グランブルーファンタジー 〜伝説の蛇〜 作:JOKER1011
「グルアアァァァ!!」
スネーク達が龍の巣の最奥へとたどり着くと、そこには暴れまわる真龍ファフニールの姿があった。
「ファフニールが暴走しているだと!?いったいどうしたというんだ!」
ランスロットが武器を抜きながら驚く。
周りの兵士も驚いているようだ。
「私たちの気配に感づいて、威嚇しているのでしょうか?」
「いや、あの様子は‥威嚇ではない。あれではまるで‥‥」
「はい‥まるでひどく苦しんでいるように見えます‥」
「だが、苦しんでいるならチャンスじゃねーか!?近づける隙をうかがうんだ!」
「グルアアァァァ!!」
そう面々が口に出してる間もファフニールは暴れまわり、辺りを破壊しまわっている。
「シルフ様‥‥もう少しの辛抱です‥‥」
「よし、今だ!行くぞ!」
ランスロットの掛け声により、皆武器を構えて突撃した。
対するファフニールはそれが見えているのか、定かではないがもう一度吠え、更に辺りを破壊し始めた。
そしてそれが歌っているディアンサに向く。
「させるか!!」
ヴェインが槍斧を振りかざし振り下ろされた爪にぶつける。
「ナイスだ!ヴェイン!」
そう言い、ランスロットはヴェインの脇を抜け、斬りかかる。
「グルアアア!!!」
ダァン!
スネークの銃から飛び出した弾丸が鼻にヒットし、更に苦しみだす。
そしてとうとうファフニールは地面に倒れ、それと同時にその口腔の奥からシルフが顔を出した。
「ふぅ‥‥とても息苦しかった。」
「しかし、ありがとう人の子。感謝に堪えません。」
これが星晶獣シルフ‥喰われたと聞いていたから正直死んだと思っていたが、なるほど。小さいのか。これなら喰われたというより呑まれたが正しいな。
「シルフ様!よくぞご無事で!」
「良かった‥御身がご無事で何よりです。」
ランスロットとイザベラが口にだす。
「イザベラ。貴女も来てくれたんですね。ありがとう。」
俺の横ではディアンサが笑顔になっていた。
「あれがシルフ様‥蝶々みたいで可愛い‥そりゃ人気者だよ。」
するとシルフがこちらに向いた。
「貴方達は見ない顔だけど‥どうやら迷惑をかけたようですね。」
「でも良かった!シルフ様が無事で!」
俺とディアンサとソフィアに向いていた視線が今度はディアンサ一人に絞られる。
「君は‥なるほど‥私と同じ星晶獣の‥加護を受けているのですね。」
「へ?あ、ショロトル様のことですね。」
「ショロトル‥?名は知りませんが、貴方には何か特別な力を感じる。それは貴方にも。」と今度はスネークも見ながら喋った。
「貴女からは‥親しみ?そして貴方からは‥よく分かりませんが何かを感じます。」
「親しみ!?ありがとうございます!あの‥もし良かったら‥友達に‥」
「友達?分かりました。興味深いです。」
「やっ‥やった!」
「貴女には興味があります。帰り道の話し相手になっていただけませんか?」
「はい!よろこんで!」
周りの兵士達はディアンサとシルフが喋っているのを見て先程までの戦闘で緊張していた顔を綻ばせる。
「へへっ!ディアンサとシルフ様は妙に馬があってるみたいだな。」
ヴェインが近寄ってきて話しかけてきた。
「さぁて‥運動したら腹も減ったし、早い所王都に帰ろうぜ!」
「そうだな。だがヴェイン。王都にたどり着くまでが任務だ。気を張る事を忘れるな。」
「スネークの言う通りだな。」といつ間にか側にいたランスロットがうなづく。
こうして、再びファフニールを封印することに成功した討伐軍。彼らは軽やかな気持ちで龍の巣を後にするのだった。
ランスロットの部隊を先頭に帰路についていると、突然後方のイザベラの部隊から悲鳴があがった。
一行がイザベラのもとにたどり着くと身の丈ほどの大剣をイザベラに突きつけた仮面の男がいた。
「法政官イザベラ‥‥ここで死んでもらおう。」
「きっ、貴様は‥ジークフリート!?」
「フェードラッヘに仇なす逆賊めが!よくもおめおめと姿を現わせたものだな!」
「お前は‥あの時の剣士か。」とシルフがつぶやく。
あの時‥?なるほど。ジークフリートがシルフをファフニールに呑ませたのか。
「ファフニールに喰われてもなお生きながらえるとは‥‥さすがは化け物。」
「なっ!?では貴様がファフニールを!この期に及んで‥いったい何を企んでいる!」
「さあな‥シルフを餌に貴様をおびき出すつもりだったが‥」
「そんなことはもうどうでもいい‥いま、ここで全ての決着をつけよう。」
「くっ‥」
シルフは目の前の光景に手が出せずにいる。
「シルフ様は下がっていてください!」
「貴様!一人で現れるとは命知らずだな!」とイザベラの部隊の護衛兵士が前に出る。
「我ら白竜騎士団を相手に‥生きて帰れると思うなよ!」
ダメだ。ジークフリートの戦力は俺も知っている。奴の闘いぶりを見たが奴は一個大隊を相手にできる。
「‥‥‥‥‥邪魔をするな‥‥‥‥!!」
「くそっ!ランスロットはまだか!」
ジークフリートがイザベラに剣を振り下ろした瞬間‥
ガキンッ!!!
「イザベラ様!ご無事ですか!」
「た、助かったぞ!ランスロット!早くこの逆賊を捕らえるのだ!」
「ランスロットか‥久しいな。」
ジークフリートはフルフェイスの仮面の顔の部分を外しながらランスロットに声をかける。
「な!?ジークフリート!?」
「嘘だろ!?なんでジークフリートがこんなところに!?」
「お前達は‥ほう。スネークまた会ったな。」
「ああ、あの時は世話になったが、これはいったいどういうことだ。説明しろ。」
「そうです!あの時貴方は私達を助けてくれたじゃないですか!なのに‥どうして‥」
「仕方ない‥無駄な戦闘は避けたかったがな。」
「かつての英雄とはいえ、この人数相手に勝ち目はないわ!観念しなさい!」
「ふぅ‥久々に手合わせしてやろう。」
結果としてはジークフリートの方が一枚以上上手だった。
「どうした、ランスロット。息が上がってるんじゃあないか?」
「くっ‥‥」
「流石は竜殺しってとこか。剣の腕も、タフさも尋常じゃねえ‥」
「まともに戦えるのは‥スネーク。お前だけか?」
「それにしてもランスロット。昔のキレがなくなっているな。団長の座につき、ぬるま湯につかったか?」
「はああああ!!!」ドガッ!
「ぐぅっ!?」ドサッ!
ダァン!
カキン!
スネークが銃を撃つが、剣の刃の部分で受け流される。
「くらえ!スネーク!」と剣を振り上げ、向かってきた。
一瞬ナイフを出そうとしたが、受けきれないと判断し、マチェットで受け止める。
鍔迫り合いがおき、両者が動けない。
「やるな。スネーク!」
「当たり前だ。俺だって一組織の長だ!」
その時、ボソッとジークフリートがスネークだけに聞こえるように喋った。
「伝えたい事がある。今晩一人で龍の巣に来い。」
「何?そこに何がある?」
「来れば分かるさ!はぁっ!!」ドンッ!
スネークは押し切られるが、咄嗟に地面を転がる。
「ランスロット!ひとまず勝負はお預けだ。」
「待て!ジークフリート!このまま逃げる気か!」
「熱くなるな‥‥お前は、もっと冷静に周りを見ろ。」
「何を言っている‥‥‥!?待て!!」
「ランスロット!今はシルフ様の護衛が最優先だ!決して深追いはするな!!」
「くっ‥くそおっ!!貴様はこの俺が絶対に捕らえてやるぞ!!」
ランスロットの叫びも虚しく、ジークフリートは山中に姿をくらませる。
無事にシルフを救出し事態は収束したように思えたが、ジークフリートの出現によりスネーク達は更なる混乱の渦に飲み込まれていくのだった。