻も見える。

他にも、民間の漁船やマン島や、アイルランドを結ぶフェリーらしき船も一隻確認できた。

 

 

「戦争が始まった最初の頃は、未だ護衛艦などの数が足りなくて、この近海でも何隻もの輸送船がナチのUボートにやられたんですぜ」

説明したくれた大男の船員も、開戦数か月後に英国近海で、乗っていた輸送船を沈められ、九死に一生を得たのだそうだ。

 

 2時間後、アイルランドと英西岸を分かつセントジョージ海峡を通過し、昼過ぎには十分に広い海面に出た。

 

「間もなく、3分後に当船は全速航行に移ります。乗船者の方が万一海に転落しても、一切停船する事はありませんので、ご注意ください。繰り返します……」

3分後、ぼぉおおおーと言う汽笛が響き直後、後ろから押されたような感触を感じた。船の速度が急上昇したのだろう。

 

再び汽笛が鳴り響くが、これは恐らくリバプールから外海入り口まで、護衛してくれた英海軍の哨戒艇に対する感謝の挨拶だろう。

 

 

周囲を見ると、船員や他の乗客たちも哨戒艦に手を振ったり、敬礼して別れの挨拶をしている。ジミーも彼らを見倣い、敬礼をする。

(1年ぶりの本土帰還か、また可能なら最前線に戻りたいな)

 

 

 午後、広報としての最初の仕事として新聞記者のインタビュー受けた。かなり有名な記者だったので、緊張したが何とか終える事が出来た。

 

 

 翌日晴れていたので、甲板に出てみる。ちなみに万一に備え救命胴衣は携帯している。北の方を見ると、一機の大型機が東から西に向け飛行しているのが見えた。

(爆撃機か、輸送機かは距離が有って判別できないけど、輸送機なら大尉達が乗っているかも)

と思い手を振っていると、

 

「突然船が針路を変える事があるから、気を付けた方が良いよ」

昨日取材を受けた、記者が話しかけて来た。

「あっ、昨日はどうも」

「いやこちらこそ、良い記事が書けそうだよ。おっと船の事だけど、潜水艦の待ち伏せを防ぐ為に、船は不定期に針路を変えるんだ」

「確かに直進だけでは危険ですね」

針路を変えるのも、パターンを読まれると危険なので、不定期に針路を変えるらしい。

「針路を変える直前には汽笛や、船内放送で知らせてくれるけど、緊急時には突然針路を変える事もあるから」

「落ちたら終わりですから気を付けます」

 

今日は晴れているので、外気温は12度くらいはあるかもしれないが、恐らく海水の温度は5度くらいしかないのではと思う。

この船は客が落ちても止まる事は無い。偶然近くに英米海軍の潜水艦が居て、潜望鏡で人が落ちるのを目撃していたとか、上空を飛んでいた飛行艇(海面に着水できる)が人が落ちるのを目撃していた等の奇跡が起きない限り、恐らく30分でアウトだろう。

 

 

「しかし、この船が針路を変える正にその瞬間こそが、一番危険かもしれんぞ」

「どういう意味ですか?」

「君が山道をドライブしていたとしよう。カーブではブレーキを踏むだろう?」

「ああなるほど」

カーブを曲がる時、飲酒運転や自殺志願者か銭型のとっつあんから逃げている、ルパン3世でも無い限り、ブレーキを踏んで減速するだろう。この大型客船も、針路を変える際には減速する必要がある。

もしその時、偶然近くにUボートが居て優秀な艦長が指揮を執っていたら……

 

 

そんな話を聞いたせいで、船が針路を変える度に、びくっと震えてしまった。

 

 

 結局一度も、魚雷が来ることも潜水艦の潜望鏡が発見される事も無く、客船は4日目の夜8時にニューヨーク港に到着した。本来は日没前の午後4時入港予定だったが、不運にも、港の外で大型貨物船が火災事故を起こし、消火が終わるまで入港できなかったのだ。

 

大勢の乗客と共にフェリーターミナルに入って行くと、大勢の新聞記者とその相棒らしいカメラマンが何人も並んでいるのが見えた。

(同じ船に、戦地の慰問団も乗っていて有名な歌手やコメディアンもいた筈だ)

慰問団は英本土に展開する、合衆国陸軍航空隊の基地を廻り、歌やショーで兵士たちの士気を高めている。確かに記者の半分ほどは、

慰問団の歌手などの方に集まっていて、歌手等も笑顔で取材を受けている。が、残り半分ほどのカメラマンなどは動かず、誰かを探している様だ。程なくその中の一人が、こちらに気付き……

「ジミー・フォスターさんだ」

その声に気付いた、他の記者たちも一斉に同じセリフを口走りながら、こちらに走って来る。

(どうやら同じ船に、同姓同名の有名人の人が乗っていたらしい。誰だろう? 歌手かコメディアン……有名な従軍画家……

ジョセフ・ケネディ前駐英大使の次男みたいに、有力者の子息だけど、軍に志願して前線に向かった人だろうか?)

もし、同姓同名のジミーがそういう勇敢な人で、後に大統領選挙に出たら必ずその人に投票するぞとか考えていると、記者たちは、ジミーのそばに集まり写真を撮影しだした。

 

(もしかして俺目当てですかー!!)

 

この時、送別会でのルメイ参謀が別れ際に言った台詞を思い出した。ジミーは即回れ右をして、英国の最前線に戻りたくなって来た。

(どこかに英国行きの客船はないかな?)

 

だがそんな事が許される筈も無く、

(納税者である合衆国市民への義務だと思って諦めよう)

 

 

そ の数日後から、ジミーは疾風怒濤の戦場に放り込まれた。枢軸国の銃弾の代わりに、カメラのシャッターの閃光や空虚な美麗字句が飛んでくる、異質な戦場に。

祝勝会、戦没者慰霊式典、ウェストポイント士官学校に招待されてのスピーチ、パーティー(出席者に気持ちよく戦時国債を買って頂く為の)、それらの合間の、取材取材……

 

 

(成功者には、大量の親戚と友人が生まれる事になる……とはよく言ったものだ)

 

「私は君が幼少の時から、君が名を成すような人物に育つと確信していたんだ」

(この人親戚らしいけど、会った記憶も無いなあ……いや一度くらい会った気もする)

他にもほとんど私的な会話も無かった同級生が、親友だと言っていたりもした。

 

無論本物の親友や兄や父親が

「お帰り」

とか

「良く生きて無事に帰って来てくれた」

と言った時は素直に喜んだ。

 

 

 9月の末に改めて、医師の診断を受け数日後に……

「前線勤務に戻って差し支え無し」

という診断結果が出た。それを基に陸軍人事部長キーツ中将と談判した結果、

「年末までは広報部で、PR活動を行う」

と言う事を許可して貰った。その後は希望すれば前線勤務も可能と言う事になった。

(とは言え戦死の危険が高い、独本土やイタリアを爆撃している部隊への異動は、なまじ有名になってしまったから認めて貰えない可能性も高そうだなあ)

 

 

戦死の危険が低い、モロッコやハワイ辺りの部隊に栄転と言うあたりが上層部の考えている、シナリオではないかとも思う。

 

 

 10月も半ばに入り、ようやく一段落なりジミーは、2週間の休暇が与えられ故郷ニューハンプシャー州へ帰郷した。

とはいえその内の半分ほどは、地元でのパーティー(こちらも戦時国債を買わせる為の)や、州知事や故郷の市長に対する表敬訪問や、卒業した学校での講演会

等の仕事が入っていて、休めたのは一週間程度だ。

 

その後、ラル少佐と約束した通りゴードン中佐(戦死による2階級特進)の実家の墓参りに向かった。ジミーにとってはこの近辺は庭の様な物なので、報道関係者の目を

誤魔化す事は容易だった。

 

 

 

 11月7日合衆国大統領選挙が行われ、史上初の4選を狙う現職のフランクリン・ローズベルト(民主党)と、トーマス・デューイ候補(共和党)

で争われた。プリキュアが存在しなければ、現職の圧倒的大差での再選だっただろう、しかし太平洋戦線での大苦境や、オアフ島軍事施設の壊滅等で大接戦となった。

デューイ候補は、日本とはこれ以上の犠牲を出さない為にも、名誉ある停戦も検討すべきだと主張し、一時はローズベルト再選危うしという見方もあったが、

枢軸国の一角イタリアが脱落した事が評価され、選挙人獲得数300対231で、再選となった。

 

しかし、ローズベルトは選挙戦終盤、激戦州に連日テコ入れに行かねばならなくなり、著しく健康を害する事となる。

ローズベルト大統領のHP45→25(3)

 

外務省より報告

 

アメリカ合衆国のイベント

 

アメリカ大統領選挙(1944年)の結果において

 

フランクリン・ローズベルト(民主党)

      を

選択したとの事です

 

 

12月10日 夜8時 上野駅

 

 

里美

「ええーっ、ありすおねえちゃんも私みたいに、病弱だったの?」

彼女の大声に、周囲にいた駅員や客が驚いて立ち止まった。

ありす

「本当です。幼いころは病気がちで家の中にずっといました。6歳の頃チョウチョを追いかけて、お屋敷に迷い込んだマナちゃんと出会い、六花ちゃん

と外で遊ぶようになって、健康になったのですわ」

 

健康になった後、武道等も学び「武神ありす」と呼ばれるほどに強くなった。里美もプリキュア達と、一緒に過ごしている内に健康状態はかなり改善された。

むしろ北海道民の血を引き、寒さへの耐性がある彼女に比べ、一部の現代日本の暖冬に慣れたもやしプリキュアの方が、この世界に来た直後は風邪を引いたりしていたほどだ。

 

いちか

「でも、ここ数日日本全国……北海道を除いて、異様に暖かいって聞いたよ。最高気温10度越えだって」

ひまりん

「まるで温暖化が進んで21世紀みたいです。東北じゃ平地の雪が全部溶けてしまったそうです」

マナ

「雪合戦とかはしばらく無理そうだね」

 

 10日ほど前に、北日本や北陸ではまとまった雪が降り、山形や新庄では一時20センチにまで達したが、この異様な高温や、雨で山間部を除いて溶けてしまっていた。

「おはよう今日も妙に暖かいねえ」

「おはようございます。まるで3月位の気温ですよ」

と言う挨拶を交わすのが、雪が降っている北海道や年中温暖な、小笠原、南九州、高知、沖縄、日本領台湾以外の日本本土でのここ一週間ほどの通例になっていた。

 

 

「ばかー」

「バカっていう方がバカなんだぞ」

ふと見ると、一家で地方に避難するのか裕福そうな一家がいて、幼い兄弟が言い争いをしている様に見えた。マナが即止めに行こうとしたが、ありすが止めた。

よく見ると、ケンカでは無く兄弟でちょっと遊んでいるだけの様だ。

 

ひまり

「いちかちゃんどうしたんですか?」

いちか

「もう一年前の事になるけど、南方から東京に帰ってきた直後に見た、変なカラス……皆は疲れていて変な夢を見たっていうけど、あれはやっぱり現実だった様な気がしますぞ」

里美

「いちかおねえちゃん、カラスは喋れないよ。それにお姉ちゃんをバカにするカラスなんて許せないよ」(4)

うれしくなってハグしてあげるいちか。

「でも私も変な夢を見たの」

マナ

「どんな夢?」

里美

「いちかおねえちゃんと、ひまりおねえちゃんが、海沿いの見た事も無い凄い建物のホールで、外国のダンスを踊っていたの。他に一緒に3人踊ってたよ」

ありす

「外国のダンスと言うと、フラダンスとか? ちなみに二人は経験はあるんですか」

いちか

「無いよー」

ひまり

「ありません」(5)

マナが何か言おうとした時、帝国海軍の山谷少佐(海軍軍令部参謀)が、やって来た。

 

「夕食用のお弁当を用意しました。お茶とミカンもどうぞ」

ちなみに史実同様、「贅沢過ぎる」と言う理由で、6月末に一等車や食堂車は廃止された。

一同

「ありがとうございます」

「念の為に、田中少尉と小沢曹長が同行します」

 

 山谷少佐は、声のトーンを落としさりげなく少佐の右斜め後ろを指さす。そこには、国民服を着た3人ほどの男性が、

本を読んだり、新聞を読んでいたりしている。

「万一……危険は少ないですが、私服の護衛を同行させます。顔と名前はここで暗記して行ってください」

山谷は裏面に、名前が記載された写真を見せた。マナ達は、そこまでして貰う事に少し罪悪感を覚える。

 

「あ、いや皆さんの安全を守る事も仕事ですから。それに現地の安全確認も命じられてます」

ひまり

「安全確認?」

山谷少佐によると、田舎は国道や主要県道級の道はともかく、小さい道などは橋が古い木造と言う事も多いので、それらの橋が傷んでいないかとかや、

悪用されると困る空き家などがあるかなどを調べるらしい。刺客等は非現実的だが、性犯罪者とか全国を移動する、空き巣などが空き家を悪用する危険はある。

 

 いちかとひまりは、明日夜に新庄を出る上野行き夜行急行で帰るが、マナとありすは数日間川方村に滞在する事になった。その後は、プリキュアの子が数日から一週間交代で、数人は村に滞在する事になっている。

 

 川方村は、奥州街道(福島→米沢→山形→新庄→久保田 国道13号線のルート。久保田は現在の秋田市)と、陸羽街道(仙台→古川→鳴子→川方→余目・酒田 現国道47号線)が分岐する要所で、最上川の船便の積出港もあった、宿場町もあり何軒かは江戸自体から続く旅館が有るので、そこに宿泊する事になっている。

 

「あっ、彼ら私服軍人とは、緊急時以外は他人の振りでお願いします」

 

田中少尉

「後10分で出発時間です。汽車に向かいましょうか」

 

 

 

 

12月9日午後6時(米東部標準時) ワシントンDC 某ホテル

 

 

 ジミ―は昨日、ラジオ番組にゲストの一人として出演した。番組は何人かの専門家や軍人が出演し、今後の戦争の流れを予測し討論した。

(何とか無事に終わったか。最初の頃に比べるとだいぶ慣れてきてしまったなあ)

一応広報の仕事は年末までで、その後新年の休暇の後次の辞令が出る筈だ。昨日ラジオ局での収録の後、近くのホテルに宿泊した。ランクとしては中の上で軍人や報道関係者の利用も多いそうだ。

 

  

 朝食を食べる為に、一回のレストランに向かって歩いていると、一人の客が小走りで彼を追い抜き、カウンターでチェックアウトをして、慌ててホテルの外に出て行く。

(?)

 

 レストランに入り、ボーイの案内で席に着く。注文しようとすると、レストランにある電話に外から呼び出しが有った様だ。店員の言葉から新聞記者の様で、隣の席の客が電話機に向かい、

30秒ほど……おそらく新聞社と通話していた。通話を終えるとその人は、手付かずの朝食をそのままにして、清算し店を出て行った。

「ジミー君じゃないか。奇遇だね」

「おはようございます」

以前取材を受けた例の記者だ。どうやら仕事で同じホテルに宿泊していたらしい。

「何かあったんですか? 記者の方が何人も急いで生産して出て行かれましたが?」

「大事件だよ。まだ正式な発表は無いが、国家元首が急死したらしい」

「もしや、ローズベルト大統領?」

大統領選挙はかなり激戦で、連日応援に回っていた大統領はかなり疲労している筈だ。急病死してもおかしくは無い。

(確か、100年程前に当選の直後に急死した大統領が居た筈だ)

「ああ、誤解させてしまったかな。急死したのはソ連のスターリン首相だよ」

「本当ですか! 何時の事です?」

「昨日の昼……現地時間での事だが」

「ドイツ側の暗殺もしくは、空襲に巻き込まれたのでしょうか?」

「詳しい事はまだ判らんよ。では急いでいるの失礼する」

彼も朝食の大半を残し、会計を済ませると、即座に出て行ってしまった。

 

 

 

 再び上野駅

 

 

 山谷少佐は、ホームで夜行が発射するのを見送り、改札を抜けて駅舎に戻る。

(軍令部に戻って夜食に茶漬けでも食うか)

駅前に待たせている、車に乗る為に入口へ向かっていると……

 

「少佐!」

「どうした? 宮武中尉ではないか」

「外務省から、海軍省に緊急連絡がありまして、少佐にも至急軍令部にお戻り願います。ところで、青森行きの夜行は今出た所ですか?」

「おう、つい5分ほど前だ。汽笛が聞こえなかったか?」

「ああ、先ほど聞こえたのがそうでしたか」

「緊急連絡とは何だ? 他のプリキュアの子に何かあったのか?……いやそれは違うな」

他のメンバーに、急病人でも出たのなら、外務省から海軍に連絡が来ると言った可能性は無い。

 

「少し向こうで、ここは人が多いですから」

宮武は、コンコースの隅の方に行く。

「昨日の昼、スターリンが急死したそうです。未だソ連政府の正式な発表はありませんが、佐藤尚武駐ソ大使が知人のソ連政府高官筋から伝えられたそうです」

「何だとそりゃ本当か。ドイツ軍の攻撃か? いや不満分子がテロでも起こしたか」

「詳細はまだ不明との事です」

 

 スターリンは、近代ソ連軍の父と呼ばれたミハエル・トゥハチェスキー元帥や、政敵のレフ・トロッキー等を多数粛清・暗殺している。トロッキーはソ連を追われた後、わざわざ亡命先のメキシコに暗殺者を送り込んで暗殺している。

粛清の犠牲者は一般市民にまで及び、その犠牲者総数は少なくとも数百万に及ぶとも。(6)

 

そんな訳で、独ソ戦開始後ドイツ軍に協力するソ連市民も少なくなく、捕虜にしたソ連兵の一部から志願者を募り、「ロシア解放軍」を編成し、捕虜にしたソ連将軍ウラソフ中将なるものを司令官に任じ、占領地区の後方警備や治安維持任務に従事させているそうだ。

 

 

「取りあえず軍令部に戻って、状況を確認しよう」

どうやら夜食を食べている時間は無さそうだった。

 

 

 

では皆さん良いお年を―。真恋姫呉国編と、魏国編が終わったら次回投稿します。

ローズベルト大統領の残機が遂に3割を切る。史実でもこの頃かなり健康を害していた。

 

デューイ候補が当選していたら、停戦の可能性もあったんだが・…・

 





1 ジョン・F・ケネディの事 魚雷艇艇長として、ソロモン海で行動中駆逐艦《天霧》と衝突し、漂流し無人島に漂着。ヤシの実の内側に救助要請を掘って放流。その後拾った人が軍に、届け解け無事救助。

2 1942年10月アイリッシュ海で、英軽巡《キュラソー》と衝突した時も、停船せずにとんずら。《キュラソー》は轟沈し、7割の乗員が死亡。戦後船会社に賠償金が払われた。

3 史実では大勝利

4 ご本人……いや本カラスによると「バカー」は大好きだよと言う意味らしい。

5 映画「フラ・フラダンス」にいちかとひまりんの中の人が。他にもことはと、ユニも登場。



6 先日もウクライナから、ソ連に処刑された民間人200人ほどの遺骨が発見された。


越前市で建設されていた北陸新幹線の新駅、外観はほぼ完成。水田の中にあります

駅名は『越前たけふ駅』国道8号線からよく見えます。反対側は山が有り、接近不可能。

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