グランブルーファンタジー 〜伝説の蛇〜 作:JOKER1011
スネークが石をその草むらに投げ込む。
「キャアッ!!な、なんですかあなた達は!?」
草むらから少女が飛び出してきた。
「アンタこそ何者だ!?こんな薄暗い森の中で‥いったい何をしていた!!」
「ひっ!?」
「待て。また必死になってるぞ。」
「すまねえ、スネーク。」と武器をしまう。
「さっき発着場で私とぶつかった人ですよね?」
「あ!はい!その節はすいませんでした!」
「い、いえ、私の方こそ!」
「私‥ソフィアと言います。旅の僧侶です。」
「その‥王都を目指している途中で近道をしようと思って横道に入ったら‥すっかり迷ってしまって‥ははは。」
「なーんだ!俺と一緒で迷ってるのか!」
ディアンサはそのヴェインの発言に驚く。
「え!?ヴェインさん!?迷ってたんですか!?」
「え?あ!すまねぇ‥」
「だと思ったよ。近道はシェロから聞いている。こっちだ。」とそこからスネークの先導で王都へ向かった。
「それでソフィアさんはどうして王都へ行くんですか?」
「私は‥王様へ直訴をしに行くんです。」
「直訴か。それはまた何故だ?」
スネークが聞くとソフィアは悲しそうな顔で口を開いた。
「私は今聖地巡礼の旅の途中で、この星晶獣の加護により栄えし国に立ち寄ったのですが‥」
「慟哭の谷のふもとにあるルフルス村では、突然、収穫前の作物が枯れてしまったり‥生まれたばかりの赤子や老人が次々に命を落としていく‥謎の奇病が蔓延しているのです。」
その話にヴェインが驚いた。
「なんだと!?俺が王都に仕えていた時はそんな話聞いた事なかったぞ!」
「まー俺は身体が丈夫だったから縁がないっちゃあないんだがな!わははは!」
「詳しいことはわかりませんが、この国で何か異常事態が起きていることは間違いないのです!」
そう言うソフィアの杖を持っていない方の手は固く拳を握り震えている。
彼女はその村の悲惨な現状を自分の目でしっかりと見てきて自分には何も出来ず、自分の無力さを知ったに違いない。
自分が何も出来ないことへの怒りと悔しさでいっぱいなのだろう。
「しかし‥そのような異常事態が起こっていたとは聞き捨てならない問題だな。」
「ファフニールが復活してシルフが食べられた事と何か関係があるのでしょうか。」
ヴェインとディアンサが互いに首をかしげる。
「その件については私も独自で調査をしてみようと思います。あと気になることが‥」
「どうした?」
「過去に病気の症状や作物の異常について調査していた村長が調査資料を持って王都へ向かったそうなのですが‥それっきり行方不明になったそうで‥恐らく魔物に襲われてしまったのではと‥」
「そうか‥それは気の毒なことだな。」
「よし!わかった!ソフィアが王様に謁見出来るように俺も協力するぜ!」とヴェインが息巻く。
そして引き続きスネークを先頭に道を進んだ。
「す、スネークさん‥あと‥どのくらいですか‥?」
「意外と‥遠いんですね‥」とディアンサとソフィアが膝に手をついて息をする。
「確かそろそろだが‥あれか?」
「あれは!王都フェードラッヘの南門だ!」
そこからは案内をヴェインと変わり城内の玉座の間へと進んだ。
その頃、玉座の間では‥
「イザベラ様。ファフニール討伐軍の準備が整いました。」
「ご苦労だった、ランスロット。しばらくそこで待機していてくれ。」
「はっ!」
「カール国王様。このイザベラ、此度のファフニール討伐作戦に同行してもよろしいでしょうか?」
「うむ。お主が誰よりもシルフの事を案じておるのはワシが一番知っておる。気をつけていって参れ。」
「はっ!有難きお言葉。ご配慮、誠に痛み入ります。」
「それでは私とランスロットが率いる討伐軍は明朝出立いたします。」
その時、ヴェインに連れられたスネーク達が玉座の間に現れる。
「白竜騎士団のヴェイン!ただいま、戦地より帰還しました!」
「ヴェイン!」
「ランちゃん!」
「そ、その呼び方はやめろ!‥‥場をわきまえろ。」
二人はガシッと音が出そうなくらいの握手をする。本当に二人は仲がいいのだろう。そう感じる。
この男がヴェインの言っていたランスロットという男か。彼が一国の騎士団の長か。若いな、まだ20代だろう。
「しかし、港まで迎えに行けなくて悪かった!ちょっとゴタゴタがあってな!」
「気にするな!この通り無事に帰ってこられた!」
「これっ‥王の御前であるぞ‥」と王の側に控える女性が静かに、そして威厳のある声で諌める。
「はっ‥‥」
「なんと!?イザベラ様は相変わらずお美しい!以前よりも更にお若く‥」と女性‥イザベラの言葉が聞こえていないのかヴェインが空気を読まない発言をした。
「ヴェインめ!私語を慎め!」
怒られた。当たり前だ。
しかし王を見ると笑っているようにみえる。
「まぁまぁ、よいではないか‥久しぶりの親友同士の再会だ。ところで‥そちらの方々は?」
「はっ!こちらはここへ向かう途中で出会った騎空士の方々と、旅の僧侶です。」
「ヴェイン!今は国の有事だぞ!そのような素性の分からぬ者どもを王の御前に軽々と招き入れるな。」
確かに俺もそれは疑問に思っていた。国の守り神を奪還するべく動いている中で普通は城に、ましては玉座などに入る事ができるはずない。
「あ!いえ。ですので‥」
「よいよい、旅の方々。王都フェードラッヘへようこそ。それとイザベラの非礼を許してくれ。」
「気にしていません。我々も本来なら玉座にまで入る事が出来るとは思っていません。」と俺は久しぶりの敬語で話す。
「そう言ってもらえると助かる。今は見ての通り王都が慌ただしくて、皆ピリピリしておってな。して‥‥‥そなた達は何者だ?」
「は、初めまして!こここ、国王様!」
「ははは!何もそこまで緊張しなくともよい。ざっくばらんに話してくれ。」
「俺達はこの国の守り神とされているシルフ様と呼ばれる星晶獣に会いにきた。」
「ふむ。しかしシルフ様がファフニールに喰われてしまったことは、そなた達も知っておろう?」
「はい、港で商人達が話しているのを聞きました。」
「その通りだ。残念ながら‥ファフニールを倒さん事にはシルフ様に会うことは叶わんのじゃ。」
「なら、俺達も討伐隊として協力させてほしい。」
「ほう、スネーク殿は我ら白竜騎士団と肩を並べて戦いたいというのか。」とランスロットが言う。
「はい!スネークさんは凄いんです!一人で星晶獣も倒しちゃうし‥あ!あの時はもう一人いましたね。確か‥黒い鎧に、仮面つけてた人だったけど‥」
「なるほど。スネーク殿とやらは星晶獣を倒せるほどの力を持っているというのか。よろしい。イザベラ、ランスロット。彼も仲間に加えなさい。」
「‥!はっ!」
「かしこまりました。」
そう言い、二人とも頭を下げる。
「旅の方々の用は済んだだろう。なら立ち去りなさい。」とイザベラは冷たく言う。
「な!?ちょ!」
その時、王の前にソフィアが出た。
「国王様!お初にお目にかかります。私、大僧正ペテロの孫のソフィアで御座います。」
「なんと!?そなたはあのペテロ導師の孫であったか!」
「ペテロ?ヴェイン。それは誰だ?」
「ペテロ導師といや、ゼエン教に帰依する全ての僧侶を束ねるトップだぞ。」
「つまり教祖の孫か。」
「‥‥祖父よりカール国王の事は度々伺っております。スネークと同じように私も目的を持ってこの国を訪れました。」
そう言うと、ソフィアは島で起きている異常事態と民衆の窮状を静かに訴えた。
「確かにその奇病とやらも気にはなるが‥やはり優先はシルフ様の奪還なのだが‥」とイザベラは眉間を指でつまんだ。
「はい。ですからまずは一刻も早くシルフ様の救出を成し遂げ、王都に平穏を取り戻す必要があります。」
「私はそれからこの国の異変を調べたいと思っています。」
「ふむ。分かった。それではソフィアよ。そなたも討伐隊に加わってもらおう。今日のところは体を休めなさい。」と王は言った。