グランブルーファンタジー 〜伝説の蛇〜   作:JOKER1011

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第32話

カリオストロの姿を模したニグレドと戦うグラン達。

 

しかし、手加減の一切ないカリオストロの圧倒的な攻撃力の前に一行は瞬く間に追い詰められていく。

 

錬金術の爆撃を剣で受け止めるグラン。しかし力を抑えきれず、引きずれられる様に後ろに下がる。

「やっぱり凄いな、カリオストロは・・・・・・いつもは全然力使ってなかったんだ‥」

 

額に流れる汗を袖で拭いながらグランはニグレドを見つめる。

 

そんなグランの声にビィが賛同する。

「改めてカリオストロがとんでもねー奴だってのが、良く分かるな‥」

 

時間と共に賢者の石の黒化の能力によって体が重くなっていく一同。グランも戦闘直後ほどは体が動かなくなっていた。

 

「だけど、ここで負けるわけにはいきません! 今もスネークさんとディアンサさんが帝国兵士さんを抑えてくれています」

ルリアの言葉に強く頷き、再び二グレドへと向かっていくグラン。それをルリアがティアマトを呼び出し援護する。

 

最初、グラン達を取り込んでいた帝国兵士たちも、パラケルススの指示によりスネークのいる方向に向かっているため、今彼らの敵はニグレドとパラケルススのみ・・・勝てるタイミングは今しかない。

 

 

ニグレドの放つ攻撃を星晶獣ティアマトが発生させた風により僅かだが反らし、その隙にグランがニグレドに向かって剣を振り下ろす。

攻撃は確かにニグレドに届き鈍い音が響くが、ニグレドにはダメージを与えたようには見えない。

そんなグランの攻撃に追従するかのように、プロメティアとハロルドの錬金術が炸裂し、爆音と共に辺りは爆発に包まれる。

爆発から逃げるようにグランは再び大きく後退し、剣を構え直す。

 

 

これほどの爆発だ。ダメージを与えられたと確信していた一同だが、その期待は裏切られる。

爆風が消え、錬金術の攻撃を受けてもなお平然としているニグレドが姿を現す。

 

グランは苦笑いを浮かべ、額には汗が流れる。

 

 

彼らの耐えられる時間はもう殆ど残されていない。

 

グランが懸命に戦っている最中、彼の後方でクラリスは必死にカリオストロを助け出すための方法を模索していた。

 

 

 

 

そんなグラン達の戦いを見ているパラケルススは機嫌が良さそうだった。

「良いぞ、実に良い調子だ。有意義なデータを提供してくれ」

 

彼の表情には戦いへの慢心もグラン達への哀れみもない。そこには、ただひたすらに真理を追究使用とする科学者の顔がそこにはあった。

時は少し遡る――――――

 

 

「な!?今までロケット弾を食らっても倒れなかったやつはゴロゴロいたから予想はしていたが、本当に防がれるとはな。あの男。」

 

悔しそうに上に向けた、名をキラービーというバズーカ砲を降ろすスネーク。

ふと、辺りが静かな事に気がつき、見渡すと自分とディアンサに襲いかかってきていた帝国兵士の動きが止まっていることに気がつく。

ヘルム越しでは見えないが、困惑しているのを感じとれる。

 

「が、眼帯とバンダナに、俺たちが見たことのない武装を持つ男・・・・・・」

「ま、間違いない!!コイツがポート・ブリーズ群島での惨劇を起こした人物だ!!」

 

次第に恐怖に染まった、悲鳴に近い声が広がっていく。

 

「スネーク!やはりあなたは凄い人だったのだな。ボス!いやビッグボス!」とジャミルがキラキラした目でスネークをみる。

 

「まさかこの世界でもビッグボスと言われるとはな!いくぞ!」

 

 

「くっ、何をしている!!相手は三人だ!!数で押しつぶせ!!進め!進むんだ!」

帝国兵士の指揮官だと思われる人物の号令を受けて、多数の兵士が自分に渇をいれるように大声を出しながらスネークに向かって突撃してくる。

 

「おっと!危ないぞ、ディアンサ。」

右手で背後にいたディアンサの腰に手を回し抱き寄せる。彼女がいた場所を帝国兵士の放った銃弾が通過していく。

スネークは左手で銃を抜き放ち、迫り来る帝国兵に向けて同時に六発を撃つ。

その全てが直撃し、喰らった帝国兵士が地面に倒れ込む。

 

その間を縫ってジャミルが帝国兵を屠る。

 

「ありがとうございますスネークさん・・・って・・・え、歌うんですか?それも今!?」

 

波のように次から次へと迫る兵士に向かってm1911をぶっ放していたスネークだったが・・・。

 

「切りが無い!ディアンサ!歌え!今すぐだ!」

スネークはそう言ってディアンサを肩に担ぐ。

 

「歌う!?ディアンサは吟遊詩人が何かなのか?だがスネークの言うことだ!何かあるに違いない!歌うんだ!ディアンサ!」 

 

「す、スネークさん・・・それにジャミルさんまで‥あのスカートが・・・そ、それにこの体勢で本当に歌うんですか?だって私一人ですよ?それこそ伝統が!ショロトル様に怒られちゃいます!」

 

「大丈夫だ!ショロトルも祭祀も巫女もイクニアも誰も見ていない!俺たち以外はな!」

恥ずかしそうに、スカートの裾を手で伸ばそうとして、見えない様に隠そうとするディアンサを他所に、スネークは今も、ナイフに持ちかえ帝国兵士の銃弾を躱し、ナイフで辺りの帝国兵士を葬っていく。

 

 

やがて、諦めたのか、ディアンサは顔を真っ赤にしたまま、祭司に貰った杖を使いリズムを奏で始める。

ディアンサが歌い始めた直後から、ディアンサの歌の力が優しくスネークを包み込む。

 

「やはり理屈は分からないが、体の奥底から力が湧いてくるな。」

 

 

彼の体が進化したかのように俊敏に動くようになり、敵を屠っていく。横のジャミルも驚きながら両手の短剣を振るう。

 

ますます機敏になった二人は迫りくる帝国兵士を簡単に沈黙させ、帝国兵士達を次々と葬りさっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

兵士たちの怒号や悲鳴が聞こえなくなった時、スネーク達の周りには倒れた帝国兵士の山が築かれていた。

残る帝国兵士は指令官だと思われる男ただ一人。彼はこの光景に呆然としており事態が把握出来ていないようだった。

 

そして、次の瞬間この男にもジャミルの刺突が直撃し、地面に崩れ落ちたのだった。

 

 

 

ジャミルが最後の一人を仕留め、スネークがディアンサをゆっくりと降ろした時、先ほどからグラン達が戦っていると思われる場所で、起こっていたクラリスだと思われる爆破音が止まっている事に気がつく。

 

「ようやくこっちは片付いたな。グラン達の応援にいくとするか。」

「は、はい・・・そうですね」

 

スネークの傍らにいるディアンサの声が小さい事に気づく。

 

「どうした?ディアンサ。元気がないようだが流れ弾でも当たったか?」

 

スネークはディアンサの肩に手を置こうと腕を伸ばすが、ディアンサに払いのけられてしまう。

「そ、そんなこと無いですよ。それよりも早く、団長さんの元に向かいましょう。かなり離れてしまったみたいですし・・・」

 

倒れる帝国兵士を踏まないように避けながら、グラン達がいる方に向かうディアンサの後を追うようにスネークとジャミルは歩き出した。

 

 

 

 

 

スネークとディアンサとジャミルがグラン達を遠くから目視できる程度に近づいた時、その戦場はスネークが最後に見た光景とは大きく異なっていた。

 

 

グランはルリアの前に立ち、今も彼女を庇おうとしているが、その立ち姿はボロボロで戦闘の激しさを物語っている。

 

 

そしてもう一つ疑問なのが、服装も普段とは異なっているが、ニグレドに吸収された筈のカリオストロがその場におり、クラリスと共に方を並べパラケルススを睨みつけていた。

さらに、パラケルススが操るニグレドの姿は何処にも見当たらない。

 

 

スネークとディアンサとジャミルは目の前の光景に理解が追いつかず、仲良く三人揃って首を傾げた。その後

スネークとディアンサとジャミルは見るからに圧倒的不利な状況でも嬉しそうに笑うパラケルススに視線を向けた後―――――――。

 

 

 

 

 

 

 

「随分と嬉しそうだな」

 

「くくくくっ・・・・・・ああ・・・・・・嬉しいとも。今日は俺の今までの人生の中で最良の日と言っても過言ではないだろうな」

 

パラケルススは一度口を閉じた後、声を張り上げる。

「なにせ、ここまで素晴らしいデータがとれたのだからな・・・・・・その上ニグレドを分解してくれたのだ。これ以上に嬉しいことなどあるか?」

 

「なんだと?」

パラケルススの言葉を聞き警戒するカリオストロ。

次の瞬間、どこからともなくニグレドの残骸が一箇所に収束し始める。

 

突然の変化に驚く一同をよそに、残骸は集まっていき新たな形を表す。

 

「え・・・・・・ど、どうして・・・・・・」

「どうしたんだよ、ルリア?」

 

驚愕するルリアにビィが心配そうに声をかける。

ルリアは自分でも分からないと言ったあと、ニグレドが収束した中から星晶獣の気配が現れたと告げたのだった。

 

 

「ほう・・・・・・星晶獣の気配を感知できるのか。ああ、帝国で聞いたことがあったが、お前がそうだったのか。・・・だとすると、あの眼帯の男が一人で帝国兵共を全滅させた男だったかのか。」

一人でに、納得した素振りを見せるパラケルスス。

 

彼は、ルリアの発言を肯定した後、姿を表そうとする星晶獣について語り始める。

この星晶獣は賢者の石の翠化によって再構成され、誕生したと。

 

 

「これこそが星の民の遺産と我らの技術の融合で生み出された最強にして成長する星晶獣・・・アルフェウスだ!さぁこれにどう抗うか見せてもらおうか・・・・・・」

 

「はっ、その程度で最強とは笑わせてくれるな」

「最強だろうとなんだろーと、全部纏めてドカーンって、するだけだっ!」

 

 

 

 

「いくぞ!!クラリス!!塵一つ残すんじゃねぇぞ!」

振り下ろされる。アルフェウスの攻撃を躱し、クラリスとカリオストロが二手に分かれ各々の攻撃手段を放つ。

 

カリオストロとクラリスの攻撃を受け大きく怯むアルフェウス、しかし倒しきることは出来ず、クラリスに向かって多数の魔法陣を形成し放たれる。

 

「や、やば!」

攻撃を放った直後で動けないクラリスに魔法陣の攻撃が迫るが、後ろから走ってきたグランが、クラリスを突き飛ばし、迫る攻撃を剣でたたき落とす。

「クラリス、カリオストロ!!援護するよ!」

 

満身創痍に見える、グランだが彼の目の輝きは失われていない。

 

「団長!!ありがとね!」

「団長さん☆無理はしないでね!」

クラリスが立ち上がり、再びカリオストロと息の合った攻撃を仕掛けていく。

 

 

 

彼女達の攻撃を受けながらも、今度はグランに向かって攻撃しようとするアルフェウスだったが、突如目の前に姿を表したコロッサスの左ストレートが直撃し大きく吹き飛ばされる。

「私も援護します!頑張ってください皆さん!」

グラン達の後方でルリアが声を張り上げる。そんな彼女を守るようにプロメティアとハロルドが立ちふさがっている。

 

 

その後も確実にカリオストロとクラリスが攻撃を仕掛け、ダメージを与えていきアルフェウスに一切の行動をさせず、一方的に責め続ける。

 

しかし、突如アルフェウスが姿を消し、一定の距離が離れた場所に姿を現す。

そして拳を握りしめた途端、グラン達全員の足下に魔法陣が現れ、土で出来た大量の杭が出現し各々に襲いかかる。

 

「「「「っ!!」」」」

グランが剣で弾き、クラリスが存在崩壊で粉々にする。

「こんな攻撃でオレ様を倒せると思っているのかよ!」

カリオストロは何もない空間から2匹のウロボロスを出現させ、向かってくる杭を粉々に打ち砕く。

「皆さん!何か来ます!!」

ルリアの声に反応し、カリオストロが再びアルフェウスに目を向け、今の攻撃が囮だったことに気がつく。

 

アルフェウスの周りには、先ほどとは比べるのが、馬鹿らしくなるほどの魔法陣が展開されており、魔法陣を読み取るに自分の奥義と似た、強力な攻撃が来ることを感じ取る。

 

「クソ!!」

もし、仮に自分と同じ威力の攻撃だった場合、確実に何人か死ぬ。その確信があった。

急いで、自分の奥義を発動させようとしたカリオストロだったが、間に合わずアルフェウスの一撃が発動してしまう。

 

魔法陣が輝きだし、辺りの光が奪われたかのように世界が暗闇に包まれる―――――

 

しかし、その瞬間・・・暗闇の中、カリオストロの目の前を青い何かが高速で駆け抜けていく。

 

 

すると突如、暗闇が晴れ、胴体を横薙ぎに斬り裂かれたアルフェウスが視界に映る。

 

「へへ!私だってやるんだ!」

 

今まで一人で帝国兵と戦い続けていたせいか、服がボロボロになっていて肩で息をしながらベアトリクスが剣を杖に笑う。

 

「この小娘が!!!何故!!!アルフェウスにダメージが!!!」

 

「へへーんだ!私の剣は特別性なんだ!それに私は追い詰められたら追い詰められただけ力が増すんだ!!!」

 

「いけええええ!!!!二人とも!!!!」

 

 

アルフェウスの攻撃がキャンセルされたことを理解したカリオストロは、直ぐさまクラリスに向かって叫ぶ。

 

「クラリス!塵一つ残すんじゃねぇぞ!」

「おっけー☆クラリスちゃんにお任せってねっ☆」

 

 

「うちに壊せないものなんて無い! ジャガーノート・スフィア!」

クラリスの存在崩壊の一撃によって跡形も残らないほどに、粉々に砕け散るアルフェウス。

 

 

 

こうしてグラン達は、星晶獣アルフェウスを倒し完全に消滅させることに成功したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして時は流れ――――――

 

クラリスの両親達に事後処理を任せ、一同はラカムが待つグランサイファーの元へと戻ってきた。

 

黒幕のパラケルススには逃げられたが、無事帰還できた事を喜ぶグラン。

 

新たに旅の仲間に加わった、カリオストロを「ししょー」とよぶクラリス、そしてジャミルをつれ、一同はカタリナ達が待つアウギュステ列島に向けて飛び立っていった。

 

 

 

 

 

 

 

再び、彼らを見送る形となった、スネーク。しかし今回は一人ではなく隣にはディアンサとそしてベアトリクスがいる。

「それじゃオレ達も行くとするか、ディアンサ。」

「はい!次の島ですね!ベアトリクスさんは来ないんですか?」

 

「ああ、私も着いて行きたいのは山々なんだが、今回の事について上に報告しないといけないしな!」

 

「では、ここでお別れですね。」とディアンサは寂しそうな顔をする。

 

「また会えるさ!なんかそんな気がするし。」

 

 

 

 

少しして、ベアトリクスに通信が入り女性の声が聞こえてくる。

 

「はい!え!?はい、今すぐします‥」

 

「それじゃあな!」と走っていった。

 

(アストレイ・アルケミスト編 終了)


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