グランブルーファンタジー 〜伝説の蛇〜   作:JOKER1011

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第39話

「待て!ランちゃん!」

 

ヴェインを先頭に俺たちは追いかける。

 

「ちょっと待つであります!自分はどうして走ってるんでありますか!」

 

見知らぬ声が聞こえ、何かと声がした方を向くとディアンサが鎧を着たハーヴィンの手を繋いでいた。

 

「ディアンサ?誰だ?その人。」

 

「え?白竜騎士団の方じゃないんですか?」

 

「確かにハーヴィンはいることにはいるが‥そんな顔はいなかったと思うぞ?」

 

「やっぱりハーヴィンって可愛いわ。」

 

 

「な!?自分は!リュミエール聖騎士団現団長のシャルロッテ・フェニヤであります!」

 

「フェニヤ?お前名字があるのか?」

 

「あります!」

 

知らなかった。いや、それか名乗ってないだけでやはりこの世界でもあるものなのか。

 

「そ、それより皆さん!ランスロットさんを追わないと!」

 

ソフィアの言葉に皆目的を思い出し、ランスロットを追いかけた。

 

すぐに見つかり、怖い顔をしながら辺りをウロウロしていた。

 

「ランちゃん!」

 

「おお!ヴェイン!ジークフリートを見たか?」

 

「いや、見てねえな。」

 

「そうか‥あいつは必ず俺の手で‥」

 

「落ち着くであります!ランスロット団長!」

 

「なんだと!」

 

ランスロットはイラついた顔でシャルロッテを見る。がすぐに顔が驚きに変わる。

 

「な‥貴女はシャルロッテ団長!どうしてここに!?」

 

「自分は‥ええと‥今はそんな事どうでもいいのです!少し落ち着くべきであります!」

 

「分かっています!しかs‥」

 

「キャア!」ドタっ!

 

ディアンサが前のめりに転んでいた。

 

「大丈夫か?」

 

スネークは駆け寄り、手を掴んで立たせる。

 

「あらあら、ディアンサちゃん。大丈夫?怪我とかしてない?」

 

「いえ‥大丈夫です。」

 

「ディアンサさんって意外とドジっ子なんですね。」とソフィアが笑う。

 

笑われた事に対してディアンサは頬を膨らませながら反論する。

 

「ち、違います!何かにつまづいたというか‥」

 

つまづいた‥?は!まさか!

 

スネークはすぐに地面に伏せ、耳を地面につける。

 

よく見るとナルメアも同じことをしていた。

 

「スネーク。」

 

「ああ、間違いない。何かあるぞ。」

 

スネークはすぐにナイフで地面を掘る。

 

すると鉄の板が掘り起こされ、試しに力を入れると簡単に開き、階段が現れた。

 

「もしかしてジークフリートは、ここに‥?」とソフィアは呟く。

 

「ランスロット!シャルロッテ!こっちに来てくれ!」

 

スネークが声をかけると二人は走ってきた。

 

「スネーク!どうした!‥これは!」

 

「まさか‥隠し通路でありますか!」

 

「そのまさかだろう。」

 

スネークが降りようとするとランスロットが止める。

 

「待て。俺が先に降りて危険がないか確かめる。」

 

その後、ランスロットから異常が無いことを聞かされ、降りていく。

 

ランスロットの先導のもと、一歩一歩進む。

 

「なんだ‥ここは‥?王家の隠し通路か?」

 

「驚いたぜ。地下にこんな空間が広がってるなんて。」

 

どうやらランスロットとヴェインも知らない隠し通路らしい。

 

「もしかしたら‥この先にジークフリートが?」とソフィアが言う。

 

「分からんな。だが進むしかないだろう。」とスネークが答える。

 

「なんだか気味が悪いよ‥」

 

「大丈夫よ、ディアンサちゃん。お姉ちゃんが守るわ。」

 

「ディアンサ殿!大丈夫であります!出たとしてもネズミくらいであります!」

 

キキッ!

 

「!?」

 

一行の前と後ろからネズミの魔物が現れ、挟まれる形になる。

 

「戦闘用意!」

 

先頭のランスロット、ヴェイン、ソフィアと殿を務めていたスネークとその前にいたディアンサ、ナルメア、シャルロッテに分かれて相手をする。

 

ネズミの数はこっちに6匹、ランスロット側に4匹の計10匹だ。

 

俺はスタンロッドを構えるディアンサを背に庇いながら2体のネズミと対峙する。

 

良い機会かもしれない。

 

「ディアンサ。ちょうど2対2だ。」

 

「え?はい‥まさか!無理です!」

 

ディアンサは俺の言葉の意味が分かったのか、激しく否定する。

 

「お前だっていつまでも守られてる人生でいいのか?CQCや武器の取り扱いならあれからも教えてるだろう。」

 

「でも!」

 

「やるんだ。お前ならできると信じてる。」

 

「‥わかりました。」

 

ディアンサは俺の後ろから出て、横に並んでスタンロッドを構えた。

 

スネークがナイフを構えるとネズミは突進してくる。

 

運がいいのか、ネズミは単調な動きしかしなかった為、楽に倒せた。

 

だが問題はディアンサの方だった。

 

運が悪いのか、そっちのネズミは変則的な動きを繰り返し、ディアンサは攻撃を試みるも空振りし、それを狙っていたのかネズミが飛びかかり押し倒されていた。

 

「は、離して!!」

 

キキキッ!!!

 

ネズミの発達した前歯がディアンサの首を襲う。がスタンロッドを噛ませる事で助かる。

 

「どいてよ!」とディアンサはスタンロッドのスイッチを入れ、電流を流す。

 

バリバリと電撃音と共に肉が焼ける嫌な臭いがするが、すぐにネズミの首の力でスタンロッドを振り飛ばされる。

 

それを見てすぐにスネークは銃を取り出そうとしたが、ディアンサは諦めていなかった。

 

ディアンサは腰のナイフを抜き、ネズミの側頭部に思いっきり突き刺した。

 

キシャアアアアアアア!!!!

 

 

ネズミの力が一瞬弱くなったため、すぐに蹴り飛ばし距離をとる。

 

ネズミの方は完全にディアンサを敵と見定め、致命傷になっていないのかナイフが刺さったまま突進してきた。

 

その時ディアンサはそれがゆっくりに見えたという。あの日、スネークによってウルフから助け出された時の死を覚悟した時とは違う感覚だったという。

 

そして尊敬する仲間であり、師でもあり、大切な人でもあるスネークの言葉を思い出す。

 

「ディアンサ。まずはCQCの基本を思い出すんだ‥」

 

ディアンサはその突進を避け、左手で短い腕を掴む。

 

そのまま首をフロントチョークの要領で捕らえネズミの突進の勢いに任せ後ろに倒れこむ。

 

ゴギッ!

 

意図せずにプロレス技のDDTを繰り出した形となった。

 

そしてゴギッという音はネズミの首が折れた音を指し、それと同時にディアンサが始めて一人で敵を倒した事を意味していた。

 

「ディアンサ。よくやったな。」と肩に手を置く。

 

「私‥本当に倒したんですか?一人で‥?」

 

「ああ、間違いなく一人だ。ハラハラしたが初めてにしては上出来だ。」

 

「まだ信じられません‥」

 

「お前はネズミの全体を見ていたな。考え方は悪くない。だが不規則な動きをするものに対しては目を見ろ。いつも訓練通りに物事は進まない。いいな?だがお前は自分の力を信じて咄嵯の判断で敵を倒した。いいセンスだ。」

 

「いい‥センス‥?」

 

「ああ、ほらさっさとスタンロッドを拾ってこい。」

 

「はい!」

 

スタンロッドを拾いにいくディアンサを見守っていると後ろからナルメアとシャルロッテが話しかけてきた。

 

「ディアンサちゃんの成長の為に敢えて突き放すなんてね。私だったら助けてたかもしれないわ。」

 

「スネーク殿。やはりあなたは上に立つ人材です。」

 

「よしてくれ。俺だってそんな出来た人間じゃない。それに俺が上に立つんじゃない。みんなが俺を支えてくれて初めて立てるんだ。」

 

「おい、そっちは大丈夫か?」とランスロットが走ってきた。

 

「ああ、大丈夫だ。」

 

「なら、行こう。」とまたランスロットを先頭に先を進んだ。


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