グランブルーファンタジー 〜伝説の蛇〜   作:JOKER1011

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第35話

次の日

 

「さぁ、みんな!準備はいいか!」

 

ランスロットは討伐隊の前に立ち、言葉を述べる。

 

「我ら白竜騎士団の名誉とフェードラッヘの栄光のため、真龍ファフニールを打ち倒す!」

 

「そして必ずしや、シルフ様を救出し民の安寧を取り戻すぞ!」

 

「うおっー!」

 

白竜騎士団の団員達から歓声があがり、皆が奮い立つのがわかる。

 

こうしてランスロット、ヴェイン、ソフィア、スネーク達の先発隊と、イザベラが率いる後発隊に分かれて進軍を開始する。

 

「ええと、君は‥ディアンサちゃんであってるか?」

 

「はい!白竜騎士団団長のランスロットさん!」

 

「君は‥ウォークライ‥いや味方を鼓舞させる力を持つと聞いたが、具体的に何をするんだ?」

 

「歌です。」

 

「歌?」

 

「はい、私が歌うといつもより力が出るんです。最近知ったんですが。」

 

「なるほど。それd‥」

 

「まさか!あなたはディアンサ様ですか!」

 

「え!?私に様をつけるって事は‥」

 

「はい!あなたのイクニアです!」

 

なんと世間は狭かった。白竜騎士団の中にも巫女を応援するイクニアがいたのだ。

 

「す、凄いや!あなたが巫女を卒業してから、もう会えないと思ってました!嬉しいです!」

 

「あははは‥ありがとうございます。」

 

「それで先程チラッと聞いたのですが‥歌われるのですか?」

 

「はい!」

 

「頑張ります!俺めっちゃ頑張ります!」

 

それだけ言い、また列に戻っていった。

 

「すまない。」

 

「いえいえ、謝らないでください!私も久し振りに私のイクニアさんに出会えて嬉しかったですから。」

 

「おーい!ランちゃーん!そろそろ休憩にしないか!」

 

「ああ!そうしよう!」

 

「ふふ、ランスロットさんとヴェインさんって本当に仲がいいんですね。」

 

「それにランちゃんってなんだかワンちゃんみたいで可愛いです!」

 

「うぐっ‥だからあれほど人前ではやめてくれって‥もう訂正するのも面倒だ。」

 

「ヴェインとは故郷の家が隣同士でな?昔から一緒だった。」

 

「へえ〜そうなんですね。」

 

ディアンサとランスロットが話しているとスネークが近づいてきた。

 

「団長。」

 

「ランスロットでいいさ。スネーク殿。」

 

「シルフという星晶獣がどんな姿をしているかだとかを聞きたい。」

 

「シルフ様は少女の姿をしており、その可愛らしさと神秘的な力で国民のみんなから敬愛されている。」

 

「へ〜とっても可愛らしいんですね〜」

 

「それだけじゃない。シルフ様はファフニールの力を借りて霊薬を作り出すんだ。」

 

「私も聞いた事があります。不老長寿の霊薬アルマですね?」といつのまにか近くにいたソフィアが話に入ってきた。

 

「そう。その霊薬アルマはどんな病もたちまち治してしまう万能薬だ。」

 

「そしてシルフ様がお作りになったアルマをイザベラ様が無償で民に配っているんだ。」

 

「確かに旅の途中で会った人たちの中に霊薬のお陰で助かったって言ってる人もいました。」

 

「そうだろう?いつも厳しいイザベラ様も民には優しいんだ。」

 

「しかし、私が立ち寄ったルフルス村はアルマが行き届いていませんでした。最後までシルフ様の加護を信じて亡くなっていった方を大勢見ました。」

 

「ああ、残念ながら現状では全ての国民に薬が行き届いているとは言い難い。」

 

「だからこそシルフ様を奪還するのだ!」

 

「と、いう事はシルフはファフニールにもとへ?」

 

「ああ、その日もだ。普段はファフニールは封印されているはずだ。しかし誰かに封印を解かれたようだ。それで逃げている最中に謎の剣士が現れたらしくてな。」

 

「どんな奴だ?」

 

「俺も伝聞でしかないが、黒い鎧にボロボロのマント、そして仮面をかぶっていたようだ。」

 

「‥!まさか‥」

 

スネークの咄嗟の反応をランスロットは見逃さなかった。

 

「スネーク殿!何か知っているのか!」

 

「ああ、俺は最近その特徴に合う男にあった。名は確か‥」

 

 

「え!?ジークフリートさんが!?嘘だろ‥」

 

「おい、ヴェイン!その名を口に出すな!!」

 

「あ‥!わ、ワリィワリィ!」

 

 

 

「俺は先に行くぞ!」とランスロットは向こうへ行ってしまった。

 

「何か‥あったんですか?ランスロットさん‥ジークフリートさんの名前を出した途端、急に‥」とディアンサが悲しそうな顔をする。

 

「あー、そかそか。みんなは知らなかったのか。この国に起こったあの事件を‥」

 

「あの事件‥とは?」とソフィアが聞く。

 

「まあ‥‥‥誰もが忘れたい事件だからなぁ。アイツが怒るのも無理ないんだが。」と言いながらヴェインは困った顔をする。

 

 

時を同じくして山道の岩陰から、ファフニール討伐隊の動向をうかがう一人の男の姿があった。

 

「思ったより護衛が多いな‥それに見知った顔もいるようだ‥あの時の巫女と‥スネークか。」

 

「まぁいい‥しばらくこのまま偵察させてもらうか。」

 

 

 

「!?」バッ!

 

スネークは何者かの視線を感じて咄嗟に後ろを振り返った。

 

5秒ほど睨むとすぐに見るのをやめた。

 

「スネークさん?」とディアンサがスネークの妙な動きを疑問視する。

 

一行は休憩を終え、龍の巣へと行軍を続けていた。スネークはヴェインから話の続きを聞こうと思い、話しかけた。

 

 

「いや‥なんでもない。それよりヴェイン話の続きを頼む。」

 

「あ、ああ。その昔、この慟哭の谷周辺はファフニールが暴れまわっていて今よりもずっと荒廃していたんだ。」

 

「そんな時、王都に仕える忠騎士ジークフリートが、ファフニールを打ち倒して封印しちまったんだ。」

 

「たった一人でか?」

 

「ああ。ジークフリートは''竜殺し''って名誉な通り名で呼ばれるようになって、先代のヨゼフ王にも気に入られてよ。そのまま王直属の護衛騎士として重用されて、若くして王都を守る、騎士団の団長に任命されたんだ。」

 

「その時にできた騎士団が、今の(白竜騎士団)の前身である(黒竜騎士団)ってことだな。」

 

「ジークフリートは、黒龍騎士団の団長になった後も、数々の戦場で武勲を挙げて国民的な英雄になったんだ。俺とランちゃんが黒竜騎士団に入団したのは、ちょうどその頃だったかな‥」

 

「それで‥その''竜殺し''の英雄ジークフリートは、この国の一大事に何をしているのですか?」

 

「ははっ‥‥‥さあな?ジークフリートは今、行方知らずさ。国を追われてな。」

 

「え!?」

 

「国王を惨殺した罪で、お尋ね者に成りさがっちまった。」

 

「え‥私達を助けてくれたのに‥‥どうしてお尋ね者に‥?」

 

「''竜殺しの英雄が''王殺し''の狂人になりさがっちまったのさ。」

 

「まったく笑えねぇよ。ランちゃん、最後まで信じてたのにな。国以上に、アイツが裏切られた。」

 

「過去に‥そんな痛ましい事件があったのですね。」

 

「まぁ‥‥‥ジークフリートは俺らの上官だった男だからさ、色々と思うところがあるわけよ。」

 

その時ランスロットが話を遮るように口を開いた。

 

「ヴェイン、無駄話はそこまでだ。ここから先は龍の巣だ。もっと緊張感を持て。」

 

「了解了解!失礼しました〜」

 

そしてスネークにだけ聞こえるようにボソッと口を開いた。

 

「まあ、何にしてもだ。いくら狂人と言われようがスネークとディアンサを助けたんだ。それ聞いて安心したよ。心の底まで悪人じゃないって分かってさ。」

 

一行は洞窟内へ入り、ファフニールを目指して歩を進めた。

 

スネークは潜入任務だと言いながらダンボールを被ろうとしたところ、ディアンサに止められ、渋々しまった。

 

「ディアンサ。スネークはいつもああなのか?ダンボール?とかいう物を被ろうとしたが。」

 

「はい、私も最初見たときは驚きました。彼曰く、被ったら落ち着くらしくて。」

 

「被ったら落ち着く?理屈は分からんが、今度機会があれば被ってみることとしようか。」

 

「焦りは禁物だ。万全を期し、ファフニールに感づかれないよう慎重に進むぞ。」

 

ランスロットの言葉を聞き、だったらと再度ダンボールを被ろうとした為、ダンボールはディアンサに回収されてしまった。

 

更に歩いた頃、先頭が止まった。

 

どうやらファフニールが近いようだ。

 

洞窟が揺れているな。これはオーラか?

 

そう考えていると、後方の部隊にいた執政官イザベラが前線に姿を現した。

 

「皆さん‥‥いよいよファフニールが近いようですね。」

 

「イザベラ様?突然どうなされました?」

 

「ランスロット。いえ‥‥皆さんに伝えたいことがありまして。」

 

その言葉に兵士たちは更に静かになる。

 

「ここまで見てきた皆さんの実力は本物でした。王都で働いた、数々の非礼をお許しください‥」

 

「ランスロット、ヴェイン。そして皆さん!くれぐれもシルフ様を頼みます!」

 

「はっ!私の命に代えてもシルフ様を救出します!」

 

「ああ、気にするな。俺達に任せろ。」

 

 


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