でも、プロデューサーのおかげでもりくぼはもりくぼになれたんです。
「あのさ、俺との約束覚えてる?」
忘れてるはずなんてないじゃないですか。
「星を、一緒に見に行ってくれるんですか?」
プロデューサーは嬉しそうに微笑んで頷きました。
「よかった。
その約束を忘れないでいてくれて。」
その時の顔は、
哀しそうで、でもとても嬉しそうで、
少し切ない顔でした。
「さ、行こっか。」
「え…ど、どこに?」
プロデューサーは、決まってるでしょう?と笑って言いました。
「星を見に行くんだよ。
約束を果たそう。」
「え…?」
もりくぼの手をそっと握って、引っ張ってくれます。
そして、手がすぐ離れました。
そういえば、もりくぼが机の下からなかなか出てこなかった時もこうやって手を握って引っ張りあげてくれましたっけ。
「どんな星を見ようか。」
「ペガサス座…とか…?」
秋の星で、1番好きな星の名前は上げずに2番目に好きな星の名前を言ってみました。
「へぇ、乃々ならアンドロメダ座と思ってた。」
なんでこういう時だけ勘が鋭いのでしょうか。
「うぅ…。そりゃ、もりくぼの好み的にはアンドロメダ座が1番好きですけど…。」
「そうだよなぁ!なんてたって逸話がとても乃々好みだもんな。」
にこにこ笑いながら、プロデューサーは私の手をもう一度握ります。
「ペガスス座も、アンドロメダ座も秋の四辺形だ。
つまりは、乃々は自分の見たい星の近くの星の名前を言って本当に見たい星を隠そうとしたわけだ。」
図星すぎます…。
「ご、ごめんなさい…。」
「乃々はおちゃめさんだなぁ。」
次は正直に見たいものを言ってくれよ?とでこぴんした後に、
「ただ、今日星を見るにはちょっと準備が整ってないからさ。
だから、また来週この時間に窓の外を見てごらん。」
そう言ってプロデューサーは消えました。
「え…。」
消えてしまったのです。
さっきまで繋いでいた手の温もりが少しずつなくなっていき、プロデューサーがもりくぼのそばにいた痕跡すらなくなってしまいました。
「…きっと夢を見てたんですよ。」
誰も居ない空間に私は1人話しかけます。
「夢でプロデューサーに会えたんです…」
涙がぽたぽたと落ちて、服に星座を描いていきます。
「ねぇ どうしてプロデューサーは死んじゃったんですか…?」
この夜の事は受け入れたくない現実が見せた、「森久保乃々が望む世界の夢」として忘れようと思いました。
「うふふ…、今日のお弁当はハンバーグですよぉ。」
事務所に行くと、まゆさんはプロデューサーの机の上にお弁当を置くところでした。
「あら?乃々ちゃん、おはようございます♪」
にこやかな笑顔で私を見つめるまゆさん。
その目には私ももりくぼも映っていません。
ただ、亡くなってしまったプロデューサーの事しか見ようとしていないんです。
「プロデューサーさん、今日も会えないかもしれないんですって…。
まゆ、早くプロデューサーさんに会いたいです。」
「そう…ですね。」
どこか嬉しそうにスキップするまゆさんとお別れします
今日も机の下に引きこもる私。
「な、なぁ…キノコ食べるか…?」
輝子さんがえのき茸を差し出してきます。
「ベーコンとほうれん草と一緒に炒めて食べるもよし…鍋にいれてもよし…ば、万能食材…だぞ。」
「あ…ありがとうございます…。」
輝子さんが少し驚いた顔で言います。
「ぼののちゃんが…!!!喋った!!!!」
「いや、もりくぼだって喋りますけど…。」
その騒ぎを聞きつけた凛さんがこちらに来ます。
「乃々っ!!」
そのまま抱きしめられて、ひたすらに
「乃々…乃々っ。」
「り、凛さん…く…苦しいぃ…。」
ぎゅーぎゅー抱きしめられました。
「あ…ごめ…乃々が人の顔を見て、話してるのを見ていたらつい…。」
そう言われて私は気づきます。
何年振りでしょう。
こうして人の顔を見て、触れ合って、話すのは。
そして、またぼろぼろと涙がこぼれます。
そうだ、言わなきゃいけない事があるんです。
「り、凛さん…。
大嫌いなんて言ってごめんなさ…ごめんなさい!!
酷い事言って、突き放してごめんなさい…。」
凛さんが優しく頭を撫でて私に言います。
「いいんだよ。乃々。
私は乃々とまた話せるだけで充分。」
そっともりくぼの涙を拭って、笑いかけてくれました。
「ねぇ、乃々。」
「どうしたんですか?」
「ううん、呼んでみただけ。」
「…ねぇ、凛さん。」
「どうしたの?」
「もりくぼも呼んだだけです。」
顔を見合わせて、2人で笑います。
「うんうん、よかったでありますよ…。」
亜季さんはそんな私たちを見て嬉しそうに笑います。
あの夜のことは夢だったんでしょうか。
ふと、そう考えます。
約束した日は明日にまで近づきました。
「もし、明日プロデューサーが来なかったら…??」
きっともりくぼはまたダメくぼになってしまうでしょう。
この話は以前書いていたまゆ小説から派生した形となっておりまして、主人公を森久保と設定し書いているさよならアンドロメダ。
あの時の私はこんな神曲と出会うとは思ってなかったため、続きはもう出さないよ!って言いましたね。
この詐欺師め!!
さて、名古屋1日目、りんののアンドロメダがほぼ当選確実となりました。
しかし、悲しいことに秋なのに亜季ちゃんがいないのであります……!!
コメントでもありましたが、ニコニコ動画にこーすけPさんという方が作られたバンドアレンジがあります。
それも超絶神なので聞いてみて恋してください。